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警部補のブログ一覧

2014年11月28日 イイね!

「BAYSIDE BLUE」第X話「Till it’s end」

「BAYSIDE BLUE」第X話「Till it’s end」警視庁所轄、墨東警察署。夜の捜査会議が終わった。捜査に応援として呼ばれていた17分署刑事課強行犯係の係長である警部補は、駐車場に向かうとスカイラインに乗り込み発進させた。
捜査本部が設置されている会議室の窓からは駐車場が見える。警部補のお供として捜査に参加していた女はそれを見ていた。彼女は、警部補が何処に向かうのかを知っている。
「女さん」
声をかけられ、女は窓から視線を外した。声の主は、墨東署の若い男性の刑事で、女と組まされていた。名前はタチバナと言った。この捜査での、女の「相棒」だ。タチバナは言った。
「自分は今日の捜査資料をもう一度見直したいと思います」
まだ幼さの残る顔だ。刑事なりたてらしい。女は、タチバナに付き合うことにした。どうせ警部補の帰りは遅い。



事件は殺人だった。墨東署管内にある、そこそこ人気のあるキャバクラのホステスが殺害されたのだ。リョウという源氏名で、店の営業が終わり帰宅途中に刃物で刺し殺された。17分署は墨東署の近隣であり、また、被害者の自宅が管内であったことから応援として警部補と、部下である女が出向いていた。捜査本部の捜査方針はまだ固まっておらず、様々な情報を集めている。女は思った。タチバナには悪いが、最初に判明している情報を再度見直しても、あまり新しい発見はない。



人気があまりない通り。警部補は路上パーキングにスカイラインを止めた。程無くして、真後ろのスペースに一台の車が止まった。都合よく空いていたものだ。警部補はスカイラインから降りると、その車に近づき声をかけた。
「久しぶりだな」
警部補が声をかけたのは女性だった。中々の美人だ。女性は言った。
「最近冷たいじゃない、全然会ってくれないし」

「まあ色々とあるんだ」
警部補は車の助手席に乗り込んだ。



捜査会議。徐々に情報が集まってくる。
リョウは経験が長く、しかし、店では特に大人気というわけではなく、あまり決まった客はいなかったそうだ。それについて報告していた刑事が言った。
「リョウは営業終了後に客と出かけるアフターや、同伴出勤はあまりなかったそうです。また、従業員同士の交友は少なかったそうです」
リョウは独り暮らしで、そこそこ良いマンションに住んでいる。給料は悪くないらしい。店にも無理難題を言うわけでなく、関係は悪くなかった様だ。新しい情報では、リョウが殺害された時間、付近で怪しい男らしい姿を新聞配達のバイトが目撃していた。捜査本部の方針としては、客や店とのトラブルを探る一方で、通り魔の見方を出した。



女とタチバナは、通り魔についての聞き込みをしていた。タチバナが言った。
「女さん、この事件、通り魔の犯行でしょうか?」
女は答えた。
「さあね。ただ、被害者の周辺に、今の所恨みを持つ者が出てこない以上は、可能性は高いかもね」
被害者の傷口は酷く損傷しており、凶器は「鋭利な刃物」としか分かっていない。包丁か、ナイフか。目撃情報だけで、未だに有力な情報が得られない。



とある一室。警部補はそのドアを開けた。薄暗い室内には女性が一人いた。中々の美人だ。警部補の姿を見るなり、女性が口を開いた。
「都合の良い女だと思わないでね」

女性の言葉に、警部補は言った。
「そうとは思ってない、…とは素直には言えないな」
「正直ね…。いいのよ、あなたには助けられてるし」



「この事件は通り魔の犯行が強い物と考える」
朝の会議。捜査の指揮を行う本庁の管理官が言った。被害者には怨恨の線が見えない以上は、そうなるのだろう。捜査員達は片端から聞き込みに出た。ローラー作戦だ。女とタチバナも、再び聞き込みに出ようとした。
「タチバナ君、先に行ってて」
女はタチバナにそう声をかけると、警部補の姿を探した。すると、管理官と何か話をしている様だった。単独捜査について何か言われているのだろうか。いや、それはないだろう。そもそも係長という立場は、捜査本部では予備班という扱いになり情報を纏めたりする役割だ。しかし警部補はそれには加わらず捜査をしかも単独で行っていた。実は、警部補は何か掴んでいるのではないか?女はそう思った。しかし、今は今で自分に与えられた仕事がある。それに、必要になれば必ず自分に声をかけるはず。女は気持ちを切り替えると、捜査本部を後にした。



