2014年08月14日
94北往記7。寝ぼけ道央路
8・第3日/北海道横断・上
▽函館 ~札幌 6:30・快速ミッドナイト(キハ27-501)
※ほっかーいどぉー!
目が醒めた。白々と明けた朝である。
余程疲れていたのか、寝込みと寝起きが何時に無く鮮やかだった。
時計を見ると時刻は5時前、白老の辺りである。
ここは鉄道で最長の直線区間になっている。私は此処で気動車にて最高のスピードを体感する。
思えばはじめて可部線でディーゼル車に乗って以来、耳を聾する騒音と激しい微震動、そのわりには微速という言葉が当てはまる遅い速度が印象に焼き付く。
処がこいつはどうだ、直線区間とは言え、ディーゼル車が滑るように快走している。はっきり言って俄か信じ難かった。
よく見てみると、窓は二重窓だし、エアサスも使用しているらしい。
厳寒地の厳しい気候の中を快適に走破するための奢られた装備がワンクラス上の乗り心地を提供している。
昨日村上から乗ったキハ40が貨物車にに思えてくる。凄いぞ!JRH。
間もなく最後の停車駅である苫小牧に到着、暫時の停車の後発車となる。
時刻表に目をやると、この停車時間という奴が異様に曲者で、この列車では発車1時間もしないうちにまず森で43分の停車。次は八雲、そして長万部では53分の停車。
一時間少々走ると今度は東室蘭35分の停車と、走っているのか止まっているのかよく解らない列車ではある。
事実、帰りのトワイライトでは5時間、JRHの看板列車のスーパー北斗に至っては3時間で走破している。
7時間掛けて走る距離ではない訳なんだが、そういうカラクリがあった訳か。
マァ、幸か不幸かその間熟睡じゃあ~(^_^;)!
少し走って気が付いたが、白々と明けたのは朝日じゃなくて朝靄だった。
“♪あ~さやけの光の中に、立つ影は~”何てTVヒーローの主題歌を唄っている場合ではない。
苫小牧郊外、沼の端を過ぎると目の前が開けてきた。
朝陽が徐々に差し込む平原、靄は少しずつ晴れ、そのうち民家の集まる集落が見えてくる。
広々とした大地と草原、何より視界の果てに山が見えていないのが快挙であった。
と言うのも今までには何かしら山が見えたか、広漠とした海が見えていた。そのどちらもが無いのである。
僅かな掩蔽物さえなければまっ平らな地平線がある。
こんなにも果てしなく大地があるというのが感動とは、如何にも日本人・島国根性丸出しを露呈して情け無くもなるが、開拓者達の夢の欠片を感じ取れる・そんな気がした。
「大地とは可能性なり」
北海道走破の最初の印象がそれだった。
大地に夢を託し、それを形にしようとするならそれにはある手の莫大な覚悟も必要だが、可能性を夢に結びつける思考はポジティブでいい。
今思うのだが、我が広島では少しの空き地も5年すらもたずにマンションの敷地と化す。
これがここの限界でもあるように思う。
狭い土地にそのまた更に多くの人を住まわせる必要を思うと私はゾッとしない。
だが、此処にはそんな尺度の小さいことは感じない。
何か随分と僻みが入ったな。しかし、此処では使い古された「母なる大地」の言葉を信じれる、そんな気がした。
あ、そこの民家だが総じて二階建が多く、2x4ふうの洋風戸建てが殆ど。
土地が安いと言う訳ではないのだろう・小じんまりした家ばかりではあるが、ギッシリと詰め込むのとは違って少しゆとりもあったな。
※北の都へ
その次に拡がった風景はブッシュ。その中に点在する樹が群生したかと思うと樹林が覆い尽くす。
然程大きいものではないが、快走する列車の窓は瀬戸内の島のように点在する樹林を縫う。
木々が切れると畑や牧場が現れる。雰囲気は別格である。
気を抜いて寝入ったのか、ふいと草原の風景が一変した。
雰囲気が違う。側には立派な自動車道・国道36号線が走り、工事中の高速道路の高架、無機質な倉庫や垢抜けたビルが見え始める。
そんな“渾沌”を構成するのは千歳市の中心でもある新千歳空港。
まだ未完成の施設も多いらしく、工事中の囲いも目立つ。
車窓には空港のターミナルも目視出来たが肝心の滑走路や空港施設が目視しきれなかった。
それもそうで、後で調べてみると新空港移転の際に地点がズレたのを、頭に入れていなかった様だ。千歳駅の手前である南千歳・元千歳空港駅が正式の玄関口になる。
北海道の空の玄関口である新千歳空港を過ぎると、加速度的に都市が形作られて行く。
