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2015年12月09日

若者の整備士離れ

若者の整備士離れ 「若者の車離れ」などが原因で、自動車整備士を目指す若者が減っている。女性整備士の育成等を検討。
(アルファルファモザイク、2014年4月17日)

自動車整備士 不足のおそれ 国が対策に乗り出す
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2014年4月18日)
クルマ離れの影響、整備士にも 目指す若者激減 高齢化も深刻
(同、2015年6月7日)

【愕然】 整備士の給料明細をご覧くださいwwwww ヤバイぞwwwwwwwww (画像あり)
(きゃっつあいニュース、2015年6月7日)





一昨日7日の夜、NHK総合の『プロフェッショナル 仕事の流儀』を視聴しました。
今週の内容は、「第283回 一徹に直す、兄弟の工場 自動車整備士・小山明・博久」です。

番組を見ていると、実直な職人一家による、美談という印象を抱きます。
しかし自動車整備士の現実に関しては、一切触れていませんでした。
(恐らく、そこに触れたら爽やかな読後感など得られないから、敢えて取材しなかったのでしょうが)


「腕一本で食べていく」というと、確かに聞こえは良いです。
替えの利かない知識と技術と経験を身に付けるというのは、職人の世界であり、古来から日本人が様々な分野で得意としてきた仕事の方法です。
日本人は基本的に農耕民族であり、浅く広く適当に要領良くこなすよりは、一つのことに黙々と打ち込む仕事が、性に合っているのかも知れませんね(勿論、そうでない人もいますが)。


しかしその実態は、中々に過酷な様子。

冷暖房がなく、一年中シャッターを大きく開けっ放しにした工場(こうば)の中。
それ故夏は蒸し暑く、自分の汗が目に入って細かいものが見えず、直射日光を遮っているにも拘わらず気温だけで熱中症になりやすい。
真冬の吹雪でもシャッターを開けっ放しにし、しかし暖房はないので(ストーブはあっても気休め程度)、指先がかじかんで、氷のように冷たくなった金属製の工具がまともに持てない。
オイルの中に素手を突っ込むので、爪の中や皮膚の毛穴の奥の奥にまでオイルが入り込み、一生落ちない。

客にすれば家の次に高価な買い物なので、自ずと口煩いクレーマー気質が多くなる。
その割に専門知識を持っているわけではないので、頓珍漢な指示を出してみたり、整備士がプロの観点から良かれと思ってやった(或いは敢えてやらなかった)ことに対して、理不尽な怒り方をする。
純粋に目の前の整備だけに打ち込めるわけではなく、サービス業や接客業も、同時に務めなければならない。


職業柄、車好きな若者が多く入ってくるが、車好きを通り越して暴走族上がりもその分比例する。
その結果、体育会系の根性論と排他的な職人気質が化学反応を起こして、理不尽が横行する陰湿な世界。
パワハラ、モラハラ、セクハラ、当たり前。コンプライアンスなどどこ吹く風。
「職人の世界は一生修行」が社訓であり、会社はそれを都合良く捉え、修行中の身だからと嘯いて昇進も昇給もさせない。

命を預かる仕事であり、厳しい国家資格が必要であり、誰でもなれる職業ではない。
そんな重責にも拘わらず、信じがたい薄給。
僕も、試しにハローワークの求人票を覘いてみたのですが、働く環境が整っているホワイト企業だとばかり思っていたディーラー整備士でさえ、基本給12~14万円
プロとしての責任もプライドも、安く買い叩かれている現実を知り、ただただ愕然としました。


そんな現状を打破するためには、通常業務に加え、検査員や重機整備士や保険調査員や中古車査定士などの資格も取らなければならず、その激務たるや想像すらできません。
それで昇給に繋がると言っても雀の涙程度であり、にも拘わらず仕事量や責任は給料に見合わないほど重くなる一方。
どんなに死ぬ気で頑張っても、一般サラリーマンや公務員のようには決していかない。


しかも最近では、ハイブリッドカーやEV、PHEV、果ては燃料電池車も台頭してきました。
一般的な内燃機関以上に複雑怪奇であろうことは、素人目にも想像が付きます。
本来の機械整備だけでなく、電気工事士や、プログラマ、物理工学博士としての能力も、これからの時代は求められてくる。

【ビデオ】整備士が語る新番組 「パーツの交換がしづらいクルマ増えている!」
 (autoblog、2013年9月6日)


その一方で、古典的なキャブレターエンジンを持ち込んでくる客も、またいるわけで。
振り幅の両極端たるや。


こんな激務、僕は不器用で要領が悪いので、一生掛かっても体得できそうにありません。





メディアは、「若者の車離れ」「若者の整備士離れ」と盛んに喧伝して、さも若者こそが悪いかのように謳っています。
そんな環境を作り出した大人の側の問題には、決して触れずに。

