新型ステラに乗ってきました。
試乗車のグレードはアイドリングストップ機構「エコアイドル」搭載の「L Limited アイドリングストップ・2WD」、ボディカラーはブライトシルバーメタリックです。
ご承知の通り、新型ステラはメーカーの富士重工(スバル)のトヨタ傘下入りを受けて、同じくトヨタ参加であるダイハツの主力軽自動車・ムーヴのOEM車(相手先ブランドによる供給)となりました。
外観の違いはメーカー・車名バッジとサイドマーカーの色(ステラ:白、ムーヴ:オレンジ)程度、それからステラにはフロントスタビライザーが廉価グレードまですべて標準装備となるようです。
ムーヴにはデビュー後に乗って来ていたのですが、試乗記をまとめていると東日本大震災が発生して、のんきに試乗記をアップしているどころではなくなってしまいました。今回ステラの試乗記で、ムーヴの長所短所も一緒にレポートしたいと思います。
○だった点
・低燃費
試乗中の燃費はディスプレイ表示値で18.0km/Lでした。常時エアコンオン・成人男性二人乗車・市街地オンリーという、燃費に好影響を与える要素が何もなかったとしては、非常に優秀な数値だと思います。この車はムーヴのアイドリングストップ車同様、10・15モード27.0km/Lという低燃費が売り物ですが、空いた郊外の道や高速を一定速巡航するのであればこの燃費は十分達成できるでしょう。
・有効なアイドリングストップ機構
試乗車のL Limited アイドリングストップにはアイドリングストップ機構「エコアイドル」(ちなみに「エコアイドル」はダイハツの登録商標)が備わっています。このエコアイドルはちょっとした停車時にもエンジンが停止し、また少し前のアイドリングストップ機構ならばエンジンが停止しなかったようなエアコン使用時でも作動するため、燃料消費が軽減されます。
メーター内のマルチインフォーメーションディスプレイにアイドリングストップの積算時間・経過時間が表示されるのも楽しくエコドライブするのを助けてくれます。
・広い室内空間
先代ムーヴから引き継がれている美点ですが、室内空間、特に後席足元空間の広さは驚異的です。誇張でも何でもなくまさにリムジンなみの空間です。
ダイハツの軽は室内空間づくりがきわめて巧みです。嫁さんが新規格になったばかりの時代の軽(ライフダンク)に乗っているのですが、大人が普通に後席に座って前席シートバックと脚がギリギリという程度の空間しかありません。車体の外寸(全長・全幅)が全く同じとは到底思えず、ダイハツの技術力・パッケージングの進化を強く感じさせられます。
・荷室から操作しやすい後席
リヤシートバック裏に後席スライド用のレバーがあり、わざわざ後席に回り込まなくてもリヤシートをスライドさせることができ、非常に便利です。後席を最後端までスライドさせると荷室はほとんどないので、通常は後ろにセットして広い後席空間を確保して、荷物があるときにスライドさせるという使い方がいいでしょう。(ちなみに後席を最前端にセットしても、なんとか座れるだけの足元空間があります。)
気になった点
・アイドリングストップ機構の洗練度
アイドリングストップ機構でエンジンが再始動した時のショックが他メーカーのアイドリングストップ機構搭載車に比べると大きいように思います。
また、もう既にムーヴのアイドリングストップ車がよく走っているのですが、もともとスターター音が大きいので、再始動時にそばを通るとびっくりすることがあります。
それからこれはメーカーの考え方が現れる部分なので、一概に良い悪いとは言えないのですが、ブレーキペダルを踏み込むことでエンジンをドライバーが任意で再始動できるようにしてあるのですが、私は停車時にブレーキを床まで踏み込む癖があるので(踏み込みが軽いと動き出したり、エアコンのコンプレッサー作動時に動き出すことがあるのが怖い)、せっかく止まったエンジンがすぐに再始動することがありました。
日産マーチの備わっている、停止中でもハンドルを切ると再始動できて、交差点での右折待ちからの発進時の安全性が高まるという機能はステラにはありません。
アイドリングストップ機構の違和感のなさというか完成度を、代表的なアイドリングストップ車で比較すると、
マーチ>ステラ(ムーヴ)>アクセラ
という感じでしょうか・・・
・減速時のCVTのベルト音
これはステラに限らずダイハツ製の軽に共通していますが、減速時の「ヒュ~~ン」というCVTのベルト音が他社製CVT車よりも大きくていかにも安っぽく、気になります。スバルオリジナルの軽は早くからCVT車を採用した車が多かったのですが、こんな大きな音がする車はありませんでした・・・
総評
富士重工がトヨタ傘下となって、それまで富士重工独自開発されていた軽自動車各モデルは、続々とダイハツ車のOEMに切り替わっていっています。ステラがダイハツムーヴのOEM車に切り替わったことで、いよいよオリジナル富士重工製の軽自動車はサンバーを残すのみとなってしまいました。
富士重工の軽自動車生産には、名車・スバル360以来連綿と続く非常に長い歴史があり、また四輪駆動や四輪独立懸架、4気筒エンジンやCVTをいち早く採用したりと、技術面でも他社の軽自動車をリードしていました。
ただ、そういった技術的優位性は、軽自動車のコアターゲットであるおばちゃんやおねえちゃん達にとってはどうでもいいことで、色とか形がかわいいとか運転しやすいとか便利な装備が付いているという方がよっぽど重要です。
また、技術的に優れているがゆえに技術至上主義というかオタク的になってしまっている面がありました。例えばサンバーは4気筒エンジンであるが故に低速トルクが薄く、他メーカーの軽トラ・バンよりも荷物満載状態での発進がしにくかったり、先代ステラもハイト軽は室内の広さが売り物なのに、後輪独立懸架にこだわるあまりに、リヤサスペンションによって室内空間を侵食していて、ライバル各車よりも後席や荷室が明らかに狭かったりしました。
こういったことを考えると、技術オタクになってしまいユーザーのニーズに応えていなかったスバルの軽が消えてゆくのは、致し方ないところなのかなとは思います。
しかし、スバルの軽、そして今後登場が噂されているトヨタの軽はダイハツ製、日産・マツダの軽はスズキ製、スズキ・日産に接近する三菱は今後が不透明、系列子会社に軽自動車の開発・生産を丸投げしていたホンダに一時期軽自動車の販売中止の噂が流れるなど、最終的に軽自動車はダイハツ系とスズキ系に集約されてしまうのではないかという状態です。軽自動車の多様性・選択の幅がだんだんと狭まっているのは、ユーザーにとっては決して有利なことではありません。特にスバルのように特色があったメーカーの製品が消えていくのは非常に残念です。
一足先にダイハツから供給されているルクラ(=タントエグゼ)、プレオ(=ミラ)、ディアス(=アトレー)とも、一応ラインナップされてるよという程度で、ほとんど売れてないようです。トヨタが「スバルの軽なんて、一応品揃えとして置いときゃいいか・・・」程度の認識しか持ってないとすれば、何やら暗澹とした気分になってきますね・・・
ステラのハードそのものは、出来の良い先代170系ムーヴを引き継ぎ、このクラスの水準以上の仕上がりだと思います。ムーヴがステラかの選択は、ブランドの好き嫌い・ディーラーや担当営業マンの対応で選べばよいでしょう。
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Posted at 2011/06/06 15:13:32 | |
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