散文 197

もしもし磯野

聞いてくれ

実は

花沢さんに告白できずに ブルマ泥してしまったんだ……


僕はどうしたらいいんだ？






告白はできないが泥棒はできる？




中島のサイコっぷりに

かつおは困りはてた


要するに中島は



コミュニケーション障害もちの豪快な泥棒




内向的なのに危険な行動を容易くしでかす





ジェットコースターは怖いくせに

車はどこでも躊躇なく全開

バトル上等

常軌を逸した速度で闇の中に消えてゆく



そういうタイプ……





かつおは人間は常に矛盾をはらんでいる事を痛感した




ワカメに相談する事案ではないし

姉は近所に言いふらしそう




父の波平に話したら


大事な一本が抜けてしまいそうだ…





かつおは受話器ごしに

声にならない声しか出なかった





数日後

公園の片隅に花沢さんのブルマが捨てられていた



冬の訪れを感じる北風の強い日だった




中島のことだから

ブルマをホームベースに使用しかねない




ホームスチールも躊躇しないだろう






「お〜い磯野ぉ野球やらないか？」






いつもの呼び掛けが何故か怖い






ブルマに向かってヘッドスライディング



乾いた土埃が北風にまう



何をゴールに決めて

何を犠牲にしたの？









賢人と狂人の二面性


それは


速く走るための資質かもしれない








「雨のナカジマ」と呼ばれたＦ1レーサーも元々はストリートガイ



名字も一緒だし…




いつか「釘バットナカジマ」なんて異名をもつレーサーに？





いやはや末恐ろしい逸材かもしれない