夜。景色が良いのに、人気がないバー。静かにジャズが流れている。客は、露出が多いドレスを着た女性がテーブル席に一人。中々の美人だ。その女性に声をかける男がいた。
「ここ、空いてるかな?」
警部補だった。
「お好きにどうぞ」
女性は言った。警部補は席に座り、言った。
「待たせたな」
「待つのはなれてるわ」
二人は顔見知りだった。



夜の町。女とタチバナは聞き込みに歩いていた。タチバナが言った。
「女さん、聞いても良いですか?」
「何?」
「警部補って、何を調べてるんです?」
最もな質問だ。確かに警部補は予備班としてサポートするわけでもなく、といって捜査会議では未だに情報を提供していない。怪しいにも程がある。女は立ち止まると、軽くため息をつき、言った。
「さあ、あたしにもわからないわ。管理官は、何か知ってるのかもしれないけど」
タチバナは言った。
「……警部補って、強引だとか違法スレスレだとかよく聞きますけど、どうなんですか?」
「どうなんですか、って言われてもね…。ただ、あたしは彼を信じてる」
女の言葉に、タチバナは少し間を置いて言った。
「……あの、そう言う間柄っていうのは聞いてましたけど…」
女は穏やかに言った。
「彼の警察官としての能力を信じてるのよ。そう言う間柄は抜きにしてね」
「はあ…」
タチバナは言葉は見つからなくなった。女は言った。
「さ、あたし達はあたし達の仕事をしましょ」



女性が、ストローでタンブラーの中の氷を遊びながら言った。
「リョウちゃん、ちょっと口が悪いところがあってね」

「口が悪い?」
「そう、時々思ったことズバッと言っちゃうの。相手にとって聞きたくないことでも。それでもまあ上手くやってのけたから、実力やら運は良かったのね」
女性はリョウと知り合いだった。
「そう言えば変なお客さんの相手したって言ってたわ」
「変な客?」
「そう。結構若い男だったらしいけど、なんでも彼女ができたためしもなくて、女の子に慣れる為に来てみたとか。リョウちゃんよっぽど可笑しかったみたいで、結構茶化したりダメ出ししてやったとか言ってたな」
女性は、若い男について、リョウから聞いたことを話した。話を聞き終えると、警部補は席を立ち上がった。女性が言った。
「行っちゃうの?」
「また、今度な」
警部補はテーブルに札を何枚か置いた。女性が伏し目がちに言った。
「…捕まえてね、絶対。あのコ、良いコだったのよ」
女性の言葉に、警部補は答えた。
「任せろ」



警部補は怨恨の線で独自に捜査を行っていた。そして被害者の業界関係に詳しい人間達に「深い知り合い」の多い警部補が探りを入れていたのだ。そして、一人の男が浮かび上がった。遊び慣れてなさそうな、若そうな男。最近繁華街で同一人物らしいのが様々な店を物色していたという情報を得ていた。更に、呼び込み連中やら場の空気に怖じ気づいたとかで交番に逃げてきた若い男がいたという。そして、リョウが相手したという若い男。人相風体は全てそれだった。交番では念のため住所氏名を聞き出していた。調べるとそれは本物で、アパートに独り暮らししているヌマタという名前の大学生だった。こいつが犯人だ。警部補は確信した。警部補は駐車していたスカイラインに乗り込むと、女に連絡を取ろうと携帯電話を取り出した。




