こちらは1966年のシボレーのカタログです。
日通商事が輸入販売を行っていた当時の物で、写真は基本的に本国カタログの物の流用です。
全6ページで紙質はザラザラとした手触りの絹目調となっています。
表紙はシェベルなのですが、写真にイラスト加工を施した立体感のない不思議なものです。
表紙の写真だけは本国カタログや広告写真で見たことがありません。
テストコースでの水路走行試験でしょうか?ワイパー全開です。
日通は当時シボレーとホールデンを取り扱っていました。
東京、大阪、名古屋、大津の4都市に販売店を設けていたようですが、大津のみ販売協力店の
ような形態であったようです。
トップを飾るのはシェビーの代名詞たるインパラです。
66年は伝統の丸6連テールを角横長に改めましたが、不評だったらしく翌年から再び6連戻ります。
「エグゼクティブにおすすめしたい」「格調高い車内」
「最高級車の貫録」「経営者の方々のオフィスの延長」
本国ではベストセリング・ファミリーカーであるインパラの日本に於けるポジションがよくわかります。
スポーティーかつパーソナルな2ドアHTクーペの写真と、フォーマルな「走る重役室」的な
キャッチコピーのギャップがすごいです。
続いては65年にセダンにのみ「カプリス・カスタム セダン」として設定されたパッケージ・オプション
からシェビーの最上級モデルとして独立車種に昇格したカプリスです。
インパラとはモール、サイドシルプレート、ウィールキャップ、テールランプなどが違います。
もっとも大きな違いは角ばったフォーマルなルーフ形状でセミ・ファストバックのスポーツクーペに
対して「カスタム・クーペ」と呼ばれました。
青いボディに白いレザートップのツートーンカラーがスタイリッシュです。
ミラーが運転席側にしかない点にも注意です。
小窓で掲載されたインテリアの写真はインパラ/カプリスともにセンターコンソールとセパレートシート
を備えたフロアATになっています。
「超デラックス新シリーズ」「走る応接間」「トップ・マネジメントの車」「商談や秘策を練るのにも最適」
インパラよりも「V.I.P」向けをアピールしています。写真はやっぱり2ドアHTクーペですが。
フルサイズの次はインターミディエートのシェベルです。
SS396のコンバーチブルというハイパワーでド派手なモデルの写真が選ばれています。
「爽快なドライブ・・・あすの活力はすべてシェベルで・・・」
「海に山に都塵を避けてフレッシュな空気と明るい太陽を満喫」
「ご家族そろってのレジャーは、広々とした車内と運転のしやすさを誇るセミ・コンパクト・カーで」
キャッチコピーからパーソナルユースをターゲットとしていることが伝わってきます。
こちらもインテリアの写真はセパレートシート、コンソール付きのフロアAT仕様です。
セミ・コンパクトと謳っていますが、当時の国産最大級セダンのニッサン・プレジデントと比較して
全長がわずか40ミリ短いだけで、幅は110ミリも大きいです。
エンジンもL6で3・8ℓ、V8で4・6ℓと直6 3ℓ/V8 4ℓのプレジデントを超える巨大なものです。
当時の日本で、セミ・コンパクトといわれて納得された方は居たのでしょうか?
