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2012年02月27日 イイね!

其の瑞鶴は千代に麗し ~プリンス・グロリア(S6系)の生涯~ --②--

本項は「 其の瑞鶴は千代に麗し ~プリンス・グロリア(S6系)の生涯~ --①-- 」の続編です。

なお本ブログでは、日産自動車の経営陣及び経営方針を批判することはあっても
日産車及びユーザーを非難する意図は無いことを明示しておきます。

-◆S6系グロリア 年次毎の変遷--

-●1967年4月15日(フルモデル・チェンジ)--

発売されたのは2ボディ(4ドア・セダン/5ドア・バン)/基幹3グレード/5車種であった。

4ドア・セダン
グロリア・スーパーデラックス(PA30-QM)
グロリア・スーパー6(PA30-D)
グロリア(A30-S)

5ドア・バン
グロリア・バンデラックス(VPA30)
グロリア・バン(VA30)

上:グロリア・スーパー6(PA30-D) 下:グロリア・スーパーデラックス(PA30-QM)


上:グロリア(A30-S) 下:グロリア・バン(VA30)


1960年代前半は、最大手のトヨタでさえ乗用車は3車種(パブリカ・コロナ・クラウン)のみであり
各メーカーともにラインナップの過半数は商用車(乗用派生のバン/ピックアップを含む)であった。

プリンスも、乗用車はグロリア・スカイラインの2車種のみの編成であり、多数のグレードや
ボディ・バリエーションを用意することによって、市場の多様なニーズに応える形をとっていた。

S4系グロリアは4ドア・セダン、5ドア・バン/5ドア・ワゴンを基本に
デラックス・スーパー6・スペシャル・6ワゴン・グランドグロリア・グロリア6・6エステートという
7グレードに及ぶ豊富なバリエーションを展開し、S5系スカイラインと共にプリンスの主力を担った。

しかし、S6系では日産との合併に伴いバリエーションの縮小を余儀なくされた。

グランド・グロリアの後継たる3ナンバー大型車は、1965年に登場したばかりの
プレジデントとの競合を望まない日産側の思惑によって廃止された。

市場が小さく、販売台数も僅かであった6エステートの後継たる5ナンバー乗用ワゴンも
セドリックの乗用ワゴンに販売を集約すべく、消滅の憂き目にあった。

6気筒エンジンを搭載する廉価車種のグロリア6も消滅し、廉価車種は日産製4気筒に絞られた。

これらはいずれも、クラスがバッティングする日産側のプレジデント/セドリックに対する
「配慮」という、政治的な意向によって消滅の憂き目にあったモデル達であった。

車種の削減は「傍流」のプリンス車と「嫡流」たる日産車の競合を避ける為という
内向きの理論で決定されたものであり、日産は合併による効果を発揮することよりも
プリンスを「経営の足枷」と捉える過剰なコスト削減、「身内潰し」に躍起になるばかりであった。

國内第3位メーカーたるプリンスを吸収したことにより、一時的には日本最大規模の
自動車メーカーとなった日産であったが、プリンスの優れた技術や製品を生かして
業界第1位のトヨタに対抗することよりも、自らよりも優れたプリンスを否定することに奔走し
結果的に合併効果は水泡に帰した。

対するトヨタは1966年に日野、1967年にダイハツと相次いで提携した。

トヨタは2社を吸収することなく、それぞれの独自性を保ったまま
ダイハツは軽自動車・小型商用車、日野は大型トラック・バスに特化させたことで
「分業」を実現、トヨタ自身は得手とする乗用車に注力することが可能となった。

3社それぞれの得意分野に特化することにより、トヨタ・グループは盤石な体制を確立し
遂には世界最大の自動車メーカーの地位に到達した。
軽・商用車のコニー、高級車・スポーツカーのプリンスを相次いで傘下に収めながら
その資産を徒に磨り潰すばかりの日産とは対照的であった。

「販売のトヨタ」「技術のニッサン」などと云われた、トヨタと日産の”差”は
表面的な車種や販売手法などが原因では無く、根源的な企業体質に起因するものであった。

日本第2位メーカーが外資の軍門に下るという1999年の屈辱は
1966年の時点で既に、静かに始まっていた「緩慢な自殺」とさえ云えるものであった。

歴史に「if」は無いが、もしプリンスが独自性を保ち存続したのならば
キャディラックやリンカーン、メルセデス・ベンツやロールスロイスと伍する高級車が、
あるいはフェラーリやポルシェと覇を競うスーパースポーツが日本から生まれていたことだろう。

レクサスより20年も早く、世界で認められる日本の高級車が、
高性能車が有り得たかもしれないのだ。

その損失は、あまりにも大きい。

-●グロリア・スーパーデラックス(PA30-QM)の概要--

”端麗でフォーマルな装い、豪華な室内。グロリア・スーパー・デラックス、プリンスの最新鋭です”


PA30-QMはS6系の最上級車種にして、S4系のスーパー6(S41D)に相当するグレードである。

価格は111万円と豪華装備に見合った高額なものであったが、プリンス車の顧客は
富裕層の割合が高かったこともあり、販売の主力はこのPA30-QMであった。
(なお当時はコカ・コーラが35円、バスの一ヵ月定期券が630円程度という物価であった。)

S41Dが比較的フォーマルな性格であったのに対し、PA30-QMは
かなりパーソナルな性格付けとなっている。
従来のフォーマルなポジションは、スーパー6(PA30-D)が受け持つことになった。

S40Dが登場した1962年頃は、フルサイズ・クラスのユーザーの殆どが運転手付の
公用車や社用車などで占められていたが、高度成長に伴い自らステアリングを握る
富裕層が増加したことにあわせて、パーソナル・ユース需要を切り拓くべく
オーナー・ドリブンの性格付けが強調されたのであった。

日本の自動車生産台数は、高度経済成長の波の乗って1960年中頃から急速に増加し始めた。
そして1968年には、遂にアメリカに次ぐ世界第2位の自動車生産國の地位に到達したのであった。

これは同時に、上級志向に伴う個人所有の高級車需要の増加をも意味していた。
1967年4月に登場したPA30-QMは、その潮流を確実に捉えたモデルであった。

元来プリンス車はダイナミックなテールフィン、煌びやかなクローム、
鮮やかなメタリックのカラーなどによって豪奢な印象を持ち
やや地味な競合他車に比して、多分にパーソナルな米車的魅力を湛えていた。

そういったことからも、職業柄保守的にならざるを得ない法人オーナーよりも
派手好きな個人オーナーの割合が多かった。

PA30-QMのカタログ・カラーは、ノーブルな雰囲気を湛えるホワイトであった。
競合する3代目クラウン(50系)は、個人需要を狙い「白いクラウン」のキャッチコピーを掲げ
ホワイトのイメージ・カラーを強く打ち出したが、それはグロリアに遅れること半年後であった。

当時、クラウンやセドリックは黒やグレー、ブラウンといったカラーの比率が高かったが
ホワイトの明るいカラーで「公用車」的なイメージを払拭しようという意図があった。

しかしプリンス車はライトブルー・メタリックやシャンパン・ゴールド、カッパーブラウンなど
派手なメタリック塗色が人気で、競合他車とは一線を画す文字通り「異色の存在」であった。

「白いクラウン」は、個人ユーザーの取込みを意図して創られたキャッチ・コピーであったが
グロリアは、生粋の”パーソナル・ラクシュリー・カー”であった。

オーナー・ドリブンたるPA30-QM、その性格が最も顕著に表れているのが前席である。

当時一般的であった前後3人掛ベンチシートを採用せず、前席は
リクライニング機構付セパレート・シートとし、座席の間にはアーム・レストを兼ねた
大型センターコンソール・ボックスを配し、前席2座/後席3座の5名乗車としている。

これは乗車定員を稼ぐよりも、ゆったりとした居住性を実現することが狙いであった。

ホワイトで統一された内装は、明るく清潔な雰囲気を湛える


インストゥルメント・パネルは良く整頓された集中配置方式で、明快かつ合理的な
レイアウトによって、はじめての運転でも迷うことなく操作することが可能であった。

4つの警告灯(オイル・充電・駐車ブレーキ・速度超過)は、メーター・ユニット下側の
見易い場所に、デザインの一体感を重視した形状で収められている。

コラム左手側にシフト・レバー、右手側にターンシグナル・レバーとライト・コンビネーション・レバー
が配置されており、扱い易く操作ミスが起こりにくい完成された方式が引き続き採用された。

両端には、フェイス・レベルに走行風を導入するセカンダリー・ベンチレーターが備わる。
三角窓や足元に備わるサイド・ベンチレーターによって、走行風だけでも
充分な快適性を確保することが可能であった。

後方にはリヤ・ドラフター(エア・アウトレット)が備わるので、澱んだ空気の滞留がなく
煙草の煙による不快感や、湿度の高い雨天時の窓の曇りを防ぐことが出来た。
リヤ・ウィンドウには窓の曇りを防ぐリヤ・デフロスターと、後席用スピーカーが備わる。

グローブ・ボックスは大型で、照明とコンセントが完備されている上に
グラス溝付のリッドを開くと、テーブルとしても使える優れものであった。

人間工学に基づいて設計された、ホールド性の高いバケット式セパレート・シートは
柔らかなフォーム材クッションで成型されている。

大型車並みの前後シート・スライドと、微調整機能付のリクライニング機構を
備えるシートは、合理的な集中配置のインストゥルメント・パネルと相俟って
如何なる身長/体型のドライバーであっても、ベストなポジションを得ることが可能であった。

ボルグ・ワーナーAT搭載車のインストゥルメント・パネル、コラム上のATインジケーターに注目


大型メーター・ユニットには、速度計・積算距離計・区間距離計・燃料計・冷却水温度計・
方向指示器表示灯・主灯表示灯が組み込まれており、
曇天やトンネル内での走行時に威力を発揮する、照度調整機能も備わっていた。
ブザーとランプで注意を促す速度警告灯は、任意の速度で作動するように設定できた。

高感度ラジオには、プッシュ・ボタン以外にもシーソー式オートチューナー・スイッチが備わる。
グロリア専用エア・コンディショナーは非常にコンパクトで、インストゥルメント・パネルの下に
スッキリと違和感なく収まるよう、設計とデザインが施されていた。

”運転席は体にピタッとなじむパーソナル・シート”


前席アームレストは大型コンソール・ボックスとなっており、白手袋や煙草など
運転中の手廻り品の収納に便利であった。

前席の間に納まる、大型センターコンソール・ボックス


背面には後席用のラジオ・チューナー、シガーライター、ヒーターファン・コントロール、灰皿が
備わっており、ラクシュリー・4ドア・セダンの名に相応しい充実した装備となっていた。

なお、このセンターコンソール・ボックスは130セドリックにも用いられた。

安全対策のひとつとして、國産初となる組込式ヘッドレストが採用された。
ヘッドレストは前後席に4つ用意され、高さは任意で調節することが可能であった。

法規制に先駆けた先進的安全装備であると共に、格納しておけば
後方視界の妨げならないという優れた機構であった。

クローム仕上げのインサイド・ドアハンドルやウィンドウ・クランクハンドルは
微妙に形状が違うものの、S4系と共通のデザインとされた。
各種スイッチ・ノブ類は、S44P用の重厚なアルミ削り出し品を引き継いで採用した。

ドア内張りの上側には、細長いクロームのパネルが飾られた。
ドア内張り下側は黒の布張りとして、安定感を演出している。
足元には、地図や手廻り品を納めることの出来るポケットが設けられた。