あるアパートの前まで来た時、女の携帯電話が鳴った。携帯電話を取り出すと、警部補からの着信だった。女はタチバナに先に行く様に言った。
「はーい」
女は、わざと気だるそうな声で出た。
「随分お疲れの様じゃないか」
警部補は含み笑いで言った。
「歩けども歩けども、仕事捗らないんですもの。…それで、何か分かったの?」
女の問いに警部補はこれまでの経緯を話した。そして、ヌマタの住んでいる住所と名前を聞いた時、女は飛び上がりそうになった。
「ちょっと……あたし、今そこにいるわよ」
警部補も珍しく声を上ずらせた。
「なんだって?」
女は、タチバナの行方を見た。なんてことだ、ヌマタの住んでいる部屋の呼び鈴を押している。
「タチバナ君!」
女はタチバナを呼んだ。しかし、人間隠し事をしたい時に人を呼ぶ時は声が小さくなる。女の声はタチバナに聞こえなかった。呼び鈴に応えは無かった。しかし、タチバナはご丁寧に声で呼び掛けた。
「警察の者です。いませんか」
女は頭を抱えたくなった。しかし、タチバナの行動はある意味ヌマタの容疑者説をほぼ確定させた。室内から大きな物音がした。逃げる気だと直感した女は、タチバナに叫んだ。
「タチバナ!踏み込め!」
叫ばれたタチバナは驚いた顔で女を見た。次の瞬間、室内からわめき声が聞こえた。


警部補は、女の携帯から聞こえて来たやり取りを聞き、ヌマタが犯人だと確信した。そして回転灯をルーフに放り出しサイレンのスイッチを押し、女達の所に向かった。




ヌマタはその場で女らに逮捕された。捜査本部に戻り、取り調べは警部補が担当した。訳がわからない捜査員達に、女は警部補が入手した情報を伝えた。ヌマタはあっさりと自供した。自分は女性と交際した経験がなく、女性に慣れようと思い様々な店に行ってみた。皆優しくしてくれたが、リョウだけはからかったらしい。ヌマタにはそれが我慢ならなかった。そして犯行に至ったらしい。警部補は何度も何度も経験したことだが、うんざりとした。どの様な人生や育てられ方をすれば、たった一度顔を合わせただけの人間を殺すのだろうかと。何故こんな短絡的な人間が出来上がるのかと。しかしそれは現在だろうと数十年前だろうと変わらない。だから、警察はいつも忙しいのだ。



翌日。捜査員総出で書類関係の仕事を終わらせた捜査本部では、その夜、湯飲み酒で労を労っていた。捕り物を行い、顔に絆創膏をつけたタチバナは先輩らに絡まれながらも嬉しそうにしていた。女は警部補の姿を探した。また見当たらない。しかし、見当はついた。


「やっぱりここにいた」
女は言った。ここは墨東署の屋上だ。警部補は手すりにもたれ、夜景を眺めていた。女は、警部補の隣に来た。警部補は言った。
「ここの夜景も悪くないな」
「まあまあね」
二人はそれだけ言うと、黙った。暫くして、警部補が口を開いた。
「悪いな、いつも」
警部補は、夜景を見つめたまま言った。女は、警部補に体を密着させた。
「いいの、とは素直に言えないけど…」
女は、更に警部補の腕を取って、言った。
「お互い誰が一番かは、分かってるわよね?」
警部補は言った。
「分かってる。…ありがとう」
二人はまた黙ると、暫くそうしていた。



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Posted at 2014/11/28 23:35:13 | コメント(1) | トラックバック(0) | 「BAYSIDE BLUE」 | その他
2014年09月24日 イイね!

「BAYSIDE BLUE」第X話「Love Somebody」

「BAYSIDE BLUE」第X話「Love Somebody」

私は目を覚ました。ここはどこだろう。頭がぼやけている。白い天井が見える。寝ている。けど動いている。自分の足じゃない。周りに何人も人がいる。白衣を着てる。皆何か忙しそうにしている。シノダさんと大声で呼ばれ、その声の主を探すと、白衣の間に34君の顔が見えた。顔や服が血だらけだ。私は彼に声をかけようと体を起こそうとしたが、体が動かない。声も出ない。人工呼吸器が取り付けられている。

思い出した。私は撃たれたんだ。思い出した途端、気が遠くなった。



ことの始まりは、ある事件だった。それもとんでもない事件。17分署管内で警察官を狙った銃撃事件だ。最初は職質していた警察官に発砲があった。幸い職質されていた相手や警察官に怪我はなかった。それから一時間も経つ前にもう1つの事件。今度は警察官が二人撃たれた。あるコンビニでこの事件のことで聞き込みと注意を促し、出てきた所を撃たれたのだ。無線が一斉に走り、34君と組んでいた私は最初に現場に駆けつけた。






