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2022年式アリアB6感想文 - アリア

レンタカー

2022年式アリアB6感想文

おすすめ度: 3

満足している点
1.センスある内装
2.高い静粛性
3.力強い加速
4.一般人がBEVに期待する性能を満たす
不満な点
1.強加速時のスタビリティ
2.パッケージングの煮詰め不足
3.光が当たると見えない空調スイッチ
4.A/Cの騒音が気になる
5. 受注停止・納期問題
総評
●量産BEVのパイオニアが放つ世界戦略車第二弾
世界で初めてのBEV量産車の栄光を日産がリーフで勝ち取ったのが2010年の事だ。リーフの他に三菱i_MiEVも発売されてにわかにBEV普及の空気感が出た。世界的に原油価格も高くなり、1バレル100$を超えるなど、エネルギー価格の高騰がリーフに対して追い風になると思われていたが、実際は2016年頃までに40ドル/バレル辺りまで落ち込むことでICE(内燃機関)車の息の根は止まらず、電動車はトヨタホンダを中心とするHEVが中心的な役割を果たしていた。



BEV目線だと、2015年のディーゼルゲートでEVに光が射したかに思えた2017年。日産は2代目リーフを発売し、航続距離の延長が行われたものの、ボディ系に投資されずビッグマイナーチェンジレベルの変更しか加えられなかった。

以後の6年ほどで目新しく勢いのあるテスラや中国の国策によって手厚く保護されて急成長し、競争力を持ったBEV群、自らの不正によってEVシフトを余儀なくされた欧州勢のブランド力を使った新型車攻勢にシェアを奪われてしまっていた。

日産はリーフだけでは戦えないと判断し、2019年の東京モーターショーに2台の市販車に繋がるコンセプトカーを出品。日本で普及の可能性が高いBEVコミューター+αの「サクラ」と2020年代のトレンドに沿った上質なSUV「アリア」の2台である。

世界的なトレンドを意識すれば、クロスオーバーSUV事は当然の事である。アリアはBEVが航続距離の問題を解決するためにバッテリ容量を増やすことにしたので、大型の車体とコスト転嫁を考えて更に高価格帯の高級SUVとしているが、世界の競合メーカーを考えても高価格帯のラインナップが充実している。

ボディサイズは下記の通り。



VW ID4とよく似た諸元で「大きい電池積みたい」「側突から電池守りたい」「どうしたって電池のせいでフロアが高くなるからSUVルックでバランス取りたい」という思惑が伝わってくるが、現在の世界中のBEVは、ガソリン車とのバリエーション違いでない場合はこういう諸元に収斂(しゅうれん)してくるのは面白い。

デザインは最近の日産のトレンドの中でも一層モダンでスタイリッシュになった。特に内装はスッキリした横一文字インパネや広々とした左右連続フロアなど見た目に従来の車と異なる価値が分かる様になっている。デザイン重視の弊害もあるが、ショールームアピールは抜群であろう。

着座するとやはり大きなバッテリーを床下に積むBEVらしく高床式である。ペダルポジション付近は寸法が確保され、以降スロープ上に駆け上がり、Rrシート足元付近ではバッテリーの存在を感じずには居られないほどフロアが高い。確かにセンタートンネルがないのでフラットなフロアだが、その売り文句に騙されてはいけない。

この点、各車考え方がバラバラで、初代リーフの時は電池が分厚いことは仕方ないので、一部をへこませつつ絶対的には高床とし、ヒップポイントは通常の2BOXカー相当なのに踵から着座点までの段差が不適切なほど小さかった。

近年の新型車を見ているとBEVシフトを睨んで予めフロアを高くしている車も散見される。ICEもラインナップされているのにBEV優先で最善では無い着座姿勢に統一されるのは残念だ。

さて、アリアのように航続距離も確保したいBEV専用車としてはあくまでも電池優先で線を引きたいところだ。その意味でアリアのクロスオーバーSUVというエクステリアデザインはBEVの弱点をカバーするには向いている。腰高でも「当たり前」だと思って貰えるのは大きい。

