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イイね!
2020年09月12日

Pixinsightでコンポジット

天体写真の話です。

コンポジットは具体的にはどう処理していて、
それにに必要な画像は、どんなものを用意したらいいのか、大凡のところしか把握していなかったので、詳しく調べてみることにしました。
対象はPixinsightです。
Pixinsightでは、コンポジットは加算平均とか位置合わせなどのプロセスを個別に処理していく方法とScriptでいくつのプロセスをまとめて実行する方法があります。

コンポジットに必要な画像は、Bias, Dark, Flat, Lightです。
Lightは実際の撮影画像で、その他は補正用画像です。

まずはBiasからです。
別な言い方をすれば、オフセットとか、
もっとこなれた言い方をすれば、0の位置

シャッタースピード0秒の画像のようですが、そんなことはできないので、
1/8000秒 でカメラに蓋をして、真っ暗な場所で、リモコンで撮影したものを代用します。


もちろん真っ暗な画像です。
数字で見ることはできますが、分かりづらいので、
暗い部分の階調を伸長してみます。


ノイズとシェーディングがわかります。
シェーディングは低周波のむらのことです。

一部を画素がわかるまで拡大して4枚をGIFにするとこんな画像になります。


ランダムなノイズですね。
これを平均化してオフセットを求めているのでしょう。
もしくは統計をとった振幅のミニマム値かもしれません。
なので、Biasは枚数が必要だということです。
ミニマム15枚は欲しい感じです。

ちょうど外気温が体温に近い猛暑だったので、
33度の室内と、エアコンをかけて25度(30分エージング)にしたときで、
平均の出力の変化を数字で調べてみました。
結論はこの温度差での有意差はありませんでした。
といっても本来は温度依存するはずなので、
10度、0度と下げれば当然変わると思います。
ですが季節ごとに室内で用意すればいい感じでした。

****************
ちょっと撮像素子のノイズについて
****

大体4つあるようです。簡単にいうと。
[暗電流ノイズ]
ランダムノイズとかダークショットノイズとも言われるようです。
ラジオの局間ノイズ(古い^^;)のようなものですが、常に信号に乗るところが違います。
信号:依存せず
温度:依存する
IOS:依存する

[読取りノイズ]
センサから信号を読取るときに発生してしまうノイズ。
信号:依存せず
温度:依存せず

[光子ショットノイズ]
100の光子が当たって、本来100の電子に影響をあたえるはずなのに、
実際は100にはならず、決まった分布のバラツキを持ってしまうことによるノイズ。
信号:依存する
温度:依存せず

[固定パターンノイズ]
素子の画素ごとに、性能がどうしても不均一になってしまうことから起こるノイズで、
時間的な変化がほとんどないので固定したパターンに見えるもの。
信号:依存せず
温度:依存せず

その他に、ノイズとも言えなくはないもので、
ホットピクセルがあります。
特定の一画素がおかしな信号をだすことで、画素欠陥のように見えるものです。明暗の2種類があります。(中間調は見たことがありません)
****************

Biasはこの、暗電流ノイズを調べるためだとおもいます。

読取りノイズも入っているとはおもいますが、私は読取りノイズの実際のデーターを知らないので、
このあたりはよくわかりません。
同じ意味で光子ショットノイズも外します。

****

次は Darkです。
例えば5minの露出で撮影する場合、
光を与えないで、同じ5minの露出をしたものです。暗い画像です。
これもわかりやすくするとこんな画像です。


一部を拡大して4枚をGIFにするとこんな画像になります。


場所が変わらない強いノイズと、ランダムな弱いノイズの2種類があることがわかります。
このノイズが撮影画像にのっていることになります。

この場所が変わらないノイズが固定パターンノイズでしょう。
ランダムなノイズは、暗電流ノイズだとおもいます。
信号の値を確認すると固定パターンノイズは、おおよそ暗電流ノイズの振幅の2倍ありました。
但し、暗電流ノイズは平滑化してぐっと減らせるので、固定パターンノイズは暗電流ノイズよりかなり大きいことがわかります。

といっても両者の大きさは極めて小さいので、
風景画像など普通の写真撮影で問題になることはありません。
しかし極限の条件で撮影する天体撮影では、これが大きな問題になります。

このノイズを減算するのですが、
強いノイズは同じ画素に常に存在しているので、
Darkは1枚だけでも大きな効果があることがわかります。
別な言い方をすれば、2枚3枚と増やしても枚数に比例した効果があるわけではないこともわかります。
もちろん用意できるのであれば多ければ多いほどいいです。

Darkはいわゆる固定パターンノイズを軽減するためのものだとおもいます。
温度に依存しないはずなのですが、一応これも室内気温を5度ほど振ってデーターをみました。
結果に有意差はありませんでした。
なので、季節ごとに自宅で用意するくらいで良さそうです。
確実なところとしては、撮影から帰ってきたら、自宅で、
撮影した同じISOと同じ露光時間でつくるのがより確実そうです。