現場には野次馬が出来ていた。サイレンに気がついた数人が、覆面車を止める前に駆け寄ってくる。
「犯人は!?」
私は言った。野次馬が一斉に喋り出す。話にならない。現場にはもういない様だ。野次馬をかき分ける。制服が二人倒れていた。34君は一人についた。私はもう一人に駆け寄った。女性警察官だった。応戦しようとしたのか、拳銃がホルスターから抜かれ地面に落ちていた。彼女は首を撃たれた様で、かなり出血している。そして、私は彼女を知っている。同じ署の顔見知りというだけではない。同期だ。彼女は掠れた声で何か言っている。今際の言葉だ。私は救急車が来るまで声をかけ続けた。しかし彼女は救急車のサイレンが遠くに聞こえた頃、息を止めた。私の手や服は彼女の血でまみれていた。





署内の数人は勘づいていたが、翌日になりはっきりした。犯行声明がテレビ局に送られたのだった。内容はやたら難しい様だったが、つまりは警察が憎いらしい。警察を憎む奴は多いが、実際に手を出してくるのは中々いない。以前いた新宿署だって治安は悪かったが、警察を狙ってくる奴はいなかった。17分署に捜査本部が設置された。そして、録音された当時の無線のやり取りを聞かされた。警察官が携帯する無線は緊急用のボタンがあり、これを押すと本部とその無線一本となる。押しやすい位置にある為か、時々間違えて押してしまう者もおり、無線の電池を抜かないとそれは切れない。私もやったことがある。無線の声は、本部と彼女の相方の声だけで、彼女の声はなかった。

まるでドラマか映画の様な事態が起きている。私は正直、怖くなった。



係長が言った。
「機捜隊や自ら隊はいつもより数を増やして回っている。犯人を発見しても、決して無理はするな。必ず応援を呼べ。それと、防弾チョッキを着ろ。銃をチェックし、弾丸も予備を山程持っていけ」
各人が散らばる。係長が私を呼んだ。
「シノダ」
「なんでしょう?」
係長は声を落として言った。
「友達は、残念だったな」





覆面車、インスパイアのハンドルは34君が握っていた。34君が言った。
「友達の人、残念でしたね」
私は言った。
「友達じゃないわ。…でも、ありがと」
彼女の相方は助かったが、彼女は助からなかった。殉職した。彼女は結婚して、子供もいた。結婚式には招待されたが、社交辞令みたいなものだ。学校を出て以来、すっかり会ってはいなかった。それぐらいの間柄だった。久々に顔を会わせれば、相手は殉職。なんとも辛い仕事だ。旦那さんが子供を連れ、霊安室に行く姿を見た。



私は、警察官になると言った時、親から猛反対された。母親は普通の主婦だが、父親は、高速道路交通管理隊の隊員だった。テレビにも映ったことがある。そんな父を見て育ったのだから、自然とそんな仕事に興味を持った。また都合良く、思春期にはとある刑事ドラマが大ヒットした。勿論ハマった。体を動かすのが好きだった。身長も高くなった。交通管理隊はどうも女性は取ってくれないらしい。警備会社、消防、自衛隊、海上保安庁等々制服の仕事を色々調べ、決めたのはやっぱり警察だった。母はともかく、父は喜んでくれると思ったが大の大反対。当時は反発したが、今になってみれば分かる気がする。回数を重ねたとはいえ、遺族の姿を見るのはいつも辛い。




犯人は赤いバイクに黄色のヘルメットらしい。そんなのは、この東京には山程いる。数日経ったが、その犯人には行き当たらない。しかしついに出くわした。ある昼前のパトロール、私がインスパイアのハンドルを握っていた。正面にバイクが来た。色は赤く、黄色のヘルメット。私は34君に言った。
「声かけてみようか」
「はい」
34君は赤灯をルーフに載せ、マイクを取った。その時だった。銃弾がフロントガラスに穴つきのクモの巣を作った。ブレーキを踏み、身を屈めた。私は34君に怒鳴った。
「大丈夫!?」
「大丈夫です!!」
34君も怒鳴り返す。身を起こすと、バイクが逃走を始めていた。
「追うよ!!」
私はそう言い、サイレンのスイッチを押す。34君は至急無線を送る。一通りの無線が終わると、分署17から発報があった。係長だ。
「無理するな!だが絶対に逃がすな!」
なんとも無茶なことを言ってくる。しかし、言われなくてもそのつもりだ。


