みんカラを開くと
「愛車と出会って16年!」
と出てきました。
…そんなに経つんですね。
1974年式スバル レックス・カスタムL(K22型)
スバル ・レックス(K21型)はスバル・R-2(K12型)の後継車として1972年7月に発売されました。
車名の"レックス"とはラテン語で"王"を意味し、ホンダ・N360に奪われた軽自動車市場の王座奪還を期しての命名でした。
伝統のリアエンジン・リアドライブや2ストローク・エンジンなどの熟成されたメカニズムの多くはR-2からのキャリーオーバーでしたが、若年層を強く意識したスポーティなスタイリングやパーソナル・カーとしての雰囲気を醸し出すインテリアに従来のスバル車との違いが感じられました。
デビュー当初は2ドア・セダンのみとしてスタイリッシュなイメージを強調しつつ、翌1973年3月により実用的な4ドア・セダンを追加、圧倒的な支持を得ていたホンダ・ライフに対抗しました。
1973年10月には厳しさを増す排ガス規制に対応すべく、環境性能に優れ騒音・振動がより少なく、白煙も吐かない4ストロークの新型エンジンに換装。
内外装のマイナー・チェンジも行われ、型式もK22型へ変更されました。
自分の所有する個体は1974年5月製造、1974年8月登録で製造ラインは富士重工業群馬製作所太田工場(本工場)となります。
初代オーナーは地元の医師で、2オーナー目となる自分の処に来た時のオド・メーターは未だ13000km代を指していました。
ちなみに現在の走行距離は71875kmです。
360cc時代のレックスの中で中期型にあたるK22型(通称B型)は1973年10月から翌1974年9月まで製造され、米国流のモデル・イヤーで云えば1975年型となります。
風をかいくぐるウェッジ・シェイプ
逆反りのリア・ウィンドウ、スパッと断ち切られたコーダトロンカ・テール、ホッケー・スティックに着想を得たスティック・ライン、リア・フェンダーに走るサーフ・ライン等、360cc規格の制限の中で躍動感溢れるスタイリングを実現すべく様々な手法が用いられています。
あくまでも低く、しかもワイドなプロポーション
低く構えたフロント、エア・インテーク形状のカラード・ループバンパー、フロント・フード中央に刻まれた力強いプレス・ライン。
とかくアクが強いだとかアグリーだとか言われますが、個人的には巧くまとめられた端正な顔付きだと感じます。
ちなみに、この個体は1974年8月登録なので重量税が掛かります。
1974年4月以前は軽自動車は重量税が掛からなかったので、あと半年程登録が早ければ…(笑)
正面
わざとじゃなけりゃぶつからないよって位に広い駐車場で、見事にぶつけられたバンパーも板金してやらないと…。
この時代のバンパーにしては珍しく、メッキでは無く塗装なので修理が容易なのが救いです。
パーキング・ランプのレンズは、本来はターン・シグナルが橙色、スモールが白色のレンズなのですが現車は補修品に交換されており1974年9月のマイナー・チェンジ(C型)以降の橙色一色のレンズになっています。
ここもオリジナルに戻してやりたい所です。
トランク・ルーム
フロントのトランク・スペースは車体寸法からすれば充分に広く、フラットで使い勝手も良いものです。
運転席側(写真向かって左手側)の黒い部分はラジエターで、グリルの半分程度とかなりコンパクトなサイズとなっています。
電動ファンは水温が一定よりも高温になった時のみ作動する、パワー・ロスが無く騒音も抑えられる効率的な物です。
トランク下スペース
トランク・マットの下にはコルク・ボードがあり、それを外すとスペア・タイヤ、ジャッキ、ブレーキ・マスターシリンダーにアクセス出来ます。
マスターシリンダーには製造年月が刻印されています。
トランク隔壁とカウル・パネルの隙間には助手席側にウィンドウ・ウォッシャータンク、運転席側にブレーキフルード・タンクが収められています。
REX"フラッグ"エンブレム
誇らしげにリア・フェンダーを飾る車名エンブレム。
かなり凝ったデザインで、風に靡く旗が王の名に相応しい意匠です。
最上級グレード「COSTOM L」
この個体はレックス・シリーズの最上級グレード、カスタムLで装備が充実しています。
