• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2014年09月11日

94北往記18。飽くなきまでに日本海


    19・第6日/お早う!最終日

▽長閑なり日本海

※寝ぼけ眼の信越路

 幾つもの目覚ましからけっきょくクロノグラフで目が醒めた。
 部屋のアラームで目が醒めた記憶もあるのだが、窓外の風景は既に新津駅を出た様子である。

 薄雲が拡がる曇天模様に、道路は湿っている。
 夜の間に雨に降られた証拠である。
 4:50程なので、蛍光灯の街灯がいまだ点灯している。
 雲の切れ間にはまだ青みが差しておらず、日の出をまだ迎えていない証拠である。

 30分程この様な薄青色のモノトーンの住宅街や水田を寝惚け眼で眺めつつ、次の停車駅の長岡にやって来た。

 時刻は5:23。この辺りになると大分意識もはっきりしてきたので、そろそろ寝台を片付けることにした。
 セッティングと違って今度はボタン一つで畳むだけでいい。
 通路に避けてこの様子をビデオカメラに収めてみた。
 “ソファー”のほうへボタンを押すと、セット時と逆に、ベッドの手前半分が持ち上がってゆっくりと立ち上がって行く。半開きのカーテンを引っ掛けながら垂直になると、一旦“ガクン”と跛を引いて向こう側に倒れ込む。座面と背凭れの間からシーツが覗き込んでいるがそれは御愛敬。丁寧に後ろ側に押し込みましょう。

 出発からずっと今まで着続けた白いシャツをグレイのスペアシャツに替え、半ズボンを着用。ラフな着衣に替えた後、もう一度折り畳みテーブルをセットし、再び昨夕と同じ様なセットに取りかかった。

 ラジオを点けて、稲穂の青さ眩しい越後路を見送る。
 新旧織り交ぜての家屋はある種の長閑さを醸し出す。
 人通りがまだ無く、建物の持つその性格がまるで人々のそれである如くだ。
 ラジオの受信状態が芳しくないのでこちらは諦め、呆と風景に魅入った。

 普通の特急なら新津から新潟へ寄ってから長岡に向かうのだが、TWxは時間帯の悪さと編成の向きを考慮して、新津から長岡までまっすぐに向かう。
 新潟に寄ると列車編成をもう一度逆進しなければならなくなるのだ。

 長岡から暫く走ると柏崎を通過。それまでビデオをつけてそれを呆と見詰める。今度は展望窓には日本海が見え隠れする区間に辿り着く。

※朝陽の日本海

 此処を過ぎると日本海の絶景を幾度か眺めることになる。
 この辺りになって漸く朝陽が周囲を眩しく照らし出すようになった。しかしまだ早起きさんの時間帯だ。

 目下の日本海は穏やか且つ溌剌としていた。既に群青色の水面を見せてくれる。
 沖に浮かぶ、松林を頂いた島が白波を受け止める。
 中には鳥居や七五三縄を頂いた岩礁もある。昔の年賀切手などの絵柄にも扱われた景勝である。

 やがて、堤防や陸が朝陽に照り付けられて強い黄昏色に映え出した。コントラストも抜群である。
 調子に乗ってビデオカメラを回しながら「お早う御座います・日本海」何て大ボケをかまそうかと思ったが、言い掛けた途端にトンネルに入った。「御座」辺りで息を噤んだ私は思わず「馬鹿野郎」と言ってしまった。
 ただ、そんな馬鹿げたやり取りをしたくなるほど、目の前の風景は雄大で穏やかであった。

 時折絶景を塞ぐトンネルや堤防こそ小癪だったが、お蔭でゆったりと目醒める事が出来た。
 やはり“白鳥”から車窓を望むのとは訳が違う。
 こんないい風景を一人占め。その景色の中、ホームの向こうは日本海・と言う駅も珍しくなかった。
 写真ぐらいは撮ってみたいが、列車の待ち合わせをするには些か心細い気もする。心の掃除にはいいかも知れない。