こちらは4ドアセダンですが、ここのページだけ写真が何故かセピア調です。
イラストによる加工もされており、かなり不思議な仕上がりになっています。
モデルは上級トリムの「マリブ」です。
「大型車のエッセンスをそなえた」「性能・装備はフル・サイズに匹敵」
「大きすぎず小さすぎず、手ごろなサイズ」「なんでもそろっている完璧な車」
なんでもそろっていたら他の車種の存在意義が問われかねない気もしますが・・・
オーナードリブンにも、ショーファードリブンにも対応できると謳っています。
66年に大規模なモデルチェンジを実施し、よりハンサムでバランスの良いスタイルとなった
シェビーのオーソドックスなコンパクト・カー、シェビーⅡが掲載されています。
モデルは上級トリムにして「新星」を意味する「ノーヴァ」の4ドア6座セダンです。
「気軽に乗り回わせる」「出足、乗心地がともに良く~経済性にもすぐれた本当の意味での実用車です」
キャッチコピーは経済性や実用車を謳っていますが、コンパクトとはいえ全長は日本の5ナンバーと
同じ4650ミリで、幅は実に110ミリも上回る1810ミリの巨体です。
本国でのポジションと日本でのポジションのギャップの大きさと性格付けの難しさを感じます。
こちらは2ドアHTクーペ、しかもハイパフォーマンス・モデルのSSです。
澄んだブルーのボディカラーと端正なデザインが美しいです。
ウィールキャップはSS専用のスピナー付きですが、日本では突起物として公道装着が
不可能だった気がしますが、その場合はどう対応していたのでしょうか?
65年に大規模なモデルチェンジを実施し、アメリカで最も美しい車と呼ばれたコーヴェアです。
60年に期待を背負ってデビューしましたが、ライバルのファルコンに敗北。
62年に「内なるライバル」シェビーⅡが登場、当初のポジションを追われます。
スポーティー・コンパクト路線を開拓するも64年登場のマスタングに大差を付けられる。
65年にはラルフ・ネーダーに理不尽に叩かれ。
67年には身内のカマロにとどめを刺されて、最期の69年には生産ラインをシェビーⅡに
明け渡してハンドメイドとなった悲劇の車です。
66年はまだフルモデルチェンジの勢いもあり、主力車種のひとつでしたが年々扱いが酷くなり
68年には総合カタログの1/2ページしか与えられない有様でした。
「リアエンジン・ファンに贈るエコノミック・カー」「アイディアの塊まり」
「世界最大のリア・エンジン乗用車」「床の平らかな室内」
今やリアエンジン車そのものが絶滅したようなものですが、キャッチコピーはRR全盛時代を
感じさせます。
少しずつボアアップしながら2.3~2.7ℓの空冷・水平対向6気筒OHVが設定されましたが
燃費は街乗り12、ハイウェイ16と良好な数字を示しています。
前ページの4ドアHTに続き、2ドアHTが掲載されています。
一時は2/4ドアセダン、2ドアワゴン、キャブオーバーワゴン/デリバリーバン/ピックアップまで
ラインナップを拡大したコーヴェアでしたが、65年のモデルチェンジで2/4ドアHTとコンバーティブル
の3ボディに絞られてしまいました。
イタリアン・デザインのトレンドを良く掴んだスマートで美しく流麗なスタイルです。
RR車では日野コンテッサ1300と並んで好きな車です。
最後を飾るは鮮烈な赤いボディのコーヴェット・スティングレイ・クーペです。
「モーターマニア垂涎」「空気力学的に設計されたグラス・ファイバー製ボディ」
「合理的な計器パネルのレイアウトにも、スポーツ・カーの極致を見る本格派です」
「V8ハイ・パフォーマンス・エンジン」
合理的と言うにはちょっと整理が不足している気もするインパネは左右対称で
中央のコンソールに縦置きでラジオをレイアウトした点がユニークです。
フェアレディが後に踏襲したデザインです。
ボートテールと突き出した2本のマフラー、力強いウィール、高性能を隠さない放熱ルーバー。
グラマラスなスタイルは言うまでもない魅力ですが、スペックが凄いです。
5・4ℓエンジンから300馬力/トルク50m㎏を叩き出しています。
現在でも300馬力といえば高出力エンジンですが、当時はもっと凄まじい感覚だったことでしょう。
その一方でFRPなので軽いだろうと思っていた車重は1480㎏と意外に重いです。
コーヴェアが1205㎏に留まっているのも見た目以上に軽くて意外です。
最後はスペック欄です。
欄外の(註)によると、ベルエア及びビスケインも購入できたことがわかります。
当時、かなり高額なアメリカ車を購入したのはどのような人達だったのか、と思いを馳せるのも
楽しいです。