NSX 一号機、二号機、そして多くのタイヤ&ホイールセットを通しての考察。リアタイヤのみの交換でハンドルセンターが大きくずれる現象は NSX 二号機でよく発生した。リアタイヤはクルマを直進させようとする。リアタイヤのグリップ力により直進性強度が変わる。リアにグリップ力の強いタイヤを履かせたとき、クルマが直進する(直進しているように感じる)のにハンドルが傾くのは、スラストラインのずれが表出したものと考えている。グリップ力の強いリアタイヤで後輪ベクトルがスラスト方向に強くはたらき、クルマがそのスラスト方向へ走ろうとする。車体中心線とは異なるスラスト方向へ向かうクルマに合わせてハンドルを切った状態で走る、所謂(いわゆる)犬走(いぬばしり)になっているのだ。アライメントをとってスラスト角を整えられるのであればよいが、修正不可能の場合、二号機がそうであったのだが、本来のステアリングセンターとは異なるポイントで見かけ上、直進(実質犬走)させるしかないと考えている。ハイグリップタイヤをリアに履かせることは、スラストラインの簡易検査になると言えそうだ。二度にわたり、きっちりとアライメントをとった R34 スカイライン GT-X は、リアタイヤのみを別のタイヤ&ホイールセットに交換してもハンドルセンターのずれは感じられない。ちなみに、最もグリップの強いタイヤを履かせて、アライメントをとった。これに対し、NSX 二号機はリアタイヤの左右を入れ替えてホイールに組み直して装着しても、ステアリングは同じ方向に傾いた。この実験を通してタイヤにではなく、車体に問題があることが判明した。四輪にグリップ力の低い片減りしたタイヤを履かせ、その組み合わせでハンドル真っ直ぐ、クルマも真っ直ぐに走らせることができたが、真理の探究からは程遠かった。今、凝(こ)っている R34 スカイラインは AT であるし、トランクの塗装は痛んでいて一部錆で浮いてきているし…と市場価値はゼロであるが、アライメント研究での利用価値は実に高い。アライメントと走行の実態を学ぶ最高の教材となっている。