グレアープルーフ・バックビュー・ミラーの防眩用昼夜切換ツマミは
S4系の前後方向から回転式の操作に改められた。
先端の尖ったステーもS4系と共通のデザインであった。

リビング・ソファのような後席にはアーム・レストが設けられ、読書灯、長大なレッグ・スペース、
リヤ・トレーに配されたスピーカーやデフロスターによって、極めて快適な空間が創りだされた。

ただし、最上級グレードで6人乗りが選択出来ないのは不評であったらしく
1968年10月の最初のマイナーチェンジの際に、セミ・セパレート仕様の6人乗りが追加された。

ボルグ・ワーナーAT車のエンジン・ルーム、左手前にはAT用のオイル・クーラーが確認できる


日本の技術水準を3年リードしている、とカタログに謳われたG7型・直列6気筒OHCエンジンに
機微なるセッティングを可能とする4バレル・キャブレターを組み合わせ
最高速度160km/hの連続高速走行を可能とすると共に、徹底した遮音対策や
振動軽減策によって、比類なき静粛性・快適性を実現した。

エア・クリーナーは新設計の薄型で、全高を抑えると共にブローバイ・ガス対策も施された。
ブロアー・ファンはS4系のバルクヘッド側から、左フェンダー側に移設された。
これは、モーターの騒音を出来る限り車内に侵入させないようにという配慮からである。

バルクヘッドの運転席側には、パワー・ブレーキ付のタンデム・マスターシリンダーが確認できる。
AT車なのでクラッチ・マスターシリンダーが備わらない点にも注意。

イグニッション・コイルの位置が変更されるなど、S4系に搭載されたG7型エンジンとは
搭載方法やレイアウト、エンジン自体の外観がかなり変更されている。

ウィンドウ・ウォッシャー・タンクは、モーター・ユニットを組み込んだS4系のボックス型から
日産製の廉価なバッグ型に変更された。

アクティブ・セーフティ/パッシブ・セーフティの両面から徹底して追求した安全性や
イージー・ドライブ、メンテナンス・フリーの為の新機構が惜しみなく投入された。

新設計のディスク・ブレーキがフロントに標準装備となり、制動力が大きく向上した。

軽い踏力で確実に作動するパワー・ブレーキ(油圧真空倍力装置)、万一の際にも制動力を
全喪失する危険のない交差配管方式、大容量のタンデム・マスターシリンダーの採用など
2重3重の安全機構が採用されている。

プリンスでは、1965年2月に登場したスカイライン2000GTに初めてディスク・ブレーキを採用。
続く1965年12月にはS44P-2型に標準装備、S41D-2型にオプション設定するなど
その高速性能に見合った制動力を得るべく積極的に採用を進めていた。

一般走行とは比較にならない程の高熱に晒されるレース・シーンでの技術の蓄積もあり
当時國産車では普及していなかったディスク・ブレーキに関して他社を大きくリードしていた。

フロント・グリルは亜鉛ダイキャスト製で、クローム仕上げの煌びやかなものであった。
グリル・パターンは繊細な造形の星型で、中央に十文字を配した水平のラインによって
特徴的な縦目4灯ヘッドライトとの均整を図っている。

プリンスのアイコンたる十字を彫り込んだ、クローム仕上げの眩い輝きを放つ無数の星


特徴的なグリル・パターンはフォークを模したとも云われているが、1959年型フォードの
強い影響が感じられるデザインとなっている。
S6系に限らず、歴代プリンス車のデザインはフォードの影響が大である。

特徴的なフロント・グリルを持つ1959年型フォード


グリルの下にはS4/5系と同じくスリットを設け、ターンシグナル・レンズはスリットの両端に配した。
乳白色のレンズを採用することによって、フロント・エンド全体の一体感を演出している。

スリットには本来、S44Pと同じように「 P R I N C E 」の文字が入る予定であり
ボンネット・マスコットも「 P 」のイニシャルが入る予定であったが、日産からの圧力によって
車名の変更を余儀なくされ、菱形のオーナメントに置き換えざるを得なかった。
ボンネット・マスコットも「 N 」の文字に換えられた。

輝かしき血統を誇るプリンスの高級乗用車には相応しくない「 N 」のエンブレム


なお、皇室御料車プリンス・ロイヤルのボンネット・マスコットには「 P 」のイニシャルが入る


前期型は「 P 」、後期型は「 N 」というのは誤りで、いずれも「 N 」である。
「 P 」のエンブレムが備わるのは、取扱説明書などに掲載されている
市販されることのなかった極初期の生産車(増加試作車)のみである。

合併はS6系の発売直前であり、既に試作車も完成しており
プリンス側ではカタログ撮影まで済ませていたが、これらもすべて破棄することを強要された。
取扱説明書に掲載されている車輛は、車名変更前の正真正銘の「プリンス・グロリア」である。

合併の際には、プリンス側の石橋会長の強い要望により
「プリンスの車名を永久に残し、その発展を図ること」
「両社の従業員の融和を図り、差別しないこと」
という文言が盛り込まれたが、日産社長の川又はそれらを悉く反故にし
プリンスの社名/車名を次々と廃止・消滅させた。

日産側労組の塩路は、傷害事件を起こしてまでもプリンス側の労組を徹底し弾圧。
(ただしプリンスの労組は総評左派の全金系であった点に留意)
日産自動車女子若年定年制事件などに繋がった、プリンス出身者への様々な差別を行った。

今や日産の一番のブランドが、プリンスの「スカイライン」というのは、なんと皮肉なことであろうか。

トヨタがダイハツと提携し、軽自動車部門で成功を収めたのに対し
傘下に収めたコニーを生かすことなく廃止、今更になって三菱やスズキからのOEMで軽自動車を
販売し、しかもそれが屋台骨となっているという現在の惨状を見ても
日産経営陣が如何に先見の明に欠けていたかがわかるというものであろう。

リヤ・グリル(リヤ・ガーニッシュ)は、リブの刻まれた細長いものが装着されている。
フロント・グリルと同じく、グレード毎にパターンが差別化されているのが特徴である。

PA30-QM(1型)のリヤビュー、ウィールキャップは2型用を装着している点に注意


リヤ・グリルには、後退灯とスライドカバー付キーホールがスマートに組み込まれている。
リヤ・グリル上側には「 N I S S A N 」のエンブレムが配置されている。
トランク・フードに備わる鶴のエンブレムは(1型では)PA30-QMのみの装備となる。

リヤ・バンパー下側には繊細な曲線を描くバランス・パネルが備わり、後姿を引き締めている。
ワイド感を強調する縦型テールレンズの頂点にはクリアランス・ソナーが備わり
夜間の運転や車輌感覚の把握に絶大な効果を発揮した。

彫刻的なスリットやプレスが特徴の、PA30-QM及びPA30-D(1型)用のウィール・キャップ


Cピラーを飾る鶴のエンブレムには、合併によってモデル廃止の危機に直面したグロリアに対する
「鶴のように長寿であれ」という、プリンス陣営の強い想いが込められたものであった。

Cピラーを飾る印象的な鶴のオーナメント(3型用)


2型まではPA30-QMにのみ装着されていたが、1969年10月の年次変更以降は
換気孔が新設され、セダンの全グレードの備わるようになった。

”瑞鶴”という言葉にある通り、鶴は古来から目出度いものの象徴である。

エクステリア・カラーとインテリア・カラーはそれぞれ3色が設定され、内外装の
コーディネートを考慮した組み合わせが用意された。

 (外装色)          (内装色)
アイボリーミスト      ・・・ブラック
シーダーブルーメタリック ・・・ホワイト
ブラック           ・・・レッド/ホワイト

フォーマルなブラックの他に、美しいホワイトと瀟洒なブルーメタリックが
用意されていることがプリンスらしさを感じさせる。

グロリア・スーパーデラックス(PA30-QM)仕様

・寸法
全長:4690mm 全巾:1695mm 全高:1445mm WB:2690mm
トレッド:前 1385mm/後 1390mm 最低地上高:175mm
客室長:1830mm 客室巾:1420mm 客室高:1135mm

・重量
車輛重量:1295kg 車輌総重量:1625kg 乗車定員:5名

・性能
最高速度:160Km/h 登坂能力:40.8%(Sinθ) 最小回転半径:5.5m 
制動距離:13m(初速50km/h)

・エンジン
型式:G7 6気筒直列・OHC 内径×行程:75mm×75mm 総排気量:1988cc 圧縮比:8.8
最高出力:105PS/5200r.p.m 最大トルク:16.0m-kg/3600r.p.m キャブレター:下向通風4連
エアクリーナー:濾紙式 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 燃料タンク容量:50ℓ 

潤滑装置:全圧送式(フルフロー式) 冷却装置:強制循環式(ワックスペレット式)
バッテリー:12V-35AH ジェネレーター:12V-45A スターチングモーター:12V-1.4kw
クラッチ:乾燥単板式 トランスミッション:オールシンクロメッシュ式 3段+OD(オーバードライブ)
Low:2.957 2nd:1.572 Top:1.000 OD:0.785 Rev:2.922 減速機形式:ハイポイドギア式
減速比:4.875 
ステアリング形式:リサーキュレーティングボール式 歯車比:19.8

・走行装置
前車軸:独立懸架式 後車軸:半浮動式 タイヤ:6.95-14-4PR(ホワイトライン・チューブレス)

・ブレーキ装置
主ブレーキ:前 ディスク式/後 リーディングトレーリング式 油圧真空サーボ付独立2系統式
駐車ブレーキ:機械内拡 後2輪制動

・懸架装置
前輪:独立懸架ウイッシュボーンコイル式 線径16.5×中心径120×自由長352.5-有効巻数6.3
後輪:半楕円板バネ 長1442×巾70×厚6-枚数1/厚7-枚数1/厚6-枚数1
ショックアブソーバー:油圧複動式 スタビライザー:トーションバー式

価格:111万円

●グロリア・スーパー6(PA30)の概要

”こんなに運転し易い車がいままであったでしょうか”


パーソナル・ユースを狙ったスーパー・デラックスに対し、スーパー6は
ショーファー・ドリブンとしての性格付けをなされている。

カタログ・カラーもPA30-QMが清楚な雰囲気を湛えるホワイトなのに対し
PA30-Dは社会的責任や品格を表すブラックとなっている。

外観上の差異は前後グリル・パターンや、エンブレム程度に留まっており
ウィール・キャップも共通となっている。
これは、グレード毎の差を価格や装備によって付けるのではなく、需要に合わせた
性格によって差別化するという企図から来ている。

シャープな近代感覚と気品が調和したロイヤル・ライン


サイド・ビューからは、リヤ・フェンダーのエンブレム程度しか違いは確認できない。

最も大きな違いは乗車定員で、PA30-QMが前席セパレート・シートの乗車定員5名
なのに対して、PA30-Dは前後ベンチ・シートの乗車定員6名となっている。
ヘッドレスト組込式シートのPA30-QMに対し、PA30-Dはヘッドレストがオプションとされた。

ダイナミックなフォルムと、繊細なディティールが見事に調和したPA30-Dのフロント


フロントはヘッドライト・ベゼルと連続した太い水平のラインと、細い縦のラインを
中央に据え、細かな十字が隙間なく並んだパターンのグリルが装着されている。

アンテナは電動式で、視界を妨げないように左フェンダーに備わっている。

天地の広いリヤ・グリルに、美しいリブが整然と並ぶPA30-Dのリヤ・ビュー


フロント・グリルと同じように、リヤ・グリルにも専用の意匠が採用されており
PA30-QMのものよりも天地の幅が広く、隙間なくリブが刻まれている。

リヤのエンブレムは、リヤ・グリル内に収まる「Nissan」のみとなる。
スクエアで大型のトランクはスペア・タイヤを床下に収納、燃料タンクを背負い式とすることで
広大かつ使い易い空間を実現、6人分のゴルフ・バッグやキャリーケースを呑み込むことが出来た。

