フォルクスワーゲン Tクロス

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2020年式VW T-Cross感想文 - Tクロス

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2020年式VW T-Cross感想文

おすすめ度: 3

満足している点
1.健康的なパッケージング
2.高速道路での安定感
3.過給とはいえ1Lと思えぬ力強さ
不満な点
1.直3のブルブル振動
2.耳が痛くなるこもり音
3.市街地にマッチしない変速機
総評
●高ライズ
2019年に日本で発売されたT-Crossは2021年現在VW最小のSUVである。元々はVW up!のSUVを開発していたが中止となり、代わりにポロベースのSUVが開発されてT-Crossと名付けられた経緯があるらしい。

T-Crossは2019年に発売されたダイハツロッキー/トヨタライズとよく似た立ち位置である。当時、SUV人気がBセグメントのにもどんどん降りてきており巨大量産車メーカー2社が似たようなコンセプトのクルマを持ってきたことは非常に面白い。スタイリングもよく似た傾向であると私は感じた。諸現値を確認すると、実はヤリスクロスの方がキャラクター的には類似するが、商品としての立ち位置はロッキーに近いのではないか。



VWらしい真面目感を前面に出したエクステリアデザインと、期待を裏切らない内装の質感はBセグとして十分納得がいくレベルだ。居住空間も決して大きくて余裕があるとは言えないまでも4人家族(我が家)くらいなら不満が出ないレベルにはある。しかもロッキーやヤリスクロスには備わらないシートスライドや植毛基材のデッキサイドトリムなど荷室の使い勝手は2ランク上。

走らせると、1L直列3気筒ターボエンジンの力強い走りに感心した。高速道路でも追い越し車線を余裕で走りきれる動力性能とシャシーの安定感は使い古された表現ながら、さすがアウトバーンの国のクルマだと言える。こんな小さなクルマでも走らせると国産車ではオーバークオリティなレベルの走りを見せる。

一方で全域で分かるブルブル振動とこもり音は良路を走ると顕著に顔を出す。なんとなく高級車のような高周波の静かさを感じる反面、エンジンから来るこもり音は期待外れのレベルである。振動自体は近年の3気筒エンジンと似たようなレベルなのだが、こもり音が特に気になった。



今回の試乗車の仕様(Style+デザインPKG+セーフティPKG)で車両本体価格364.3万円。私にとっては「えっ?ホントに?」と言いたくなる価格だ。みんなに「これ買いなよ」と言えるような価格帯では無いが、パッケージング的な真面目さは悔しいくらい立派だ。しかしセカンドカー需要や市街地メインの使い方なら遙かにロッキーの方が優れていてお買い得だ。某総括コラムで「ロッキーをアウトバーンで乗ったらどうなるか。オレは絶対乗りたくない」などと書いていたが、そりゃアウトバーンを走るならT-Crossの方が数段優れているだろう。しかしここは日本。日本市場を考えるならロッキーの方がT-Crossの美点と日本での使い勝手を兼ね備えているのではないか。ロッキーの質感・静粛性(特に静粛性はひどい)が向上すれば素晴らしいのだが、市街地に強みがあるシリーズ式ハイブリッドを追加したあたりロッキーはこれからも街角メインのSUVとして生きていくのだろう。それではT-Crossをどんな方に勧めれば良いか。

T-Crossはそのメリットとデメリットが明確なので前席優先のシングル/カップルなら不便は無いし、パッケージング的には我が家のような子育て世代の最小単位のファミリーカーにもなりうる。ただ、市街地中心の使い方では、こもり音や振動、DSGのギクシャク感など良さが引き立たないので交通状況の良い郊外在住の方や、都市生活者だが、休日の中長距離ドライブのお供などであれば輝ける。決してお買い得な車では無いが、VWらしいきっちりした真っ当さが残されており、これは!とハマった方向け。

私自身は6速MT車があれば何とか「良質な最低限度のファミリーカー」として乗ってみたいかなと思うがVWはそういう部分においてトヨタ以上にドライなので難しいだろう。
デザイン
4
ボディサイズは既に示したとおり。全長は4115mmとコンパクトサイズだが欧州車らしく車幅は1760mmである。2021年としては普通のサイズなのだが、おかげでヒエラルキー的に小さい車なのに堂々として見える。実車を近くから見てもプレスラインがはっきりしていたりパーツ間の隙間が狭く、隙詰めのシール部品が追加されている点は品質感(壊れる壊れないでは無く)を感じた。ラジエーターグリルの奥にアルミ丸出しの部品が見えず、しっかり高見えする点はクラスレスな魅力だ。



