そろそろ整備の更新期間に差し掛かった箇所もあるようです。
基本整備の手入れがしやすいのは、空冷・キャブレター時代のドゥカティの大いなる美点(特権)です。
ドゥカティに限らず、ストレスのない走りは、車両のコンディションと密接に関連しています。
基本を押さえた、ご自身の使用環境やライディングに合わせた整備・調整で、走らせる楽しみは倍増すること請け合いです。
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涼しくなったので、何はさておきタイヤの空気圧はチェックする必要があります。
フロントフォークの内圧も、伸び切り時に大気圧に復元しておきたいところ。
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【スロットルグリップ・ケーブルの点検・給油】
スロットル開け始め、操作の意思と実際のタイミングのズレを感じたので、作動抵抗による重さを疑い、グリップ側を分解して点検しました。
自己所有の車両の場合、急に発生する異変と違い、徐々に劣化していく状況は気付きにくく、
友人と乗り比べなど行って気付くことも多いです。
●スロットルグリップ~ハンドルバー間の状態確認
今回確認したところ、汚れ・錆びは全くなし。動きもスムーズ。
筆者はスロットルグリップ~ハンドルバー間には油脂の潤滑はしません。
油脂分の劣化や埃の付着を嫌うのと、グリップ内の樹脂製スリーブは元来滑りが良いためで、
スロットルグリップホルダー内の摺動部のみテフロン系粉末のスプレーを吹き付けています。
潤滑しない代わりに、スロットルホルダーの内部、ハンドルバー外周、スロットルグリップ(スリーブ)内側の金型合わせ目や抜きテーパー等は削って均し、
軽くスムーズに作動するよう、可能な限り滑らかに研磨してあります。
怪しい部分を探し、削っては組み合わせて作動確認を繰り返す、かなり根気を要する作業ですが、滑らかなスロットル作動は運転時に必ず報われます。
特にスロットルスリーブの成型時のバリや角の突起をやすりで削った箇所が「ささくれ」になると、摺動部の場合ホルダー内部で引っ掛かったり動きが悪くなったりするので注意します。
グリップホルダー組み付けの際、嵌め合いにもボルト穴にもわずかなガタツキがあるので、作動を確認しながら、動きの良い位置で合わせボルトを締め付けます。
スロットルグリップ内径とハンドルバー外径のクリアランスが大きい場合は、薄いテフロンシートをバーに巻いてやると、ガタツキと摩擦を同時に少なくできます。
但しバーエンド側にテフロンシートが”逃げ出さないよう”配慮は必要。
荷重が掛かりやすいクリップオンバーの場合、使用に伴いグリップラバーが伸びてしまい、スロットルホルダー側面やバーエンドに接触して動きを悪くしていることがあるので、時折確認が必要です(特にヤマハ純正TZグリップは柔らかく伸びやすいので要注意)。
●ケーブルに注油(EPL潤滑剤スプレー)
これは思った以上に効果がありました。前回のケーブルへの注油は、去る年末年始あたりだったと思うので、ちょうど手入れの時期になっていた様です。
筆者の場合、頻繁に手を入れている部分ですが、実際に注油するまで気づきませんでした。
【余談】
ミクニBDSTの場合バタフライバルブを開閉するのみで、スライドバルブのような負圧での張り付きは発生しないはずなのですが、何故か戻し側のケーブルも付属する「強制開閉式」になっています。(この場合、誰もデスモドロミックとは呼ばない(笑))
さらには過剰なほど強力なリターンスプリングが備わっているので、組み付けが非常に面倒な戻し側ケーブルは排除したいのですが、スロットルグリップ側には全閉位置を規制するストッパーがないので、ホルダーごと他車のものを流用する必要があります。
とりあえずリターン側ケーブルは遊びを大きくしてできるだけ抵抗にならないようにしています。
尚、筆者の場合、下の写真のようにスロットルケーブル取り回しの邪魔になる充電レギュレータを車体左側に移設して、ケーブルの曲がりをできるだけ自然に緩やかにして、抵抗なく作動できるようにしています。(段ボールはアイシング対策で試行したもの。為念)

全閉からケーブルの張りを感じとって開け始める動作ができ、どの開度からも力を緩めればリターンスプリングの力だけで即閉じることが原則です。
意識して右手を操作しないとスロットルが戻らないのは乗っていて不快、且つ安全上問題です。