相手はバイクだ。縦横無尽に逃げ回る。こちらは2.5リッターの3ナンバー、蝶の様になんとやらとはいかない。34君は無線通報で手いっぱい。代わりに私がマイクをひっ掴み、更にクラクションも使い、他の車を掻い潜る。実はこんな派手なカーチェイスをやるのは私自身初めてだ。


バイクは途中で運転をしくじり転んだ。しかしまだ元気な様で、よりによってスーパーに逃げ込んだ。白昼のスーパーにだ。人質は山程。スーパーからは悲鳴と銃声があがり、そして入り口からは一斉に客が逃げ出している。無線でそれを告げると待機しろと言われたが、私は聞かなかった。カーチェイスでアドレナリンが出ている。立て籠る可能性もあったが、逃げる可能性もある。サイレンは聞こえるが、応援はまだ着かない。私は34君を置き、ホルスターからシグを抜くとスーパーに入った。



あまり大きくないスーパーだったせいか、客はほとんど逃げた様だ。残っているのは、腰を抜かし動けなくなった主婦や老人、それに店員と散乱した商品。今のところ撃たれた人はいない様子だ。新しい銃声もない。私は店員の一人に裏口を聞き出し、慎重に向かった。遮蔽物は多い。商品棚からそっと辺りを確認する。誰もいない。私は汗をかいていた。シグを握る手も汗だくだ。緊張している。身を乗り出した。

その時、私の携帯が鳴った。34君からだろうか。慌てて切ろうとする。乾いた音と、横から何か強烈な衝撃が来た。撃たれたのだ。倒れた。夢中で撃たれた方向に銃を向けると、それは蹴飛ばされた。蹴りの主はヘルメットはしてないが、犯人だ。服が一緒だ。若い男だが、顔が薬物常用者特有のやつれた不気味な顔をしている。そして、私に銃を向けている。
「お前も警官かっ!!」
男は裏返った声を出した。私は何も言えなかった。声がでなかった。痛みは勿論、恐怖だった。男は叫び声を上げ、引き金を引いた。私の意識はそこで途絶えた。






目が覚めた。また天井が見えた。音が聞こえる。心電図という奴だろう。体を動かそうとする。しかしだるく、動かせそうにない。首を動かしてみる。動く。すると両親が見えた。久々に見た姿だ。両親と目があった。母が私に抱きつく。父は私の頭の上に手を伸ばす。頭を撫でようとしたのではなく、ナースコールだ。


どうやら、生きてるみたい。

だって両親の葬式はまだ出してない。

そして、痛い。

痛い!痛いの!痛いんだってば!お母さん抱きつかないで!傷口が開いちゃうぎぎぎぎぎ!!






病室で女さんが話をしてくれた。犯人はあのスーパーで逮捕された。逮捕したのは我らが係長。私は2日間眠っていたらしい。結構危なかったわけだ。怪我人は幸い他にいなかった。私は犯人に二発撃たれたが、二発目は幸いに防弾チョッキで防げたらしい。逆に一発目は防弾チョッキの隙間から入った様だ。女さんが微笑んで言った。
「34君大変だったのよ?あなたが撃たれたのは自分せいだって言って、警部補やあなたのご両親に土下座して」
「やだもう…」
私は恥ずかしくなった。誰かを庇ったわけでなく、隙を突かれて撃たれたのだ。原因は私にあるのに。………まあ、あの電話はやはり34君だったから責任はないとも言えない、かも。女さんは続けた。
「それに、あの人、警部補。もしあなたが撃たれたことを知ってたら、きっとあの犯人、マグナム44の弾で頭がなくなってたわね」
「…すいませんでした」
私は謝った。女さんは、いいのよと言った。改めて考えたら、初めての派手なカーチェイスに、初めて一人で銃を持った相手に向かって行ったわけだ。無茶苦茶だ。まだまだ私も未熟ということだ。


