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2011年05月31日 イイね!

モーターファン 1963年9月号「プリンス グロリア スーパー6」記事

Prince Of Highway

《新発売》6気筒 2000cc 105馬力 OHC

ハイウェイを力強く走る・・・好評のフラット・デッキタイプ!!エンジンは6気筒・2000cc・105馬力
------技術の最高峰O・H・C(オーバー・ヘッド・カムシャフト)方式を採用しました。
ささやくような静かさ、すぐれた高速安定性。しかもオールシンクロのトランスミッションは
追越加速にずばぬけた性能を発揮!
ドライブは一そう快適になりました。文字どおり《乗用車のプレジデント》です

この車にすべてがある・・・・・・smooth riding car
OHC6CYL プリンス グロリア スーパー6

価格1,190,000円 価格は東海道地区統一現金正価、他地区は運賃諸掛り別途申し受けます。
プリンス自動車販売株式会社 プリンス自動車工業株式会社



1963年6月、プリンス自動車はフラッグシップ・モデルであるグロリアに
新開発の6気筒OHCエンジン「G7」を搭載した最高級車「スーパー6」を投入しました。
国産初となる6気筒OHCエンジンはクラス最高出力となる105馬力を発生、リッターあたりの
出力は52.5馬力と国産最高出力を誇りました。

最高速は155km/hという驚異的な数字を示し、外国車に見劣りしない性能を実現した
はじめての国産車でありました。
ちなみに《乗用車のプレジデント》とのコピーがありますが、日産から「プレジデント」が
発売されるのはこれより2年後となります。

今回はモーターファン1963年9月号に掲載された新型車「プリンス・グロリア・スーパー6」の
6気筒OHCエンジンに重点を置いたレポートを見て頂こうと思います。
基本的に当時の空気を味わって頂ければと思い、多少読みづらいですが原文ママとし
一部にのみ注意書きを追加しておきました。

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プリンス・グロリア・スーパー6

説明:星島 浩

6気筒エンジンの構想は、既に昨年の自動車ショウで発表されている。
発表されたものは2.5ℓ級であり、この6気筒エンジンでプリンスが大型乗用車部門に
進出するものと一般に考えられていた。
(※注:プリンスは1959年に国産初となる3ナンバー車の初代グロリアBLSIPを発売していますが
法改正に伴い1963年当時は5ナンバーに変更されていました。)
ところが、今度発売された6気筒エンジンは、構造的には自動車ショウで発表されたものと同タイプ
6気筒OHCではあるが、排気量が2000ccである点が、われわれを少なからず驚かせたわけである。

4気筒グロリア・デラックスは発売以来、非常に好調で、当初はセドリックやクラウンを
凌ぐ勢いであった。
現在ももちろん好調を持続してはいるが、ようやくクラウンやセドリックも市場に大きな勢いを
もつに至って、いわゆるデザイン受けして売れていたグロリア・デラックスに、6気筒オーバーヘッド・
カムシャフトという高性能エンジンを積むことによって、更に競争車を引き離そうという----
そのタイミングがまた絶妙であった。

このエンジンが画期的と呼ばれる所以は、2000cc級を6気筒にしたことと、オーバーヘッド・
カムシャフト機構を採用したことの2点にしぼられる。
従来の4気筒エンジンでは宿命とされていた機械的なアンバランスが、少なくなること、
爆発間隔が短いためにトルクの変動が非常に少なく、従って振動も少なく静かで、
低速から高速まできわめてフレキシブルな性能を示すことは、6気筒にすれば1気筒当りの
容積が小さくなるのだから、当然である。

しかも、ドライバーの意のままにエンジン回転が追従する敏感なアクセル・レスポンスも
充分にたのしめる筈である。

だいたい、メーカーが新しいなにかを作ろうという場合従来あったものをなんとか活用
しようとするのは、生産性やコストを考えれば、当たり前のことであろう。
例をあげて恐縮だが、セドリック・スペシャルの6気筒エンジンを見ればよくわかることである。
6気筒エンジンのボア・ストロークは4気筒のものと全く同じで、バルブ機構にしてもカムシャフトが
異なる他は殆どの部品が共通である。

