
いつもの一回り。今日は俺と権兵衛がペアだ。警部補は何か用事があるのか、出掛けている。今朝は幸い何事もなく過ごせた。署に戻り、軽く事務をこなし、少々早いが昼飯を用意した。
11:52
「ね、ゆうさん」
「なーにー?」
「今日来る新人知ってる?」
「新人?」
俺は昼飯のピザをかじりながら、女に答えた。
「あ~、新宿署の刑事課からだっけ?」
「そっ」
「それが、どうかしたの?」
「なんでも、ずーいぶん可愛いコらしいわ」
「それで、ウチの係長殿が一人だけでそのコを迎えに行ったのが気に入らんと?」
「べえ~つに~。でも、異動する人間をわざわざ迎えに行くなんて、随分と優しい上司ぶりなことで」
実に分かりやすい態度で自分のデスクに戻る女に、俺は苦笑いしながら、ピザをコーヒーで流し込んだ。
俺は警部補とは随分長い付き合いになるが、アイツの女運の悪さも随分と見てきた。正直、今の女との仲もどうなるかと心配していたが、まあ、なんとかなりそうだと思う。
「ゆうたろうさん」
どうも今日は昼飯をゆっくり食えない。今度は34が話しかけてきた。
「今日来る新人さんって、どんな人なんです?僕全然知らないんですよ」
「新人ったって、警官としちゃお前より先輩だよ。新宿署の刑事課の巡査長だよ」
「なんだあ~。ようやく後輩ができるかと思ったのに~」
「あっはっはっ。その代わり、結構可愛いんだか美人らしいぞ?」
「え!?」
「なんでも、どっかの歌手だかアイドルにそっくりなんだとか」
「えーっ。だ、誰ですか!?」
「それは来てからのお楽しみだろう。しかし、そんなんだから、警部補がわざわざ迎えに行ったことに、ウチの女巡査部長様はご立腹みたい~。うふ」
13:07
「おーう強行犯係、ちゅうもーく」
刑事部屋に入るなり、警部補がそう言った。
「えー、今日からウチの係に配属になる、新宿署から来たシノダ巡査長だ」
警部補の傍らに立つ一人の女性が一歩前に進み、15度の敬礼を行う。
「新宿署刑事課から異動になりました、シノダです。宜しくお願いします」
「いっ、er34でっす!」
誰に言われることもなく、34が立ち上がり自己紹介をする。
「宜しくお願いします」
シノダが34に笑顔を返す。なるほど、アイドルはよく知らないが、確かに中々可愛いらしいんだか美人だ。
「こいつね、パヒュームのファンなんだよ。でもシノダの方にビビッときたようだ」
「Perfumeです!って、なな、何言わすんですか!?」
「というワケで、俺はだらしな権兵衛だ。宜しく」
「宜しくお願いします」
権兵衛が挨拶する。
「俺はゆうたろうだ。一応ここの二番手、あーいや、三番手だ。で、二番手は…」
俺も挨拶しながら、やや不機嫌なままの女に振る。
「こちらの女史~」
俺に話を振られた女は、「なによ」と口だけを動かし、椅子から立ち上がった。
「別に…、二番手でもなんでもないわ。女よ。宜しく」
「宜しくお願いします」
頷きかける女に、シノダは態度を変えることなく挨拶をする。しかし、警部補も大人になりきれてないが、女もそうだな。ま、人の事は言えないが。
「みんな挨拶は終わったな。まあ一応改めると、俺がこの強行犯係の係長、警部補だ。宜しく頼むぞ。…………ちーなーみーにー」
そう言うと、シノダの傍らにいた警部補が女の傍に行く。
「俺と女巡査部長様はこーゆー仲だから」
「ちょおっ!?」
言うなり、女の肩を抱き寄せる警部補と、すっとんきょうな声を出す女。
「おお~」
囃子の拍手を送る俺と権兵衛。シノダは少し、34は大いに驚いた顔をした。
「なっ、何、何?」
「そおゆーわけで、俺以外はチョンガーだから是非仲良くしてやってくれ」
34はまだ困った様な顔をしているが、経験の違いかシノダは愛想笑いをしている。
17:12
「じゃあシノダ、明日からは34に管内の詳しいことを教わってくれ」
「了解です」
「えーっ!ぼぼぼ僕ですきゃっ!!」
警部補に案内役を指名され狼狽する34。
「明日から宜しくね、34君」

「ふぁい!」
18:13
がらりとした刑事部屋。今日は当直にあたるのは誰もおらず、俺も帰り支度をしていた。といってもなんやかんやで定時はとっくに過ぎている。
「お疲れ~」
「おう」
まだ書類を整理している権兵衛に声をかけ、刑事部屋を出る。廊下を歩き、ふと喫煙兼休憩所を見る。すると、警部補と女がいた。壁に隠れ、こっそりと聞き耳を立てる。
「あー☆とか、きゃー♪………みたいな声、アタシが出すと思った?」
「う~む、一応期待したんだがな」
「ばっ!………ばっかじゃないの」
「まあそう怒るなよ」
「怒ってないわよ」
「前にも言ったが、今はお前しかいないんだからさ」
「……」
「あっ」
「…なによ」
「何かついてる」
そう言うと、女の顔に自分の顔を近づける警部補。女の耳辺りに手を持っていったかとおもいきや、その頬にキスをした。
「フッ」
口を少し歪め笑う警部補。途端、片手で顔を覆いながら、もう片手で警部補をしばきまくる女。なんやかんや言って、今後も上手く行きそうだな。
To be continued
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Posted at
2013/03/31 00:15:38