 米山駅通過後、不意と列車海手の窓から廻り望める列車の後方に目を向けた。
 どよめいた上層の雲から、まるで藤棚から藤が花や蔓を垂れる様に雲が下に流れている。
 いや、これは雨だ。
 山形秋田、奥羽地方なのだろうか?
 新津の方でも雨に降られていたから容易に想像できるが、此処からその様子がはっきりと解る。
 間を遮る分厚い雨雲が不気味に日本海を曇らせる。
 ただ近景は時折薄雲に遮られはするが、鋭い朝陽の陽光を受けて明るく照らされる。

 漸く雲の切れ間が鮮やかな青色になってきた。
 水平線を望むが、異国の地が見える訳で無し、空と海との境目でしかない「ホライズン」をただ見詰める。対岸に大抵何かある瀬戸内海で育った悲しさか、海の上に何かが見えそうでやはり呆と見詰める。
 レールのすぐ向こうは砂浜だ。
 少しごみが打ち揚げられているのが玉に傷(-_-;)だが今にも服を脱いで海に飛び込みたくなった。
 そう言えば長らく海には来ていないな。打ち寄せる白波、足跡の無い砂浜、思いきり遊びたくなる!

※忘れ物の町並み

 国道8号線か、それが線路と海岸線の間に降り立つと今度は集落が見える。
 漁村落か、それとも海水浴宛ての商売か、小じんまりながらも瓦葺きのしっかりした家並みが懐かしさを感じる。
 壁に焼き板を打ち付けた家、ブリキやホウロウで出来た広告看板を掲げた家も見られ、産まれ育った町並みを思い起こさせた。
 その向こうには日本海である。
 海岸線と、そんなつましささえ思わせる集落が入れ違いに現れて心和んでくる。
 やはり俺は海っ子なんだろうなぁ。

 ふと思ったのだが、北海道の集落には大地の持つ雄大さの影でどこか乾燥感があった。
 それは家屋の造りによるものだとこの時思った。
 向こうは厳寒や大雪に耐えうる必要から何処か簡素で頑丈な造りを要求される。
 スレート葺きで、形状の変化に乏しく角度の急な北海道の屋根に対し、海からもたらされる風雨に耐えるべく瓦葺きにされた変化に富む屋根。
 空調の効果を重んじる北海道の壁に対し、通気性が重視される焼き板葺きの壁。
 注意さえ払えばTWx一台で此処までの変化を感じられる。

 直江津、3分の停車のあと6:28発車。此処よりTWx所轄のJRWの管轄に入った。
 引き続き日本海と集落を繰り返し眺める風景が続く。
 海岸線もより激しく近く遠くに移動する。
 ただ、有間川通過後には今まで背後に控えていた北陸自動車道の高架が見え隠れする。北陸路の隘路が近付いてきたのだ。
 駅ごとに拡がる集落とその間に拡がる日本海。人通りもまだ疎らで長閑な事この上無し。上空は相変わらず薄雲拡がる中に青空が覗く。まさにこの風景、長閑しや。

 ところで糸魚川を通過後、背後の風景が険しくなってきた。
 先程北陸路の隘路と言ったが、北陸路随一の難所親不知・子不知が近付いて来たのだ。
 険しい断崖と日本海の激しい波に洗われ、命を落とす者も居たと云う。
 この断崖を越える時
「親は子を顧みず、子は親を知らず」(車掌案内)
 事から名付けられたという。
 現在は此処を国鉄はトンネルで、国道と北陸道は高架橋で渡して事無きを得ている。
 だから絶景を列車から望む事は出来なかったが、その難易度は容易に推せた。

 ただ、今は難所を通り越してキャンプ場にすらなっている(=_=)。
 トンネルを抜けて親不知駅を通過すると自動車道高架の下の浜にはワゴンや四駆が駐車し、自動販売機まで有る。
 すっかり俗化されてしまった。
 国道・自動車道の二本の高架橋を見詰めつつ、もうじき日本海の絶景は離れて行く。
 高速道も山の手に下がり、市振駅通過後から認められる掩蔽物の無い日本海を見納めた。水田を目前に黄緑と青のコントラスト。日本の風景だ。