まぁ今の人からすれば付いてて当たり前の装備ばかりなのですが。
例えばプリント熱線式リア・デフォッガー。
リア・ウィンドウの曇りを取り、悪天候下や冬季の後方視界を確保するデフォッガーですが、熱線式というのがポイントです。
1960年代のリアデフォッガーはフロント同様の送風式が主流でしたが、こちらは現在まで主流である熱線式です。
ちなみに使用電力が大きいので曇りが取れたらこまめにOFFにするよう、取扱説明書で指示されています。
最上級グレードとは言え現在の感覚では付いてて当たり前にしか感じない装備ばかりなので自慢にはなりませんが、逆に低グレードのスタンダードだと「これが付いて無いの!?」と驚かれるであろうものが結構あります。
例えば助手席側のドアキーロックや給油口のロックが無いとか、ワイパーが1速式、リクライニング無し、シート・スライド運転席側のみなど、今の人なら面喰らうであろう内容が見受けられます。
エア・アウトレット
リヤーベンチレーション・システム、フロースルー・ベンチレーション、ストラト・ベンチレーション、アストロ・ベンチレーション、リア・ドラフター等々呼び方はメーカー毎に違いますが、1960年代後半より普及し始めた換気システムの一種が設けられています。
Cピラーの飾りは、換気用の通気口を隠す為のものでもあります。
ビルトイン・ドアハンドル
ドアのアウター・ハンドルは、スマートなボディ埋込式。
視覚的に空気抵抗を減らす(実際に空気抵抗が減るかどうかは問題では無いのだ!)デザインのドア・ハンドルはスペシャリティ・カーらしさの演出にも一役買っています。
なお4ドアは一般的なアウター・ドアハンドルとなります。
排出ガス対策済ステッカー
助手側ドア・ガラスに貼られた、排出ガス対策済ステッカー。
こういったステッカーが残っているのが結構重要だと、個人的には思います。
リア・ガラスにはオリジナルの「ゆっくり走ろう北海道」ステッカーも貼られています。
(最近流通している「の〜んびりいこうや北海道」とは違います)
ポップアップ式リアクォーター・ウィンドウ
車内の換気や、夏場の室内温度を下げるのに有効なポップアップ式リアクォーター・ウィンドウ。
片側のヒンジが弱くなってきており、走行中に風圧でパタンと閉じてしまう事が偶にあります。
運転席側は勿論、助手席側のリアクォーター・ウィンドウも手を伸ばせば運転席に座ったままで操作出来てしまうのが、サブロクの"小さいからこそ"の良さです。
○フ入りのOKステッカー
助手席側のリアクォーター・ウィンドウに貼られたOKステッカー。
裏側には検査員のサインがあります。
スバルの完成検査員と言うと何かと話題になりましたが、現場でも色々ありました…。
無鉛ステッカー
指定燃料は無鉛レギュラー・ガソリンで、タンク容量は25リットルです。
車重520kgの軽量ボディと360ccと云う小排気量のマッチングに加え、部品取り車より移植した5速マニュアル・トランスミッションの威力に依り、燃費は市街地なら20〜22、長距離で70〜80km/h巡航なら最大25は走ります。
ただし90〜100km/hの高速走行の場合、18〜20程度に留まります。
自分は所謂エコラン等、燃費を気にしての走行はしません。
というか360ccで峠越えとか高速走行となるときちんと回さないと走れませんので。
なおこの数値は北海道の道路環境での計算なので、内地の場合はこれを下回るものと思われます。
前部座席
フロント・シートはヘッド・レスト一体式のハイバック・シートで、運転席・助手席共にリクライニング機構を備えています。
シート・スライド機構も両側に備わっていますが、運転席側の方がスライド量が大きいです。
また、運転席側の背もたれには微調整レバーも備わっており、シート・ポジションの設定範囲が助手席よりも広くなっています。
シートの表皮は手触りの良いビニール・レザーで、色は明るめのブラウンです。
クッションは薄めですが、長時間のロング・ツーリングでも極めて快適です。
こういうクルマで狭いとか硬いとか騒ぐ人はそもそも乗ってはいけません。
後部座席
リア・シートはレッグ・スペースもヘッド・クリアランスも窮屈で手荷物置き、もしくはエマージェンシー用と割り切って考えた方が良いです。
