「ホテル・ゴルフ場の送迎用、会社・工場の業務連絡用、宣伝・サービスカーなどにも
本格的な26人乗り中型バス・ライトコーチがもってこい!
明るくスマートなスタイル。展望車を思わせる、視界の広いウィンドー。
しっくりと体になじむ大型シート。
目的地までのドライブが、グンと楽しくなります。」
2000cc・92馬力・最高速度110㎞/h・登坂能力0.382sinθ
今回は
NISSANサービス周報 昭和48年1月 第250号(P-39)
ニッサン プリンス クリッパー T40系車の紹介
より、マイクロバスのライトコーチについて抜粋して御紹介致します。
ライトコーチはプリンスの主力キャブオーバー・トラックであるクリッパーを
ベースとしたマイクロバスです。
1960年3月に初代BQVH-2(形式改称後:B631-3)がデビュー。
1963年1月にベースモデルのクリッパーがFMC、同年10月に2代目B632-4にFMC。
1966年4月に多数の部品をキャリーオーバーしながらFMCを行った3代目が登場しました。
1966年8月にはプリンス自動車が日産自動車によって吸収合併、車輛銘板に記載されている
社名も「プリンス自動車」から「日産自動車」へと変更されました。
合併後の1968年にはコストダウンに主眼に置いたMCが実施されました。
1973年1月にはバリエーション拡大を目的としたMCが実施され、車輌形式も
プリンス流の「T(B)654」から日産系の「T(B)40」へと変更されました。
その後、ベースモデルであるクリッパーが1976年5月にニッサン・キャブオール(C340系)
に統合され兄弟車となり、これに伴いライトコーチも生産終了となりました。
日産製マイクロバスはシビリアン(エコー改称モデル)に1本化され、現在に至ります。
こうしてライトコーチは1960年3月以来、3世代16年余に渡る長い歴史に終止符を打ちました。
こちらが1973年1月以降の最終型の外観写真です。
プレスラインを生かした5WAY2トーン・カラーが大柄なボディに軽快な印象を与えます。
フロントグリル形状は1968年のMCでS4プリンス・グロリア風から150プレジデント風の
横線基調に変更されました。
フロント・バンパーの位置も一段低い位置に下げられました。
このMCでは従来には設定の無かったダブル・タイヤや運転席ドア、ハイルーフ仕様
ディーゼル・エンジンが設定されました。
エンジンはガソリン/ディーゼル共に日産製です。
ダブル・タイヤ特有の凸型ウィールが目立ちます。
プリンス時代にはクリッパーのダンプであってもシングル・タイヤで、ディーゼル・エンジンは
乗用車・貨物車いずれにも設定されませんでした。
ライトコーチは基本仕様が21/26人乗りとなり、その他に様々な特装車が用意されました。
病院車、レントゲン車、キャンピング・カー、移動図書館、貨物車、貨客車、児童送迎車
移動販売車など様々なバリエーションのボディが用意されていました。
シングルタイヤ・標準ルーフ・(運転席ドア付)の外観四面図です。
従来、ドライバーも車輛左側中央の昇降口から乗り降りしていましたが、アクセスを容易に
する為に運転席ドアが新設され選択可能となりました。
タイヤは7.50-15のLT(ライトトラック)タイヤです。
各ボディ・バリエーションごとに前後のプライ数設定が異なっています。
従来はフロントが白色、リヤが赤であったターンシグナル・レンズが法改正に準じて
前後ともにアンバー(橙色)に変更されています。
テールレンズのデザインもS4グロリア風の「キャッツ・アイ」となっています。
最低地上高は190mm、標準ルーフ仕様で全高は2240mmとなっています。
中央昇降口ステップは一段低くなっており、地上より390mmの位置になっています。
こちらは従来モデル通りの運転席ドア無し・標準ルーフ・シングルタイヤ車の外観四面図です。
運転席ドアにはレギュレーター式の上下昇降式ウィンドーが設けられていますが
ドア無し車ではスライド式ウィンドーとなっています。
エンジンはアンダー・シート配置で、最後席の下にはトランクが設けられています。
リヤの四角い蓋はトランク・リッドです。
ライトコーチはノンスリップ・デフ(LSD)が全車に標準設定となっています。
これはプリンス純血時代よりの伝統です。
給油口は左側中央にレイアウトされており、燃料タンクはボディ中央下側にあります。
全幅が1990mmなのに対してトレッドは1400mmとかなりタイヤが内側に配置された
ナロートレッドとなっています。
ディーゼル・ハイルーフ・シングルタイヤ車の外観四面図です。
車輛前部のハイルーフ化によって、フロント・タイヤハウスから天井までの室内高が
標準車の1210mmから1225mmに拡大されました。
全高も2240mmから2265mmに増えています。
屈んで歩く必要がなくなり、運転席と車室との連絡が容易になりました。
ディーゼル・ハイルーフ・ダブルタイヤ車の外観四面図です。
前輪・後輪ともに8プライとなています。
後輪のダブル化にあわせてマッドフラップも幅広の大きなタイプが奢られています。
このボディには折りたたみ式補助シートが装備されています。
ディーゼル車のみ二段ルーフを新設定、50mmのハイルーフ化を施し通路の歩行を容易にしました。
また、運転席へのアクセスの向上を図るべくドライバー・ドアを新設。
ウィンドーもスライド・ガラスからレギュレーター式ウィンドーに変更され利便性が向上しました。
※ただしこの部分についてはハイルーフの設定が何故ディーゼル車にのみだったのか、拡大
された数値も50mmと15mmの2種類が混在して記載されていて、どちらが正しい数値
なのかと疑問がいくつか存在します。
タイヤ・ハウス形状は従来の半円型から梯型に変更されています。
こちらは幼稚園バスの正面図です。
車輛形式には「J」(ジュニア?児童?)の文字が入ります。
幼稚園バスには前後左右に児童送迎車であることを示す大きな標識が備えられています。
一見左右対称に見える2枚合わせのフロントガラスは970/980mmの左右非対称です。
ワイパーは扇方に動くタイプで広い範囲に拭き残しが発生します。
ヘッドライトの上にターンシグナルを配置するデザインにはアメリカ車の影響が窺えます。
幼稚園バスでは幼児の乗降が容易に行えるように中央扉が標準車の1565mmから
1670mmまで下方に張り出す形で拡大されています。
これによってステップ位置はかなり低められ、小さな幼児の乗り降りに配慮しています。
リヤには緊急用として非常扉が設けられ、両側に2枚のコーナーガラスが新設されています。
内装では幼稚園バスの特徴として幼児に合わせた小さなシートと、職員の為のシートと
運転席に児童が入れないように設置されたガード・パイプがあります。
クリッパーに新たにED型3ℓディーゼルを搭載、従来よりも重い2.5t車が設定された
ことに伴い車載ジャッキもより大容量のものへと変更されました。
ライトコーチは日産との合併後も高い人気を維持し、車種統合を受けることなく
10年間も生産が継続されました。
市場から高い評価を受けた理由には、他社に先駆けてノンスリップ・デフを採用し
走行性能で他車に差をつけたこと。
まだビジネスライクで素っ気ないデザインが多かった時代に、開放感溢れる大きな
グラスエリアや、国産最高級乗用車たるプリンス・グロリアと通じる雰囲気などの
高級感漂う瀟洒なスタイルを採用したことが挙げられると思います。
プリンスのラインナップ中、最大のサイズを誇るライトコーチには最上級車種たるグロリアのイメージ
を投影するという手法をもって他車にはない車格感を与えることに成功しました。