【自動車】トヨタ社長、株主総会で「日本のものづくりを守る」と強調…「労働力安い地域で作ればいいと勘違いしてた」
(保守速報、2013年6月15日)
自動車は総合産業です。
たった一台の車を造るためだけに、どれだけ多くの下請け・孫請け業者に仕事を与えられているか。どれだけ多くの異業種の協力を得ているか。どれだけ多くの人々の雇用を生み出せているか。
だからこそ、日本の車メーカーには頑張ってもらいたいし、日本車は世界中で売れて欲しい。
とはいえ、年々上がっていく人件費と、先進国としてのコンプライアンスには、企業は頭を悩ませています。
一台でも多く買ってもらうためには出来るだけ安く売らなければならないという現実と、相反するから。
だからこそ、より人件費の安い途上国に生産拠点を置く。それは車メーカーに限らず、日本企業に限らず、どこも同じ。
その結果、以前から懸念されていた「産業の空洞化」が現実になっただけでなく、雇用の悪化や、果ては技術の海外流出までが社会問題に。
経営者的な視点で考えれば、正直分からないでもないんです。
生産拠点を日本だけに集中していれば、東日本大震災のような災害が起きた場合、供給や生産が滞る。ローカルリスクというのは、何も海外だけに限った話ではないのです。
そして製品が安定して供給できない(すなわち納期を守れない)というのは、会社の信用問題に関わる。
だから海外にも生産拠点を分散させるのは、当然の安全策です。
それに、国内雇用を守ったがために全ての商品単価が跳ね上がり、結果町中からダイソーやドン・キホーテやマクドナルドやユニクロやワタミやイオンPB(プライベートブランド)が消えてなくなったら、困るのは僕ら庶民です。
物の値段には理由がある。
問題は、そうやってあらゆる企業が安泰になったとしても、経営陣は従業員に還元する気が更々ないということです。
昔は従業員を丸抱えして、戦力として役に立ってもらいたいからこそ一から教育し、手塩にかけて育てた分長く貢献してもらいたいからこそ終身雇用だった。
従業員もそれが分かっていたからこそ、一生かけて会社に忠義を尽くそうという気があった。
「
企業戦士」という言葉が流行った時代です。
今では、平々凡々な人間がなれるのは、派遣か期間工かパートタイマーかアルバイト。
今の会社の考えというのは、長くいられると賃金や待遇を上げなければならないから、むしろさっさと辞めてもらいたいというもの。
解雇にすると会社の評判に傷が付くから、自主退社に追い込んだほうが好都合だし、自分の権威を見せ付けられるし、本人のせいにできて自己正当化を図れるし、他従業員への見せしめにもなって一石四鳥。
研修会も勉強会も資格取得も絶対にさせないし、自主的にスキルアップを目指そうものなら「仕事に集中していない」「社会の底辺が勉強だの資格だのおこがましい」などと理由を付けて閑職に追いやる。
・●ら寿司の店長やってた友人がぶっ倒れて退職した
(暇人\(^o^)/速報、2012年11月7日)
・【画像あり】リストラの恐怖 これが「追い出し部屋」だ
(同、2013年3月3日)
・「ヨドバシカメラ」に就職したんだけど…
(アルファルファモザイク、2012年12月7日)
・【社会】日本の若者は仕事がない
(ピカピカニュース2ch、2012年12月8日)
・朝日新聞の「追い出し部屋」報道が「悲しすぎる」 ツイッターで話題に
(同、2013年1月1日)
・残業代未払い請求→運送会社社長「人間不信に陥る」「信じていたのに…」
(痛いニュース(ノ∀`) 2ちゃんねる、2013年6月4日)
・ワタミ社内文書流出! 「365日24時間死ぬまで働け」
(同、2013年6月5日)
・ホリエモン 「ブラック企業が嫌なら辞めればいい。辞めるの自由」「起業すればいい」
(同、2013年6月23日)
・ブラック企業でもこれならまだ「許せる」2つの条件
(つぶやきかさこ、2013年6月5日)
・ブラック企業とカルト教団の7つの共通項
(同、2013年6月7日)
・「ブラック企業イヤなら辞めれば」をさせない日本の洗脳教育
(同、2013年6月28日)
・日本人の若者の月給が5万円になっても、もう誰も驚かない
(DARKNESS、2013年6月18日)
・ブラック企業、若年層の失業、貧困。その先に何があるのか?
(同、2013年6月24日)
企業だからお金儲けが優先なのは当然です。
ただ、昔の場合は、企業が儲かることで地域や国に貢献していた。
それが今では、経営者一人が高笑いを浮かべ、国や自治体は法の穴を掻い潜られて莫大なはずの税金を納めてもらえず、従業員は明日の生活さえやっとの状態で心身を病んでいる。
・イトーヨーカ堂、パートの比率を高めて正社員を半減へ パートに責任ある仕事をさせる異常さ
(暇人\(^o^)/速報、2012年12月24日)
・【悲報】大手企業100社「安倍総理が何と言おうと給料は上げない」
(同、2013年2月14日)
・時代を先取り、正社員を大量首切りしたセブン&アイの功罪
(ピカピカニュース2ch、2012年12月30日)
会社は従業員を従業員とは見做していません。
安く、幾らでも替えの利く、使い捨ての消耗品です。
そんな考えが一般的になってきた昨今。
それに抗う形での、
豊田章男社長の、冒頭の発言です。
冷めた見方をすれば、それは「世界のトヨタ」だから言えること。
現に国内生産に拘ったシャープは大赤字になって国内工場を閉鎖、従業員は大規模リストラ、遂にはサムソン資本を受け入れざるを得ない羽目に。
トヨタのように、利益が莫大で、系列会社が豊富で、且つ安定した収益を得られる企業は、ごく一部。現実には、それをしたくともできない企業のほうが遥かに多いのだから。
・トヨタが2013年度決算発表 ! 3ケタ台の大幅増益で1兆円超え!!
