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まとめ記事(コンテンツ)
2025/05/23
【ハブボルト】どのくらいの力で締めると伸びてしまうのか?【降伏点】
ホイール&タイヤについては、「ハブボルトで支えているのではなく、接触面の摩擦力で支えている」事については過去にもしつこく書いたので省略しますが、では、どのくらいの力で締めるとボルトが伸びてしまうのでしょうか?
1.
まず、標準的な締め付けトルクについては、T系列という規定がありますが、それぞれ用いられるボルトの用途によって標準トルクが規定されています。
・一般=T系列[N・m]
・電子部品=0.5系列[N・m]
・自動車(車両・エンジン)=1.8系列[N・m]
・建設=2.4系列[N・m]
例えば、M12のボルトだとT系列では42[N・m]、0.5系列では21[N・m]、1.8系列では76[N・m]、2.4系列では100[N・m]になります。
2.
さて、殆どの日本車のハブボルトにはM12が用いられますが、指定トルクは100[N・m]前後が多いようです。
ここで、「あれ?自動車なら76[N・m]じゃないの?締めすぎでは?」と思われた方もいるかもしれませんが、実はハブボルトには2.4系列が用いられているのです。
従って、使用されるボルトは強度区分10.9の高力ボルトになります。
強度区分10.9とは、引張強度が1000[ N/mm²]、降伏強度はその0.9倍なので[900 N/mm²]です。
3.
では、次に締付トルクと軸力の関係についてですが、
T=k×d×F
となります。
T=締付トルク(N・m)
k=トルク係数
d=呼び径(m)
F=軸力(N)
トルク係数はトルクから軸力への変換効率を表す係数で、主に摩擦の影響により、0.2前後が一般的な値となります。
4.
で、この式を変形すると、
F=T/(k×d)
になります。
つまり、軸力=締付トルク/(トルク係数×呼び径)になるので、M12のハブボルトを100[N・m]で締め付けた場合、k=0.2と設定した場合の軸力は、
100[N・m]/(0.2×0.012[m])≒41,667 [N]です。
5.
さて、では表題の「限界はどこか?」と言うと、ハブボルトの強度区分は10.9なので、降伏強度をベースに考えると、
900[N/mm²]×88.1 [mm²]=79,290 [N]
※M12×1.5の場合の有効断面積(JIS規格)=88.1mm²のため
つまり、軸力が79,290 [N]を超えると降伏点を超えて伸びきってしまいますが、一方で、JISには保証荷重(弾性限度)が定められており、M12の10.9では70,000[N]とされています。
※保証荷重=これ以下の使用であれば、締めたり緩めたりを繰り返しても問題が起きないとされている(降伏強度の概ね90%)
軸力が79,290 [N]、70,000[N]の時の締付トルクは、T=k×d×Fより、
0.2×0.012[m]×79,290[N]≒190[N・m]
0.2×0.012[m]×70,000[N]≒168[N・m]
※k=0.2と設定した場合
よって、概ね168[N・m]なら安全圏、190[N・m]を超えると危険
(もっとも、手締めでここまでトルクを掛けられる人は滅多にいないと思いますが・・・)
P.S.
なお、これはあくまで純正のハブボルトの話であって、社外品のハブボルトがどの程度の強度を有しているのかは不明です(「競技用ですので一般公道での走行はお避け下さい」と言うのは、「保安基準に適合していません」と同義)
過去にも書きましたが、こうした社外品は設計段階や品質の面で怪しい商品も多いので、足回りなどの重要な部位での使用は避けるべきと考えます。
Posted at 2025/05/23 10:14:03
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