寸法的な狭さは勿論の事、リア・シート座面のクッションも非常に薄く、パネル一枚を挟んですぐ後ろにエンジンがあるので騒音・振動・熱による影響も大きい為、快適とは言い難いです。
上述の理由から後部座席は基本的に人を乗せる事が無い故に、新車時のコンディションを保っているのはちょっと皮肉ですが…。
リア・シートの背もたれとリア・ウィンドウの間は、一段低く落とし込まれた荷物スペースとなっています。
コンケーブ・ダッシュボード
ダッシュ・ボードは運転席側を深く抉ったもので、ドライバー・オリエンテッドなデザインとなっています。
ステアリングはスバル 純正オプションの、スポーティな3スポークのウッド・ステアリングです。
右手側には上級グレードにのみ備わるターン・シグナル/ワイパー/ウィンドウ・ウォッシャー/ディマーの4機能を集約したマルチユース・レバーが配されています。
室内
グローブ・ボックスの下には、手荷物を置いておくのに便利なパーセル・シェルフがあります。
リア・エンジン車の美点として、足元の広さが挙げられます。
絶対的な寸法が小さい上、タイヤ・ハウスの張り出しもあり横方向はやや窮屈ですが、縦方向のスペースは広く、特にペダルの無い助手席側は足を目一杯に伸ばせます。
また、水冷スバル車の美点として強力な暖房も挙げられます。
充分な熱量を持った温水式ヒーターと強力な送風ファンに加え、走行風を取り込むフェイスレベル・ベンチレーターの組合せに依り、理想的な頭寒足熱の環境となります。
多眼メーター
同時期の軽スペシャリティの中だとホンダ Zやスズキ フロンテ・クーペが多眼メーターのデザインが非常に巧いのですが、いずれもN/ライフやフロンテから派生したクーペ専用車種であり、若い世代をターゲットにしたとは云えレックスは従来のスバル360やR-2からの乗換ユーザーの事も考慮した結果、少し思い切れなかった感があります。
メーターは右から水温/燃料、速度計、時計となっています。
センター・コンソール
リア・エンジン車は、機構的な理由から殆どがフロア・シフト(コンテッサ900等は例外ですが)で、レックスも同様です。
センター・コンソール上部は、本来オプションの8トラック・ステレオなどを装着する為のスペースですが、自分は小物入れとして活用しています。
センター・コンソール下部にも小物入れがありますが、こちらは寸法や形状的にあまり実用的とは云えません。
オリジナルのマニュアル・トランスミッションは4速ですが、部品取り車のカスタム5より移植した5速に換装しています。
グローブ・ボックス
助手席の目の前には木目調パネルと車名ステッカーが誇らしげに貼られており、その下に位置するグローブ・ボックスは大判の整備記録簿を呑み込む大容量となっています。
グローブボックスの蓋の開閉機構は、なんと薄い樹脂に折り目を付けただけというシンプル極まりないもの。
この個体はまだ生きていますが、開閉を繰り返している内に千切れてしまった車輌が散見されるので、ここはちゃんとしたヒンジを付けて欲しかった所。
整備記録簿、取扱説明書、整備書
この他にもパーツ・リストやらカタログやらも有ります。
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このレックス、自分が18歳の時に就職祝いとして父に買って貰ったクルマなのですが、あの時は若々しい新社会人だった私も今では中年男性。
更に16年後には自分も50歳!です。
16年前には34歳の自分なんて想像出来なかったワケですが、50歳になった自分もイメージ出来ません。
ただ、今も昔も相変わらずクルマをやっているので、そこは変わらないだろうなと思います。
今は他のプロジェクトを進めているのでレックスは休眠中ですが、いずれ復活させる予定です。
何歳になるかわかりませんが、縁あって自分の処に来たクルマですから、きちんと後世にバトンタッチしたいものです。
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ふりかえってみるのもいいさ
道草くうのもいいさ
僕らの旅は
果てしなくつづく
時には疲れたからだを
木かげによこたえて
想いにふけるのもいいさ
旅はまだつづく
何故か気があう、俺たちとレックス