(clicccar、2013年5月9日)
・アベノミクス効果、中小企業に及ばず……1-3月、円安先行で採算伸びなやみ
(ピカピカニュース2ch、同日)
それに、以前経団連は、1000万人移民受け入れキャンペーンをやっていました。
電通やマスゴミといった粗悪なスピーカーを通じて、
「日本はこのままだと晩婚化と少子高齢化が進みすぎるから、移民を受け入れて若返ろう!」
「国への納税額は年々先細り。移民に働いてもらうことで税収を上げよう!」
「保険料を納めてもらえば、日本の医療費は安くなり、みんなが最先端の医療を受けられる!」
などと喧伝していました。
希望や構想を言うだけならまだしも、政・財・官の全てを挙げて、とんとん拍子に物事が進んでいきました。
移民を受け入れた北欧各国の憐れな末路には、誰も知らんぷり。
テレビでも、それに異を唱えた芸能人は、ラモス瑠偉やフィフィなどのごく一部、それも当の外国人だけでした。
・自民党、「移民庁」設置検討…外国人定住・強化を目標に
(痛いニュース(ノ∀`) 2ちゃんねる、2008年5月5日)
・移民、1000万人受け入れ提言…自民議連案 「多民族共生国家」を目指す
(同、2008年6月8日)
・経団連、「日本への移民受け入れ・定住」提言。人口減対策で…一方で労働条件の悪化や治安の悪化懸念も
(同、2008年10月13日)
・ホリエモン「移民大賛成。日本は日本人だけのものってのはエゴだよね」
(同、2009年6月19日)
・「日本は、移民1000万人で外国人のパワーをもらうしかない!家庭で移民を考えよう!」…スーパーモーニング
(同、2010年2月28日)
・「日本に、もっと移民を!」 日本の政治家や学者ら、異例の大キャンペーン…結婚せず子供作らず減る一方の日本人に警鐘
(同、2010年11月26日)
・【自民党】西村副大臣、外国人技術者や研究者を「10万人単位で増やしていきたい」在留資格に関する優遇制度の適用条件を大幅に緩和する意向
(保守速報、2013年4月30日)
そんな前科がある以上、国内製造回帰が実現したとしても、実態は
「形の上では国内雇用。
だが工場内では外国人が期間工として低賃金で働かされているだけで、税制面で優遇された分を祖国の口座に送金して、給料を払ってくれた日本にはびた一文落とさない。
片や日本人は全員ホームレスかニート」
という将来像も、想像してしまいます。
今のトヨタには旧
奥田碩(ひろし)派は大分いなくなったようであり、後遺症はあまり見られないとはいえ。
どんなに高い理想を持っていたとしても、それを実行に移せるだけの権力があるとしても、社会全体・業界全体・世界全体のうねりに、モリゾウさんも果たしてどこまで無縁でいられるかな…?
冒頭の外需の話に戻ります。
ローカルリスクは、相手が反日国でなくとも、必ず付いて回る。
よく、「何でもかんでも国内製造に回帰すれば良いってものじゃない。簡単な部品くらいは人件費の安い国で造らせて、国内では高度で複雑な基幹部品だけに絞るべきだ。それが先進国の“ものづくり”だ」という意見があります。
それは確かにそうなのですが、その簡単な部品を造っている途上国の工場が、災害や暴動や内戦やストライキに見舞われて供給が滞る可能性を考えると、たとえ簡単な仕事であっても、或る程度は国内へ割り振るのも賢明かと思います。
現にスズキはインド工場でストライキを起こされて生産が滞った時期があったので、それだけでも、幾許か国内生産に回帰する理由足りえると思います。
・海外法人での文化や価値観の違いをスズキ工場の暴動で見る
(KOKKAI PRESS宇田川的ニュースのC級解説、2012年7月21日)
・液晶パネル大国・韓国、重要部品の国産化率ゼロ
(アルファルファモザイク、2013年5月2日)
今の時代、世界中に生産拠点を置くのは当たり前の世の中ですが、その中に国内も置いておくのも、同じくらいの安全策かと思います。
それに何より、海外における純日本ブランドに対する信奉は、まだまだ根強いのですよね。
海外では、僕ら日本人が思う以上に、「日本人が日本で作った日本製品」であることに価値を見出だす人々が多いのです。
それは先人たちが苦労の末に築き上げた、財産です。決して無駄にはできません。
僕ら日本人も同じだから、よく分かりますね。
例えば、皆大好きドイツ車が、実は中国資本による中国製と知るや否や、がっかりする人々が多いのと同じように。
人間は、立場や状況が変われば、言うことも変わる。
「労働力が安い地域で生産すれば良いと勘違いしていた」と言い切ったモリゾウさんの願いは、どこまで叶うのか、どんな形で叶うのか。
それにそもそも、アベノミクスの一環として円安政策と法人税値下げがあり、それこそが国内生産回帰への道筋となったのでしょう。それがなかったらモリゾウさんとて冒頭の発言をしたでしょうか。
でも、経営者が一番すべき仕事は、実は会社を回すことではないのですよね。従業員に夢を見させてあげることです。
少なくとも、滅私奉公を強い、しばき上げるだけしばき上げておいて使い捨てにする新進気鋭のオーナー社長たちよりも遥かに信頼も尊敬もできるのは、疑いようがありません。
最近のトヨタ車には、1970~80年代のような輝きが戻ってきました。もうしばらく、期待を込めて見守りたいと思います。