何でそんなに一生懸命？

　山手線（正式には東海道線らしい）の新駅「高輪ゲートウェイ」だが、不人気を極めているようだ。まあ、一般公募しておきながら130位という低位のものを採用したのだから、疑問や反発が生じるのは無理もない。しかし、その駅名になることで一般の人々にどんな迷惑が、実害が発生するというのだろう。

　「駅名が長いので、筆記したりタイプしたりするのが大変」なんて言う人がいる。しかし、普通の生活をしていて、自分の使う駅名を頻繁に筆記したり、タイプしたりするものだろうか。筆記はともかく、タイプであれば普通のIMEなら予測変換で出してくれるのだから、さほど苦労はないように思う。

　「響きが悪い」とか「親しみがもてない」なんて言う人もいる。でも、別に駅名にそんなものを求めなくてもいいんじゃないかと思う。駅の機能がきちんと果たされるのであれば、名前なんてたいした問題ではないだろう。省略して「高輪ゲート」とか、単に「高輪」とか呼んだっていいわけだしさ。「高ゲー」とか「なわゲー」ってのもありかもｗ

　高輪と縁もゆかりもない田舎の人間の私、そもそもどうでもいいと思っている。むしろ、爆笑問題の漫才ネタ（高ノ岩ゲッタウェイ）になっていたので、個人的にネタとして楽しんでいる面もある。それにJR東日本という一営利企業が自社の施設にどんな名前をつけようが、社会通念上問題がなければ周囲がガタガタ言うことじゃないとも思う。今回問題なのは、公募したのに低位のものを採用したというその一点である。その理由をサクッと公表した上で、強行しちゃえばいいだけなんだろうって思うんだよね。

　私は「署名で自分の思い通りにしようとする」のが大嫌い。もちろん、世の中には意味のある署名はたくさんある。しかし、今回の「駅名変えろ署名」は単なるパフォーマンスとしか映らない。前述したことと重なるが、署名を提出した人たちの言い分で傾聴する価値があるのは「選考基準の不明瞭さ」だけである。「歴史を踏まえていない」なんて言うけれど、必ずそうしなければならないという内規などはないはずだ。「語感が悪い」なんてのも単なる好き嫌いの問題である。駅名の、それも山手線の駅名変更となれば、手間も金も相当掛かるはずである。思い込みや好き嫌いでそういう負担を強いることが正義なのかという疑問は拭えない。仮に署名した人たちが「システム変更や看板発注変更などに掛かる諸費用の一部を負担する」みたいな姿勢を打ち出していれば少しは共感できるんだけどね。４万８千人の署名を集めたのなら、一人あたり1,000円募金してもらえば4,800万円になるんだしさ。でも、1,000円払えって言うと、署名しないで逃げる人も多いんじゃないかな。もちろん、JRもお金なんかは受け取らないと思うから、現実的な手段ではないけれど、いわゆる覚悟というか信念の強さの例え話だ。

　金も労力も提供せず、名前を紙に書き散らすだけで何かを成し遂げた気になるメンタリティ。私には理解できない。大抵の場合、必要になるのは不特定多数の人間の名前が書かれた紙ではなく、福沢諭吉の肖像が印刷された紙だと思うんだ。