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2024年02月18日

欧州自動車博物館巡りの旅2023⇒2024 ベルント・ローゼマイヤー慰霊碑訪問編

欧州自動車博物館巡りの旅2023⇒2024 ベルント・ローゼマイヤー慰霊碑訪問編









こんにちは!
今回は"欧州自動車博物館巡りの旅2023⇒2024"ネタになります。
旅の初めから順番に書いていくと途中で力尽きそうなので・・・ネタの小出しスタイルで書いていこうと思います^^;
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今回のブログはフランクフルト近郊にある戦前の伝説的なレーシングドライバー"ベルント・ローゼマイヤー(Bernd Rosemeyer)"の慰霊碑訪問にちなんだコラムです!
※今回もご多分に漏れず長編となっていますので、お時間に余裕のある時にお楽しみください~

ベルント・ローゼマイヤー(1909年10月14日~1938年1月28日)
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戦前のいわゆる"750kgフォーミュラ"と言われる時代のGPレースで"アウトウニオン(Auto Union)"のエースドライバーとして、名声を欲しいままにしたドイツ ニーダーザクセン州出身のレーサーです。

ここで"750kgフォーミュラ"について解説すると、FIAの前身にあたるAIACR(Association Internationale des Automobile-Clubs Reconnus:国際公認自動車クラブ協会)が1932年10月に発表した新しいフォーミュラカー規定で"オイルや冷却水、タイヤ等を含まない車両の乾燥重量750kg以下"という至ってシンプルなものでした。

当時は車両重量を押さえることで、排気量や出力もそれ相応(排気量2.5リッター程度)の範囲内に収まるだろうという考えのもとに1934年より施行されました。

1920年代~1930年代前半に活躍したGPカーを何台か見てみると、確かに1924年デビューの"アルファロメオ P2(Alfa Romeo P2)"は2リッターの過給機付き直列8気筒エンジンを搭載して155馬力,614kg、1928年デビューの"メルセデス・ベンツ SSK(Mercedes Benz SSK)"は大排気量の7.1リッター直列6気筒エンジンにさらに過給機を備えて250馬力を実現していますが車両重量は1,700kgもありました。
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1930年代に入ると、ブガッティが1920年代にGPで活躍した名車"T35"をDOHCヘッドに改良した2.3リッター直列8気筒過給機付きエンジンを搭載した"T51"を開発して185馬力,750kgを実現しています。マセラティ兄弟も1933年に"8C"の改良型"8CM"に3リッター直列8気筒過給機付きエンジンを搭載して240馬力,750kgを実現し、徐々に750kgフォーミュラ規定施行に向けてAIACRの思惑通りの展開が進んでいました。

しかし、レギュレーションが施行された1934年、ドイツからレギュレーションの想定とは異なる2台のGPカーがエントリーしてきました。その1台がメルセデス・ベンツが満を持して開発した750kgフォーミュラ"W25"↓です。
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※2004年 旧メルセデスベンツミュージアム(ウンタートゥルクハイム工場内)にて撮影

"W25"は徹底的に軽量化を施したことで車重750kgながら、3.36リッターの直列8気筒過給機付きエンジンで354馬力の出力を誇りました。

ちなみにこの"W25"には面白いエピソードがあって、デビューレースの前日に改めて重量を計ったところ751kgあり、このままでは車検に通らないのでドイツのナショナルカラーであった白のボデーカラーをヤスリで削ってアルミ地肌むき出しにすることで1kg減量して、なんとか車検に通したそうです。今日のメルセデスのレースカーの象徴である"シルバーアロー"の由来でもあります。

そしてもう1台が、アウトウニオン(Auto Union)がポルシェ設計事務所のフェルディナント・ポルシェ博士が書き上げた"750kgフォーミュラ"の図面を買い取って開発した"Pヴァーゲン(P-Wagen)"↓です。
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※2013年にベルギーのオートワールドにて撮影