少子高齢化で只でさえ若者の数が少ないのに、自動車に興味を持つ人が少なくなってきており、将来有望な若者がいざ自動車に関係する仕事に就いても、業界全体がブラックすぎて心身が追い付いていかない。
これでは整備士を目指そうという若者が減るのは無理もありません。

専門職であり、国家資格であり、スキルを身に付けさえすれば、どこへ行っても一生食うに困らない。
「この会社が嫌いになったので、今日限りで辞めます」と言って本当に辞表を叩き付けて背を向ける、それが通用する数少ない職業。
それと引き換えに、そのスキルを、どこへ行っても安く買い叩かれる。
車が好きだという純粋な情熱、自分のやるべき仕事への責任、そういったものへ業界ぐるみで付け込んで。



よく、
 「日本は頑張れば頑張っただけ見返りの多い、超絶イージーモード社会じゃねえか」
 「それで仕事が大変だ、給料が安いなんて愚痴を零すのは、甘ったれ以外の何物でもない」
と言う人がいますが、そういう人に限って、こういう現実には決して目を向けようとしないのですよね。

或いは、
 「そんなの、整備士なんて馬鹿な仕事を選んだそいつの自己責任じゃねえか」
 「職業選択の自由があるのに、もっと割の良い職種に転職しなかった奴が馬鹿なだけなのさ」
と、論点をすり替えて言い逃れ。

だから僕は、そんなことを言う人を、全く信用していません。


幸いなことに、僕の地元のような田舎では車の需要が絶えず、その分車好きな若者がまだまだ一定数います。
僕の行き付けの工場にも、将来有望な若い人が、4名も入ってくれました。
それまでは定年退職間際の人材ばかりで、長いこと後継者問題で揺れていたのを知っているだけに、安泰です。

僕の愛車をオーバーヒートから直してくれた整備士も、年齢こそ若いものの、キャリアが豊かで、会社でもそろそろ中堅としてのポジションであるようです。
僕も安心して、全てを任せられました。
若い人の仕事が、一番信頼できる。




冒頭の『プロフェッショナル』では、整備士がやりたいことと、客が望んでいることの乖離が、一部に見られました。

整備士としては、100%を超越した120%の仕上がりにしたい。
だがそれをやったら、整備ではなくレストアになる。
何より納期や、客の懐事情もあるので、次回車検時への宿題ということにして、当面は自分で自分を納得させるしかないと。

このような、それこそ偏執狂ともいえる、常軌を逸した完璧主義こそが、日本の「ものづくり」が海外から称賛されているのですね。
ジャパンブランドが世界中から一目置かれている理由が、そこにあります。

日本人がアップルという企業に特別な感情を持つ大きな理由
 (DARKNESS、2014年10月21日)
多くの日本人が持っている「これ」が生き残るための武器だ
 (同、2015年6月19日)



勿論、現実にはそれをしたくともできない場合のほうが多く、また客も全員が全員必ずしも望んでいるわけではなかったり、望んでいたとしても歯車が噛み合わない場合だってあるでしょう。

しかしこれもまた一種のサービスであり、ビジネスの枠を越えた仕事振りです。
こういうのも含めて、マニュアルでは決して身に付かない、日本の職人だけが先天的に持つ「おもてなしの心」なのでしょうね。
細工は流流仕上げを御覧じろ。


皆が皆、そうやって、やりすぎとも言える拘りを発揮するからこそ、日本の技術や品質は世界の頂点に君臨していられる。
整備士個人に対しても、客は尊敬の眼差しを絶やさない。

その代わり、ビジネスとしては、ブラック以外の何物でもないという二律背反。

「みんなのカーライフ」は、そんな名も無きプロフェッショナルたちに支えられているという事実を、改めて思い知らされた番組でした。
全ての整備士の皆様、有難うございます。
ブログ一覧 | 整備 | ビジネス/学習
Posted at 2015/12/09 23:29:26

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この記事へのコメント

2015年12月10日 1:18
近所にホンダのディーラーがあるのですが、メカさんたちが徒歩で退勤されてるのを見かけまくりです。
コメントへの返答
2015年12月11日 21:49
敷地内に社員用駐車場がないんでしょうね…。・゚・(ノД`)・゚・。
2015年12月10日 17:27
通りすがりに失礼します。

当方、整備士免許はありませんが、独学で整備と経験は積んでおり、一時期仕事に困った頃に本気で整備士になろうとしたことがありました。

…しかし、整備士免許というのは、試験を受けるまでがあまりにもハードル高いのです。
実務経験3年以上、機械学科などを卒業していれば軽くなりますが、それでも1年の実務経験必須。
アルバイトでガソリンスタントでしばらく働いていましたが、実務経験と認められるのも、指定の設備備えた整備工場で正社員として勤めなければならない…など、非常に条件が厳しいです。