テール・ランプは大型のうえターン・シグナルを独立させ、レンズ自体にも
レクトアングル・カットを施して視認性の向上を追求した安全型であった。
クローム仕上げのテールライト・ベゼルには、テール・ライトの光を反射することによって
実際のレンズのサイズよりも一回り大きく見せる効果を持たせていた。

サイド・ウィンドウにはプリンス車初の曲面ガラスが採用され、室内空間に一層の余裕が生まれた。
張り出した四隅により車輌感覚が掴みやすく、スクエアなキャビンの巾一杯に広げられた
リヤ・ウィンドウは大きな後方視界を生み出し、開放的な室内と安全運転に寄与した。
ライセンス・プレートによって殆ど隠れてしまうプレート・ハウジングにもリブが刻まれている。

大型の計器盤は透過光方式の無反射タイプで、数字も読み取り易いので誤読の心配がなかった


前席の背面には後席用の各種アメニティ装備と、大判の地図なども収容できるポケットが備わる


スイッチ類はPA30-QM用のアルミ削り出しに対して、S4#Dと同じ一般的な樹脂製となる。
シート、ドア内張りのパターンはS41D-2と共通した色/模様の格子柄を採用している。

ワイパーはS4系の対向作動式から、より広範囲を払拭できる並列式に改められた。
強力なモーター・トルクによって、浮き上がりや拭き残しが減少した。
ウィンドウ・ウオッシャーはワイパー操作に連動する定量噴霧式が採用されている。

エンジンはPA30-QMと同じG7型で、2バレル・キャブレターが組み合わされるが
105PSという出力の表示に差はなかった。
PA30-QMと同じくサーボ付ディスク・ブレーキが備わるなど、機構的には大きな差異はない。

画期的な2年・6万kmに渡る長期無給油を実現し、イージー・ケアの充実を図った


数値や外観に表れない性能にも対しても、プリンス技術陣は妥協なき追求を挑んだ。

乗り易さというものを運転のし易さに留まらず、日常の点検・保守の容易さや
長期に渡る高い品質の維持という領域にまで踏み込んだ。

フル・ディッピングによる完全な防錆、最新鋭の設備によって行われるハイ・クオリティな塗装。
プリンスの推進してきたメンテナンス・フリーの更なる充実。
そして、ドアやトランクを開閉した際の音や手応えといった
数値では表しようのない”感性”という性能までを追い求めた車であった。

グロリア・スーパー6(PA30-D)仕様※PA30-QMとの差異を主に示す

・重量
車輛重量:1275kg 車輌総重量:1605kg 乗車定員:6名

・エンジン
型式:G7 6気筒直列・OHC 内径×行程:75mm×75mm 総排気量:1988cc 圧縮比:8.8
最高出力:105PS/5200r.p.m 最大トルク:16.0m-kg/3600r.p.m キャブレター:下向通風2連
エアクリーナー:濾紙式 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 燃料タンク容量:50ℓ 

・ブレーキ装置
主ブレーキ:前 ディスク式/後 リーディングトレーリング式 油圧真空サーボ付独立2系統式 
駐車ブレーキ:機械内拡 後2輪制動

価格:101万5千円

グロリア・スーパー6(PA30-D)仕様書


●グロリア(A30-S)の概要

”グロリアは魅力と実力を備えたエコノミック・カー プリンスの最新車”


グロリア(A30-S)は、S4系の廉価モデル「グロリア・スペシャル」(S40S)の後継モデルで
タクシーや営業車向けのフリート・ユース仕様車である。

S40Sは、4気筒エンジンを搭載したグロリア・デラックス(S40D-1)の内外装を簡素化した
モデルであったが、後継のA30-Sも概ね同じ構成となっている。

ただしエンジンはS40Sがプリンス自製のG2型OHV4気筒を搭載していたのに対し、A30-Sは
合併に伴う生産ラインの整理統合によって、日産製H20型4気筒OHVへの換装を余儀なくされた。
組み合わされるトランス・ミッションは、ODギヤの付かない3速コラム・マニュアルであった。

3速MTが組み合わされるのはS6系で唯一であり、同じH20型4気筒を搭載する
グロリア・バン(VA30)には、G7型6気筒車と同じOD付4速コラム・マニュアルが組み合わされた。
これによりVA30の最高速度は145km/hに達したが、ODギヤ無しの3速となる
A30-Sの最高速度は135km/hに留まり、S6系でもっとも低速のモデルとなった。

これは、A30-Sが混雑した市街地を低速で走行することの多いタクシーに求められる性能を
重視しており、3速MTの採用も頻繁なギヤ・チェンジを避け運転手の疲労を軽減する狙いがあった。

それに対し、貨物を迅速かつ遠方に運搬することが求められるバンのVA30には
高速巡航を考慮してOD付4速MTが組み合わされた。

ネーミング上の特徴として、「スタンダード」という名称が使われていないことが挙げられる。
車輛型式「A30-S」の”S”は”スタンダード”を示すものであるが
車名は単に「グロリア」となっている。

当時の廉価モデルは、「スタンダード」というグレード名が冠されることが一般的であったが
貧相なイメージの付き纏う「スタンダード」という響きが、國産最高級乗用車たるグロリアには
例え廉価モデルであっても相応しくないと判断された故と思われる。

先代のS4系に於いても、「スタンダード」というグレード名は設定されず、
スタンダード相当のグレードには「スペシャル」及び「6」というネーミングを冠している。

ただし、1968年10月以降はカタログ上の表記に控え目に「スタンダード」の文字が追加された。
1969年10月からは大きな文字で「グロリア・スタンダード」との車名に変更された。
これは販売上、営業車としての明快さを求められた結果だと思われる。

フロント・グリルのパターンは、ステンレスのメタルを打抜いて成型された細い格子状となっている。
繊細で美しい造形、眩いクロームの輝きは廉価モデルであるという引け目を一切感じさせない。

グリルとの一体感を重視して採用された、乳白色のターンシグナル・レンズの効果が見て取れる。


”日本の誇り”たる、富士山型の美しいプロポーション


小手先の装飾に頼らないS6系の堂々たるスタイリングは、シルエットそのものの完成度で
美しさを体現しており、廉価モデルにありがちな貧相さを微塵も感じさせない。

リヤ・ビューはシンプルで、リヤ・グリルは装着されず、左右に装着されたバックランプの間に
「 N I S S A N 」のエンブレムが備わるのみとなっている。

スクエアなキャビンや、リヤ・オーバーハングの長さが良くわかるリヤ・ビュー


リヤ・グリルをはじめ、ボンネット・マスコットやサイドシルのベルト・ライン 
ウィンドウ・サッシュなどのクロームの装飾は省略されている。

ただし、前後ガラスにウェザーストリップ・モールが奢られるなど
S40S/S41Sよりも豪華な仕上げとされている。

ウィールは、PA30-QM/PA30-Dより一回り小径となる13インチが採用された。
タイヤはS4系と同サイズの7.00-13-4Pだが、S40Sが黒タイヤだったのに対し
A30-Sではホワイト・リボンタイヤが奢られている。

PA30のフルカバー・キャップに対し、S4/S5系の廉価モデルと
共通のハーフ・キャップが組み合わされた。

エンブレムの装着位置は、PA30はリヤ・フェンダー後端、A30-Sはフロント・フェンダー後端となる。
これはS4/S5系から引き継がれたプリンスの基本レイアウトである。

シンプルなパターンのシート、時計/ラジオ・レスのフラットなインストゥルメント・パネル


内装も装飾が省かれ、装備も簡素化されている。
シートやドア内張りもシンプルなパターンとなっているが、色の濃淡によって
退屈にならないように工夫されている。
セカンダリー・ベンチレーター(フェイス・レベル通風口)は運転席側のみとなり
助手席側は孔に蓋がされている。

ラジオ、時計もオプション扱いとなり、空いたスペースにはカバーが装着された。
ラジオ用パワー・アンテナも備わらない為、スイッチの部分はカバーが装着されている。

インナー・バックビュー・ミラーも、防眩機構が省かれた薄型となっている。
三角窓の開閉もクランク・ハンドル式ではなく、一般的なノブ式となっている。
ヒーターもオプション扱いとなり、計器盤はあるが操作ノブが備わらない。

タクシーとしての過酷な運用に耐える為、リーフ・スプリングは4枚(PA30は3枚)に強化されている。

グロリア(A30-S)仕様

・寸法はPA30-QM/PA30-Dに等しい

・重量
車輛重量:1175kg 車輌総重量:1505kg 乗車定員:6名

・性能
最高速度:135Km/h 登坂能力:42.7%(Sinθ) 最小回転半径:5.5m 
制動距離:13m(初速50km/h)

・エンジン
型式:H20 水冷4気筒直列・OHV 内径×行程:87.2mm×83mm 総排気量:1982cc 
圧縮比:8.2
最高出力:92PS/4800r.p.m 最大トルク:16m-kg/3200r.p.m キャブレター:下向通風2連
エアクリーナー:ウレタン 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 燃料タンク容量:50ℓ 

潤滑装置:強制循環式(濾紙式) 冷却装置:水冷強制循環式(ペレット式)
バッテリー:12V-35AH ジェネレータ:12V-300W(交流式) スターチングモーター:12V-1kw
クラッチ:乾燥単板式 トランスミッション:オールシンクロメッシュ式 3段+OD(オーバードライブ)
Low:3.184 2nd:1.641 Top:1.000  Rev:2.922 減速機形式:ハイポイドギア式
減速比:4.444 
ステアリング形式:リサーキュレーティングボール式 歯車比:19.8

・走行装置
前車軸:独立懸架式 後車軸:半浮動式 タイヤ:7.00-13-4PR(ホワイトライン・チューブレス)

・ブレーキ装置
主ブレーキ:前 デュオサーボ式/後 リーディングトレーリング式  
駐車ブレーキ:機械内拡 後2輪制動

・懸架装置
前輪:独立懸架ウイッシュボーンコイル式 線径16×中心径120×自由長35.8-有効巻数6.95
後輪:半楕円板バネ 長1442×巾70×厚7-枚数3/厚5-枚数1
ショックアブソーバー:油圧複動式 スタビライザー:トーションバー式

価格:75万5千円

グロリア(A30-S)仕様書


グロリア(A30-S)の外観四面図


四隅が張り出し、車輛感覚の把握が容易であったグロリアは教習車としても多用された


●グロリア(A30-P)

営業車プレート(緑ナンバー)を掲げるタクシー仕様のA30-S


見ての通り、縦型4灯ヘッドライトは上側が擦違いビーム、下側が走行ビームとなっている。

A30-P(”P”はプロパンの意)は、A30-Sを経済的なLPG仕様とした
タクシー・ハイヤー向けのフリートユース・モデル。

搭載されるエンジンはLPG対応型のH20で、レギュラー・ガソリン仕様から
12PSダウンとなる80PSを発生するものであった。

A30-Pは、LPG仕様のH20にベイパーライザー・ソノレイドバルブ・フィルター・LPGホース・
バキュームホース・ウォーターホース・LPG配管・ボンベ・充填口・充填バルブ・取出バルブ
を追加している。