もちろん、クランクシャフトをはじめ新たな部品も多いのだが、基本的
には4つの気筒に2つをつぎ足して6気筒にしたものと云える。逆に、ボディは他の
セドリック・シリーズとは全く異なる寸法を持っているのだが・・・・・・。

プリンス・スーパー・シックスではセドリック・スペシャルの場合とは全く逆に、グロリア・デラックス
と異なるのはエンジンだけと云える。
(※注:専用のリヤ・ガーニッシュやモールドの異なるベルトラインなどの差異はあります。)
ボア・ストロークの取り方も4気筒が84×84のスケア(※注:スクエア)エンジンなら、
6気筒エンジンも75×75のスケア・エンジンで共通部品は全くない。

バルブ機構もプッシュロッドを用いたオーバー・ヘッドバルブ形式から、
オーバーヘッド・カムシャフト方式に改められている。
オーバーヘッド・カムシャフト方式には2種類あって、ホンダ・スポーツのエンジンに
見られるように、吸・排気弁のそれぞれに一本ずつのカムシャフトをもつ方式を
ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト(DOHC)、プリンス・スーパー・6は一本の
カムシャフトで吸排気両方のバルブを作動させるシングル・オーバーヘッド・カムシャフト
(SOHC)を採っている。

OHC方式は回転の速い、高性能エンジンの場合当然採用されるべきもので、
スポーツレーサーにこの方式のエンジンが多い。

従来のシリンダ・ブロック側面に配置したカムから、リフター、プッシュ・ロッド、ロッカ・アームを介して
バルブの開閉作動をするOHV方式と異なり、OHCではロッカー室内のカムが直接ロッカ・アーム
を介してバルブの開閉を行うので往復運動部分のマスが少なく、高回転時のバルブの動きは
スムーズで確実・安定した性能を得ることができるわけである。
圧縮比も8.5から8.8に上げられており、排気量もわずかに増えて(1862cc→1988cc)
エンジン性能は最高出力が105ps/5200rpm(94ps/4800rpm)、最大出力は16Kgm/3600rpm(15.6/3600)と向上している。

エンジン内容を順を追って、もう少し詳しく述べてみると、ピストンはアルミ合金製、圧縮比を上げる
ためと見られる浅いドーム状のピストンクラウンを持ち、バルブとの干渉をさけるため一部に切欠き
が作られている。
ピストン・リングは3本。クランクシャフトは炭素鋼製で6個のクランクピンに対して各々
バランスウェイトを持ち更にクランクピンの間のアーム部にはウェイトをつけて重量配分と
ダイナミック・バランスの調整がなされている。

4メインベアリング支持。クランクシャフトの前端にはVベルト用プーリーがあるが、
ここに鋳鉄製のダンパーを結合してクランクシャフトにかかる捩り振動応力を軽減させる
目的を達している。
これでシャフトの強度の安全性を高め、ミッションへの伝達トルク変動を少なくしたほか、
エンジン振動や車体振動、騒音低下に著しい効果を得たという。
コンロッドは炭素鋼H断面、ケルメット・ベアリングを使用している。

シリンダはブロックに特殊鋳鉄シリンダを圧入した所謂ウェットライナ式で冷却は有利だろう。
シリンダヘッドはアルミ合金製で、燃焼室はバスタブ式(湯舟型)、傾斜したバルブ配列とピストン
頂部の球形とで効率のよい燃焼室を形成してりう。
シリンダヘッドに結合されたインテークマニフォルドは各気筒分離式で、バナナ状をなし、
ラムインダクション効果を持っている。

