営団地下鉄丸ノ内線444号保存車
高度成長期を支えた端正な電車
2014年06月04日
別項・東京都八王子市の教育施設「サイエンスドーム八王子」に保存されている652号車と並び、東京近郊で見学できる丸ノ内線の保存車輌。
652号車は片運転台(運転台が片側にしかなく、単独運用はできない)構造の「500形」にカテゴライズされる一方、この444号車を含む「400形」は、丸ノ内線開業当初に導入された「300形」のスタイルを継承し、単独運用も可能な両運転台構造となっている。
500形にも引き継がれたシンプルかつ端正な前面デザインながら、正面中心屋根部の行き先表示窓には、300形に通じる飾り枠と標識灯が備わる。
日本の高度成長を地下から支えるべく、路線延伸と車輌増備を重ねていた佳き時代の最高傑作だ。
現在、東京の地下鉄路線の大半を運営する「東京メトロ」の前身、帝都高速度交通営団(営団地下鉄)は、現在でも主力車両として活躍しているアルミ材を採用した「02形」電車の採用にあたり、不用となる旧型の300・400形を処分する必要に迫られた。
大半は解体されスクラップと消えたが、一部の車輌は民間譲渡の方針が示され、半蔵門線延伸の記念イヴェントとして日本橋三越で454号車が展示・販売(輸送・据付費別途で40万円)されるなど、大きな話題となった。
その454号は東京都目黒区の幼稚園に引き取られたが、この車輌を含め10両が売却されたうちの1両が444号車だった。
ちなみに「ゾロ目」番号の丸ノ内線電車は、後にも先にもこの「444」しか存在しない。先行型300形は惜しくも330号までで増備中止。後継型500形の1号車は、下二桁を400形最終468号車からの連番とされたため569号車となり「555」はスルー。最後の赤い電車900形(2両ユニットの中間車のみ)は901号から付番され18両で打止め。現行の02形では形式表記ルールそのものが変更されてしまった。
しかし「ゾロ目」の希少性も然ることながら、444号車は技術面でも特徴的な車輌と言える。
最初の丸ノ内線電車・300形開発に際し、参考として輸入された米電機大手・ウエスチングハウス社製の電装品を装備してデビューしたのだ。
後に国産電装品に統一され、ウエスチングハウス社製の電装品は教習用として撤去・保存されることになったが、丸ノ内線全ての電車の「先輩格」として高度成長に沸き立つ東京都心を雁行していた。
1990(平成2)年に廃車・当地に搬入されて以降、雨晒しで車体の傷みが進行し、一時は見るも無残な状況に陥っていたが、2011(平成23)年に錆の除去と再塗装を施工。現役時代の印象よりも鮮やかな赤色塗料が用いられたものの、適度に色褪せた現在は然程違和感を覚えなくなってきている。
南側道路に面した妻面扉の、独特なフォントの番号表記「444」が消されてしまったのは残念だが、02形更新車ではプリントで表現される伝統の「サインカーヴ」は、ステンレス切抜きのまま光り輝いているのが嬉しい。
定期的なメンテナンスを受けて末永く保存されることを祈りたい。
※車輌の見学は公道からのみ。保存されている敷地は私有地であり、貴重な歴史遺産とも云える電車を保護するためにも、絶対に立ち入らないでいただきたい。
住所: 埼玉県川越市石原町1丁目40-13 田中商店
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