Pヴァーゲンは、当時としては極めて革新的なミッドシップレイアウトを採用していました。このミッドシップレイアウトのGPカーの源流は、1922年にベンツ社(まだダイムラー(メルセデス)と合併する以前)が、オーストリア・ハンガリー帝国の空力学者エドムント・ルンプラー(Edmund Rumpler)と共同で開発した"トロッペン ベンツ(Tropfen Benz)"↓まで遡ります。
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この"トロッペン ベンツ"は、エドムント・ルンプラーの提唱した"トロッペン ヴァーゲン(雨滴型自動車)"の理論をベンツ社のGPカーに応用したクルマでしたが、過給機を持たない90馬力の非力な2リッター直列6気筒エンジンだったことで、GPで勝利を飾ることはありませんでした。
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当時のベンツ社で、"トロッペン ベンツ"をドライブしていたユダヤ人実業家アドルフ・ローゼンベルガー(Adolf Rosenberger)が、ポルシェ設計事務所設立の際の出資者であり財務担当であったことも、フェルディナント・ポルシェ博士がミッドシップレイアウトの優位性に目を付けて"Pヴァーゲン"を設計するに至った重要なファクターだと思います。

トロッペン ベンツとは対照的に、Pヴァーゲンは4.4リッターV型16気筒過給機付きエンジンを搭載し、295馬力を発揮しました。
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※2013年にベルギーのオートワールドにて撮影

"750kgフォーミュラ"の説明でだいぶ脱線しましたが、このPヴァーゲンは1934年のタイプAに始まり、1935年にはタイプBへ進化し5リッター,375馬力へ、1936年のタイプCでは6リッター,520馬力へ、1937年には同じタイプCながら6.3リッター,545馬力へと進化します。

当初はPヴァーゲンのミッドシップレイアウトに由来するオーバーステア特性が仇となり、思うような成果が上げられなかったアウトウニオン陣営でしたが、1935年のニュルブルクリンクから起用したベルント・ローゼマイヤーがPヴァーゲンを乗りこなし、コンスタントに勝利を挙げるようになり、1936年のドライバーズタイトルを獲得しました。ローゼマイヤーはこの年、ドイツで国民的なヒロインとなっていた女性飛行家"エリー・バインホルン(Elly Beinhorn)"と結婚し、公私ともに、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せました。

"750kgフォーミュラ"最後の年となった1937年シーズンは、5.7リッター,595馬力の"W125"を導入したメルセデス陣営が優勢となりエースドライバー"ルドルフ・カラツィオラ(Rudolf Caracciola)"がドライバーズタイトルを獲得するも、アウトウニオンとメルセデス ベンツの2メーカーでGPを席巻し、完全にカテゴリーキラーの様相を呈していました。GPは1938年に新しいレギュレーションが施行され、"過給機付きで3リッター以下、NAで4.5リッター以下"の排気量制限が設けられ、6.3リッターV16型気筒エンジンを積んだPヴァーゲンはGPから締め出されたのであった。

このベルント・ローゼマイヤーとルドルフ・カラツィオラのエース対決はGPのみに留まらず、オフシーズンにはGPカーを改造した速度記録車(レコードブレイカー)を用いてアウトバーンでの公道最速記録争いも白熱していました。

1937年の秋、フランクフルト~ダルムシュタット間のアウトバーンで、ベルント・ローゼマイヤーの駆る"アウトウニオン タイプC ストリームライナー(Auto Union Typ C Streamliner)"↓が、「5km,フライングスタート」部門の速度記録で404.5km/hを記録しました。これは公道上で史上初めて400km/hを超えた記録となりました。
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※2013年にベルギーのオートワールドにて撮影

1938年1月28日、記録更新に燃えるメルセデス陣営は、W125を改造したレコードブレイカー↓で、早朝の風が一番穏やかなタイミングを見計らって、同じフランクフルト~ダルムシュタット間での速度記録更新に挑み、カラツィオラが432.7km/hを叩き出して記録を更新します。
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※2018年にメルセデス ベンツ ミュージアムにて撮影

記録を塗り替えられたアウトウニオン陣営は、その日のうちに記録奪還に向かいました。1937年秋に初めて400km/h超えを記録したストリームライナーからさらに空気抵抗を削減した新しいボデー形状のマシンに乗り込んだローゼマイヤーは、約440km/hで走行中にメルフェルデンの切り返しと呼ばれる横風の名所で突風にあおられてコントロールを失い、マシンもろともアウトバーンの外へ放り出されて帰らぬ人となりました。

