
夜の首都高。前の車を避ける。するとすぐに別の車が現れる。避ける。アクセルから足を離す。足りずにギアをさげエンジンブレーキを使いまたはブレーキを踏む。スピードメーターとタコメーターが下がる。犯人の車が少し遠ざかる。私はアクセルを踏み込んだ。逃走車が首都高に入った時点で、高速隊に任せるべきだったのだろう。しかし私は引き下がらない。目の前で仲間がやられたのだ。この時間の首都高にしては珍しく空いている。なんとしても捕まえてやる。
ことの始まりは、自ら隊の無線を傍受したことだった。内容は、
「不審な外車に職質したところ、運転手は応答しない」
だった。たまたま近くにいた私とシノダは応援に向かうことにした。車は久々に走らせていた私のスープラだ。その現場に到着すると、既に応援の自ら隊や17分署のクラウンのパトカーがいた。無線から、機捜も応援に来るという。不審車は、大排気量の白い外国製のセダン。車高をかなり下げ、全ての窓がスモークガラスになっているが、微かに中が覗ける。乗っているのは中年の男の様だ。ナンバーを照会したところ、実在しないナンバーと判明。車内の男はこちらの呼び掛けに一切応じない。といって、窓ガラスを割るのは最終手段だ。さてどうするかと皆で考えていたその時、男に呼び掛けていた自ら隊の一人が、
「あれ?お前○○じゃないか?」
と言った。
「知り合いなんですか?」
私はその自ら隊員に聞くと、どうも前科持ちらしい。道交法・窃盗・暴行・薬物、犯罪のデパートだ。その時だった。突然外車が発進、数人の警官を撥ね飛ばした。更に外車の行く手を遮るようにしていたパトカーに体当たり、破壊し逃走した。私とシノダは、直ぐ様スープラに飛び乗り、追跡を開始した。
外車は破損し片目のライトになりながらも、かなりのスピードで一般道を逃げる。私たちは、サイレンを4秒周期でやかましく鳴らしながら追う。外車は所々で他の車やガードレール等にぶつかるがお構い無しに逃げる。自ら隊や分署のクラウンは、交通量やそのボディーの大きさもあり中々距離を縮められない。しかし私のスープラなら、今の車に比べればあまり大きくない。車の間をぎりぎりすり抜ける。助手席のシノダは、マイクの喚呼や無線で忙しい。er34君なら顔をひきつらせてるかもしれない。外車は首都高に入った。チャンスだ。高速に入れば逃げ道は料金所のみ。そこで検問をかければ御用だ。もっとも検問が間に合えばの話だが。首都高の出口は、数が多い。私はそのまま外車を追って首都高に入った。
私のスープラは警部補のスカイラインより型が古い。目の前の外車は最新型で、パワーもある。けれどもこの車の排気量やパワーもまだまだ衰えてはいない。首都高はカーブが多い。そしてこちらは伊達に訓練していない。徐々に差が縮まる。高速隊や首都高の交通管理隊が対応しているのか、一般車両も減ってきた。頭抑えや高速から下ろしているのだろう。
「止まりなさい!」
シノダがマイクで怒鳴る。しかし止まる気配は相変わらずない。あったとすればこんな所には逃げないだろうが。高速隊のパトカーが追い付いた。RX-8だ。私は高速隊を先に行かせ、挟み撃ちにしようとした。高速隊が外車に並んだ瞬間、外車は高速隊に体当たりした。
「あっ!!」
シノダが声をあげる。外壁にぶち当たる高速隊。私はギリギリでハンドルを切り、なんとかそれを避けた。奥歯を噛み締める。これ以上の跳梁は絶対に許さない。
他の車がまったくいなくなった。そして向かった先は、レインボーブリッジ。私のスープラは特別な改造は施していない。スピードの上限は、外車の方が上だ。なんとしても前に出て押さえたかった。私は勝負に出た。アクセルを底まで踏み込む。外車と並んだ。外車がまた体当たりをしてきた。
「んにゃろお!!」
ギリギリで避ける。タコメーターがレッドゾーン寸前まで回る。スピードメーターが振り切れそうになる。私はマイクを持つシノダの腕ごと引き寄せ怒鳴った。
「いい加減止まれぇ!!」
その時、私の思いが神様にでも通じたのか、外車のタイヤがバーストした。途端、ハンドルを取られた外車は右に左に暴れた。私は思わずむち打ちになる様な勢いでブレーキを踏み、凄まじいスキール音を立ててスープラを止めた。コントロールを失った外車は路肩側に衝突、宙を舞った。私とシノダはスープラから飛び出した。外車はそのまま東京湾へダイブした。立ち止まり、それを見ていた私とシノダは、サイレンを消すのも忘れ呆然としていた。気がついたら、鼓動はかなり早く全身汗だくだった。
当分は車の運転はしたくない。
To next time
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Posted at
2014/01/28 23:09:03