ラムインダクション効果は吸入気の脈動による慣性力を利用して混合気をシリンダ内に圧入する
一種のスーパーチャージ効果である。
2連式キャブレタとの併用によって、スロットル全開とともに瞬間的に強い力を発生する
アクセルレスポンスは、このエンジンの大きな魅力だろう。
2バレルダウンドラフトの気化器には寒冷地の始動や始動直後のエンスト防止などに効果のある
自動チョーク装置が付けられている。
(※注:ここでの2連式キャブレタとは2バレル・2ステージのシングルキャブを指します)

クランク軸の回転は一先ずドライブシャフトに伝えられ1/2回転にされ、更に頭上のカムシャフトに
伝えられる。

駆動はいずれもダブル・ローラ・チェインでそれぞれにテンショナがつけられている。
エンジン性能を左右する大きな要素であるバルブタイミングは排気弁の開くのが下死点前54度、
閉じるのが上死点後16度、吸気弁は上死点前24度に開き、下死点後46度で閉じられる。
圧縮圧力250rpmで11.3kg/㎠とかなり高いため、スパーク能力の低下と多気筒高速エンジン
なるが故の短い点火間隔でブレーカの閉じられる時間が短くなることが予想されるが、この
エンジンではイグニッション・コイルケースの外側に特殊な抵抗器を装備し、ディストリビューター内
には2組のコンタクトブレーカを組み込むことによって解決している。

なお、ラジオやTVに与える電波障害を防止するノイズサプレッサ付きである。

潤滑はフルフロー式、オイルは5リッタと容量が大きく、特にシリンダヘッド部分にはかなり多量の
オイルを圧送して潤滑だけでなく冷却効果を狙っている。
サイドフロー型ラジエータによる冷却水容量は11.4/ℓである。

トルク曲線は1800rpmから4900rpmの間において15~16kgmの高いトルクを示し、
フレキシブルでねばり強いエンジンであることがわかる。
最高出力105ps(5200rpm)は国産小型乗用車ではもちろん最も高いものである。
馬力当りの重量は従って12.55kg/psとなり、グロリア・デラックスの13.8kg/psにくらべると
加速性能はかなりよいデータが期待できる。

近く、モーターファン・ロードテストも行われるが、メーカーでは0-200で13.2秒、
0-400は20.8秒で車速110km/hに達し、30km/hから50km/hまで5秒、60km/hまで7.7秒の
追い越し加速を持つとい云う。

クラッチは油圧操作の乾燥単板式、トランスミッションは前進3段・後退1段・オーバードライブ付きで、
後退ギヤがスパー摺動式のほかは常時噛合フルシンクロである。
ギヤ比はグロリア・デラックスと全く同じ一速2.980 二速1.618 三速1.000 後退3.273で
ミッションケースもデラックスと同一である。

たゞリヤカバー内のオーバードライブ機構だけギヤレシオが0.777と大きくbなっている。
デラックスのオーバードライブは0.713のギヤ比を持っていたわけだが、これによって、比較的
高速時の(おそらく50km/h以上だろうが)加速性能が更に向上する筈である。
センターベアリングを持つ2分割のプロペラシャフトや、リヤアクスル・ファイナルドライブ関係
も殆どそのまゞであり、ファイナルドライブ・ギヤレシオも4.875とデラックスそのまゞを使用している。

たしかに、エンジンの馬力は94psから105psにあがっているが、トルクは同じ回転数で
15.6kgmから16kgm/3600rpmとわずかに向上しただけである------
おそらく、トルクが殆ど同じであることからトランスミッションやファイナルギヤレシオに手なおしが
なされなかったのだろうと思う。
逆にオーバードライブのギヤ比が大きくなっているところを見てもむしろ、この車の加速性能
をよくすることに設計の主眼がおかれたと見ることができる。

これで、オーバードライブ時における燃費性能はデラックスより悪くなっている
に違いないのだが、高級車に乗るユーザーにとっては、少々の燃費などは問題としないで、加速の
たのしみの方がはるかに大きいのかも知れない。
ハイウェイ時代もやって来たことだし、
スポーツ・カー的なエンジンを搭載した車でもある、これならば外車にも充分太刀うち
できると思われる。