▽加越三都へ

※立山、そして富山

 日本海を離れて来るとTWxはブレックファーストの時間帯を迎える。

 本来ならダイナー・プレヤデスで朝食という時間帯になるのだが、繰り返し述べたように銭が無い。
 そんな不貞腐れた私の感情を慰めるように、食堂車のスタッフがコーヒーを持って来た。
 モーニングルームサービスである。
 コーヒーにミルクとスティックシュガーが添えてあり、お味はお好みに・と言いたかったが砂糖だけブッ込んだ。

 表戸に新聞が置いてあったのを認めてそれも部屋の中に持ち込んだ。コーヒーをのみながら新聞を読むその姿はよくビジネスマンの肖像としてイメージ付けられるが、私がこれをやるとどうも“父っつあん”になってしまう。老け顔二段腹の哀しさである。
 此処であらためて関東地方の豪雨の被害が甚大である事が書かれている。
 一通り読み終えて思ったのは、やたら広告が多く、知りたい種の情報が少ないのは全国紙の宿命か。
 欲を言えば富山の地方紙か日経でも入っていればなぁと思った。

 その新聞を読み終えると、展望窓には平野の先に僅かの日本海、左手の小窓に近郊風景が大きく拡がってきた。
 富山平野に拡がる魚津・滑川市街である。富山が近付いてきたのだ。
 水田に地鉄・富山地方鉄道が縫って走るという風景も家屋、そしてビルが並びはじめて漸く市街地になってきた。
 その市街の奥には高く遠く聳える連峰があった。
 朝靄がひどくてその表情までは拝めなかったが、これが北陸の屋根・立山連峰である。
 その脇からは朝陽がまばゆく差し込む。漸く動き始めた富山の朝である。

 7:50、富山到着。4分の停車ののち発車。

 穏やかに明けた富山の朝を私はゆったり寛いで過ごす。
 普通寝台特急は、朝起きてしまうとその乗務の行程がほぼ終わっている事が多いが、こちらはまだ4時間半もの残り時間がある。
 近郊列車なら列車1~2本分の行程だ。
 のんびり出来る・ただそれだけの贅沢が如何程の価値かをたっぷり味わった。

※恋路列車

 この北陸本線に入って走破すると、距離の割に難所が多いことに驚かされる。
 これから迎える加越国境の倶利伽羅峠もその一つである。
 実は先の高岡を過ぎてからすぐあと天候が陰り、少しずつ雨が篠付いてきた。
 道路は湿り、風景の色も暗く落ちてきた。
 山の端が迫り、自動車道も高架橋に待避し、周囲の風景は急にもの寂しくなった。

 此処で私はBGMを掛けてみた(また楽曲歌詞掲載ご容赦m(_ _)m)。

 ♪愛しくて 愛しくて
  寄せては退く 波を見ていた
  忘れたくて 二人のことすべてを
  恋路は 霧雨の中
  遥かなる 冬の浜辺
  幻と 佇む駅
  潮風 赤錆びた鉄格子 無人の待合室
  剥き出しの 樹々の肌と
  カタカタと 黒い電車
  街を出て 北へ登る
  想い出だけ 重ね着して
  しだれ柳 慰める様に
  能登路は 雨に霞む

 村下孝蔵の歌う“恋路海岸”である。
 些か外したシチュエーションも有るが、情景が厭というほど合っていた。
 特に“幻と”のフレーズで図らずも倶利伽羅駅が現れてきた。

 語り囁く村下孝蔵特有の歌いくち、哀愁を誘う水谷公生の旋律、終盤で感情の高揚を誘う町支寛二のコーラスは彼のデビュー時からの取り合わせで、私はデビュー間も無くの頃から好きだった。
 それが旅愁を帯びた曲ともなるとたまらない。
 叙景詞が綺麗で、みだりに横文字を使わない氏の作品は国内の旅に連れ立ちたくなる。
 北海道でも三曲ぐらい持ち合わせて聞いていた。

