コーヴェットは1953年に登場、「アメリカ唯一のスポーツカー」とも呼ばれました。
個人的には「スポーツカー」の定義とはなんぞや??って感じなのであまりしっくりこないです。
「スポーティカー」と「スポーツカー」の違いは?
「GT」はどういう存在?誰がそれを決めるのか?
メーカーがスポーツカーと名乗らせれば、それはスポーツカーと認められるのか?
漠然とした定義のうえ、時代と共にその定義も変化する性質のものでしょう。
あくまでもマーケティングとして「カテゴライズ」しているだけで、本質的な内容を
示すものではないように感じます。
閑話休題・・・
こちらは1972年式のコーヴェット・スティング-レイ・コンバーティブルです。
1968年にデビューした第3世代のコーヴェットで、1971年にはマスキー法が施行された為に
わずかにパワーダウンしましたが、オイルショック前の300馬力代のパワフルな時代です。
翌73年にはフロントバンパー、74年にはリヤバンパーが樹脂製に変更されるため
「アイアンバンパー」の愛称で呼ばれる最終年式です。
ロングノーズ、サイドマフラー、オーバーフェンダー、放熱ダクト、ワイドタイヤ・・・
とても個性的で、エキゾチックな雰囲気のディティールに満ちています。
細かなフィンの入ったダクトはサブネームの由来である「エイ」のエラを連想させます。
尖ったノーズ、フロントヒンジのボンネット、ボリューム感溢れるフェンダーがダイナミックです。
アウトサイド・ドアハンドルはフラッシュサーフェイスされ、指を押し込むように操作します。
サイドマフラーとタイヤ/ウィールは純正ではありません。
エンジンの形式やスペックについてはわかりませんでした。
エンジンブロックはいわゆる「シェビー・オレンジ」で塗られていました。
また、エーデルブロック・ストリートマシンという文字が刻まれたブロック上面やクロームの
ヘッドカバー、MSDユニットなど社外品が多数奢られているようでした。
フライパンのフタのようなエアクリーナーは、高性能ユニットであることを殊更に
アピールするものではありません。
ACジェネレーターにはGMのパーツ・サプライヤーであるデルコ・レミーの刻印がありました。
室内はハーネスの引き直し作業中とのことで、メーター類が取り外された状態でした。
かろうじてオートマティック・トランスミッションであることがわかります。
サイドブレーキ・レバーは拳銃のグリップ部のようなデザインで実にクールな雰囲気です。
ウッドステアリングも複数のパーツによって構成された贅沢な造りとなっています。
フロアマットには誇らしげにクロス・フラッグと車名が刻まれています。
大胆なコークボトル・ラインが強調されるリヤビュー。
前後ともにオーバーフェンダーは純正ではなく、アフターパーツを組み合わせているようです。
テールレンズもオールレッドに換装されており、汎用のバックランプが吊り下げられています。
本来は内側にバックランプが組み込まれたテールレンズが装備されます。
また、マフラーエンドもリヤバランスパネルから直接突き出るタイプがオリジナルですが
サイドマフラー装着の際に孔を埋めたものと推測されます。
波打つボディ、膨れ上がったフェンダー、ドアの部分の「クビレ」
どこを見てもグラマラスでセクシーな造形に仕上がっています。
幌の収納される部分にはカバーが付き、少ない積載容量を補う為のキャリアが与えられています。
また、脱着式のハードトップも取り外された状態で保管されていました。
ハードトップのリヤ・ウィンドウには当時流行した逆スラント・タイプが採用されています。
荷物を置く場所は席の後ろの空間と、リヤデッキのキャリアだけしか用意されていません。
一般的なクルマであればトランクにあたる部分は大容量の燃料タンクになっています。
クロスフラッグのエンブレムをあしらった丸形の部分がフューエルキャップになっています。
強烈なインパクトを放つサイドマフラーは片側4本ずつのエキゾーストパイプを1本の太い
パイプに集合させており、まるでハーレーダビットソンのマフラーのようです。
サイドの放熱フィンとあいまって、C3の魅力の詰まったパートだと思います。
C3コーヴェットは初期モデルでは300馬力、425馬力、466馬力といった驚異的な出力を誇る
ハイ・パフォーマンスエンジンを備えシボレーのスポーツイメージの象徴として君臨しました。
しかし排ガス規制、オイルショック、輸入車攻勢と厳しい状況の連続の中で急激なパワーダウン
を余儀なくされます。
7ℓクラスの大排気量エンジンはリストから落とされ、モデル末期には200馬力ほどの
数値に落ち込んでしまいます。
しかしながら環境問題が声高に叫ばれる中で「このようなスポーツカーはもう二度と作られないの
ではないか?」という心理もあってか販売は好調を維持しました。
後期モデルに対する、カッコだけで性能が不足しているという指摘も事実ですが、
初期モデルはルックスに見合った確かなパフォーマンスを持っていたことも事実です。
また、こういった性格のクルマへの風当たりが厳しい時代に生産を続行したGMの姿勢そのもの
がスペック以上に大切な事柄ではないでしょうか。
アメリカ車全体にいえることですが、欧州車偏重の日本の自動車雑誌ではC5以前の
コーヴェットに対して不当に低い評価が下されているように感じます。
コーヴェットの名前の由来は第二次世界大戦の欧州戦線でUボートを駆逐した快速の軍艦です。
歴代のコーヴェットはその名に恥じない快速の陸の巡洋艦といえるでしょう。