LPG車配管装置図


LPG仕様の核となるベイパーライザーは、日立製GR-120型を採用した。
キャブレターは専用のシングル・バレル仕様となっている。

これらの追加装備により、車輛重量はガソリン車に対し75kg増の1250kgとなっている。
車輛価格も4万5千円アップの80万円となっていた。

プリンスのLPGユニット開発は、ブリヂストン液化ガスと共同で行われた。

余談だが、ブリヂストンはプリンスを手放した後の1966年10月に
日本初となる家庭用LPガス「ブリヂストン純プロパン Pグロリア」を発売している。

ブリヂストンは1991年に提携先の三井物産に株式のすべてを譲渡し
液化ガス事業からは撤退したが、Pグロリア・ブランドは継続して販売され
現在も全国200万世帯で愛用されるロングセラーとなっている。

「Pグロリア」の”P”は”プロパン”の頭文字であるが、”プリンス・グロリア”とも読むことが出来る。

石橋会長は断腸の想いでプリンス合併を決断しており、車への愛着も強かったので
合併後の自社製品にも「スカイウェイ」「グロリア」と、プリンスを偲ぶ名称を与えている。

これは石橋会長の強い想いで盛り込まれた「プリンスの名を永久に残し、発展を図ること」という
契約内容を日産が反故にし、マイラー、クリッパー、ライトコーチと次々とプリンス車を
廃止したことに対する失望と落胆もあったのではないかと思われる。

●グロリア バン・デラックス(VPA30)の概要

”プリンスの総力が集まったグロリア・バン・デラックス。ビジネスとホリデーをスマートにします”


バン・デラックス(VPA30)は、グロリア6ワゴン(V43A)のポジションを引き継いだモデルである。
G7型OHC6気筒エンジン(圧縮比8.3/100ps仕様)にOD付4速コラム・マニュアルを組み合わせ
最高速150km/hという快速と比類なき静粛性、高速安定性を誇った。

S4系のバン/ワゴンには、4ナンバー貨物登録「グロリア6ワゴン(V43A)」と
5ナンバー乗用登録「グロリア6エステート(W41A)」の2車種が設定されていたが
S6系では5ナンバー乗用が廃止され、4ナンバー貨物登録のみに絞られた。

S4系ではバン/ワゴン共に6気筒のみの設定であったが、S6系では新たに
日産製4気筒搭載の廉価版がラインナップされた。

グロリア・バン・デラックスが正式名称だが、フロント・フェンダーにはSUPER6と対になる
「DELUXE6」というエンブレムが備わり、6気筒搭載車であることを誇示している。

輸出仕様の車名には、W41Aの名が引き継がれ「GLORIA Estste」とされた。

セダンの風格そのままの威風堂々たるフロント、グリルはPA30-QM用に交換されている


リヤ・ゲートは、S4系に採用された電動昇降式リヤ・ウィンドウと下ヒンジのゲートに代わり
國産中型バンとしては初となる、1枚跳ね上げ式が採用された。

この方式は小型バンであるS5系スカイウェイ・バン/スカイライン・エステート(1964年12月~)
から採用されたもので、リヤ・ウィンドウの開閉操作が不要かつ
雨天時には傘としても機能する優れた形式であった。

ゲートを保持するのは一般的なダンパーではなくトーション・バーで、軽い力で開くことが
出来る上に、油圧式と違い経年劣化によるヘタリもない優れた方式であった。

ステーション・ワゴンを乗用車やレジャー・カーとして使用するアメリカでは、ベンチとしても
機能する手前開き/横開きのリヤゲートが主流であり、黎明期の國産車もそれに倣ったが
1960年代後半以降、ワゴン/バンを専ら商用車、貨物車として運用する日本に於いては
ワンタッチで開く1枚跳ね上げ式が主流となっていった。

廃止された電動昇降式リヤ・ウィンドウに代わり、左側のサイド・ウィンドウが電動昇降式となった。
インストゥルメント・パネルの操作スイッチもしくはリヤ・フェンダーのキーホールから
操作することが可能で、リヤ・ゲートを開けるまでもない小さな荷物の積み下ろしに便利であった。

1968年9月には130セドリック・バンもこの方式を採用、以後Y30系バンまで続く特徴となった。

電動式サイド・ウィンドウは換気にも効果を発揮し、セカンダリー・ベンチレーターと
組み合わせることによって、室内の空気を常に新鮮に保つことが可能であった。

荷室はソフトなトリムで覆われ、積荷が傷んだり汚れたりしないように配慮されている。
”グロリア・ソフト”と形容された自慢の柔らかなサスペンションと相俟って
悪路走行でも積荷が痛むことが無かった。

数値上の荷室容積を追い求めるのではなく、実用的なレベルを確保しながら
ロイヤル・ラインを基本とした、スタイリッシュなスタイルを実現している。

セダンと同じように、スタイリッシュに傾斜したDピラーはカタログに於いて
「ファストバックを採り入れた後姿」と謳われたもので、長いルーフと相俟って
セダン以上にロング&ローを感じさせる視覚的効果を持つものであった。

テール・エンドもセダン同様にテール・フィン状に大きく張り出しており、ギリギリまで荷室を
拡大するのではなく、優雅な余裕と遊びを持たせたエレガントなプロポーションであった。

テール・フィンの張り出しには、リヤ・フェンダーにサイド・ウィンドウの昇降機構を収める事も
考慮されており、単なるデザインのみならず機能性も両立したものであった。

1型(1967年4月~1968年10月)はVPA30/VA30共にリヤ・グリルは装着されない。
リヤ・グリルはVPA30は2型から、VA30は3型から装着されることなった。

基本装備はPA30-Dと概ね同じとされ、高感度ラジオ、時計、強力ヒーターなどが
標準装備となっていたが、セカンダリー・ベンチレーターは運転席側のみとされるなど
PA30-Dと比してやや簡素化されている。
これはS41DとW41Aの構成と共通の傾向であった。
足元に走行風を導入するサイド・ベンチレーターは、運転席/助手席の両側に標準装備された。

プリンス自動車が特許を取得していたリヤ・シートのスライド・リクライニング機構は
廃止されてしまったが、こちらもプリンスの特許であったワン・アクションでの
リヤ・シート折畳み機構は引き続き採用された。
荷室に備わる保護棒は脱着が可能で、荷物の形状に合わせた積み方が可能だった。

エンジンの圧縮比はPA30-Dの8.8に対して8.3に下げられ、レギュラー・ガソリンに対応した。
最高出力も5psダウンの100ps仕様となり、ランニング・コストに
シビアな商用車らしい配慮がなされている。

グロリア バン・デラックス(VPA30)仕様

・寸法
全長:4690mm 全巾:1695mm 全高:1500mm WB:2690mm
トレッド:前 1385mm/後 1390mm 最低地上高:180mm
荷室長:3名 1855mm/6名 1085mm 荷室巾:1370mm 荷室高:835mm 
床面地上高:665mm

・重量
車輛重量:1365kg 車輌総重量:3名 1930kg/6名 1945kg 乗車定員:3名/6名
最大積載量:3名 400kg/6名 250kg

・性能
最高速度:150km/h 登坂能力:31.4%(Sinθ) 最小回転半径:5.5m 
制動距離:13m(初速50km/h)

・エンジン
型式:G7 6気筒直列・OHC 内径×行程:75mm×75mm 総排気量:1988cc 圧縮比:8.3
最高出力:100PS/5200r.p.m 最大トルク:15.4m-kg/3600r.p.m キャブレター:下向通風2連
エアクリーナー:濾紙式 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 燃料タンク容量:50ℓ 

スターチングモーター:12V-1kw

・走行装置
前車軸:独立懸架式 後車軸:半浮動式 タイヤ:6.00-13-6PR.LT(ライト・トラック)

・ブレーキ装置
主ブレーキ:前 デュオサーボ式/後 リーディングトレーリング式 
駐車ブレーキ:機械内拡 後2輪制動

・懸架装置
前輪:独立懸架ウイッシュボーンコイル式 線径16×中心径120×自由長347.7-有効巻数6.43
後輪:半楕円板バネ 長1442×巾70×厚7-枚数3/長713×巾70×厚13-枚数1
ショックアブソーバー:油圧複動式 スタビライザー:トーションバー式

価格:83万円

●グロリア・バン(VA30)の概要

”魅力と実力を備えたプリンスの経済車 グロリア・バン”


長いノーズ、長いルーフ、傾斜したリヤ・ゲート、大きく張り出したテール・エンドが実に
スタイリッシュであり、カタログには「このモダンな風貌が、荷を運ぶ車に見えますか」
という自信に満ちたヘッド・コピーが躍った。

S4系の6ワゴン(V43A)/6エステート(W41A)にはG7型OHC6気筒のみが搭載され、4気筒の
設定はなかったが、S6系では新たに日産製H20型OHV4気筒搭載の廉価モデルが新設された。

H20型エンジンや内外装は概ねA30-Sに準じている。

価格は74万円と、S6系のシリーズ中で最も安価なモデルとなった。
ラジオ・ヒーター・時計などは悉くオプショナル扱いとされている。
しかし、荷室のサイド・ウィンドウにはVPA30と同じ電動昇降式が奢られている。

セカンダリー・ベンチレーター(フェイス・レベル)は運転席側のみの装備となるが
サイド・ベンチレーター(足元)は助手席側にも標準で備わる。
セカンダリー・ベンチレーターは運転席側(右側)に備わるので、荷室のサイド・ウィンドウ(左側)と
組み合わせて使用することにより、車内の空気をスムーズに入れ替えることが可能であった。

ヒーターもオプションとされ、標準では計器盤はあるが操作ノブが備わらない。
ワイパーは低速/高速の2段式で、オートストップ機構が備わる。

価格的にはA30-S(75万5千円)よりも下回っているが、OD付4速ミッションにより
最高速は145km/hと(A30-Sは135km/h)性能面では上回っている。

これは、混雑した街中を低速で長時間走行するタクシーとしての性能を重視したA30-Sと
高速商用車として優れた巡航性能を重視したVA30という、性格の差から来たものであった。

ボディ・カラーはソリッドの3色が用意され、シンプルながら濃淡で
アクセントを付けた内装と組み合わされることにより、エレガントな雰囲気を演出していた。

”魅惑のリア・スタイルは便利さを秘めています”


リヤ・グリルの備わらないシンプルなリヤ・ゲート、荷室のサイド・ウィンドウに備わる
ディヴィジョン・バー(仕切り)が特徴的。

廉価モデルのVA30には、タンデム・マスターシリンダーやマスターバックは備わらない


6気筒エンジンを搭載することを前提としたエンジン・ルームに、全長の短い4気筒を搭載した為
クーリング・ファンのシュラウドが大型化されている。
この車輌はヒーター・レス車なので、ブロアーファンが装着されていない点にも注意。

H20型エンジンは、1963年登場のG7型に比して設計の古さが目立つものであった。

タイヤは貨物車なのでLT(ライト・トラック)タイヤ、6.00-13-6PRを採用。
A30-Sの7.00-13-4PRと比して、大きな荷重に耐えうるように考慮されている。

A30-S及びVA30には、縁にリブの刻まれた浅い円錐状のハーフ・キャップが備わる


グロリア・バン(VA30)仕様※VPA30との差異のみを示す

・重量
車輛重量:1280kg 車輌総重量:3名 1845kg/6名 1860kg 乗車定員:3名/6名
最大積載量:3名 400kg/6名 250kg

・性能
最高速度:145km/h 登坂能力:34.2%(Sinθ) 最小回転半径:5.5m 
制動距離:13m(初速50km/h)

・エンジン
型式:H20 水冷4気筒直列・OHV 内径×行程:87.2mm×83mm 総排気量:1982cc 
圧縮比:8.2:1
最高出力:92PS/4800r.p.m 最大トルク:16m-kg/3200r.p.m キャブレター:下向通風2連
エアクリーナー:ウレタン 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 燃料タンク容量:50ℓ 

潤滑装置:強制循環式(濾紙式) 冷却装置:水冷強制循環式(ペレット式)
ジェネレータ:12V-300W(交流式)
価格:74万円

本項は「 其の瑞鶴は千代に麗し ~プリンス・グロリア(S6系)の生涯~ --③-- 」に続く。
Posted at 2012/02/27 19:50:38 | コメント(17) | トラックバック(0) | S6系グロリア(タテグロ) | クルマ
2012年02月14日 イイね!