設備備えた整備工場に勤めたくても、必要とされるのは整備士免許持ちで、無免なんて相手にしてくれません。

それだけ高いハードルクリアしても、こちらに書かれた通り、激務かつ薄給という現実。

結局、別の仕事が見つかったので、そちらで働いておりますが、整備士の仕事は本当に好きじゃなきゃやってられない…と、僅かでも業界を覗いて思った、偽らざる本音です。

長々と失礼しました。
コメントへの返答
2015年12月11日 21:58
並盛りジョニー様、初めまして。
イイね!とコメントを有難うございます。


高齢者介護の現場と、相通ずるものがあります。
「命を預かる仕事だから」「国家資格だから」というのは分かりますが、それにしては余りにもハードルが高い。
にも拘らず、そんなハードルを乗り越えても、報われることのほうが少ない。
理不尽を感じます。
これでは若者不足に陥るのも当然です。

そして、整備士にならなかった僕らは、何より日本のモータリゼーションは、そんな彼らの犠牲の上に成り立っているのですね。

迫真の書き込みを有難うございました。
2015年12月10日 21:18
こんばんは。

ボクもブログで何度も書いておりますが、
今まで整備士を使い捨て!?にしていた傾向が
有ったのですよね・・・・

ボクが購入していたディーラーでも、年数が経てば
問答無用で営業職に回されて、それでも?
営業職で勤めていられる方は良いですが、
多数の方が退職して行くのを目の当たりにしていました・・・・

経営側が整備士を大事にして来なかった、
「ツケ」が今来ていると思います。
コメントへの返答
2015年12月11日 22:10
これだけ厳しい篩に掛けて、人材を選別して、選りすぐりのエリートばかり取り揃えた。
にも拘わらず、会社は、業界は、国は、そんな彼らの頑張りに対し、何一つ報いてこなかったのですよね。
それが今、若者不足・後継者不足となって、大騒ぎになっているのでしょう。

女性の登用とか、定年退職年齢の引き上げとか、海外留学生とか、移民とか、政府は付け焼刃の対策ばかりが得意です。
しかし今こそ抜本的な改革をすべきときのはずであり、そうでなければいよいよ日本そのものが詰みます。

今までホワイト企業だとばかり思っていたディーラー整備士も、30歳が或る意味定年みたいなようですね。
整備職として入社したにも拘わらず、30歳で無理矢理営業に配置転換させられて、話が違うと訴えれば解雇。
ディーラー社員が、営業からフロントに至るまで全員が整備士資格を持っている理由が、それだったのですね。
2015年12月13日 0:09
こんばんは。

同職の私には同感の限りデスw

現在勤務している民間車検場は後継者も居り、整備士を大事にしてくれると思っています・・(爆)

もっとも、私の場合は好きなクルマ弄りが出来るだけでも嬉しいのですが・・・。

そうは言うものの、現実は、生きて行く為にもある程度のお金と待遇は必要と思います。
コメントへの返答
2015年12月15日 21:55
現役整備士からの貴重なコメント、有難うございます。

現在は良い会社に転職されたようで、何よりです(^-^)
というか、正直羨ましい。
たとえ中小零細だとしても、たとえ薄給だとしても、たとえ仕事内容がブラックだとしても、従業員を大切にしてくれるところであれば張り合いもありますね。

整備士以外にも、職人としての矜持に、業界挙げて付け込んでいる構造になってしまっているのですよねえ…。
高度経済成長期の時代ならまだしも、これだけ社会が成熟した今となっては、歪んだ構造をいつまでも引き摺るのはあり得ないことです。
政治家に働きかけても、改善してくれるどころか、移民だとかの小手先のおためごかしばかり。
2015年12月15日 21:43
車の整備はやりたくなかったので産業車両の方へ逃げましたw
どのみち給料は安いですが、クレーム等が合理的で助かります←会社絡むので当たり前ですけどねw

整備士の資格も自分の車維持のために取得した様なものなので、仕事は別の方が良かったりw

産業車両や建設機械の整備も給料やっすい…(´・ω・`)残業代が救い
コメントへの返答
2015年12月15日 22:22
こちらも同じく、現役整備士からの、生々しいコメントを有難うございます。

僕も現在接客業なので、クレーム処理の大変さ・面倒さは、よく分かります(;´Д⊂)
せめてワンクッション置いていて、且つ理由が合理的であれば、まだ改善の余地はあるのですけどねえ。

ううむ、整備士は、どの業界もそんなものなのでしょうか…。
となると、残されたのは、鉄道車両検査係くらい?

プロフィール

「「車種もドンピシャな東方Projectモチーフの隠れ痛車を捕獲!」特徴的な翼のデザインをスズキ・キャラのガルウイングで再現
https://option.tokyo/2021/07/03/104493/

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
何シテル?   07/03 23:51
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