写真は日産ギャラリーの写真集から入手した。




アウトランダーと較べるとロッカー正面からフロア正面の段差が小さいことが分かる。乗降性だけなら、足さばきに有利で低い方が良いのだが、着座姿勢の不利さはこの写真からも分かる。後席に座って見ると太腿裏がシート座面から離れて浮き上がるので、大人を乗せた長距離ツーリングだと疲労しやすいだろう。ID4だと、シート座面角度が立っているのでもっと踵から着差点の段差が小さく、だらんと座らせる割に着座姿勢が乱れないのが抜かりない。更にbZ4Xは類似したパッケージングだがシートはアリアのように角度が寝ており太腿裏が浮く。この様にBEVとしての横並びの中に入るがICE含めたあらゆる車との比較をすると決してアリアは全方位で優れた乗用車では無い。

かつてはしご形フレームにボディを架装して成立していた乗用車が、ペリメータフレームなどを採用して低床化に努めてきた。モノコック化、その後のFF化によってこれらの模索は決着がついたようであるが、再びBEVシフトによって自動車の基本的な課題が再登場するというのは、歴史は繰り返すとでも言えば良いのか。駆動用バッテリーの薄型化の為の研究開発は自動車の各機器レイアウトのためには重要である。

走らせると、BEV高級SUVらしく速くて静かな運転体験が可能だ。ハイテク感のある内装から見る景色が加速によってスーッと流れていくのは中々快感である。

操縦性や乗り心地に特筆すべき点は無いがこの加速と静粛性があればディーラーで試乗したお客さんは1ブロック走っただけで「これはすごい、感動した」となるだろう。最近は試乗して買う人も随分減ったそうだが、納車後も所用でお客さんを乗せれば「この車スゴイですね」とお世辞抜きにほめられて鼻高々かも知れない。

商品力は高いと私は思っているが、問題はアリアが「買えない」と言うことである。現在ラインナップされてるのはB6という航続距離が短い方のFFのみである。



挙げ句の果てにB6のFFですら受注停止に追い込まれている。

サプライチェーンの脆弱性は日産に限ったことでは無いが、かつてケイレツを解体してグローバルサプライヤーから大量一括取引をすることでコスト削減を図った手法によって海外のトラブルや外交上の問題などが日本での自動車生産に影響を及ぼすようになっている。

価格はリーフ60kW仕様と近接している。プレミアム感あふれる内外装と天秤にかければ個人的にはアリアを選びたい。

ID4とは価格帯が被っているが、装備が見合う上級を選ぶと648.8万円と高額になる。bZ4Xは最近になって一般向け販売を開始した。こちら大きな駆動用バッテリを積み航続距離も567km(先日追加されたFF_Gグレード)を誇り、は3-4ヶ月で納車可能とされている。しかし550万円スタートという価格はアリアより高く、乗ってみると走り出した瞬間から騒がしく。パッケージングも甘く、更に内装もコストは掛かっていない。つまりバリューフォーマネーでは明らかにアリアの方が良いので競合性がない。普通に買える車だったら国内の販売や利益に対してかなり貢献しそうな車であった。(既に過去形)

●まとめ

日産がリーフの経験を活かして開発したアリアはBEVに求められる要素を備えながら、高級車らしい内外装も与えることでリーフと較べて価格は高いが手を出しやすい商品だった。

しつこいが、BEVで欲しい走りの質感はクリアしているので、日産ファンでこの価格帯の車が買える人なら候補に加えて頂いても良いかなと思える。



BEV故のフロアの高さは競合横並び上許したとしても、自動車として守りたいドラポジや加速時のマナーはもう少し改善を望みたい。問題はそれ以上に受注を停止しており販売拡大が見込めないことだ。発表から3年後の2022年に販売開始した時点で鮮度が落ちている。そこに納期1年以上となると待っているのが馬鹿らしくなる人も居るのでは無いか。
デザイン
4
●デザイン
エクステリアデザインは近年の日産が意識している「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」を織り込んだBEVらしいスタイリングである。日本市場を軽視している割には日本ブランドとしての立場を大事にしているらしい。



全高が1655mmとSUVとしても背が高めで、ICE車では無いのでFFと言えどもFrオーバーハングが極端に短いことが特徴的だ。大胆に削ぎ落とされたコーナー部は軽快さを感じる。モーターショーモデルで感じられた格好良さを考えると量産型では各部のバランスが調整されたのか真横から見ると少々厚ぼったく見える、Rrドアが長く間延びして見える部分もあったが試乗車が真っ黒だったと言うことも、ホイールアーチモールやルーフを黒く塗るテクニックが相殺されるカラーリングだったのかも知れない。