其の瑞鶴は千代に麗し ~プリンス・グロリア(S6系)の生涯~ --①--



1959年2月、皇太子殿下明仁親王(今上天皇陛下)の御成婚を祝し
”皇太子の栄光”の車名を奉りて、初代「プリンス・グロリア」は誕生した。

戦後初の3ナンバー大型車にして、皇室の慶事に供するに相応しい品格を備えたものであった。

金色に輝くベルトラインも美しく、鋭い垂直尾翼が航空機の遺伝子を示す


1962年9月14日には、ワイド・ロング・ローのダイナミックかつ細部まで隙の無い
完成されたデザインを実現した、2代目グロリア(S4系)が鮮烈なデビューを果たした。

複雑な曲面によって構成された、有機的なフォルムが個性的なプリンス グロリア・デラックス


5ナンバー規格に収まっているにも関わらず、それを感じさせない見事なデザインを実現し
アメリカ製大型車に引けを取らぬ、威風堂々たるスタイリングを誇った。

内装には日本が誇る伝統の西陣織を奢り、欧米の模倣に留まらぬ
日本独自の美しさ、「和」の世界観を打ち出した。

1963年6月20日には、国産初となるOHC6気筒2000cc・105馬力エンジン「G7」が投入され
総合性能に於いても、世界に名立たるメルセデス・ベンツに伍する国際一級車の地位に到達した。

最高速度155km/hを実現、OHC6気筒ならではのスムースさとフレキシブルさが自慢であった


欧米の一級車と肩を並べる、これらの名車を生み出したプリンス自動車の前身こそは
「東洋一の航空機メーカー」としてその名を世界に轟かせた中島飛行機であった。

プリンスの前身である中島飛行機の代表作、5700機余が生産された一式戰斗機「隼」I型(キ43)
大東亞の空を駆けた、帝國陸軍飛行第64戰隊(加藤隼戰鬪隊)所属の「隼」の勇姿


利益と効率を最優先する、官僚的かつ硬直化した大メーカーが持たざるもの。

最先端分野であった航空機の開発により磨き抜かれた高い技術力。
上司と部下の壁が無い自由な社風、柔軟な発想。
常識に囚われないクォンタム・ジャンプの思想。

これらを以て、日本の自動車産業の発展を力強く牽引してきたプリンス自動車であったが
突如としてその命脈を絶たれることとなった。

1966年8月1日

旧態依然とした、一種の社会主義的な性格を持つ「特振法構想」に端を発する
自動車メーカーの整理統合計画。

これを実現せんと水面下で蠢動せる通産省の思惑により
プリンス自動車は日産自動車と合併するに至る。

こうして、プリンス自動車は栄光と矜持に満ちた歴史に幕を下ろしたのであった。

激動の時代の中で「栄光」の名に恥じぬ旗艦が見せた最期の輝き

それが3代目プリンス・グロリア(S6系)であった。



今回は、栄光と悲劇をその一身に背負いて歩んだ3代目グロリアの生涯を御紹介致します。
文字数制限の関係から、今回は5部構成となっております。

3代目グロリアは一般的に「A30系」と呼称されますが、これは鶴見(日産)側の型式であり
当ブログでは荻窪(プリンス)流儀の「S6系」を尊重し使用しています。

-●本項に於ける、型式記号及び略語の指し示すものは以下の通り--

・S6系(3代目グロリア)※日産側呼称A30

便宜上、本項ではS4/S5系に倣い各生産分を1/2/3型と分類する

1967年4月~1968年9月までの生産分を「1型」
1968年10月~1969年9月までの生産分を「2型」
1969年10月~1971年2月までの生産分を「3型」

・車種/型式対応表

スーパーデラックス:PA30-QM(G7H型搭載車)/HA30-QM(L20A型搭載車)

スーパー6:PA30-D(G7H型搭載車)/HA30-D(L20A型搭載車)

上記2車種について、末尾に”A”の付くものはニッサン・フルオートマチック装着車を指す

グロリア/スタンダード:A30-S(H20型搭載車)/A30-P(LPG車)

バン・デラックス:VPA30(G7L型搭載車)/VHA30(L20A型搭載車)

グロリア・バン/バン・スタンダード:VA30(H20型搭載車)

・輸出仕様

セダン

NISSAN GLORIA DELUXE:PA30-UQ/PLA30-UQ

NISSAN GLORIA/NISSAN GLORIA STANDARD:PA30-U/PLA30-U

ワゴン

NISSAN GLORIA Estate:WPA30-U/WPLA30-U

※Uは輸出仕様、Lは左ハンドル、Wはワゴン、PはG7型6気筒、Qは豪華仕様を示す

・S4系(2代目グロリア)

グロリア・デラックス:S40D
グロリア・スーパー6:S41D
グロリア・スペシャル:S40S
グロリア6ワゴン:V43A
グランド・グロリア:S44P
グロリア6:S41S
グロリア6エステート:W41A

皇室御料車 プリンス・ロイヤル:S390-1

・略語

OD(オーバー・ドライブ/ハイギヤード4速) PS(パワー・ステアリング) PW(パワー・ウィンドウ)
PB(パワー・ブレーキ/倍力装置) AT(オートマティック・トランスミッション) BW(ボルグワーナー)
MT(マニュアル・トランスミッション) WB(ウィール・ベース/軸距) 
OHC(オーバー・ヘッド・カム) OHV(オーバー・ヘッド・バルブ)

-●S6系グロリアの概要と歴史的背景--

S6系グロリアの開発がスタートしたのはS4系グロリアがデビューした1962年の秋であった。
長期の開発期間を要する自動車に於いては、新型登場直後に
次期型の開発が始まるのが常である。

S6系の開発に於いては、プリンス初の試みとなる「企画委員会」が編成された。
これはプリンス自工(開発側)と、プリンス自販(販売側)が合同で立ち上げた組織である。

従来の商品企画・開発は、プリンス自工が独自に進めてきたもので
自販は企画・開発には基本的に関与せず、販売・サービスのみを担当する部門であった。

しかし、時代の変化と共に顧客の要望を汲み上げて商品に反映する必要が求められ
ユーザーの声をダイレクトに受け止めることの出来る自販の意見が採り入れられることとなった。

企画委員会の元で順調に進められていたS6系の開発であったが
1966年8月1日の日産による吸収・合併により、当初の構想の変更を余儀なくされた。

日産側の人間が送り込まれ、コスト削減を主眼とした部品共通化やバリエーションの
削減を強要されたが、それでもなおS6系グロリアは優秀なるプリンス陣営の手によって
開発された、紛れも無い純血のプリンス車であることは論を待たない。

--以下、S6系グロリアのカタログから抜粋--

”紳士専用の常用車です”

”こんなに運転し易い車が今まであったでしょうか”

”長距離にも余力をのこし、高速走行にも余裕をたもつ”

”日本の乗用車に誇りをもっていただく、あたらしいグロリア”

”それは、乗ることが誇りである栄光の乗用車なのです”

・・・「静」・・・

いま私どもが考えますことは、高速メカニズムの開発はもちろんですが、同時に、
高速性を十分に支える車の本質をバランスよく向上させることであり、
そこに技術と才能を奉仕させるべきだということです。

新型のグロリア・スーパー6はその問題と真剣に取組んだ解答です。

この開発は地味な努力の連続でした。
ある意味では商品開発というよりも、より学問に接近した研究でした。

疾風のようにハイウェーを駆けるチカラをフルに生かしながら安全性をいかに守るか?
車室に侵入する騒音をどう防ぎ、静かで快適な居住性が得られるか?など
「乗る人」に重点を置いて自問し、技術で自答しようとした結論がここにあります。

日本に初めて誕生した「静粛な車」
知性ある人に選ばれるのにふさわしい充実した車と信じます。
グロリア・スーパー6は「空前の収穫」といわれる車の理想像です。

”ハイウェー建設に先行”

日本は、世界の主要国で最も高速道路建設が遅れていました。

ヨーロッパでは汎ヨーロッパ道路ともいえるE路線(デンマークからイタリーまでを貫通させる計画)
まで着々と実行に移され、アメリカでは90%国庫負担の6万6千キロに及ぶ
高速道路網建設が急ピッチで進められています。

しかし、日本でもようやく名神、東名中央の高速道路が開通し、車の機動力が
充分に発揮できる時代が訪れ、さらに相次いで道路網計画は伸ばされようとしています。

高速時代の到来です。

こうして道路の高速化計画は、私達に時速100キロの世界をもたらしましたが、
心理的にも生理的にも、いままでの車では考えられなかった対策が要求されます。

プリンス車が国際舞台で堂々と欧米車と競ってきたのは、高速道路建設に
先行する技術開発があったからです。

”より安全に、より速く”

それは、高速性能の機構開発と同時に高速運転がもたらす非安全性にメスを入れることでした。

ニューグロリアは世界で最も厳しい規制を設けている米国安全基準を充分に
満足するものであり、さらに独自の安全機構を加えた最新鋭車です。

--引用終わり--

S6系に於いて重きを置いた点は以下の5点

・従来より継承せる技術の玉成と、新機構の積極的な採用により近代化を推し進める
・皇室御用達の名に恥じない、気品ある凛とした外観・内装の仕上げを目指す
・従来から推進せるメンテナンス・フリーの更なる高度化
・ATをはじめとする各種パワー・アシストを中核とした、米車的なイージー・ドライブの実現
・高速道路網の充実と貿易自由化に伴う海外進出に対応した、世界水準の性能と静粛性の実現

◆グロリア・スーパーデラックス(PA30-QM)仕様一覧

全長:4690mm 全幅:1695mm 全高:1445mm WB:2690mm 
トレッド:前 1385mm 後 1390mm 最低地上高:175mm
客室(長):1830mm (巾):1420mm (高):1135mm

乗車定員:5名(コンソールボックス付セパレート・シート)

車輌重量:1295kg 車輛総重量:1625kg 燃料容量:50ℓ 

ステアリング:リサーキュレーティング・ボール循環式 歯車比 19.8:1

走行装置:前 独立懸架式 後:半浮動式

タイヤサイズ:6.95-14-4P(ホワイトライン チューブレス) 

懸架装置:前輪 独立懸架式 ウィッシュボーン・コイル式 後輪:半楕円板バネ

ショックアブソーバー:油圧複動式 スタビライザー:トーションバー式

エンジン:G7型 直列6気筒OHC 総排気量:1988cc(ボア・ストローク:75×75) 圧縮比:8.8:1
最高出力:105ps/5200rpm 最大トルク:16.0kgm/3600rpm 
フロント縦置 4バレル2ステージ キャブレター(下向通風式)1基

トランスミッション:オールシンクロメッシュ式3段+OD(オーバードライブ)コラムシフト
減速機形式:ハイポイドギヤ 減速比:4.675
オプション:BW-35型 3速AT コラムセレクター