牧歌が似合うと言う風情は、列車の掻き揚げる砂塵に徐々に吹き剥がされて行く。
ただ札幌が近付くに連れてもなお北海道の持つ風情は失われない。
やはり広大な土地の持つものが成せる技か、ビルが束になって建っていても風景が閉鎖的にならない。
大阪の様に然程遠くない位置に山があるとか、関東の様に幕の内を更に押し固めた窮屈さがやはり無い。
その都市風景が疎密を繰り返しながら、気が付けば高架上の風景になっている。
一度5時前に目醒めた反動でもう一度コックリコックリしていると白石に達していた。
此処に差し掛かると、既に札幌駅の前庭も同然。
今走っている千歳線に旭川から下る函館本線が合流。グレイのボディーにライムとラベンダーのストライプを纏ったオホーツク10号が併走して来た。
オホーツクは網走から夜を衝いて札幌に向かう夜行特急であり、その前身は夜行急行大雪6号である。
その編成は多彩で、気動車特急としては珍しく寝台客車やダブルデッカーをその中に加えている。
夜行列車も今や時間の経済性だけを売り物にしているきらいがあるが、JRHの持つベクトルには好感が持てる。
夜行列車の質の向上は各JRのうち、西日本、東海、四国を除く三会社があの手この手を使って様々試しているが、皮肉にも業務実績の最もいい東日本に一番華が無い。
九州は洒落っ気を、北海道がボリュームを誇っているが、東日本は新幹線を補完する列車でしかない。
私は、阪急電鉄が「高級感を銭でなく考え方で賄うから」最高の鉄道会社だと言ったことがあるが、このJR三社にその言葉が充て嵌まる。
新宿から抱いて来た「列車に対する考え方」の一片が見えて来た。
そして間もなく6時半、オホーツクの随走に迎えられたミッドナイトは定刻キッカリに札幌駅に到着した。
▽札幌 6:37~滝川 8:21・函館本線(クハ711-3)
※陽はまた昇る
ミッドナイトに酔いしれた余韻もソコソコに、すぐに次の列車に乗り換えなければならない。乗り換え時間は7分。
余裕は無いように思えたが、それは札幌駅が魅力的だったからだ。
それは後に譲るとして、ホームから下る階段ですぐさま函館本線旭川方面のホームに移ると、そこには赤小豆色に白帯の電車が待っていた。それは、今や群雄割拠とも言えるJRHの列車群のなかで最古参を誇る“電車”711系である。
中に乗り込むとミッドナイトとは一変、通勤列車以外の何物でも無かった。
しかし、ボックスシートクロスシートとデッキ別体の客車内は、他所では急行待遇だ。
座席に座っている分には115系と何等変わらない。ふた向こうのホームに停まっているミッドナイトを暫時見送っていると、間も無く発車となる。
ミッドナイトで入って来たのとは逆のコースを辿ると間も無く高架を降り、車窓は札幌市街、やがて郊外に差し掛かる。
ラジオを付けつつ・と言うよりはミッドナイトに乗車時から引き続き灯け放していたものだが、朝のラジオ番組だけに情報が続く。
不意と車内外を見ると学生服、それも竿物や小袋を持ったのが目立つ。
時間帯を見るとクラブの朝練かとも思ったが、そう云えばそこかしこには高校総体の文字がある。
ここで総体が行われているとすれば会場に向かう移動か。
兎も角、また朝が始まった。
いつもと違い、所も違う朝ではあるが、間違いなくまた新しい一日が始まった。
この旅行では3度目、内1日が徹夜明けではあるが、それぞれが鮮やかに明けて行った。
旅行というのは一種の現実逃避であると思う。
私がこの旅行で夜汽車を好むのは、この鮮やかさを味わいたい為なのかも知れない。
宿に泊まって安穏としていると、まず間違いなく朝をやり過ごす。
そういう日は失った時間を惜しんでややも後味が悪い。
そういう意味で夜汽車で夜を更かし、朝を迎えるのは非常に儲けた気分になる。
この上でまた一日を過ごす。不思議な事に旅に出ると普段は曖昧で相似形な一日の区切りがはっきりする。だから一日に張りが出る。
幸い今まで天候にも恵まれて気分は爽快。そしてまたいつもとは違う1日が始まる。
今日はどんな風景が迎えてくれるのか。
※今日はとおい空の下
目が醒めた。
ンア?‥‥‥偉そうなこと言ってて寝ていたのか(-_-;)。我ながら情け無い。
空はやや薄曇り、札幌市内に入る前の様な平原が拡がるが大地は耕されている。そこはかとなく広い農地だ。
