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2006年03月04日

「Zガンダム」映画化を可能にした技術

「Zガンダム」映画化を可能にした技術 ZⅢ公開記念としてアニメ特撮評論家 氷川竜介氏のコラムより

元々「Zガンダム」はテレビアニメとして放送されていた作品だ。作画のクオリティーも様式も、テレビの予算枠に見合った低廉なものだった。フィルムもテレビ用の16ミリで画角は4:3のスタンダード、音声もモノラルである。現在の劇場はフィルムは35ミリ、画角は1:1.85のビスタサイズ、音声は5.1chサラウンドが基本だから、はるかな隔たりがそこにある。

 音声は制作し直しで、作画も撮影も通常であれば新規にやり直してしまうところだが、この作品ではテレビシリーズの映像を極力活かすところにこだわった。「ファーストガンダム」と呼ばれる「機動戦士ガンダム」(79年)も81年に劇場映画化したとき、テレビの絵を活かすようにしていた。最初にファンが観たオリジナルの印象を損なわないための配慮が基本方針として存在し、「Z」もそれを踏襲しているのである。

 しかし、本放送から2年と経ずして制作されたファーストの劇場用と異なり、「Z」には20年という膨大な時間差があった。テレビと劇場の差、20年の時間という隔たりは、通常なら超えることは至難だが、その解決に大きく手を貸したのが、急発達したデジタル映像技術である。
質感も映像制作の思想も異なる16ミリのテレビ版と新作映像--その両者を歩み寄らせるテクニックは、統括して「エイジング」と呼ばれている。

 まずテレビ用のフィルムは、全コマをテレシネと呼ばれる工程でハイビジョン(HD)化してデジタル情報に変換し、色味補正を行い、フィルム特有の粒状性も低減させている。そしてデジタル上で映画化用の加工を施していく。画角の修正は単純に天地を切って劇場スクリーン用の横長にするのではなく、全カットのフレームを見直して最適な位置に収めている。このトリミング(切り取り)が功を奏し、構図の甘いところを引き締める効果をあげている。

 さらに現在のアニメにおける制作的常識に合わせ、さまざまな効果が加えられている。セル傷やホコリを消すことはもちろん、爆発には透過光処理を加えるなど、旧作カットをそのまま使用した例はほとんどないと言ってよいほどだ。

 一方、新作で描き下ろされた映像の方にも処理が施されている。光学処理を一切含まないデジタルのアニメーションは、どうしても見た目がパキっとし過ぎる傾向がある。劇場版「Zガンダム」では、先の例とは逆に粒状感を加えるなど、映像の質感を16ミリフィルムに近づける効果を後工程で加えている。この効果は質感を合わせる以上に、記録フィルムを観ているような不思議な臨場感をも映画にもたらしている。

 こうした処理の他にも、旧作内にあるモニタ映像に3DCGで描かれた新作をはめこんだり、新作の戦闘に旧作の人物をサブ画面で入れこんだり、旧作でカメラ移動をした先に新作を足すなど、文字通りの「融合」を実現したカットも多数ある。
このように劇場版「Z」には、デジタル技術が可能にした合成や加工のあらゆる手練手管が見本市のように詰まっている。

 それがすべて功を奏しているかと言えば、さすがに20年分の作画技術の差の隔たりは大きすぎて、違いの目立つ部分のあるのも否めない。しかし、富野監督特有の急流のごときカッティング、短時間で膨大な情報を伝える映像とせりふ回し、畳みかけるような編集術によって幻惑されるうちに、次第に気にならなくなる。ことに第3部ではスタッフもかなりこなれて来て、新旧映像の落差を意識した「芸」のような画面のつなぎやマッチングが行われており、独特の呼吸とムードを感じさせるフィルムに仕上がっている。

 こうした成果はデジタル技術に起因するものの、技術によってのみ実現できているわけではない。デジタルの得意・不得意を見分け、不可能を可能にするさまざまな制作側の知恵が盛りこまれているからこそ、それが一種の「味」になっているのだ。そこにはアナログからデジタルに媒体が変わったとしても、「フィルムの1コマ(セル)には生命が宿る」というスタッフの信念が感じられる。

 もしもすべてをデジタルの新作で制作していたら、無機質なフィルムになっていたかもしれない。第3部では旧作に影響されて柔らかさを感じる作画も出て来ているため、よけいにそう思える。

 以前取材したとき、スタッフは「あらゆる技術を駆使しました。でも、20年前のフィルムを再制作する作品はこの先二度と出て来ないと思うので、この技術は他に応用が利かないんですよね」と笑いながら語ってくれた。
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Posted at 2006/03/05 23:41:19

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