フロントマスクはプロジェクター式LEDヘッドライトの間に天地幅の広いラジエーターグリルが位置し、部分的にメッキがあしらわれている。SUVらしさはその下のフォグランプやアンダーガード風のバンパー意匠で表現されている。本来のT-Crossは短くて背高な真面目かつ真四角パッケージ。そこをアンダーガード風のデザインやヘッドライトによってSUV的な頼もしさとちょっとだけラウンディッシュな立体感を出して演出している。

サイドはVWやアウディ特有の指が切れそうな鋭利なプレスラインは長年乗ると塗装が削れてくるだろうが、日本車では味わえない魅力と言える。(この鋭利なプレスラインを実現するためには、中間工程の金型が余分に必要になる。文字通り金のかかる意匠なのだ)




Rrビューはロッキー/ライズとよく似たイメージなのが興味深い。ワイド感を強調するRrコンビランプ一体の大型ライセンスガーニッシュ(ちゃんと光る)で少しハイテク感を感じたが、樹脂のヒケが認められて実際の品質はさほど良くないのは気になった。



インテリアもVWらしい真面目な印象だ。さすがに全然ソフトパッドとかリアルマテリアルの触感とかに期待はできず、硬質樹脂で構成されたインパネやドアトリムはカッチカチだ。少しでも遊び心を訴求したかったのか助手席正面にはカラーフィルムで幾何学パターンが印刷されたオーナメントは目を引く。ちょっとオレンジはやりすぎかなと思うが、試乗車はブラックだったことが救いだ。それ以外は大した特徴はない内装なのだが、ところどころピアノブラックや剛性感のあるスイッチのタッチでVWらしさをアピールしているのは流石だ。(日本だとスズキがこういうイメージに近いと私は思う)



スピードメーターは上級グレードにMOP設定でフル液晶タイプが選べるが試乗車は標準仕様の自発光式メーターである。今時オールドファッションかも知れないが、回転計と水温計、速度計と燃料計が配置されて中央にインフォメーションディスプレイが着くという15年くらい昔から定番になっているレイアウトだ。デジタル時計が主流となった後でアナログ時計が再評価されるように今後はこのような機械式メーターも懐かしがる動きが出てくるのかも知れない。

マルチメディアは8インチディスプレイオーディオが装備されている。今時この手の「コネクティビティもの」が無いと若いユーザーにアピールできない!と各社が模索を続けている。「ナビ着いてるじゃん」と喜んでいたものの実はナビ機能は無く、スマホと連携させて初めてGoogleマップでの道案内が出来るというものだ。スマートフォンを常用しているものの、こういうところに乗り遅れているなぁと少し焦りも感じた。これの影響でA/C吹出し口が少々下過ぎる位置に位置している点は特徴と言えば特徴だ。
走行性能
3
最初に路面のきれいな広くて車のいない駐車場で完熟走行を行った。



スタートスイッチで指導してセレクトレバーをDに入れるとDSGがクリープを作り出しながら走り始める。まず驚いたのは1L3気筒ターボエンジン(116ps/20.4kgm)のこもり音とぶるぶる振動だ。バランスシャフトを持たないというT-Crossのエンジンは、感覚的に1.8Lクラスの力強さを持つ反面、どうしてもエンジン起因の振動騒音の悪さが耳につく。

新車なのにアイドル振動が出ている事も驚き(最近の新車はアイドル振動なんて出さない)だが、ゆっくり加速させると低周波のこもる感覚が強い。この様に極良路ではレベルではエンジンの主張が強過ぎて乗るのが嫌になってくるほどだ。更に、A/C配管の中を冷媒が通る音も結構目立つのでガスが入っているという証明になること以外は、違和感しか無い。