 二つ先の津幡はその能登路に向かう七尾線の分岐駅だ。
 程無く列車は加賀の国、百万国の城下町である金沢に差し掛かる。
(今項敬称略)

-----------------------------------------------------------------

 目が覚めてもまだ堪能しています(o^-^o)。
 あいにくこの区間はもう新幹線で訪れる地域になってしまいTWxの存在意義を消し去ってしまう。
 しかし、用事に追われてならともかくこの区間はやっぱりこう言う寝台特急や普通列車での走破が似つかわしい。
 18切符では残念ながら夜しか通れなかったので尚更だ。

 この区間を目当てにするだけでもTWxは珠玉の列車なんだがなぁ(T_T)。
ブログ一覧 | 蔵出し鉄旅録 | 旅行/地域
Posted at 2014/09/11 07:19:38

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

JTP峠ステッカー遠征2025②1 ...
インギー♪さん

オーバーオールの肩ひも事情。
bijibijiさん

ホームオーディオ スピーカーの制振
たかbouさん

ふぅーーー!当て逃げ対策完了です ...
narukipapaさん

大阪南港北から大阪万博の花火
Zono Motonaさん

ルノースポールでミーティングのその ...
Takeyuuさん

この記事へのコメント

2014年9月11日 12:23
こんにちは~

このシリーズ、毎回、楽しみにしております(笑)

亡くなった父の故郷が、新潟ゎ柿崎…
わたしも幼い時分に、里帰りで、訪れたのぉ、思いだします。

中学の夏休み、169系の 急行:よねやま に乗って、柿崎まで、遊びに行きました。
これが、人生初の 一人旅です。

今でゎ、北陸道も整備されて、昔の面影ゎありませんが、駅舎ゎ変わってない様子。
今度、遊びに行こうかなぁ~

村下孝蔵…
今でも、ドライブにゎ欠かせませんょ
コメントへの返答
2014年9月11日 13:22
 こんにちは。

 TWxってつい北海道や日本海をクローズアップするんですが、新潟県を走破するという意味でも美味しい列車でした。
 下りだと寝覚めで堪能できますからね。

 どんどん面影の無くなる区間ですが、想い出があれば大事にしたいです。

プロフィール

「今回カーナビ外したので、後記用のトラッキングは悩んだ。
最初ここの[何シテル』投稿やスマホカメラで休憩に撮ったが行程が残らず。
最後に使ったのはスマホ地図のスクショでこっちが効果高かった。

また大きな声で言わないが位置ゲーもトラッキングに使った。」
何シテル?   07/09 10:48
 広島・備後御調種佐伯産宮島対岸棲息の対厳山。 長らく勤めてた仕事を現在辞職、2025年初めはフリーターで始まりました。  新社会人時代(つぅても四...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

リンク・クリップ

なんかさぁ… 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2017/02/12 00:55:01
標板 希望ナンバーの人気番号は如何に!? 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/10/08 13:00:12
説教オヤジ (ボク風人生ノート) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2014/05/02 12:33:16

愛車一覧

日産 モコ モコノア (日産 モコ)
恋焦がれて購入したRVRが毎夏のように壊れては月単位の部品待ちという状況から、足車として ...
トヨタ スプリンター トヨタ スプリンター
 4速SEのミドルグレード・・・・・のド中古。  正確には当時普段家にいなかった家族の車 ...
三菱 ギャラン 三菱 ギャラン
 家族所有の車として新社会人祝儀を兼ねて購入。  2.0DOHCエンジンとAT以外はナニ ...
三菱 ミニカ 三菱 ミニカ
表記はμfだけど実はμLです(^^ゞ。所有期間の日付も虚覚えm(_ _)m。 家族共有か ...

過去のブログ

2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation