ドラマ「メイドイン・ジャパン」に見る日本のモノ作りの歪みとは ?
(clicccar、2013年1月30日)
NHK総合で放映のテレビ60周年記念ドラマ『
メイド・イン・ジャパン』は、1月26日に第1回が放映されたというのに、すっかり忘れていました。
明日再放送と第2回があるから、今度こそ録画せねば。
これ、モデルになった自動車メーカーとは、日産自動車のことですよね?
世界戦略コンパクトカーの開発リーダーとして大抜擢された、他社から転職してきた女性社員とは、
新型ノートの水口美絵氏のことですよね?
『
坂の上の雲』といい、最近のNHKドラマは今日的な内容のものが多く、見応えがあります。
日本はかつては「技術立国日本」として栄華を極めましたが、もはや過去の話。
今では日本の物作りの限界や、それに象徴される企業風土や精神風土の限界が、炙り出されています。
・「イノベーション欠乏症が日本を滅ぼす」 小林三郎・元ホンダ経営企画部長が講演
(日本経済新聞、2012年10月11日)
・元社員「ソニー凋落の原因は社外取締役が増えたせい」
(アルファルファモザイク、2012年12月11日)
・英紙「日本からAppleやAmazonのような企業が生まれないのは、発想力に限界があるから」
(同、2013年1月24日)
・アメリカ 「日本企業がアップルやGoogleに追いつくのは不可能。日本はプログラマー軽視しすぎ」
(暇人\(^o^)/速報、2013年1月29日)
バブル経済期の成功体験が忘れられず、前例主義・管理主義・安定主義になり、遺産を引き継ぐことだけに注力して、ユーザーの生活様式まで変えかねない新たな価値を提案できなくなっているんですね。
新しさというのを、余計な付加価値を付けることと混同して、頓珍漢な新製品ばかり作りたがる。そのくせ、基本に忠実なシンプルな製品は何一つ作れない。大メーカーになればなるほど。
役員は派閥闘争と保身しか頭にない。いつか取って代わられるのが怖いから、新しさや楽しさを提案する若手をここぞとばかりに潰しにかかる。「成功すれば俺の成果、失敗すればお前の責任」と。
落ちぶれてきたのは無理もない話です。
日本人の目から見ても歪んでいるのだから、海外から見れば尚更でしょう。
話を車に戻しても、1990年代後半から2000年代にかけての車メーカーも、そんな感じでした。
現場のセールスマンの間でも、「こんな車売れるわけないじゃん。俺らだって買わないよ」と言い当っていたのが、しかし本社から出向してきた役員から「こんないい車が売れないのはお前らの努力が足りねえからだ! もっと気ぃ入れて売ってこいや! ノルマ最低の奴は責任取って売れ残りを全台買え! これは本社命令だ!!」と毎日朝礼で怒鳴られ続け、セールスマン達の士気は低下、ディーラーの空気は険悪だったという話も聞きます。
今でこそ元気を取り戻し、野心的な車・格好良い車・楽しい車・基本に忠実な車が増えてきていますが、一時期は実につまらなかった。
でも、必ずしも一概には責められない側面もあるのも、事実なんですよね。
新しい車・楽しい車・カーマニアを満足させられる車を作るには、基礎となる企業体力やノウハウは勿論のこと、そもそもお金が必要。
それをどうやって捻出するかといえば、結局は、カーマニアでもない普通の人が満足するような車を、大量に安く売ってお金を稼ぐしかない。だからミリ単位での車内空間や、エコカー減税、低燃費、利便性を訴える車ばかりになる。そしてそんな車を開発するには、往々にして保守的で官僚的な人のほうが向いているのでしょう。
辛うじて発売に成功したとしても、カーマニアなんて日本中の免許取得者のうちの何%かを考えれば、どう逆立ちしても全く割に合わない商売でしかないのは、想像に難くありません。そして企業とは慈善事業でやっているのではない、営利組織です。であれば尚の事、取るべき方針は自ずと決まってきます。
だから、ここみんカラで「我々が喜ぶような車を」「
