【レポート】"自動車の街"デトロイト市がついに破産申請、財政再建へ
(autoblog、2013年7月23日)
とうとうこの時が来ましたか…。
以前から危ない危ないと言われていた
デトロイト市が、遂に財政破綻しました。
今期のオバマ大統領は「製造業の国内回帰」を掲げていました。
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「自国回帰」難局でも踏ん張る製造業 日米、人件費急騰で脱中国の動き (1/3ページ)
(SankeiBiz、2012年5月23日)
それはアメリカ全体が
チャイナリスクを経験したからというのもあるでしょうが、何より、死の危機に瀕するデトロイトを救うためでもあったのではないでしょうか。
海外メーカー(特にレクサスやホンダ)の工場を誘致したり、人件費や法人税を値下げたり…。
にも拘わらず、そんな策を以てしても、デトロイトの破産を止められなかったようです。
デトロイトは、かつては時代の花形産業であった自動車製造で栄えた街です。
「ものづくり大国アメリカ」「製造業の街」「モーターシティ」を象徴する都市でした。
僕が中学生の頃は、デトロイト工業地帯や、そこに含まれる
五大湖などは、社会科の教科書における必須項目でした。
ですが、そんな繁栄と引き換えに、町興しを車に偏重しすぎた弊害が度々問題視されていました。
景気の変動や、輸入車(特に安くて小さくて燃費が良くて壊れにくい日本車)との競争に対し、少しでも状況が不利になると、たちどころに街全体に飛び火する。
失業率は高く、犯罪件数は増え、暴動も後を絶たず、人も企業も去って行って人口減に歯止めが利かず、財政は悪化、公務員は機能せず、訴訟を焚き付けるハゲタカ弁護士たちの格好の餌食に。悪循環が際限なく繰り返される。
結果、アメリカでも有数の犯罪都市という汚名をこうむることに。
映画の『ロボコップ』シリーズでも、そんなデトロイトの様子が描かれていたのを、思い出します。
車以外にもデトロイトを支える産業ないし観光事業があれば、また違ったのでしょうが…。
そもそも、デトロイトに居を構えるビッグ3自体、伝統的な車造りを改めて、敵である日本車を研究してそれに対抗しうる車造りをしていれば、こんなことにはならなかったのに。
なのにやったことと言えば、政府とマスコミと大衆心理に働きかけて、強大な政治力で潰しにかかっただけ。自助努力など微塵もない。
短期的には周囲の視線を逸らすことはできても、根本的な問題を解決していないから、いずれこうなることは自明の理でした。
(蛇足ながら、僕の地元も、デトロイトと同じように一つの産業・一つの大企業に偏重しすぎたせいで、今になって財政破綻寸前の危機に陥っています。
だから保険も逃げ道もない、目標や取引先や依存対象を一本に絞ることの危うさを、身を以て認識しているつもりです)
日本とて、決して他人事ではありません。
北海道の夕張市なぞは、同じように財政破綻の街として有名です。
トヨタやマツダのお膝元も、リーマン・ショックを始めとした数々の不況がある度に、街はお通夜の雰囲気に包まれたと言います。
パナソニックやシャープやソニーは、言わずもがな。
幸いなことに夕張市は、税収を上げたり、町長がマスコミに前面に出てアピールしたり、様々な町興しイベントをやることで、牛歩ではあるものの徐々に復興しつつあると聞きます。
日本車メーカーは、技術力の底上げを日々怠らないのは勿論のこと、株価や為替や景気に左右されない企業体力を身に着けたことが、持ち直した一番の理由です(もっともそれは裏を返せば、想像を絶する下請けいじめの末に掴んだ栄光でもあるのですが…)。
ですが成功に安住することなく、くれぐれも他山の石としなければ、日本もデトロイトの(或いはギリシアやキプロスやスペインやイタリアや韓国の)二の舞です。
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デトロイト市の破産法申請は他所事とは思えない
(大西 宏のマーケティング・エッセンス、2013年7月19日)
デトロイト市は、いずれ再建はするでしょう。
アメリカ経済を支えるビッグ3のお膝元。これ以上失業者を出すわけにいかないから、政府による何らかの介入も考えられます。ビッグ3がそうであったように。
パターナリズムを嫌う国民性とはいえ、もうそんなことも言ってられない状況です。
恒例となっているデトロイト国際自動車ショーも、市が破綻したからといって、すぐに打ち切りになることはないでしょう。
デトロイトを象徴する基幹産業であり、アメリカを象徴する文化でもあり、だからデトロイトで催されてこそ意味のあるイベントだから。
もはや単なる町興しではない。
ですがこのニュースは、一つの時代の終わりを象徴しているように思えてなりません。
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Posted at
2013/07/24 07:20:46