2019年ショーモデルと量産型を比較すると主にBピラー以降が大きく異なり、ルーフ頂点やRrオーバーハング部が修正されている。ただ、ショーモデルは食品サンプルのような物なので実物+αの背伸びは太古の昔から行われていることだ。



ちなみに上記のお店はサンプルは本当に信じない方が良い。

是非アリアは21インチを履かせて明るい色で斜めから見てほしい。BEV特有のFrオーバーハング以外は意外と常識的な見た目で例えばベルトラインモールの段差があったり普通の量産車のようなクオリティであるが、エクストレイルと較べてもスタイル派であり棲み分けも出来ている。

インテリアデザインもショーモデルを見て心ときめいた人を裏切らない。布張りのインパネは世界で初めてエクセーヌを貼ったローレルや後のティアナを想起させる。伝統的なFRセダン的な感覚では無くモダンなFF車らしい横基調の軽快なインパネ、その流れを邪魔しない2本スポークのステアリングなどシンプルなのに安っぽくないデザインは
日産らしい。足元のすっきり感は80年代前半ののミニカやカローラ、サニーを思い出した。センターコンソールに脚が当たらないことも広さ感の為には重要だ。




シートのパターンとフロアマットが呼応しているのも面白い。フロアマットは7.48万円の石庭調というデザインで、実は最上級仕様ではブラックライトを当てると青く光るケバいデザインもある模様。

この他インテリアデザイン的に気合いがあって良いな、と思うのは前後ドアでデザインが途切れないようにBピラーガーニッシュにも布が巻いてある。後席に座った時の見栄えは非常に素晴らしいだろう。(担当者はステッチ入れたかっただろうな・・・。)



逆に、イマイチなのは空調スイッチである。2013年の日産デイズで既に静電スイッチを採用し、先進感はあるけど使いにくいと感じていた。しかしアリアは更にその上を行く。



ちょっと日差しが入っただけで全然見えなくなるではないか。



I/Pの木目調オーナメントから操作位置だけが透過して見える仕組みなので直射日光はお手上げだ。今は音声認識もあるので「構わん。やれ!」と日産の中で判断されたのかも知れないが、せっかくお金をかけて設定するならちゃんと使える物にして欲しい。
走行性能
4
限られた時間だったが市街地・高速道路・農道を走らせた。それでもはっきりアリア(≒BEV)の魅力が伝わるほど個性があった。

ドラポジは合わせづらい。シート高さを下げるとチルトステアリングがそれに着いてこられず、上目の位置までしか調整できない。



スタートスイッチをONにし、前後電動可動式センターコンソール上の電制シフトのボタンを押しながら手前に引くとDレンジに入る。ちょっと分かりにくいEPBスイッチを押してやれば発進できる。(EPBなので勝手に発進も可能)



走り始めた瞬間に「おおっ」という感じで感動できる点がアリアの良いところだ。モーター駆動なので外からの音をどれ位遮断できるかが静かさのキーポイントなのだが、アリアはタイヤが転がる音も車室外の音も小さいのでおおっ!と我々一般人が期待する通りの体験が走り始めから感じられるのだ。そこからの加速もシームレスでアクセル操作に対する反応も早い。

レアアースを使わない(!)新開発モーターは300Nmという大トルクと160kW(218ps)というハイパワーを達成。車重が1920kgという巨体ながら日常使いで遅いと感じさせることはほぼ無いだろう。

私のように「一回は床まで踏んでみる」的な人は少なく、高性能を使い切らずハーフスロットル状態で力強い方が実際はありがたい。走り出しから300Nmを発揮するモーターの特性はそれに見合っている。



せっかくなので料金所からの加速で床まで踏んでみた。0-100km/hが7.5秒という俊足だが、料金所近くの荒れた(うねりもあり)路面ではステアリングに大きなキックバックが伝わりFFゆえにタイヤが滑ってトラクションが抜けがち(Fr1050kg/Rr950kg)でアリアの本当の実力は後輪にモーターが追加されるe-4orceを買わないと楽しめないのでは無いか。それでも「うわぁぁぁモーター力強いやん!」という感動は確かにある。