今はATかCVTしかないよと言われます。私は思いました。昔みたいに軽でMTを作ればいいと思います。更にそれに秋山澪が乗れば面白いと思います。若い方すみません」という日記にイイね!が200個も300個も大量に付いているのには、本当に不思議に感じます。社会人なら尚更想像できそうな現実を無視した、狭い世界だけの絵空事でしかないというのに。
最近の車メーカーが元気なのは、首脳部が方針転換をしたからです。
冒頭のノート然り、大政奉還後のトヨタ自動車然り、マツダのアテンザ然り、CR-Z以降の本田技研工業然り、インプレッサやフォレスターのスバル然り…。スズキは時勢に流されることなく、基本に忠実な、小さくてシンプルな車作りを一貫。
勿論、以前からそういう車造りの企画は下から上がってきてはいたでしょうが、それを掬い上げてバックアップする体制が整ったのではないでしょうか。
よく「今こそ社員一人一人の意識改革が必要なとき」と言いますが、それを言う首脳部自身が一番意識改革できていないというのは、よくある話です。
かと言って、企業風土を変えるには外圧が必要だというのも、寂しい話です。
日本企業には、日本人には、自浄作用がないと公言しているも同然なのですから。
日産も深刻な倒産の危機に陥り、外資(ルノー・アライアンス、カルロス・ゴーンCEO)を受け入れたことで、繁栄を取り戻せたという実績があります。
ソニーもそれを期待して社外取締役を大量に迎え入れたのに、彼らは目先の儲けや株価のことしか頭になく、ソニーそのものを復活させるという概念自体がありませんでした。お陰で全て裏目に。
外圧だの外資導入だのと言っても、諸手を挙げて賛成しにくいものがあります。
それに、幾ら日本の物作りは底知れぬポテンシャルを秘めていると言っても、現実に会社がばたばたと潰れていく様子を目の当たりにすれば、悲観的になるのも無理からぬ話です。
僕の地元でも、もう一体何社が倒産したことか。
僕の以前の職場も遂に倒産したという話を聞いたときは、一週間は冷静になれませんでした。
・日本経済凄過ぎワロタwwwwwwwwwwww
(アルファルファモザイク、2013年2月2日)
・国内産業の構造変化が顕著に ! 製造業の就業者数が減少 !
(clicccar、2013年2月2日)
・【悲報】デル(DELL)が近く身売りで合意
(暇人\(^o^)/速報、2013年2月2日)
・働けど、働けど、我がくらし楽にならず…平均給与が過去最低の31万4236円に ※労働時間UP
(アルファルファモザイク、2013年2月2日)
円高だろうと円安だろうと人件費は圧倒的に新興国のほうが安く、彼の地は法令遵守意識も低いから、日本企業は海外に工場を構えたがる。名前だけがメイド・イン・ジャパンで、現実にそれを作っているのは中国や韓国や台湾やインドネシア。
いびつな構図です。
そしてこれは日本だけの問題ではありません。産業の空洞化は以前から叫ばれており、また世界中の先進国の問題です。先進国は物を作らせる側のごく限られた一部の人の国となり、実際に作るのは後進国。それが先進国内では失業率と自殺率の悪化になるし、消費も低迷するという、悪循環。
かといって、先進国に物造りを取り戻すためには、最悪労働者としての権利を棄てなければなりません。
安い給料や、24時間365日労働や、過酷で劣悪な環境を、甘んじて受け入れるしか。先人達が長年かけて多くの犠牲を払って地道に築き上げてきた尊い「権利」というものを、一切合財放棄しなければ、再び仕事など舞い戻っては来ません。
政府や企業を無闇に責めている人は、それだけの覚悟があるのでしょうか。僕だったら躊躇します。
アベノミクスがそれを断ち切るべく具体的な政策内容とはいえ、実際の社会や末端従業員の給与や待遇に反映されるまでには、最短でも3年は掛かります。
「初心忘るるべからず」とは言うものの、国内雇用や内需の拡大を考えれば、いつまでも創業当時の理念や理想を貫けるわけではありません。ときには不本意な選択もしなければならないときもあるでしょう。
世の中の変化が速すぎて、対処療法に対処療法を重ねていくしか、方法はないんでしょうね。
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2013/02/01 11:40:10