係長、皆さん。ありがとうございました。


仇は、取ったからね。





ある夜。面会時間もあと少し、病室には父だけがいた。父は特に話すこともなく、テレビや雑誌を見て、時折こちらを見るくらいだった。私は言った。
「…お父さん」
「なんだ?」
父が答えた。間もなく定年、警察でいえば巡査部長相当の役職、メタボと病院から診断され、しかし現場一筋で日焼けした、シワだらけのおっかない顔した私の父だ。私は言った。
「お父さんの気持ち、良く分かった気がする…改めて」
「…そうか」
父はそれだけ言った。私は続けた。
「でも、辞めないよ、仕事」
父は、一呼吸置いて返した。
「当たり前だ。あれだけ言って警察官になったんだ。辞めるなんて許さん」
父が少し笑った気がした。
「ごめんね」
私は謝った。父は何も言わなかった。何か考えてる様だった。そして少しして、父が言った。
「母さんにな、仕事辞めてくれって言われたことがある。お前が産まれると分かった時だ。あんな危ない仕事、なんであなたがやらなきゃいけないのと。毎日の様に。だが、辞めなかった」
私は黙って聞いていた。父は続けた。
「誰かがやらなきゃいけない。誰かがそこを、誰かを守るんだ。それに、誰に言われたわけでもない、自分で決めた道だ。……お前と一緒だな」
父の言葉に、私は頷いた。父は、気恥ずかしくなったのか、咳払いすると、机の上の皿に残っていた、やや乾いたリンゴを口に放り込んだ。




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Posted at 2014/09/24 22:54:30 | コメント(0) | トラックバック(0) | 「BAYSIDE BLUE」 | モブログ
2014年08月10日 イイね!

「BAYSIDE BLUE」第X話「BE TOGETHER」

「BAYSIDE BLUE」第X話「BE TOGETHER」













22:45






















23:17
警部補「仕事のし過ぎは体に悪い。さて、帰るか」
権兵衛「嫁さんに宜しく」
警部補「嫁じゃねえ。このまま当直してくか?」
権兵衛「いやいや、この書類終えたら帰らせていただきます」












「「警視庁から17分署管内………」」






権兵衛「警部補、事件だっ!」




警部補「まったく、冗談じゃないぜ」







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Posted at 2014/08/10 00:00:25 | コメント(2) | トラックバック(0) | 「BAYSIDE BLUE」 | その他
2014年06月29日 イイね!

「BAYSIDE BLUE」第X話「TRASH」

「BAYSIDE BLUE」第X話「TRASH」真夜中。警部補は人目につかないとある通りにスカイラインを止めた。少しして、一人の男がスカイラインの助手席に乗り込んだ。高そうなスーツ、高そうな靴、高そうな腕時計。それらの主はゆうたろうだった。警部補が言った。
「よう金持ち」
「本当に金持ちならどれだけ幸せか」
ゆうたろうが返した。彼はとある組織への潜入捜査の真っ只中だった。その組織は、表向きは事業拡大中の綺麗に儲けてる会社に見えるが、裏では薬物やら売春やらと汚いことも相当拡大してるらしい。そして、ゆうたろうが仕入れた情報を、こうして夜な夜な警部補に手渡しているのだ。ゆうたろうが言った。
「近々、かなりデカイ取り引きをやるらしい。それには幹部も出てくるぞ」
「そうか。しかしお前も上手く情報を仕入れてくるな」
「そこは俺の組織での信用よ」
警部補の言葉に、ゆうたろうは笑いながら言った。ふと、警部補がバックミラーを見た。無灯火で止まっている車があった。大きなセダンの様だ。更に、人影が二つ、ゆっくり忍び寄ってくるようだ。警部補が言った。
「なあ、組織ではもう充分信用されてんだよな?」
「もちよ。だからこうして情報が入る」
「後ろから二人来るぞ」
「えっ」
ゆうたろうが間抜けな声を出して振り返った。暗さで顔は見えない。人影二人の腕が動いた。警部補とゆうたろうは反射的に身を屈めた。次の瞬間、銃弾の嵐がスカイラインを襲った。拳銃ではない。警察では特殊銃と呼ばれる、マシンガンの類いだ。タイヤはパンクし、ガラスというガラスは蜘蛛の巣になった。
「出ろ出ろ出ろ!」
警部補が喚き、ゆうたろうが歩道に転がった。警部補も転がり、また喚いた。
「これが信用か!?」
「ごめんバレたみたい」
ゆうたろうが言った。銃撃は止まず、彼らの体にガラスやボディの破片が降りかかる。銃撃が止み、警部補がマグナムを抜き反撃しようと身を乗り出したが、タイミング悪く再び銃撃が襲い、慌てて身を屈める。ゆうたろうは、スカイラインの影からベレッタだけを出し反撃した。しかし手応えはない。
「くっそ~、車撃つなよ!」
警部補が顔を歪めた。また銃撃が止んだ。今度こそと警部補は身をあげた。相手の弾はこない。警部補は引き金を引いた。一人のマシンガンを倒した。しかしもう一人のマシンガンが銃撃し、運悪くスカイラインに火がついた。警部補とゆうたろうは慌ててスカイラインから離れた。
「もういい、引き上げだ!」
どこからか声がし、マシンガンの主は走って車に戻った。火は炎に変わり、闇に隠れていた車とマシンガンの主を照らした。車は国産で最新型の高級セダン、マシンガンの主は若いチンピラ男だった。チンピラはセダンの運転席に飛び乗り、無灯火のままセダンを急発進させた。警部補とゆうたろうはそれを見送ることしかできなかった。