スカイライン当時からのドディオンアクスルもグロリアでようやく完成された感がある。
ファイナルドライブ・ハウジングのマウント方式の変更や、ドライブシャフトのボールスプライン、
無調整式のデファレンシャル等が信頼性を増している。

従来のスカイライン系ではデフマウントは4点支持であった。
スーパー6では2点でハウジングを支持し、ハウジングの横ゆれやトルクのアクション
によるショックに対しては、2本のトルクロッドで前後方向を、一本のストラットバーによって横方向を
規制することによって、ボディに対する防音防振対策は確実になったと云われている。
(※注:ALSI系スカイラインのド・ディオン・アクスルは騒音や振動によるクレームが多かった)

フロントやリヤサスペンションなどの車体関係や、豪華な室内諸装備などもデラックスと変わりは
ないようである。
グロリア・デラックスが発表されたときに、かなりエンジン・ルームに余裕があるなと感じたのだが、
今にして思えば、ここに6気筒エンジンを搭載する意図がかなり前からあったようである。

この車でスズカの日本グランプリに出場してもらいたかった考えるのは
果たして筆者だけだろうか。

【欄外】スタイリング・デザインがユーザーの人気の的であることは当誌の調査でも明らかで
あるが、1mもあるレッグルームや140mm前後に移動できるフロントシート、エアコンデイショナ、
指示警戒速度を越えるとブザーと赤ランプのつく調整器、プリント配線の集中メーター、微妙な
踏加減をそのまま伝えるゴムヒンジのアクセルペダルなど、室内諸装備も最高級車に値する。

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さて、如何だったでしょうか。
頁数にするとわずかなものですが、書き起こすのはさすがに骨でした。

S4グロリアは本文中にもある通り、1962年9月のデビューからしばらくの間は大変好評で
企業規模・ディーラーネットワーク・広告費で大きく上回るトヨタ・ニッサンの対抗車種を
凌ぐほどの販売台数を記録しました。

しかし1963年5月の第一回日本グランプリでレギュレーションを遵守したプリンス勢は惨敗、
高性能・高出力を謳っていただけに影響は大きく販売成績は急落しました。
その後に発売された6気筒エンジン搭載のスーパー6は上記の通り、専門誌の評価が
高いにも関わらず一般イメージの悪化に影響を受けて販売が伸び悩みました。

しかしながら高速道路の開通、舗装道路の充実、アベレージ・スピードの上昇、輸入自由化に
よる外国車との競合などすぐ目の前に迫っていた障壁を乗り越えるためにはエンジンの高性能化
は緊急にして必須の要件でした。
トヨタもニッサンも次のフルモデルチェンジ(1967年)に6気筒エンジンの搭載を予定していましたが
予想を上回る早さでのプリンス新鋭6気筒の登場によって予定変更せざるを得なくなりました。

そしてプリンスよりも2年も遅れてトヨタ・ニッサンの2大メーカーが6気筒をリリースしました。
以後、国産高級車においては長きに渡って6気筒エンジンが君臨し続けました。
まさにすべてのはじまりは1963年6月に誕生したプリンス・G7エンジンだったのです。

残念ながらG7は1969年には生産終了となり、プリンス6気筒OHCの火は潰えました。
しかしながらスカイラインGTの心臓としてサーキットで鍛えられたG7はヘミ・ヘッドや
クロスフロー吸排気などのレーシングエンジンの技術を受け入れるキャパシティと発展性を
備えていました。

もしプリンスが独自性を保って6気筒エンジンを進化させていたならば、まさにそれは
「東洋のBMW」「日本のシルキーシックス」として世界にその名を轟かせていたことでしょう。
Posted at 2011/05/31 22:51:50 | コメント(7) | トラックバック(0) | S4系グロリア(2代目) | クルマ

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