『Dolls』

北野映画です。
北野映画でも特に動きがない映画なんですが、北野武はこの映画について「直接的な暴力描写はないんだけど、今までの映画よりはこちらのほうがより深刻に暴力的なんだと思う」みたいなことを言ってました。

親の意見に流され、結婚の約束をした女を捨てて、社長令嬢との結婚を選んだ男。
結果、捨てられた女は自暴自棄になり、自殺未遂を起こしてしまう。
ショックを受けた男は社長令嬢との結婚を反故にし、後遺症で廃人同様になった女のそばにずっといようと決めて、女と放浪する。
赤い紐でお互いを結び放浪する男女はいつしか「つながり乞食」と呼ばれはじめる…。
日本の四季の美しい映像と、山本耀司の衣装があいまって、ふたりはどこか非現実の世界を彷徨してるように見える。



この映画に流れるものは「見返りを求めない無償の愛」ということだと思うんですが、男女のゴールが結婚だとすると、そこは端的に言うと「稼いできてね」だったり「子供の面倒見てね」の見返りを相手に求めた打算の世界であり、まぁ最初はけっこう「見返りを求めない無償の愛」から男女が出発してても、いずれはそういう世界の住人と変わっていくわけで。

してみると「見返りを求めない無償の愛」の行きつく先、それは結局バッドエンドなのでは？と思うんですが、北野武はこの映画のラストを「どちらにも取れる。最後にふたりが救われた、という見かたをする人もいるだろう。受け取りかたは映画を観た人の境遇を反映するのであって」と語っていて、「深いなぁ」と思います。

あとはこの映画（2002年）の頃の菅野美穂の演技力ってスゲーなー、と思ったり。
本編中全然しゃべらないんですけどね。