エアクリーナー:濾過式 燃料ポンプ:ダイヤフラム式 潤滑装置:全圧送式(フルフロー式)
冷却装置:強制循環式 ワックスペレット式

バッテリー:12V-35AH ジェネレター:12V-45A(交流式) スターチングモーター:12V-1.4kw

クラッチ:乾燥単板式 

主ブレーキ:前 ディスク式 後:リーディングトレーリング式 油圧真空サーボ付独立2系統式
駐車ブレーキ:機械内拡式後2輪制動

最高速度:160km/h 登坂能力(Sinθ%):40.8% 最小回転半径:5500mm 
制動距離13m(初速50km/h)

価格:111万円


車輛価格はS41D-2型/110万7千円→PA30-QM/111万円、PA30-D/101万5千円となっている。

PA30-QMはS41D以上S44P未満といった位置付けとなっており、PA30-DはS41Dと
概ね同じ位置付けであった。

日産との合併に伴い、3ナンバー大型車及び5ナンバー乗用ワゴンは廃止された。

最高速度は、急速に発展する高速道路網に対応し155km/h→160km/hと更なる余裕を持たせた。

登坂能力は(Sinθ%)37%→40.8%に向上、最小回転半径はWB延長に
伴い5400mm→5500mmとやや大きくなった。
制動距離は12m→13m(初速50km/h)となっている。

-●デザイン--

--カタログより引用--

”現代の風貌ロイヤルライン”

近代美たたえる最新鋭グロリア・スーパー・デラックス

シャープな個性と端正な品格が見事に融和したグロリア・スーパーデラックスは
車のフォーマルウエアと呼ぶにふさわしい紳士専用車です。

長く、巾広く、重心の低い風貌の「ロイヤル・ライン」。
直線を基調にしたデザインが近代的な格調をたたえています。

ロイヤル・ラインは、建築的な構成を背景にして生まれた斬新な造形です。
端正で、落着きはらったその風貌にはヨーロッパの中型車に見られるような
リゾートな雰囲気とは、対照的な風格があります。

フロント・グリルの中央を上下に2分する水平のラインは、そのまま、ヘッド・ランプから
サイドのモールに貫かれ、近代的なシャープな個性を強調しています。
フロント・グリルのパネルは亜鉛ダイカストのクローム仕上げで、
いつまでも美しい輝きを失いません。
グレーのパターンとの組合せが、新鮮な落着きを見事に定着させました。

ヘッド・ランプはタテ型4ランプ。車巾の広さを強調しています。
黄色の方向指示ランプはスタイルのバランスを尊重して、
乳白色のレンズでカバーされるなど細かい神経が行届いています。

リア・ランプもタテ型。上下に赤いテール・ランプ、ストップ・ランプを配して、その中間に
アンバーのフラッシャー・ランプを独立してはさみ、判別しやすくされています。
大型である上に、新設計のレクトアングル・カットのレンズが採用されているので白昼でも、
豪雨でも、後続車からはっきりと識別できる安全設計です。

リア・ランプの間には彫りの深い豪華なリア・グリルが格調の高さを示して取付けられています。

--引用終わり--

デザイン上の最大の特徴は愛称ともなった「タテグロ」の名の示す通り、縦型4ランプである。

縦目4灯ヘッドライトは、開発がスタートした直後の1962年9月にGMが「新しいトレンド」として
提唱した、1963年型ポンティアックに刺激を受けて採用が検討されたものであった。

縦目4灯ヘッドライト、アイブロウ、スプリット・グリルが特徴的な1963年型ポンティアック・カタリナ


車巾一杯に延ばされたリヤ・ガーニッシュもまた、S6系のデザインに影響を与えた


”ワイド・トラック”で知られるポンティアックは、視覚的なワイド感の演出も実に巧みであった。

ボディを実際以上にワイドに見せる効果を持つ縦目4灯ヘッドライトは、1960年代中盤の
デザイン・トレンドとなり、GMはポンティアックの続いて旗艦たるキャディラックに採用した。
これらは大変高い評価を獲得し、フォード、プリマス(クライスラー)、ランブラー(AMC)らが
追従するに至る一大ムーブメントとなった。

1965年型ランブラー・アンバサダー、各所にS6系と通じるデザインを持つ


車巾を実際の数値以上にワイドに感じさせる縦目4灯配置、その効果が見て取れるフロント


走行ビームを受け持つ上側のライトは、すれ違いビームを受け持つ下側のライトよりも
外側かつ前側に張り出して配置されており、繊細かつ複雑な表情を創りだしている。
「吊り目」のヘッドライトは、歴代プリンス車に引き継がれてきたアイコンである。

ヘッドライト・ベゼルの頂部には、前照灯を光源とし点灯するクリアランス・ソナーが備わっている。


これはALSIスカイライン/BLSIPグロリアから続く装備で、高い実用性を優れた発想で実現している。

その一方で、S6系グロリアのデザインに大きな影響を与えたのが
プリンス自らが手掛けた國産初の皇室御料車「プリンス・ロイヤル」(S390-1)の存在であった。

威風堂々でありながら、静謐な雰囲気を湛えるプリンス・ロイヤル


ボディ・サイズは全く違うが、基本的なシルエットを共有する2台


ロイヤルは全長6155mm、全幅2100mm、全高1770mmという桁外れの巨躯を
均整のとれたプロポーションに纏めるべく、必然のデザインとして縦目4灯ヘッドライトが採用された。

巨躯ながら決して威圧的でなく、どことなく温和な表情と感じさせるプリンス・ロイヤルのフロント


中央に十文字を据え、細かな格子によって形成された繊細なフロント・グリルの構成は
PA30-D/VPA30(2型)にそのまま受け継がれることとなった。

御料車に随伴する供奉車としての重責を担うグロリアは、ロイヤルと共通したデザインを
採用することにより、車列の完成度を高める意図もあり縦目4灯が採用されたのであった。

天皇陛下のお乗りになられた御召艦プリンス・ロイヤルの直衛を務める3台のプリンス・グロリア


この一葉からも、S390-1とS6系の基本のデザインを共通した成果が見て取れる。

それ故に、S6系を単純に「アメ車の真似」と呼ぶのは、特徴的なデザインの採用に至る
経緯を踏まえておらず、的を得ていないと云わざるを得ない。

フロントのデザインを反復する、縦型のテールライト配置


ヘッドライトと同じくテールライトの頂部にも、光を導いて点灯するクリアランス・ソナーが備わる


リヤ・グリルと呼ばれる、繊細な彫刻が施されたガーニッシュはボディ両端に置かれた
縦型テールライトと相俟って、より一層ワイド&ローを強調する視覚的効果を生みだしている。

サイドビューは、セダンの正統と云うべき端正なボックス・スタイルを採用。
長いノーズ、スクエアなキャビン、長いフードで構成される”富士山”型のシルエットは
正に、日本の風土が生んだ黄金比で形成されたスタイリングであった。

セダンの理想、正統とは斯くあるべしといった趣の美しいサイドビュー


基本的なシルエットは、1963年9月にデビューしたS5系スカイラインとの近似性が強く
ボディサイド中央を真一文字に走るベルトラインは、S4系とS5系それぞれのベルトラインを
巧く纏めたものとなっており、凛とした緊張感と格式を感じさせるものである。

上端をベルトラインと合致させたフロントのウィールハウス、少しだけタイヤに被さるリヤの
ウィールハウスや、フロントバンパーから始まりリヤバンパーへと伸びるストレートかつ
彫りの深いプレスラインは、スカイライン・スポーツやS5系スカイライン、S4系グロリアらの
歴代プリンス車が採用し続けてきた伝統のアイコンでもある。

S6系グロリアのデザインは、歴代プリンス車の集大成とも云うべきもので
密度が高く、一切の破綻無く、比類なき完成度を誇るものであった。

-●ボディ/シャシー関係--

S6系の機構面に於ける最大のトピックは、ボディ構造の刷新である。
基本設計を1957年登場のALSIスカイライン(S2系)から継承せる、トレー型の独立フレームを持つ
S4系から、新たにユニット・コンストラクション・ボディ(応力外皮構造体)を採用したのである。

S4系では車体の剛性不足(フレームとボディが別体式)と振動、騒音が弱点とされたので
S6系では一体式ボディに剛性を持たせることで振動を抑え、それにより騒音を軽減した。

S6系に先立つこと3年余、プリンスは1963年9月12日デビューのスカイライン(S5系)に
ユニット・コンストラクションを初採用していた。

※ユニット・コンストラクションは一般的に「モノコック」と呼ばれるが、厳密には正しくない。

応力外皮構造を説明する、スカイライン(S5系)のスケルトン・ボディ写真


この方式はボディ・オン・フレームと比較して、軽量かつ剛性に優れるメリットがあり
特に、国産5ナンバー・フルサイズのような中型車には絶大なる効果を発揮せるもので
現代の乗用車の主流となった機構である。

ボディ・サイズは、5ナンバー規格の中で最大のサイズを求めてS4系よりも拡大され
全長は4650mm→4690mmに、ウィールベースは2680mm→2690mmに延長され
ボックス・スタイルと相俟って室内空間、特に後席の足元が大幅に拡大された。

また、従来は平面ガラスであったサイド・ウィンドウにプリンス車としては初となる曲面ガラスを採用。
これにより室内空間の幅、特に肩周りの余裕が拡大された。

それに対して全高は1480mm→1445mmと一段と低くなり、前面投影面積を小さくし
空気抵抗を減少させ、見るからに精悍で安定性が高く
重心の低さを感じさせるアピアランスを得た。

車輛重量は軽量な応力外皮構造を採用したことにより、独立フレーム構造を持つ
S41D-2型/1320kg→PA30-QM/1295kgと、25kgもの軽量化を果たしている。

S6系の開発に於いてプリンス技術陣は、数値には表せない人間の感じる「心地良さ」や
「安心感」といった抽象的な部分に至るまで完璧を追い求めた。

「あなたが最初に触れる部分・・・」

クルマの品質水準を端的に示すドアに関しては、人間工学に基づいて設計された
握りの確かさ、開ける時の軽快さ、閉めた時の確かな感触、重厚な音、ドアの開閉に伴う
室内の音の反響までを追求し、気の遠くなるような回数のドア開閉テストが行われた。

車体が受け持つパッシブ・セーフティ(受動安全)についても、様々な新機構が採り入れられた。
堅牢なボディと共に、大きな衝撃を受けても外れないセーフティ・ドアラッチの採用。
ソフトパッドで覆われたダッシュボード及びインナー・ピラー、出来る限り突起物を減らした室内など。

操舵機構はS4系から変更なく、リサーキュレーティング・ボール式を採用した。
ギヤ比も同じく19.8:1であったが、ステアリング・ウィールの径が一回り小さくなり
一クラス下のS5系スカイラインと同径としたことによって、軽快なハンドリングを実現した。

燃料タンク容量はS40/41系と変更なく50リッターで、プリンス乗用車の伝統である
リヤシートとトランクルームの間に設置された背負い式としている。
給油口は左Cピラー根元に上向きで設置されている。

スペアタイヤはトランクフロア埋め込み式として、6人分のゴルフバッグを収納しても
なお余裕のある、大きなトランクルームを実現している。
トランクルームの床面や壁面は、フォーム材の内張りでカバーされ
積載した荷物が傷まないように配慮されている。

競合するトヨペット・クラウンが、吊り下げ式燃料タンクとトランク室内収納式スペアタイヤを
採用したことにより、トランクルーム容積が比較的小さいのと好対照である。

-●エンジン--

”日本の水準を3年リードしているOHC・6気筒2000cc・105PS”