これまでローゼマイヤーの速度記録会には必ず立ち会っていたフェルディナント・ポルシェ博士は、あまりにも急だったこの日の記録会には呼ばれていなかったそうです。ポルシェ博士は、アウトウニオン陣営の誰も責めませんでしたが「私なら風があることを知っていたら、彼をスタートさせなかっただろう。横からの風には弱いクルマなのだから・・・」と彼の死を悲しんだエピソードが残っています。

ローゼマイヤーの慰霊碑は、まさにこの悲劇の舞台となったフランクフルト~ダルムシュタット間のアウトバーンA5号線上にある小さなパーキングエリア(Parkplatz Bornbruch West)にあります。
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トイレもないような小さなパーキングですが、この標識↓に従って獣道のようなところを進んでいきます。
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続いてこの標識↓が見えたら、さらに細い獣道を進みます・・・汗
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すると見えてきました。
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慰霊碑にはこのような文字が刻まれています。
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BERND ROSEMEYER

DER AN DIESER STELLE
AM 28.JANUAR 38 BEI
RECORDVERSUCHEN
MIT DEM RENNWAGEN
TODLICH VERUNGLÜCKTE

(翻訳)
ベルント・ローゼマイヤー

彼はこの地で
1938年1月28日に
レーシングマシンでの
記録的な挑戦の最中に
命を落としました。
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実はローゼマイヤーの慰霊碑は、10年ほど前にも訪問しようと思ったことがあって、A5号線を南下した際に探したのですが、その時はもうすでに夜で日が暮れていて見つけられませんでした。しかし、今回明るい時間帯に来てその訳が判りました。日が出てないと絶対に辿り着けませんね。。。

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ちなみにかつて公道最速記録を競い合った絶好の最高速度計測区間でもあるアウトバーンA5号線のフランクフルト~ダルムシュタット間には、現在EVトラックの給電用架線が設置されていて、走行中にトラックに給電するシステムの実験区間に設定されているようです。なんか時代の移り変りを感じますね・・・

"ベルント・ローゼマイヤー"
フェルディナント・ポルシェ博士が設計した"Pヴァーゲン"を乗りこなすために、突如として戦前のレース界に現れて栄光を手にし、前人未到の公道400km/hオーバーの記録を打ち立ててPヴァーゲンと共にこの世を去った伝説のレーサー。
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ポルシェ好きとしては、やはりフェルディナント・ポルシェ博士が深くかかわったことが印象としてとても大きいと思いますが、それを抜きにしてもこんなにドラマチックで儚いレーサーは、なかなかいないと思います。

今回の旅でローゼマイヤーの慰霊碑を訪れて、改めて家にある様々な文献からネットの情報までいろいろ調べていたら、こんな長文になってしまいましたが、やはり魅力的なレーサーであることに変わりありません。
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ちなみに冒頭のポスター↑は、たしか2009年にウォルフスブルクのアウトシュタット(Autostadt:VWグループのミュージアム)で購入して、うちに保管していたものです。せっかくなので今回の機会に額に入れて部屋に飾ろうと思います!

最後まで長編にお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m


【参考文献】
・カラツィオラ自伝 二玄社
・スピードのかたち グランプリ出版
・ワールド・カー・ガイド メルセデス・ベンツ ネコパブリッシング
・F・ポルシェ[その生涯と作品] 二玄社
・メルセデス・ベンツ 歴史に残るレーシング活動の軌跡 三樹書房
・グランプリ ブガッティ 二玄社
・FERDINAND PORSCHE THE HERITAGE FROM ELECTRIC TO ELECTRIC (AUTOWORLD BRUSSELLS)
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Posted at 2024/02/18 20:37:45

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この記事へのコメント

2024年2月18日 23:32
はるばる日本からのファンにローゼマイヤーさんも喜んでくれてるでしょう!
アウトウニオンタイプC、なんとも流麗で綺麗なデザインだこと!
コメントへの返答
2024年2月20日 7:03
10年越しにやっと訪問出来たので、喜んでくれているといいですね!

アウトウニオン タイプC ストリームライナーのフォルム美しいですよね~

自分はこのクルマがきっかけで、当時の空力理論に興味を持ちました^^;

このクルマは1930年代に一世風靡したパウル・ヤーライの"ヤーライ理論"の影響を多分に受けた流線型が取り入れられています♪
2024年5月21日 14:20
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