キャブレター・ケーブル・グリップのいずれが抵抗になっているのかを切り分けて、原因に対処しますが、特に古い車両や改変されている場合、往々にして複合要因だったりします。
ケーブルやハーネス取り回しに際しては、基本的にはメーカー指定の状態を踏襲するのが望ましく、資料やオリジナル状態の車両を確認することが早道です。
アルミ材の大面積ツインスパーフレームとは違い、鋼管フレームのケーブル取り回しはいろいろな経路が可能に思われますが、長さや角度、経路には自ずと制約があります。
操舵時にケーブルが引っ張られたり、アンダーブラケットとフレームに挟まれたりしないよう、配慮と検証が必要です。
取り回し変更は長さに余裕があることが前提で、筆者の場合、試行(&思考)を重ねて数時間を要することもしばしばです。
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【エンジンオイル補給】
先日レポートしたように、外部オイルラインフィッティングの漏れを対処したばかりですが、
つい先日、ガレージから引き出しながらコンクリート床を見ると、エンジン真下にオイル溜まりといえそうなシミができていてビックリ。
幸いタイヤには付着していないようでした。
どうやら前回走行後の保管中(1週間程度?)にオイルフィルター座パッキン部から漏れたようで、油圧の高い部位において、シールの弱かったところから順に漏れたのかもしれません。
とりあえずフィルターを少し増し締めして漏れは止まりましたが、要経過観察です。
使用中の現行メーカー指定オイル、シェルアドバンスウルトラの浸透性・流動性の高さゆえかもしれません(言い訳がましいが)。
上の写真、車両直立状態でオイルレベル窓下限ギリギリ見えるかどうかというところまで減っていたので、下限よりやや上くらいまで補充しました。(以前はオイルラインやセルモーター配線、クランクケースが油汚れに付着したブレーキダストで黒ずんでいたのが、スッキリと乾燥しているのがわかるでしょうか)
個体差はあると思いますが、900MHR、750F1と乗り継いできた中で、いずれも走行によるオイル消費は少なかったので、交換時以外にオイル補充をするのは歴代保有ドゥカティで初めてです。
今回のSSは、積算距離も、筆者自身の走行頻度も歴代保有中一番高いので、経過観察中。
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【キャブレーション見直し】
K&Nエアフィルターエレメント/大幅に切開したエアボックス/静電気除去実験に合わせ、
具体的意図をもってジェットやニードル、スライドバルブスプリングを変更しています。
オリジナルよりも力強さは向上し、スロットルへの反応はどこまでも忠実、3000rpm未満でも平地巡航可能になっていますが、
吹け上がりが重い気がして、本来のドゥカティらしい軽快さ、伸びやかさに欠けている体感でした。
とりあえず、よく使用する領域(開度・負荷・エンジン回転)に広く影響しそうなジェットニードルのクリップ位置を一段上げ、燃料吐出を減らす方向にしてみました。
先日のサイレンサー除電ナット除去と合わせた効果か、吹け上がりが軽く(体感的には速く)なり、負荷が掛かった際の振動が減少し、軽快感が戻ってきました。
代償として、スロットルON/OFF時にスナッチ(いわゆるドンツキ)が起きるようになったので、ひとまずパイロットスクリュー開度を増すことで対処。
筆者はスロットルOFFの後の開け始めの自然即応な反応を一番重要視していて、
もう少しニードルクリップ位置・パイロット系など、調整・追求してみたいと思います。
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調子が良ければ細部まで手を入れる必要性は必ずしも無いのですが、
筆者の場合「余計なノイズなしに、走らせることに集中して楽しみたい」がゆえ、
気が付いた点を対処しています。
もちろん、「自らの意思・発想で」工夫をすること自体が楽しみで、
それを検証するために走らせることもまた楽しみなのですが、
気になることがあると集中できなくなる性分で、
さらに具合が悪いことに「こうするとどうなるだろう?」などと設定変更を思いついてしまうと、
何とかして試さずにいられなくなるので、最終着地点は無いのかもしれません。
涼しくなってきたので、アイシング再発防止策もそろそろ実施したいところです。
いくつかアイデアは温めていますが、お知恵があればアドバイスをいただけると幸いです。