翌日。17分署の刑事課は空気が重かった。深夜の一件で、無駄を承知で組織のアジトに踏み込んでみたが、案の定引き払われた後だった。倒したマシンガンからもめぼしい情報は手に入らなかった。また、ゆうたろうの正体がばれたことを考えると、彼が仕入れた情報もどこまでが正しいか怪しい。警部補とゆうたろうに怪我がなかったのが、不幸中の幸いだろう。

警部補は、怒りに燃えていると思いきやどこか寂しそうだった。強行犯係の面々はその理由は分かっていた。それは彼が愛車を失ったからだ。彼にとって、あのスカイラインは初めての愛車ではないが、それでも十年以上苦楽を共にしていたはずである。
ゆうたろうは自分達を襲った連中に目星をつけていた。連中が乗っていた高級セダンは、組織のある幹部が使っていた物で、その幹部は元々ゆうたろうを気に入っておらず、ゆうたろうも警戒していた幹部の物だった。そしてチンピラを呼び戻したあの声は、その幹部の声に聞こえた。


あれから一月たった。組織については表も裏も、それきり新しい動きがなかった。逃げたセダンは、数は多くはないが東京では珍しくもない車種であった。しかし組織の動きは早く、わざわざ盗難届けを出してきた。それは表の会社の持ち物だったが、今頃は組織かその関係でバラバラにされているであろう。警部補には新しい相棒が増えた。それはまたしてもスカイラインだった。責任を感じたゆうたろうが、女と相談し用意した車だった。警部補が以前乗っていた型のマイナーチェンジで、そのマイナーチェンジならこの様な形で乗りたいと警部補が望んでいた物を用意したのだった。コールサインも分署17を継承した。


またある日の午後。警部補とゆうたろうはパトロールの最中、少し遅くなった昼食の休憩を取ろうと、あるファーストフード店の駐車場に入ろうとした。しかし、まだまだ昼時が続く店は店内も駐車場も満杯で、仕方なく別の場所を探すことにした。交通量が多く、どの方向もノロノロと進んでいた。すると対向車線に、フルスモーク仕様の最新型の国産高級セダンがノロノロと走ってきた。二人を襲ったセダンとは別の車種だが、しかしフルスモークには職業病の様に反応してしまう。運転席のウィンドウガラスが下がり、タバコが投げ捨てられた。すれ違い様に、運転手の顔が見えた。それは忘れもしない、あのチンピラだった。
「あっ!」
警部補とゆうたろうは同時に声をあげ、顔を見合わせた。
「いたぞいたぞ!」
警部補が何故か嬉しそうに言った。ゆうたろうも、赤色灯を取り出しながら嬉しそうに言った。
「教えてやるか。犯罪が、割りに合わないってことを」
「たまには4秒でかましたるか」
ゆうたろうは赤色灯をルーフに放り出すと、警部補は言った通りに、実にやかましいサイレン4秒周期のスイッチを押した。それと同時にアクセルを踏み込み、直列6気筒2500ccを唸らせスピンターンし、対向車線に躍り込んだ。途端、マイクで呼び掛けてもいないのにセダンがスピードをあげ、逃走を始めた。セダンはかなりの大排気量でパワーがあるが、反面そのサイズと重量もかなりある。都会の真っ只中でそれが逃走するのはかなりのハンデだ。また、ドライバーの腕が追い付いていないのかかなり危険な運転で、他の車やガードレールに接触していた。セダンは港の方向に向かった。車の数が減り、徐々にスピードが出てきた。警部補とゆうたろうは、ここまで追ったのだからなんとしても自分達の手で逮捕したかった。警部補は勝負に出ようと決め、ゆうたろうに喚いた。
「無茶するぞ、掴まってろっ!」
「もうやりたい放題やってるじゃないか!」
「それもそうか!」