瞬発力だけで無く、高速道路でもアリアはゆったりとしたクルーズが可能だ。風切り音も小さく、車体の大きさもここでは気にならない。BEVゆえに航続距離が気になって私はぶっ飛ばす気持ちにはなれない。高速道路のSAにも高速を降りた後のカーディーラーにもは急速充電スポットは存在するが。電池の寿命に対して悪影響があると言われている物を多用するのは気が進まない。(5年くらい乗って買い換える人なら問題ないと思うが)

路面の悪い地方一般道を走らせているとパッチワーク路面などでボコボコと路面からの入力でこもる感じが強めに出るのは車重が重くそれに見合った剛性が確保できていないのかなと言う感じである。特にノーマルルーフなので大きな面積の平たいパネルが上下方向に動かされるのだろう。

ただ、この様な振る舞いは妙に欧州的だと言えば確かにそうだ。子音の強い英語(など)の周波数は2,000~16,000Hzだとされていて、高周波ノイズが処理していないと車内での会話がしにくくなって「うるさい車」と感じられてしまう。200Hz以下のこもり音領域はさほど気にされないのが一般的とされている。一方で会話に使用する周波数帯が母音の強い日本語の周波数は125~1500Hzであるので、こもる車は実際に会話が聞き取りにくい。(路線バスはよくこもるので実感しやすい)

アリアは路面起因の低周波は気になるが、そもそもE/Gがないので低回転時のこもり音や各気筒の慣性力によるこもり音、或いはトルク変動を拾ったこもり音など多くのこもり音が起きえない。だからこそ路面入力ではバレてしまうのだろう。

看過できない音や振動を撒き散らすE/Gが無いと言うことは、それだけでNVへの期待は高いものになる。(逆にモーターやインバーターの高い音を隠さず聞かせる同門のアウトランダーPHEVの様にむしろBEV感のアピールに使っている例もあるなど今はアイデア次第で何でもありだ)

注意して音を聞けばA/Cの作動音が聞こえてきたりE/Gが無い事にって今まで隠されていた音が聞こえてしまう例もある。通常はオーディオを利用しているだろうから、それでキャンセルできるようなレベルにはある。

目に見える部分だとサイドドアガラスに遮音膜を挟んだ「アコースティックガラス」が採用されている。



など恐らくモーター音や風切り音(ピュー・シャー音)に効果があるアイテムが採用されているのだろう。またボンネットを開けると、カウルルーバー部のシールが前後方向に切れている。



また、ヒンジ部分は日産流儀の短冊状スポンジ貼り合わせシールが使われている。E/Gからの音が入らないので重要度はそれほど高くないのだが普通の対策は一応入れてあった。

乗り心地は試乗した限りは路面の凹凸を拾って突き上げるような感じは無く、回生ブレーキも自然だ。BEVと言えども乗り心地や操縦性、制動性能などはICE車と特に変わらないのでこの辺りは90年以上自動車を作り続けてきた日産自動車ならノウハウも生きてくるはずだ。

乗り味に関しては一般人がBEVに期待する物はちゃんと備えている。静かで速いと言う点に関しては日産アリアはよく心配りされている。誰が乗っても「静かで速い」という感想に近づくだろう。
確かに全開加速時のモーター音とかA/Cのオンオフで・・・とか路面入力の低周波音がみたいなアラもあるがオーディオで何とか誤魔化せるレベルの商品性だ。

動力性能はビッグトルクを使いこなせていないので、またNV性能は乗り心地がフツーなのでそれぞれ一つずつ減じて4★とした。
乗り心地
4
燃費
3
フル充電から乗ったわけでは無いが私が試乗した後では「65% 269km」と表示されていたので100%換算で414km程度となる。公称値の470kmに12%届いていない。使い方にもよるだろうが一声500kmは走って欲しいなと言う私の個人的な期待値よりは短めである。



BEV各車の電費を見ていると、日産系だけがWLTC電費が160Wh/kmと高い。つまり1km走るのに必要な電力が大きいと言うことだ。競合の水準を考えれば130Wh/km位は達成して欲しいところで、もし実現出来れば500kmは達成できるだろう。

こうした改良も現行モデルの受注分をさばききり、アリア売れないことには改良の原資も手に入らない。

バックオーダーが裁けないうちに短期間に改良を繰り返してしまうと、毎年パワーアップして顰蹙を買ったR30スカイラインRSターボの様になってしまう。

納期遅れ・受注停止が全てにおいてアリアを狂わせている感がある。
価格
3
内容は総評に記載

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