海を渡る
プリンスの広報誌「プリンスグラフ」か「カートピックス」のいずれかに掲載された記事です。
デリックで吊りあげられ、輸送船に積載される左ハンドルのグロリア。
輸出モデル専用の鮮烈な赤い塗色が強い存在感を放っています。
この当時はまだ自走で積載可能な自動車専用輸送船がありませんでした。
後方にはマイラーと思しきボンネット・トラックも待機しています。
先回に引き続き輸出モデル特集です。
今回は2代目プリンス・グロリア(S4系)の1回目です。
初代スカイラインから性能的にも外観的にも大きく飛躍し、高速時代に適した初の本格的モデル
がS4系グロリアです。
日本にも高速道路が建設され、各自動車メーカーも本格的なクローズド・テストコースの建設や
開通前の名神高速に於ける長時間の高速耐久走行試験などを実施するようになりました。
それらの過酷なテストで得た技術をフィードバックして生み出されたS4グロリアは
世界のハイウェイにも通用するパワフルで静粛な高速乗用車として完成しました。
それまでチープ・トイ扱いだった日本車が、世界の頂点へ向けて走り出した時代でした。
1963年10月時点でのプリンス自動車工業のフル・ラインアップです。
写真そのものは国内向けの有名な広報写真で社名と社章、英文の解説を追加しています。
3台並んだグロリアは左から4気筒STD「スペシャル」4気筒DX「デラックス」6気筒DX「スーパー6」
の3グレード体系になっています。
他はスカイライン1500DX、クリッパー、マイラー、スカイライン・スポーツ・クーペ/コンバーティブル
ライトコーチが並んでいます。
これらの中でスカイライン・スポーツは輸出されていなかったものと思われます。
輸出モデルのネーミングについては仕向地にあわせて複数が使い分けられていたようです。
社名は「PRINCE MOTORS」「PRINCE MOTOR CORPORTION」「PMC」などが使われています。
車名は「GLORIA」「GLORIA6」「PRINCE」「MIKADO」「B200」などがあったことを確認しています。
「帝」というネーミングはカッコいいですが畏れ多い感じもあります。
また、西ドイツでは良く似た車名の「プリンツ」と誤認を避けるため別名を使用したようです。
ナンバープレートに掲げられた「S41E」のEは「EXPORT」の頭文字で、輸出仕様を表す記号です。
殺人ミラーやフルカバード・ウィールキャップなど外観的にはほぼ国内仕様のS41Dに準じて
いますが、サイドのベルトラインが省略されています。
こちらは輸出モデルの総合カタログの表紙で、どうやらオランダ語のようです。
先頭のPMC A 200 GT(S54A-3)のグリルから判断して日産との合併後で、なおかつ
スカイラインのマイナーチェンジ後の1966年10月から、グロリアのモデルチェンジの
1967年4月までに印刷されたカタログと思われます。
車名はスカイラインを「A」グロリアを「B」とし、その後に排気量を表す「200」の数字を加えた
欧州に多いネーミングとなっています。
ちなみにスカイライン1500の車名は「A 150」となります。
注意すべきはアメリカ的にセダンよりもワゴンの方が価格が高いという点です。
国内の5ナンバー乗用ワゴン「グロリア6エステート」が機関はスーパー6に準じていながら
艤装が廉価グレードのデラックスやスペシャル相当であったのとは好対照です。
ド派手なピンクの塗色がインパクト満点なPMC GLORIA6です。
もちろん輸出専用の純正色で、スティールウィールもきちんとボディ同色と洒落ています。
サッシュのクロームトリムやサイドのベルトラインは省略されています。
クルマそのものより手前の草木や背景のコテージまでをひとつの絵としたカットとなっており
瀟洒な雰囲気のカタログ作りを得意とするプリンスの面目躍如です。
画像が小さいので見づらいですが、輸出仕様のカタログです。
質素なライトグレーのビニールレザーシートが国内仕様のスペシャルなどと共通する雰囲気です。
前後シートともセンターアームレストは無し、インパネのラジオや時計はオプション扱いで
メクラ蓋で塞がれています。
エンジンの写真とトランスミッションの内部図解が掲載され、世界的に見ても優れた
OHC 6cyl 2000cc 106HPのスペックが誇らしげに掲げられています。
こちらはニュージーランドの現役車輌です。
殺人ミラーが装着されていますが、装着位置はかなり後方に変更されています。
サイドのベルトラインやフェンダーのクリアランスソナー、サッシュのモールが省略されている他
透明ガラスの装着やエンブレムの位置に国内仕様との違いが見られます。
水色のボディカラーは新車時からのものと思われ、メタリックが多かった国内仕様と
較べるとソリッドカラーが多かったようです。
トレーラー牽引用のヒッチメンバーが海外らしい装備です。
特徴として豪州方面の法規に適合させたアンバーのターンシグナルがあります。
プレートにはS41E-2と記され、最下部のビークルナンバーNZ414とはおそらくニュージーランドに
輸出された414台目のグロリア、ということでしょう。
こちらは白い外装にチャコールの内装を組み合わせた品のある1台です。
グロリアはクロームの装飾が多いので、白い塗色ではメリハリが効きづらく
国内の車輛ではあまり人気がありませんが、海外向けの輸出仕様では設定があったようです。
ちなみに国内仕様でも白系統のボディカラーは設定されていました。
インサイドドアハンドルがアームレストから生えるタイプではなく、STD系のレバータイプ
になっています。
茶系統の3色の布地を巧みに組み合わせて、シンプルながら貧相な感じを与えない
ような凝った内装となっています。
シートの隙間やBピラーから3点式シートベルトが後付されているのがわかります。
こちらのテールレンズもアンバーのターンシグナルを組み込んだタイプになっています。
リヤガーニッシュとバンパー・オーバーライダーが省略されている点に注目すべきです。
こちらはプリンス&スカイライン・ミュウジアムに展示されているPMC PRINCE B200の
オーナーズハンドブックです。
車輌形式は(L)S41SE/DE-Ⅰ/Ⅱとあり、それぞれ左ハンドル、STD/DXの2型を表しています。
左ハンドル圏かつ英語圏の国に向けた仕様と思われます。
プリンスが好んで使った獅子のイラストが可愛らしいです。
こちらは左ハンドルでリヤガーニッシュ、オーバーライダー無しのモデルです。
おそらく北欧の解体屋の写真だったと思います。
サーフェーサーのようなグレーは純正塗色なのでしょうか?
リヤには白いマッドフラップが覗いています。
こちらは映画のワンシーンのキャプチャ画像です。
横長のナンバープレートから欧州のモデルと思われます。
ミラーは角型のようで純正ではありません。
何の映画か御存知の方がいらっしゃったら教えてください(笑)
輸出仕様のカタログで、上記の個体は水色はこのカラーと思われます。
内装はライトグレーが選択されています。
注目すべきはフロントグリルが網目の細かい1型(初期型)のものである点です。
このことから、このカタログは1965年10月以前に制作されたことが予想されます。
こちらは左ハンドルの個体で、トレーラー牽引用のロングステーミラーがインパクト大です。
となりにはS8系チェリーが写っています。
ボディカラーはやはりソリッドの水色で、スティールウィールが同色になっています。
まだネットで採集した画像がありますので続きます。