私の場合は、カメラのレンズを外して蓋をして、できるだけ暗くして撮っています。
このとき床に逆さまに置いてとってしまうと、縦持ち撮影されたようになるので要注意です。

Bias とDark後の拡大画像です。もちろん後が左です。

暗電流ノイズと固定パターンノイズが、見事に消されています。


ここまで確認したとき、疑問が1つ残りました。
ひとつはBiasのシェーディングです。


いったいこれは何なのか、
温度依存は確認できませんでした。

妙に幾何学的で・・・。

で、見ていたら、L字の構造とかシャッターに似てるなと思いました。
真っ暗にしているので関係はないはずですが・・・あまりに似ている。

そこで、「サイレント撮影」を「入」にして、電子シャッターにして、
機械シャッターを動作させずに撮ってみました。

すると


見事に消えています!

ということは、天体撮影は電子シャッターのほうがいい?

ところがサイレント入では、最長の露出が30秒、Bulbができません。
ということで機械シャッターは使わざるを得ません。

それと気になったのが、電子シャッターにすると、Biasの平均輝度が1.47倍上がります。
別な見方をすれば、もしかしたら機械シャッターは露出が少し少なくなるのかもしれません。
この平均輝度の違いの理由は、今も不明です。

もう一つわからないことがありました。
なぜBiasが必要かということです。

普通に考えれば、オフセット(Bias)の値を調べて、
素子に、明るさのわかっている対象を見せて、
その素子からの出力の値を調べれば、出力勾配がわかります。

でもコンポジットの処理では、明るさのわかっている対象を見せるわけではありません。

なので、オフセットの値は、ここを越えたら何かを捉えたことがわかるだけです。
ところが、オフセットは、ヒストグラムと実画像をみながら、後で人が勝手に決めます。
ごく僅かなオフセットの値を求めたところで、意味はほとんどないはずです。
と思ってました。

が、Darkの画像を見てわかりました。
Darkにはランダムな暗電流ノイズがのっています。
だからをDarkからBias減算して、固定パターンノイズを正確に求めているのだとおもいます。
それ以外にBiasの使い道は思いつきません。要はBiasはDarkのためだということです。

残るはFlatです。
Flatは、画像全体のシェーディングを補正するために必要なようです。

厳しめの画像を使ってみます。
星撮りの帰りです。23時から高速道路が無料になります。
それまでの空いている時間がもったいないと思って撮ったものです。
薄曇りの空で、月が昇ってきて既に明るなってきている普通は撮らない条件です。


これが原画です。
強力なシェーディングとM33が薄っすらと写ってます。


このFlat補正は、いろいろな作り方や、憶測や推察的な見解などいろいろあって、
いまいちベストがわかりません。
大きなところでは、実際の望遠鏡でつくったほうがいいのか、人工的(プログラム)なほうがいいのかです。
または両方を組み合わせるのか。

実は似たようなことを以前の職場の実験室でやっていたことがあります。
光学入力機器の測定でFlat画像が欲しいときに、すりガラス状の加工がしてある厚さ5cmほどのガラス板を測定器の前に付けて、均一な光源の前に置いて撮影します。
そのすりガラスは光学機器のメーカーが専用に作ったもので、均一になるように専用に加工されている特殊な仕様のものです。
もし望遠鏡用につくるとしたら本体より高額になるでしょう。
C9に使うなら、直径1m,重量50kgくらいになるかもしれません。

こんな経験から、はじめは人工的につくるのでなく、半透明の乳白色の板を加工し、望遠鏡の先端に取り付けて撮影して、Flatとして使用していました。ところが精度よく補正してくれる画像はできませんでした。やはりこういう単純なものでは効果が小さいようです。
結局、撮影画像+人工で、綺麗なFlat画像をつくったほうが良いという結論になってます。

いろいろ試してみて、なかなかいものはありませんでしたが、
今のところは、自分で考えた StarNet++を利用する方法を行っています。

手順は、
オートガイドの前、オートガイド用のPCを出したりとか他の配線をしたりしている空いている時間を利用して、
撮影視野を対象より少しずらして、星だけにして、実際と同じ撮影をします。


この画像の星を、StarNet++で消します。



使い方は単純で、ただ実行するだけです。
パラメーターをデフォルトの64にしています。



星が消された画像です。

他にも、リサイズして、局所最小値で星を消すとか、スムージングで消すとか、星を消す方法はいくつかあります。StarNet++が決定的に違うのは、星以外の部分はほぼそのままだということです。

StarNet++は強力なツールです。
そのかわり処理時間がかかります。横5000pix位の画像だと30分は必要です。

ただ、この画像にも、星があった場所がほんの僅かに残っているので、少し手を加えます。
Pixinsightを使いたいところですが、どうも中広域のスムージング処理が見つかりません。
(一旦リサイズという手はありますが)
なので PhotoShopを使います。

PixinsightからTiffで保存して、PhotoShopで読み込み、
(コピペでもっていくと8Bit深に変換されてしまうように思ったので、あえて一旦Tiffで保存しています)
PhotoShop内でガウスの平滑化を行います。
80pix->40pix->20pix->10pix->5pix (H5000pix画像の場合)
くらいやるとよいようです。
これをTiffで保存してFlat用画像としています。


左が原画。右が補正後です。
強力なシェーディングですがうまく補正されてます。

すばる画像処理ソフト マカリで画像の下の青のライン部分をグラフ化してみます。


撮像面の全てで、これ以上フラットにできないのではと思うほど、よく補正されています。
無調整、一発でここまで補正できるのはとても楽です。

両者のヒストグラムを同じように変化させるとよくわかります。どんなにヒストグラムを変化させても、補正後の画像はどこまでもフラットのままです。


ここで、一つ疑問があります。
Flat画像は、1枚でいいのでしょうか?