1963年6月20日、国産初となる直列6気筒オーバーヘッドカムシャフト(OHC)エンジン「G7」が登場。
国産車中最強となる105psという高出力を実現し、
リッターあたり出力も52.5psと初めて50psを突破した。

S6系ではこの傑作エンジンを小改良し、継続して搭載した。

4気筒エンジンについては、プリンス自製のG2型から日産製H20型へと変更を余儀なくされた。

残念ながら、1969年10月には整理統合によってG7型が生産中止、6気筒車に搭載される
エンジンも日産製L20A型に換装されてしまった。

エンジンは当初、6気筒にプリンス製のG7型、4気筒に日産製H20型の2種が設定された。

滑らかなカマボコ型のヘッドカバーに特徴がある、G7型・直列6気筒OHCエンジン外観


ヘッドラインの「日本の水準を3年リードしている」とは、直列6気筒OHCエンジンに関して
ニッサン・セドリックは1965年10月、トヨペット・クラウンは1965年11月の投入であったのに対して
プリンスは1963年6月に、グロリア・スーパー6でこれらに先駆けていたことを誇るものである。

整然と纏められた美しいエンジンルーム、絹のように滑らかと云われたG7型エンジンが鎮座する


G7H型はPA30-QMとPA30-Dに搭載され、PA30-QMには4バレル・キャブレターが、
PA30-Dには2バレル・キャブレターが組み合わされた。
いずれも圧縮比8.8/最高出力105psのハイ・コンプレッション仕様で、ハイオク指定となっている。

VPA30に搭載されるG7型は、圧縮比8.3のレギュラー対応となり型式もG7L型となっている。
それぞれの型式の末尾に付く”H”は高圧縮比(8.8)、”L”は低圧縮比(8.3)を意味している。

G7H型 直列6気筒OHC 総排気量:1988cc(ボア・ストローク:75×75) 圧縮比:8.8
最高出力:105ps/5200rpm 最大トルク:16.0kgm/3600rpm

G7L型 最高出力:100ps/5200rpm 最大トルク:15.4kgm/3600rpm

PA30-QM:G7H型(ハイオク指定/105ps/4バレル・キャブ)

PA30-D:G7H型(ハイオク指定/105ps/2バレル・キャブ)

VPA30:G7L型(レギュラー対応/100ps/2バレル・キャブ)

國産車として初となる、OHC機構を備えた先進的な直列6気筒エンジンであった


G7型エンジンは型式こそ変更なしだが各部に改良が施され、S4系ではカマボコ型であった
カム・カバーの形状が僅かに角張ったものとなり、スタットボルトの位置もオフセットされた。

オイル・フィルターがカートリッジ式(インナーフィルター交換式)からスピンオン式(一体式)に
変更され、交換・整備が容易となった。

スペース効率を高め、ボンネット高を抑えるべくエア・クリーナーは薄型とされた。
深刻な問題となっていた公害対策として、従来は大気開放式であったブローバイ・ガスを
エア・クリーナー還元式に改めた。

エア・クリーナーのエレメントはビスカスタイプを採用、2年または4万km無交換を実現した。
当時は砂埃の多い非舗装路を走った後は清掃が必要であったが、その手間も省かれた。

ラジエーターはセミ・パーマネント方式を採用し、2年または4万kmまで
冷却液の交換が不要とされた。
防錆、オーバーヒート及び凍結防止に特に重点が置かれていた。

4気筒エンジンはS4系ではプリンス自製のG2型が搭載されていたが、日産製H20型に換装された。

H20型は最初期仕様である1900cc版が1960年に登場、原型となったエンジンは更に遡って
東急くろがね工業時代に開発されたという、当時でも既に旧態化を隠せないものであったが
日産との合併に伴い、生産エンジンの整理・統合を求められ、新型OHC4気筒エンジンを
鋭意開発中であったプリンスとしては、不本意ながらもこれを搭載することになった。

プリンスが開発を進めていた新型4気筒エンジンは、クロスフロー吸排気・OHC・
半球形燃焼室(ヘミスフェリカル)構造を持つ、極めて意欲的かつ先進的な設計で
圧倒的な最高出力(1500ccで88ps)や、他車よりも進歩的なメンテナンス・フリーシステムなどが
高く評価され、1968年度の自動車技術会・技術賞を受賞した傑作であった。

プリンスでは、第1回日本GPの雪辱を果たすまでは市販車の開発凍結も辞さずという覚悟で
レース活動にエンジニアを総動員していた為、市販車用G15型の開発は滞っていた。

だが、結果的にサーキットで鍛えられたワークス用チューニング・エンジンたる
GR1A型(98ps/6400rpm)やGR7B型(165ps/6400rpm)の経験が、G15型に
生かされることになった。

G15型は当初の予定より遅れ、合併後の1967年8月にS57D(スカイライン1500デラックス)に
搭載されてデビューした。
S6系のデビューは1967年4月であったので、残念ながら間に合わなかった。

A30-Sに搭載予定であった2000ccのG20型は、C30ローレルに搭載されて
日の目を見ることとなった。

参考 G20型 直列4気筒OHC クロスフロー ヘミスフェリカル

総排気量:1990cc(ボア×ストローク:89.0×80.0) 圧縮比:8.3 2バレル・キャブレター仕様
最高出力:110ps/5600rpm 最大トルク:16.5mkg/3200rpm

ツイン・キャブレター仕様 圧縮比:9.7 最高出力:125ps/5800rpm 
最大トルク:17.5mkg/3600rpm


A30-S/VA30:H20型(レギュラー対応/92ps/2バレル・キャブ)

H20型:直列4気筒OHV 総排気量:1982cc(ボア×ストローク:87.2×83) 圧縮比:8.2
最高出力:92ps/4800rpm 最大トルク:16.0mkg/3600rpm

H20型には日本気化器との共同開発による、タクシーキャブ(A30-P)用のLPG仕様も設定された。
こちらはガソリン仕様の92psから12psダウンとなる、80psを発生した。

1969年10月にはG7型が廃止され、新たに日産製L20A型に換装された。

日産では、プリンスとの合併によりプリンス自製のG7型と、日産の開発した初期L型の
2種のOHC6気筒エンジンを製造していたが、これを一本化することによって
生産ラインの統合、効率化が図られた。

当然ながら外様であるプリンス製G7型が廃止され、日産製L20A型に切り替えられた。

L型6気筒OHCエンジンは1965年に登場、1969年に従来は共通性の無かったL型4気筒系と
部品の互換性を持たせ、メインベアリングを4ベアリングから7ベアリングに変更することを
中心とした改良を実施し、型式も識別の為にL20”A”型と改められた。

S7系スカイライン(GC10)の初期型には、G7型と良く似たカマボコ型のヘッドカバーを持つ
初期L型が搭載されていたが、L20A型になると角型のヘッドとなり、プリンスの香りは薄れた。

L20A型には2つの仕様が設定され、HA30-QMには圧縮比9.5の高圧縮比仕様、HA30-Dには
圧縮比を8.6に抑えた標準仕様の2種類が用意された。
ただし当時、省エネムードや暴走族問題などから高性能車への風当たりが強くなっており
それらへの対策として、HA30-QMにも圧縮比8.6のレギュラー仕様が設定されていた。

当初からS6系への搭載を前提に開発されたG7型は、エンジンベイに垂直に置かれていたが
日産によって開発され、本来はS6系への搭載を予定していなかったL20A型は
ボンネットとの干渉を避ける為に、斜めにマウントされている。

クーリング・ファンはG7型では鉄製の羽根であったが、L20A型はカップリング付の
樹脂製のファンに変更され、安全性が向上した。

L20A型(HA30-QM用) 水冷直列6気筒OHC 1998cc ボア×ストローク 78×69.7
圧縮比:9.5 最高出力:125ps/6000rpm 最大トルク:17.0mkg/4000rpm
※圧縮比8.6のレギュラー仕様もあり

HA30-D用 圧縮比:8.6 最高出力:115ps/5600rpm 最大トルク:16.5mkg/3600rpm

6気筒エンジンが日産製に集約されたことで、開発が進んでいたプリンス自製の
新型直列6気筒エンジンの計画は凍結された。

レースでの経験を存分に注ぎ込んだG15型エンジンと同じく、クロスフロー吸排気、
ヘミスフェリカルヘッドを備えた高性能なものになったと予想され、惜しまれる存在であった。

-●キャブレター--

キャブレターは、日本気化器製ダウンドラフト式4バレル/2ステージ及び2バレル/2ステージで
小改良が施されているものの、S4系からのキャリーオーバーとなっている。

PA30-QMにのみ4バレル・キャブレターが設定され
その他には2バレル・キャブレターが設定された。

PA30-QMに組み合わされるキャブレターは、日本気化器製210260-831型であった。

これは、1964年4月13日にデビューしたグランド・グロリア(S44P)用に開発された
4バレル/2ステージ機構を備える2D3030A-1A/B型(110300-812)を小改良したもので
始動が容易な排気熱式オートチョークを備えていた。

1969年10月から搭載されたL20A型には、排気熱式オートチョークを電気式に改め
作動をより確実とした改良型の210260-854型が組み合わされた。
また、燃料配管が銅パイプから耐油ゴムホースに変更され安全性が向上した。

PA30-QM以外には1963年6月15日に登場したS41D-1用 D3232A-1型の
小改良型である2バレル・キャブレターが組み合わされた。

なお、LPGには専用設計となる日本気化器製シングルバレル・キャブレターが組み合わされた。

プリンスでは当初は、三国工業と共同でLPGユニットの開発を進めていたが
いすゞとの共同開発により、既にLPGに関する技術を蓄積していた
日本気化器が採用されることになった。

なお、プリンスのLPGユニット開発はブリヂストン液化ガスとの共同開発であった。

-●トランスミッション--

変速機は当初、プリンス製と日産製の2系統のMTと、BW製の3速ATが設定された。
1968年10月にATが日産製に換装され、1969年10月にはMTも変更され、総てが日産製となった。

当時、スポーティなフロア・シフトが流行の兆しを見せていたが、プリンスは
フォーマルなグロリアの性格、車格、顧客層から鑑みて総てコラム・シフト配置としている。

PA30-QM/PA30-D(G7H型)・・・プリンス製OD付4速コラム・マニュアル/BW-35型・3速コラムAT

VPA30(G7L型)・・・プリンス製OD付4速コラム・マニュアル

A30-S(H20型)・・・日産製3速コラム・マニュアル

VA30(H20型)・・・OD付4速コラム・マニュアル

PA30系に搭載されるG7型に組み合わされたMTは、エンジン本体と同様にS4系の改良型である。

ギヤ比は変更され

 (S4系) (S6系)
Low2.693→2.957

2nd1.632→1.572

3rd1.000→1.000

OD0.762→0.785

Rev3.358→2.922
  
減速比:4.875 (変更無し)

となり、より高速向きのセッティングとなった。

当初は、S4系で採用されたボルグワーナー製BW-35型3速ATを引き続き設定していたが
1968年10月には、日産自製の「ニッサン・フルオートマチック」3速ATに変更された。

1969年10月には、6気筒エンジンがプリンス製G7型から日産製L20A型に換装されたことに
伴いMTも日産製に変更されたが、ギヤ比の変更は行われなかった。

日産製H20型を搭載するA30-Sには、同じく日産製3速コラムMT(OD無し)が組み合わされたが
同じH20型を搭載するVA30には、OD付4速コラムMTが組み合わされている。

