毎年この時期になると放映される戦争関係の番組を見るのですが、今年はオリンピックもあったため、あまり番組がありませんでした。
今日いくつかあるのと、先週の土曜日、NHKで「巨大戦艦 大和 ~乗組員たちが見つめた生と死~」、「三つの名を生きた兵士たち~台湾先住民 ”高砂族”の20世紀~」があったくらいでしょうか。
この高砂族の番組ですが、僕が子供の頃読んだ戦記に、高砂族は勇敢だったとあったのをずっと記憶していて、これまで気にかけていた事もあって、番組はまだざっと見ただけですが、中々興味深かったです。
高砂族と言っても多くの方はご存じないでしょうが、台湾の山岳(少数)民族で、これまた興味の対象の一つである、李香蘭の
「サヨンの歌」などでも知られています。
NHKの高砂族の番組は流暢な日本語を話される高齢の方へのインタビューで構成されてましたが、未だに敬礼や軍歌を歌い、日本精神を語られつつも、当時受けた差別についても触れられていました。
実際に
霧社事件のような出来事も起きてますしね。
台湾でさえこうだったのだから、朝鮮や満州でも更に差別意識は強かったのではないかと思います。
さて、本題です。
最近日本を取り巻く領土問題が熱いですが(今日もありましたし)、僕は騒ぎ方、騒がれ方が逆じゃないかと思っています。
尖閣も竹島も普通の人が住んで生活を営めるような場所ではないですし、そういう場所はそもそもアジアの長い歴史ではあまり誰のものか、と言う事は問われて来なかったのだろうと思います。
先にあげた霧社事件は1930年、日本の台湾統治が1895年、そのきっかけになった宮古島島民遭難事件や台湾出兵が1871年と1874年ですから、まだ100年経つかどうかってところです。
そもそも、孤島の領有権って概念自体、強欲な欧米諸国が自分達がまだ発見していなかった土地は、例え先住民がいても最初に発見した人のモノ、としたからではないかと思います。
なので、本当は人が生活出来ない以上どうでも良くて、資源(海産・地下)があるならば、それを周辺国で分け合うのが、大人の智慧である気がします。
尖閣は日本が実効支配しているので、これまで通り領土問題は存在しないと放置しておけば良く、竹島は韓国が駐留してますが、灯台を維持してくれてるとでも思って、資源分割を要求する程度の、名を捨て実を取る事で良いのではと。
むしろより問題が大きいのは、ロシアとの北方領土と、アメリカの日本内の基地だと思っています。
でも、なぜか前二者と比べるとあまり騒がれず、マスコミもあまり取り上げません。
どちらも元々日本国民が住んでいて、生活を営んでいました。
北方領土は火事場泥棒的な侵攻によって奪取されたものですし、何度も日本漁船が不法操業などで拿捕され、確か銃撃で怪我したり亡くなった方もいらしたような記憶があります。
米軍基地も、敗戦により広大な土地を占領されたままな上、膨大な駐留費を支援しています。
どちらも、将来的な資源等ではなく、過去から現在に渡って日本はずっと不当に搾取され続けている訳です。
これらの領土問題について、優先順位を考えれば、ごく自然に結論は出ると思いますし、何に対して問題視すべきか、明白な気がします。
もっと言うと、これらの領土問題、実は根っこはひとつなのを気付いていらっしゃるでしょうか?
タイトル写真の「戦後史の正体」、日頃から著者の孫崎氏の発言は結構真実を突いてると感じてたので、先日買って読み始めたところです。
まだ1/3程度読んだところですが、GHQによる占領期の歴史は白洲次郎を除いてあまりこれまで知らなかったところもあって、目から鱗でした。
色々興味深い事実がありますが、いくつか例示すると、
◆戦後日本はアメリカのお蔭で飢餓を逃れ、戦後復興を遂げたように言われているが、実は巨額の米軍駐留費を支払っており、昭和21~22年などは一般会計の30%以上もの割合を占めていて、受け取った援助資金を遥かに上回る
この費用にはゴルフ場や果ては花や金魚の代金まで含まれており、日本人が餓死しかねない状況でもあったので、当時の蔵相石橋湛山が抗議したところ、公職追放されてしまった
◆寛大な占領政策と言われているが、前例のない長期間の占領(7年)、実は言論統制も激しく、5千人の日本人が高給で占領軍に雇われ検閲を行った
◆同じ敗戦国である、ドイツ・イタリアの駐留軍は現地の法律を守る事になっているが、駐日米軍は日本の法律を守る必要がない
などなど。
米ソ冷戦の勃発に伴い、日本はアメリカにとっての太平洋における反共の防波堤とされますが、それまでは日本を二度と立てないようにするのがアメリカの方針であり、一時は公用語は英語、通貨は米軍軍票、裁判は米軍事裁判、を押し付ける予定だったそうです。
話を戻すと、徹底的に日本の力を排除するつもりだったアメリカは、ポツダム宣言で日本の領土を「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等の決定する諸小島に限られなければならない」と言っています。
なので、問題になっている、尖閣にせよ竹島にせよ北方領土にせよ、アメリカが日本に帰属するか否かを決定している筈なのです。
現在も問題になっているのは本来おかしくて、当時決めていなかったか(これはアメリカの不作為)、もしくは敢えて日本を領土問題で不安定な状況にするために、明確にしなかったかのどちらかだと思います。
アメリカは尖閣や竹島などに関する主権について、あいまいな態度を取り続けていますが、これは本来おかしくて、占領期に日本の主権範囲を明確にした筈なのです。
と言う事で、元をただせば一つ、領土問題は全てアメリカが根っこにある事が解ります。
みなさんは歴史で、明治の元勲達が不平等条約を改定するために涙ぐましい努力を重ねてきたことをご存じだと思いますが、日米地位協定で米軍軍人のみならず軍属やその家族までもが
事実上の治外法権となっており、これを問題と感じない政治家や、ネットに多い親米自称保守(治外法権を許して愛国も何もないと思いますが)など、日本人としての矜持はどうなっているんだろうと、8月15日のこの日、先に触れた高砂族の老人たちの言葉と重ね合わせながら、物思いに耽る訳です。
最後に白洲次郎の言葉から引用。
「あの時分にいちばん残念に思ったのは日本人というものがほかの東洋人にはえらそうなことをいうけれども、西欧人にはからきしだらしがないということを痛感したことです。僕は反対なんだ。いわゆる西欧ずれしてるのでしょうね。」