上のDark補正後の画像は、実はFlatもされています。
ここで使用したFlat画像には、微小な範囲で、暗電流ノイズがある場所と消えている場所があるような画像でした。
もしコンポジットが、Flat画像から暗雑音を減算して使うにしても、
Flat画像をそのまま使うにしても、いずれでも暗雑音の影響が場所によっては残るはずです。

実際の上の処理後の画像を見てみると、綺麗に暗電流ノイズが消えています。
つまり、Flatの処理は、暗電流ノイズが消えてしまうくらいの、局所的なスムージングをかけていることがわかります。
一方、FlatではStarNet++の星の残痕が問題になることから、星ほどの中広域のスムージングはかけていないようです。

ですので、ランダム雑音を軽減するために必要な枚数なのであれば、それは要らないようです。
極く綺麗なものであれば1枚でいいようです。

最終
もともと、写ってないようにも見えるM33でしたが、
薄曇りで、月明かりがあってもここまでもってこれました。

::
(Flat以外の、Pixinsight の強力なシェーディング補正Processは使ってません)


******
まとめ

・Biasは、枚数が欲しい。
・Darkは、1枚でも効果は大。でも Bias が引かれるのでBiasと同じ程度の枚数が欲しい。
それは、室内でもいい。(冬は外気温との差が大きいので不明)
・Flatは、実撮影近くの星だけの画像1枚から、星を消して使う。
微小域はスムージングして使われるので、枚数はそれほど重要ではない。1枚でいい。

いずれの補正用画像も、
予め用意してあったものでも、後日用意したものでもよい。

実撮影では、
Flat用画像を現場で1枚撮っておく。のみ。

******
もやもやしていたものが、大分はっきりしてきました。
嬉しい!


追)
DarkからBiasを引いている証拠が、もう一つあります。

Biasにあるシャッターのようなシェーディングは、
よく見るとDarkにもあります。
ところが、コンポジット後の画像に、このシェーディングはありません。

つまり、DarkからBiasを引いているから無くなるということだとおもいます。

Biasがなければ、Darkからこのシェーディングを消すことができませんから、コンポジット後の画像にも、このシェーディングが現れてくるはずです。




ブログ一覧 | 日記
Posted at 2020/09/12 20:19:08

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この記事へのコメント

2020年9月13日 20:11
こんばんは。
補正フレームをどのように作って、どう使うかはpreprocessを始める時に通る道ですね。私はデジイチではISOごとに80〜100枚撮って作ったものを長いこと使っています。ダークは撮影が終わった直後に同じ露出設定で20枚ほど撮っています。輝点ノイズは、Cosmetic Correctionで除去できるので、新しいカメラでは不要になるかもしれません。最近はフラットは全く撮らなくなりました。DynamicBackgroundExtractionで大抵はフラットになります。以前は、ご紹介されているように天体画像から星を消して(MultiscaleLinearTransformやStarMaskなどで)いました。StarNetが出た時に、星像を小さくするのに使おうかと思いましたが、どうも不自然になるので自作のmaskとmorphological transformに戻りました。まだまだ試行錯誤が続きます。
コメントへの返答
2020年9月14日 23:30
はじめの一歩のコンポジットをやっとある程度は理解した状態です。

さすがkoichifunさんは、遥か先を行っていますね!
本当に参考になります。
これからやっとPreprocessをという感じなので、いろいろ試してみます。

自分もC9ではフラット無しでDBEでやってました。
ただC5だと、フルサイズで使おうとするときは、シェーディングが酷く、DBEでは補正しきれてませんでした。

そこで、初心に帰って、フラットを使ってみたら、簡単にうまくできたので、DBEより簡単で早いフラットも捨てがたいと。
StarNet++の処理時間を除けば3分はかからないですし、
DBEの星の無い部分を選ぶ操作もなく一発で簡単です。

StarNet++は、基本的には銀河がない場所のマスクをつくるツールかなと。(星雲ではわかりません。撮ったことがないので)
でも、フラットを作るベストのツールとも思ってます。

これから、やっとPreprocessの試行錯誤を開始する感じです。

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「凄いカメラがでたようです http://cvw.jp/b/559333/45127616/
何シテル?   05/21 20:00
みなさんの情報が、いろいろ参考になったので、お礼に情報をお返したいとおもいます。
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