そして差し掛かった川に立ててある標識には幾春別川とある。
時計を見ると8時前。時刻表と現在時刻を照らし合わせると、現在位置は岩見沢を過ぎたばかりだった。
ここも北海道では幾つかある直線区間である。それも2~4駅に跨り、半端な距離ではない。
その上を快走する711電車は軌条の響きを軽やかに奏でる。
光珠内、美唄、茶志内と駅を過ぎる毎に、この電車の終点である滝川も間近になる。
灯け放していたラジオからはまだ情報番組が続く。
東京から札幌からと入れ替わり立ち替わり繰り返されるニュース。
細部は覚えていないが、札幌からの主だったニュースは二つ。
一つは出発直前に起こったロシア沿岸警備隊による根室の漁船に対する砲撃事件、もう一つは札幌交通局からプリペイドカード改定のニュース。
切実感のギャップに苦笑すら覚えるが、これも旅行ならでは。
地方ごとにクローズアップされる事件が違うのもそれだけ距離を走った証拠。目で耳でその距離を測るようで愉しい。
旅先ではAMラジオを一つ持つだけでその臨場感を倍増する。
また持論を一つ深めた私である。
薄曇りながら、その他順調に北海道の郊外風景を堪能した後に8:21、定刻通りに滝川駅に到着した。
※滝川駅
その滝川駅なんだが、けっこう広い。
それは駅舎ではなくホームでもなく、その引き込み番線が数多いのだ。
根室本線の始発駅であり、旭川まで続く函館本線とは此処で袂を分かつ事になる。
岩見沢から此処までの区間には歌志内線などの盲腸線とも言える炭坑線が数多く発していた。
そのトランスファとしての役割があったのだろうか?
ホームを伴わない貨物引き込み線がただっ広く感じられた。
乗って来た電車が去って行くと、駅には一つの列車も認められなくなる。
長閑な反面、何もないとその所作を失ってしまう。そのままというのも難なので私は駅舎に入った。
でもそこからが(T_T)・・・・・市中観光する元気ってないモノだ(-_-;)。
何しろ次に乗る釧路行きの発車まで74分もある。
朝飯、いや昨日青森で蕎麦を啜って以来食事らしい食事をしていないので此処で何かしら食事をせねばなるまい。
別に1・2食抜いても差し支えない体付きはしているが、不定期に食事を取るほうが体調不順を誘うと聞いてはやはり気になる。
事実、此の旅も数食抜きつつある。
とは云え、列車旅をしていると感情の欲求が満たされているので空腹感がない。
改札を出て周囲を見たが、此の滝川駅は構内の広さに反して駅舎は小さい。
コンコースと待合室が函館と違って混同しており、その脇にキオスクと駅ソバ屋がある。
駅前に出てみたが、スーパーはまだ開店時間に程遠い。
そのほかの商店もまだ眠っているという感じが拭えない。
観光地図でも備えてあれば出回ろうという気にもなったのであろうがその様なリーフレットもなく、地理の暗さは補えない。
次に乗る釧路行きが7時間半にも及ぶ長丁場になることから、此の列車の入線はゲットしたい。
となれば朝食は駅ソバ屋に決まった。
ただ、メニューを見るとこれがソバ屋だけじゃなかった。
定食・汁物、カレーライスもある。
その中で私の目を曳いたのは
“あい鴨ソバ”
これを注文してみると見慣れたソバの具に脂の浮いたコクのある汁とコロンと盛られた肉がある。
此の鶏肉が鴨である。こんな濃厚な駅ソバ初めて見た。
店の主人に「寒い処だからこんな濃いくちのソバがあるんですか」何て言ってみたが主人は苦笑して躱した。
他にも雑談を交わしながらソバを召し上げ、それが終わるともう一度ホームに戻った。
しかし、まだ目当ての列車は来ていなかった。架線とレールだけの構内を胡乱に見詰めた。
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いや~、今読み返したんだがこれレポートか(-_-;)?
ナンカ無駄に語ってるよなぁ。けったくそ眠りこけてるのに。
あい鴨そば、和蕎麦とは思えない味でした。
今なくなったんだろうかなぁ?そういうとこいっぱい見てきたもんで。
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蔵出し鉄旅録 | 旅行/地域
Posted at
2014/08/14 12:43:01
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