こんな風に走りの第一印象はNVの悪さから最悪だが、驚くべき事に駐車場を出て一般道を走らせると印象が変化する。

実際の道路はパッチワーク補修やうねりが存在するし、荒い路面もある。道路も不規則な曲線を描いていることもあるが、こういったリアルワールドの路面ではエンジン由来の振動騒音が路面によるモノと混ざり合って隠されてしまうから印象が良化するのだろう。

その分、リアルだからこそ気づかされる現象もある。生活道路を走っている際、スロットル操作に対するレスポンスが悪くなるシーンがあった。セオリー通りじわっと踏まず、前が開いたからちょっと加速して、すぐにアクセルオフ、再びちょっと加速するようなシーンでは一瞬加速をためらうようなドライバビリティに欠ける振る舞いは都市部の走行では私以外に気になる人も出てくるのではないかと思われる。(こんなこと指摘しておきながら、実際にレスポンスが良ければきっとギクシャク首が前後に揺すられるだろう)



基本的に1Lターボエンジンでも十分頼もしい走りを見せてくれる。1名乗車なら上出来で2名乗車でも十分満足。4人乗車でも走れるよ、という感じだ。DSGは7速もあるので一般走行でも細かく変速して小気味よい。MTベースと言いながらショックレスに最適なギアを選ぶ様はツインクラッチ式ならではの魅力だ。市街地を走っていると動力性能的には不満は無く、不満はNV性能に集中する。

ホイールは16インチと17インチの設定もある中で最も大径の18インチを履いている。前席では乗り心地性能も満足できるが、後席の乗員からは突き上げが酷いとクレームが来た。近年のデザイン傾向は、「どれだけ大径タイヤを履けるか競争」だ。そんな中で個人的には未試乗ながら17インチくらいがデザインと機能のバランスが取れているかなと感じる。

使い勝手の面では、最小回転半径5.1mの性能と全長の短さから意外と普通の道なら不便さを感じることは無い。コンビニ駐車場くらいなら全く困らないが、やはりちょっと古めの駐車場では車幅が効いてくる。ドアが短い点は有利だが、1760mmという全幅は大きい。プリウスと同程度なので運転できないという訳では無いが、この場を借りて日本市場の地域特性を重視して5枠に収めてくれたロッキー/ライズを賞賛したい。

高速道路に合流。ETCゲートを越えた後の加速は100km/hまでは俊敏だ。夜の高速道路を走らせたが、市街地でのNV起因による鬱陶しさは一気に無くなってリラックスしてビシッと直進する欧州車の普通の走りに感銘を受けっぱなしだった。

吊り橋を渡る際、かなり強い横風でも進路を乱されず、上り坂でもアクセルを踏み込んだら安易に変速せず高いギアを保ちながらグッとトルクを出してくれるのでT-Crossが小さい車である事を忘れそうになる。更に数キロ続く真っ直ぐな直線では追い越し車線の流れをリードする走りも試したが、アクセル開度が高くなりがちで余裕は小さくなってくるものの、速度が高くなっても各種動的性能が急に悪くならない点も安心感に繋がる。

例えば私の旧式のカローラも高速道路に入ると途端にステアリングの反応が過敏になって横風が怖くなってくる癖がある。

高速度まで安心感が持続するのもT-Crossをはじめとする欧州車の美点と言える。

加えて高速域だとエンジンからの音や風切り音が良い具合に対策されている。試乗後、エンジンを見るためにエンジンフードを開けたところ、フードロックが2つも着いているではないか。



最近の欧州車で採用例が増えている。高速走行時の振動を減らすことで静粛性に効いているとか、シングルロックの3点支持(フードヒンジ左右とロックの三点よりも安定する4点支持(フードロック左右とロック左右)とすることでフードを剛性部材として使い操縦性を上げているなどの効能があるとされているが、このクラスでお金のかかるツインフードロックを採用しているのは正直驚いた。雑誌の試乗記でこの車の静粛性を褒め称える記事を読んだが、高速道路では間違いなく静かだ。途中、後席にも乗せて貰ったが後席も静かで特にRrデッキから回り込んでくる音が小さい。高速道路でも運転席と普通に会話ができるというのは、国産車同セグメントでは望めない性能である。例えば先日運転した2021年式VEZELでも少々難しかった。

後席の静粛性は最近の車作りでは無視されることが多い。街ゆく車達の平均乗車人数が1.7人なんて言う話を聞くと前席優先の方が合理的な気もするが、後席との会話がしやすい車に乗るとこの魅力は捨てがたい。