ライトバンであるVPA30/VA30ともにセダンと共通のギヤ比を採用しており、貨物の搭載よりも
加速性能や巡航性能を重視した、乗用車的なセッティングとなっていることが伺える。

共通のエンジンを搭載するA30-SがOD無しの3速MTなのに対し、VA30がOD付4速MTを
採用している点からも、S6系グロリアのバン・モデルは、多くの荷物を積載する商用車というよりも
大きなトランクを有する高速乗用車としての性格を狙っていたことがわかる。

※ボルグワーナー製BW-35型3速全自動変速機について



BW-35型はL・D・N・R・Pの5ポジション、前進3段6レンジを持つ完全自動変速機で
S4/S6系に設定されたコラム・セレクター仕様の場合、Pポジションではセレクター・レバーが
10時半の方向にセットされる。

BW-35型は、AMC・ランブラーやスチュードベーカーといった200cu.in(3200cc)程度の
(米国では)比較的小さな排気量の、アメリカ製コンパクト・カーの為に開発されたものである。

1960年にボルグワーナー社がイギリスに工場を建設し、当地で生産を始めたことに伴い
BW-35型は欧州車にも設定されるようになった。

本来はコンパクト・カー用に開発されたATであったが、米国ではコンパクト扱いとなる3000cc級車は
欧州では大型車に相当したこともあり、採用した車種の多くが中型以上の車種であった。

BW-35型はATの技術が発展途上であった欧州や日本などで、高性能を誇る汎用ATとして
高い評価を獲得し、様々なメーカー・車種に設定された。

主な採用メーカーは、BMC、MG、シトローエン、ジャガー、ルーツ・グループ、ローバー、
トライアンフ、ボルボ、オーストラリア・フォード、日産などであった。

1968年10月より採用された日産製「ニッサン・フルオートマチック」は、このBW-35型を
基に国産化したと云える内容のものであった。

H20型を搭載するA30-S/VA30及び、6気筒エンジンを搭載するバンのVPA/VHA30には
MTのみが組み合わされ、ATの設定はなかった。

-●サスペンション--

フロント・サスペンションはS4系から変更なく、ダブル・ウィッシュボーン/コイルを採用したが
リヤ・サスペンションはプリンスの特徴であったド・ディオン・アクスルに代わり
コンベンショナルなリーフリジッド・サスペンションが採用された。

これは一般的にコスト削減や、セドリックとの部品共通化によるものと云われているが
130セドリックとS6系グロリアでは、形式こそ同一だがアッセンブリーとしての共通点は殆ど無い。

それよりも、1963年のS5系スカイラインにリーフリジッドを採用している点に留意すべきであろう。

S5系ではメンテナンス・フリーを開発の主眼に置いており、保守的ながらトラブルの起き難い
リーフリジッドを採用したが、理由はそれだけでは無かったと思われる。

乗り心地に優れ、コーナリング性能に於いてもリジッドより優越したド・ディオン・アクスルであったが
コストが高く、コモリ音の問題が起きやすかったことも確かであった。

特に、100km/hオーバーの長時間連続高速走行が多かった輸出先ではコモリ音が
問題視されやすく、リーフリジッドの採用は1965年10月の貿易自由化を睨んでの
決定であったとも推測される。

ド・ディオン・アクスルの図解、リジッドの堅牢さと独立懸架のしなやかさを両立していた


1968年10月に追加されたスカイライン2000GT(GC10)では、リヤ・サスペンションにリーフリジッド
でもなく、ド・ディオン・アクスルでもなく、セミ・トレーリング式を採用し4輪独立懸架としている。
この点からも、プリンスではド・ディオン・アクスルを既に
過渡期的技術であると見ていた可能性もある。

タイヤサイズは7.00-13から6.95-14に変更され(PA30-D/QM)、ウィールが1インチ大きくなると共に
道路環境の整備が進んだことに合わせて、悪路走行から舗装道路の高速走行に重点を置いた
ロープロフィル(低扁平)タイヤを採用した。

-●ブレーキ--

高性能化、高速化に対応して、それを受け止める制動装置も大幅に強化された。
PA30-D/QMにはフロント・ディスクブレーキ(住友ダンロップMK63)が奢られ
パワー・ブレーキ(マスターバック/倍力装置)も備わった。

万全を期すべくタンデム・マスターシリンダーを採用し、前後ブレーキ配管を独立させ
万一の際にも全輪のブレーキが効かなくなる事態が起こりえないように、制動系が強化された。

後輪ブレーキはサーボ付ドラムで、パーキングブレーキはステッキ式であった。

-●内装・装備--

”端正でフォーマルな装い、豪華な室内装備”

S5系の時代から追求してきた計器盤の
誤読防止(反射防止)策として、透過照明式無反射メーターを開発し
安全運転の基本中の基本である、ヒューマンエラーの根絶を目指した。

フロントに設けられたセカンダリー・ベンチレーターと、リヤに設けられたリヤ・ドラフター
(エア・アウトレット)の効果により、室内は常に新鮮な空気で満たされ、窓の曇りや
雨天時の湿気、煙草の煙になどによる不快さを追放した。

内装や装備に於いてもプリンスが次々と生みだし、特許を取得し
手を休めることなく改良にあたってきた優れたものが、惜しみなく投入された。

S50D-2から採用された、フェイス・レベルに設置されたセカンダリー・ベンチレーター。
安全を確保すると共に、後退時や後席からの視界を遮らないスマートな組込式ヘッドレスト。

ロング・ウィールベースが実現した、広々としたレッグスペースと相俟って
如何なる身長・体格のドライバーにも、最適なポジションを提供するリクライニング・シート。

人間工学に基づいて、細部まで考え抜かれたルーミーで快適な室内


手廻り品を納めておくのに便利で、アームレストとしても役立つ大型センターコンソール・ボックス。
キー・照明・コンセント付と、至れり尽くせりのグローブ・ボックス(リッドにはグラス溝付)。

ワンタッチで昼夜の切換えができるグレアープルーフ(防眩)ミラー。
誤読の心配のない、整然と纏められた無反射・透過照明式メーター。

ワイパー連動式の定量噴霧式ウィンドウ・ウオッシャー。
常に後方視界を確保し、如何なる気象・天候に於いても安全運転に資するリヤデフロスター。

清廉な雰囲気のカラーリングで纏められたことによって、より開放的な寛ぎを感じられる後席


まるで応接室の如く、ゆったりとした姿勢で寛げる格納式アームレスト。
地図や本を整理するのに便利なシートバック・ポケット。

モデルの美しい女性や、清楚な白手袋が車格の高さを感じさせる


運転の妨げとならないように、照明の方向調節が可能な後席パーソナル・ランプ(読書灯)。
後席からの操作の為に備えられたラジオ・空調ファンコントロール・シガーライター・灰皿(照明付)。

機微な調整も可能で、後席からも聴き取り易いリヤ・スピーカー。 

最高級車とはいえ、1967年当時はパワー・ウィンドウ、エアーミックス式エア・コンディショナーは
まだまだ普及しておらず、依然として高額なオプション品であった。

それでも、エア・コンディショナーは多くのオーナーが装着しており
そういった部分からも、車格の高さが窺い知れる。

操作系統がリーチ内に納められた、整然として合理的なインストゥルメント・パネル


任意で速度を設定することが可能な速度超過警報ノブ。
曇天時や昼間の雨天時、トンネル内などで重宝する計器盤照明調整。

2スポークのスリムなステアリング・ウィールは、プリンス伝統のアイコンである
星の輝きを模した、十字のオーナメントを埋め込んだ透明の樹脂で飾られている。

-●メンテナンス・フリーの高度化--

プリンスでは、メンテナンス・フリーの実現も大きな目標として掲げられていた。

これは頻繁なオイル交換やグリースアップが当然だった時代に、極めて先進的な試みであり
誰もが思い付くが多くの難題が山積している為、他社では実現に至っていなかった分野であった。

時間と手間、金銭的な負担を軽減しユーザー本位のクルマ造りを心掛けるという
プリンスの「血の通うクルマ」というコンセプトに基づくものであった。

プリンスの掲げた「技術に挑戦し、生活に奉仕する」というキャッチコピーには、レース活動などが
単なる宣伝・広告では無く”すべてはユーザーの為に”という強い想いが込められているのである。

プリンスは、S5系スカイラインで各部ジョイントの給油期間の大幅な延長を実現した。
従来は1000~2000km毎の頻繁なグリースアップが必要で、ユーザーにとって大きな負担と
なっていたが、新方式の無給油ジョイントの開発によって
これを一挙に1年間・3万キロまで無給油としたのである。

グロリアもS4系の2型から無給油ジョイントを採用、S6系グロリアでは更に期間を延長し
2年間・6万キロまでのメンテナンス・フリーを実現した。
これらの努力の積み重ねによって、S7系スカイラインでは遂に10万キロ無給油を達成した。

-●静粛性--

優秀なるプリンス技術陣の不断の努力によって、S6系は極めて高い静粛性を実現。
N・V・H(ノイズ・ヴァイブレーション・ハーシュネス)の原因となる、風切り音やロードノイズ、
路面からの衝撃、プロペラシャフトの回転に伴う振動などを徹底的に追求し改善にあたった。

これらの研究成果は、アメリカの国際技術会議に招かれて発表を求められたほどであり
カタログに謳われる「国際レベル」の表現が、大言壮語ではないことを証左するものである。

これらの優れた装備や性能は、単に快適さを求めたに留まらず、些細な設計の不親切が齎す
危険を未然に防止し、長時間の運転による疲労を少しでも軽減することによって
安全性を向上させるという、人間工学と「あたたかなハート」「血の通ったクルマ」という
プリンス独自の発想から産み出されたものであった。

1965年7月1日に名神高速道路が全線開通、時速100km/hで100km以上の距離を走るという
未だかつて経験したことのない高速連続走行に際して、安全かつ快適にドライブ出来るかどうかは
車の性能に懸っていたと云っても過言ではなかった。

S6系グロリアは、余裕あるエンジン、静粛性、能動安全、受動安全、種々の疲労軽減策によって
車が人間をサポートすることにより、人車一体の総合性能を実現し
我が國にいよいよ訪れたハイウェイ時代に適応してみせた「理想の乗用車」であった。

-●あたたかなハートという概念--

加速・巡航・追越のすべてに余力を持ち、静かで滑らかなエンジン。
静粛で燃費に優れるオーバードライブによって、高速走行の負担を軽減するMT。
煩わしいクラッチ・ギヤ操作から解放し、混雑した都会の中でも安楽なAT。
優れた防音性を持つ、広々としたルーミーな室内と至れり尽くせりの快適装備。
エンジン・シャシー・ボディの極めて高い遮音性によって実現した静謐な室内。
危険を未然に回避する俊敏な運動性と操作性、高速性能に見合った制動能力。
万一の際、乗員の命を保護する堅牢なボディと数多の安全機構。

これらすべての技術は、それを採用すること自体が目的ではなく、運転手及び同乗者の為に
最上級の安全と快適を捧げるという、冷たい「機械(グロリア)」を挟んだ
「人(技術者)」と「人(乗員)」の暖かな交流であり、その時、冷たい機械にも両者の
血が通い、確かな手応えのある”あたたかなハート”を持った車が生まれたのであった。


「 其の瑞鶴は千代に麗し ~プリンス・グロリア(S6系)の生涯~ --②-- 」に続く
Posted at 2012/02/14 21:19:15 | コメント(12) | トラックバック(0) | S6系グロリア(タテグロ) | クルマ

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