警部補はマニュアルモードにしていたギアを操作し急加速し、セダンの前に車一台分出た。そしてスカイラインを滑らせセダンの行く先を塞ぐ。セダンが止まるか体当たりしてくるかは賭けだった。セダンは急ブレーキをかけ、タイヤから凄まじいスキール音と白煙をあげた。そしてスカイラインをかわそうとハンドルを切ったが、切った先は倉庫街に並んでいる何台ものセミトレーラーだった。それらに突っ込んだセダンは刑事ドラマよろしく横転・転覆するでもなく、地味だがフロントをぐしゃぐしゃにして停止した。警部補とゆうたろうは銃を抜き、セダンに近づいた。集まってきた港湾職員やらの野次馬は、警部補らを見るなり慌てて散らばる。運転席から、顔を血まみれにしたチンピラが転がり出てきた。
「大丈夫か?あ?」
警部補が声をかけた。その声に気がつき、顔を上げたチンピラは最後の抵抗か、自分の腰辺りに震える手を回した。銃だ。途端、警部補の革靴がチンピラの顎を捉えた。チンピラはのけ反り仰向けに転がった。警部補は言った。
「いいから寝てろっ」
ゆうたろうは、後部座席のドアをひっぺがす勢いで開けた。見るとそこには、やはり幹部の姿があった。幹部は気絶している様だった。ゆうたろうはぼそりと言った。
「生きてて悪かったな」






その夜、警部補とゆうたろうは始末書の山と戦っていた。テレビはどのチャンネルも白昼の都会真っ只中カーチェスの映像だったが、しかし当のヒーロー二人はこうやって書類を書かさせている。そしてこれが終われば、次はあの幹部を締め上げて組織を摘発する為の書類を作る。書類だらけである。そして、パソコンでなく直接紙に書く書類はまだまだ多い。始末書はいつになったらパソコン打ちで済むのだろうか。警部補は頭の中でこれから先作らなければならない書類の山を想像しながら、取り敢えず今は目の前の書類を終えようとペンを進めていた。すると、その横にそっとコーヒーが置かれた。
「お疲れさま。お先にあがるわね」
それは女だった。警部補は書類から顔を上げ、女を見た。女は言った。
「元気になったみたいね?」
「まあな。敵討ちも済んだし」
「前の車の?」
「そう」
警部補はそう言って、また書類に顔を戻した。女は、今度は警部補の耳元に唇を近づけて、囁いた。
「ほんとに元気になったみたいだから、早く帰ってきてね」
警部補はその言葉にボールペンを置くと、サングラスをずらし、女にウインクした。最近は「色々」と元気がなかった警部補だが、この一件で仕事と私生活に活力を取り戻した様である。そんな二人のやり取りを見ていたゆうたろうは、実につまらなそうな顔をして言った。
「あ。ねえ。ちょっとちょっと。俺にはコーヒーくんないのぉ?」



To next time

Posted at 2014/06/29 23:23:05 | コメント(0) | トラックバック(0) | 「BAYSIDE BLUE」 | その他

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「本人じゃないカバー版とはいえ、この時期に広末涼子の曲をリクエストするリスナーもそれを選ぶ某ラジオ番組もすげーなー。と25年前のスカイラインスーパーサウンドシステムで聞きながら。」
何シテル?   04/18 17:27
警部補です。 ある時は、墨東署の警部補。 またある時は、ベイエリア分署の警部補。 またまたある時は、17分署の警部補。 しかし、その実体は! ...
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