VWの中では小柄なT-Crossを近所での買い物専用にする使い方ではすべての魅力は楽しめない。とにかく高速道路の走行比率が高い人ならT-Crossに高い評価が与えられるだろう。高速道路だけならコンパクトSUVとして5をあげても良いくらいだが、市街地を考えると車幅とエンジン起因のNVの悪さによって減点されてトータル3とする。
乗り心地
3
感想は「走行性能」に集約。

市街地では18インチを履いている割に突き上げは少なく立派。後席はクレームあり。前席主体であれば3。高速ではフラットな乗り心地と表現が変わり4。
積載性
4
元来モノコックボディのSUVはパッケージング的に有利である。SUVの背の高さとモノコックの床の低さの相乗効果で全長の割に室内が広くなる。(短い全長にアップライトな着座姿勢が得られることに気づいたのはメガガンマ、SUVに適用したのが初代RAV4だ)

着座してみると、極めて健康的なパッケージングに嬉しくなる。この部分は日本代表のダイハツロッキーも併せ持つ美点だ。綺麗に座らせることで短い全長でも無理なく身体が収まる。シートバック角度も立ち気味で私個人的には背筋が伸びて気持ちいいし、天井に頭が当たることも無い。また、荷室をスペースアップするためにRrシートがスライドできるも見事だ。



標準状態の荷室はVDA法で455Lものスペースを誇る。例えばカローラツーリングは392L、ヤリスクロスは390L、ロッキー/ライズは369Lで、デッキボード下も加えて449Lとのこと。

純トヨタの不甲斐なさが目立ってしまうが、T-Crossが優れているのは単純な容積だけでは無く、デッキサイドにカーペットが配されているのは注目ポイントである。ここが打ちっぱなしの樹脂かカーペット仕立てかどうかトリム傷付き性が大きく変わる。「どうせ悪路は走らない」として4WD性能を割切りがちなSUVだが、更に「どうせ荷室は使わない」として荷物を積む上で重要な性能が割切られつつある。VEZELもカローラツーリングも先代モデルではカーペットが配されていたのに、コストカットされていて残念に感じている。T-Crossのキャビンの広さと荷室周りの機能性は大いに魅力的だ。

燃費
2
カタログ燃費はWLTCモードで16.9km/Lである。
試乗では燃費計データで14.4km/Lを記録したが、更にプレミアムガソリン指定なのでレギュラーガソリンが使える国産勢はここで一気に形勢逆転する。

ロッキー(MC前)は1LターボにCVTの組み合わせで18.6km/Lを記録。実はロッキーとは300kgほど車重が違う。これこそがT-Crossのもつ本物感の秘訣であり、ロッキーの燃費の良さの秘訣でもある。




欧州車らしくディーゼルでもあれば良かったのに、EVシフトに躍起なので望めそうも無い。
価格
2
車両本体価格364.3万円(Style+デザインPKG+セーフティPKG)という価格は、まさにガイシャ価格であることは間違いない。

ロッキー/ライズと比べれば確かに良い部分も十分あるのだが、彼らを意識することは無くあくまでもVWの中の新ジャンルという設定だ。

デビュー直後は1stPlus(335.9万円)と1st(299.9万円)という2グレードでスタートした。

現行モデルではアクティブ(286.7万円)、スタイル(312.6万円)、Rライン(350.3万円)と国産だとRAV4が買えるような価格帯である。

もし自分(煩悩全開)が購入するならセーフティPKG(14.3万円)とカーナビ(15.4万円)は着けたくなる。さらにテクノロジーPKG(8.8万円)として全面液晶メーターとトラベルアシスト(部分自動運転_Lv.2)も選べるが、予算があればという感じで個人的にはレーダークルコンもLKAもあるのだから無くても高速走行は耐えられるかなと。

見た目的にはStyleの17インチで十分満足でき、デザインPKGの18インチまでは不要だ。ボディカラーは元気なエナジェティックオレンジを選択し本体価格342.3万円、諸費用含めて364.9万円。



ロッキー+100万円という感覚だ。確かに高いなりの良さは感じられるものの、お買い得な車だとは口が裂けても言えないレベルだ。

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