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2025/03/08

【保存版】 誰でも解る!バッテリーの充放電の仕組み(化学反応編)


(続き)

(3)具体的にどうやって電気が流れる(放電する)のか?

高校化学で「金属のイオン化列」って習ったと思いますが(「貸そうかなまあある当てにすな酷すぎる借金」なら覚えている?)、金属を電解液に入れると、金属は電子を放出して陽イオンになろうとしますが、そのなりやすさを示したものです。

バッテリーを単純化すると、電解液に、二酸化鉛(プラスの極板)と、鉛(マイナスの極板)を浸し、両極板を導線で(間に負荷を入れて)繋いだ形になります。
すると、まずマイナス極板の鉛が極板に電子を残して鉛イオンとなって溶け出しますが(※1)、これが電解液中の硫酸イオンと反応して硫酸鉛という沈殿(結晶)が出来ます(※2)

一方、極板に残された電子は導線を通じてプラス極へ移動し、プラス極板の二酸化鉛及び電解液中の水素イオンと反応、更には電解液中の硫酸イオンとも反応して、水と硫酸鉛が出来ます。

こうして電解液中の水が増え比重が下がる訳ですが、一方で硫酸鉛は両方の極板の表面に付着するため(極一部は沈殿する)、電解液中の硫酸濃度の減少及び極板の反応面積(≒活物質)の減少により徐々に起電力が下がり、最後は全く反応ができなくなります(深放電)

「電池は酸化還元反応である」と言いますが、マイナスの極板で起こるのが酸化反応(=電子を放出する)であり、プラスの極板で起こるのが還元反応(=電子を受け取る)です。

言葉だけだとよく解らないと思うので、図解します。



化学式で書くと、極板では次の反応が起こります。
負極 Pb → Pb2⁺ + 2e⁻(電極へ)
正極 PbO2 + 4H⁺ + 2e⁻ (電極から)→ Pb2⁺ + 2H2O

更に、鉛イオンは電解液中の硫酸イオンと反応するので、
負極も正極も Pb2⁺ + SO42⁻ → PbSO4

全体式 Pb + PbO2 + 2H2SO4 → 2PbSO4 + 2H2O


(4)充電はどうやって行うのか?

充電は、負荷の代わりに充電器(走行中はオルタネーター)によってバッテリー自身よりも高い電圧を掛け、放電とは逆の電気(電子)の流れを与える事で、真逆の反応を無理やり起こさせます。

化学式だと、
正極(負電荷) PbSO4 + 2H2O → PbO2 + H2SO4 + 2H⁺ + 2e⁻ (電極へ)
負極(正電荷) PbSO4 + 2e⁻(電極から)→ Pb + SO42⁻

全体式 2PbSO4 + 2H2O → Pb + PbO2 + 2H2SO4

なお、硫酸鉛(結晶)が元に戻るときにどのような経緯を辿るかというと、プラス極板でいえば、結晶であるPbSO4が一旦溶解して(液中)、それがPb2⁺とSO42⁻に電離して、最後に酸化反応(還元剤:H2O)によりPbO2に戻ります。

もっとも、今までに述べた化学反応の諸段階はあくまで理論上の話で、実際には前後の段階が同時並行しながら反応が進むようです。

ちなみに、高名な自動車評論家ですら「プラグなどの電装品はバッテリーの電気で動かすが、そのままだとすぐにバッテリーの電気が足りなくなるので、同時にオルタネーターによって充電している」などと書いていますが、ここまで理解できれば、バッテリーが充電しながら放電している訳ではない事が、化学的な観点からも明らかになったと思います。


(さらに続く)


注釈
(※1)
既に酸化したプラス極板の二酸化鉛(酸化数+4)より、マイナス極板の鉛(酸化数0)の方が酸化しやすく、どちらも中間の鉛イオン(酸化数+2)を目指すことで、電子の移動が起こる。
という訳で、必ずマイナス極板の方により酸化しやすい物質を使うのが鉄則。
なお、金属が溶けだすというのは、腐食するということ。

(※2)
硫酸イオンと鉛イオンとは相性が良く、すぐに硫酸鉛という沈殿が生じる。
硫酸(H2SO4)に含まれる二つの水素原子のうち、一つまたは二つが金属などの陽イオンで置換されたものを硫酸塩というが、硫酸鉛(PbSO4)もその一つ。
ちなみに化学でいう沈殿とは、溶液中に不溶の固体(結晶に限らない)が現れる現象のことで、必ずしも底に沈む訳ではない。
なお、金属が酸化すると言うのは、錆びるということ。

Posted at 2025/03/08 08:50:21

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