ランボルギーニ、ついに「ウルス」の市販化を正式発表!
(autoblog、2015年5月29日)
ランボルギーニ、高級SUV「URUS」を2018年に市場導入へ
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、同日)
予てから鳴り物入りで発表されていた、
ヌォーヴァ・アウトモービリ・フェルッチオ=ランボルギーニ ウルス。
それが遂に市販化決定です。
各々のブランドイメージを鮮明にするためなのか、親会社のフォルクスヴァーゲンは中々ゴーサインを出しませんでしたが、ようやく計画が動き出したようです。
軍用試作車である
チーターと、それを元にした民生仕様である
LM002以来の、ランボルギーニ製SUVです。
レヴェントンから続く、カメムシを題材とした共通デザインランゲージが、先鋭的で素直に格好良いですね。
内装も、外装に引けをとらないくらいに未来的です。
今の時代は高級クロスオーバーSUVが人気であり、各社続々と参入しています。
あまりにも売れすぎるせいか、それまで縁のなかったメーカーでさえも。
とはいえそこは、堅実な(というか、堅実を通り越してなりふり構わない)VWコンツェルン。
ウルスのためだけに車台を新たに開発するはずもなく、
フォルクスヴァーゲン トゥアレグ、
ポルシェ カイエン、
アウディ Q7、
ベントレー ベンタイガ(EXP 9 Fからファルコンに、更に名称変更)と共通の、
MLBプラットフォーム。
まさに、一粒で五度美味しいブランド商法です。これにはトヨタ自動車も真っ青。
・
VW、アウディ、ランボルギーニ、ベントレー←外観変えただけで中身は一緒
(乗り物速報、2013年8月7日)

さて、僕が一番気になったのは、その生産地。
なんでもこのウルス、イタリア生産になるそうな。
伊政府が「ウルス」の市販化を促すためランボルギーニに1億ユーロの支援を準備
(autoblog、2015年5月8日)
かねがね言っている通り、自動車とは総合産業であり、その国の持つ技術力や資本力や工業力や頭脳や労働力といった国力の結晶です。
であればこそ、自動車を自国の工場で造らないというのは、歪なのです。
企業は利潤を追求する組織であるからには、少しでも人件費の安い国で、少しでも安い部品で組み立てて、少しでもぼったくりで売りたいもの。
それが悪いとは言いませんが、そうやって海外移転が進み過ぎたことと、物作りを放棄して金融に走った(すなわち、ブルーカラーを軽んじてホワイトカラーを偏重しすぎた)結果、今の欧州の経済状況は悲惨なことになっています。
自殺者と失業者が年々増加、安価な労働力を求めて移民を受け入れたことによる軋轢と犯罪件数上昇(その中には勿論産業スパイも含まれる)、デモに端を発する暴動と略奪と破壊と放火…。
・【イギリス】キャメロン首相「移民は明確に就労できる証明がない場合、6カ月で社会保障サービスの提供を打ち切る」イギリスの新措置法で社会保障目当ての移民排除の流れに
(保守速報、2013年12月9日)
・移民の大量受け入れ、ドイツのメルケル首相「他国は同じ轍を踏むな」
(同、2014年7月30日)
・【サヨク悲報】サヨク「排外デモなんて欧米では考えられない(キリッ」 →ドイツ「反移民デモに過去最多の1万8000人が参加」(画像22枚)
(同、2015年1月7日)
・【画像】フランス大行進、参加者は370万人超 「パリ解放」超え史上最高に 40人超の各国首脳も参加
(同、2015年1月12日)
・【パリの新聞社襲撃事件】揺れる欧州、移民受け入れ反発、広がる反イスラム
(同、2015年1月13日)
そんな現状は、楽観的で享楽的をお国柄とするイタリアも、例外ではありません。
もしウルスを造るなら1憶ユーロ(現在の為替レートで約134億4000万円相当)の融資をしてやるが、その代わりイタリア生産とし、工員として300人の雇用を確保せよとの、イタリア政府直々のお達しがあったとのこと。
長いこと頓挫していたウルスの生産が、これによってようやく実現しました。
前述の、MLBプラットフォームを共有する高級クロスオーバーSUVたちは、VWが有するスロバキア共和国の
ブラチスラヴァ工場で造られています。
人件費の安い国で、更に正社員ではなく期間工や派遣従業員を雇い、車台を縦横に使い回し。
正直、
お世辞にも高級ブランドに相応しいとは言えませんね。
日本向けのベンツやBMWやアウディとて、中国製・韓国製・南アフリカ製といいます。
恐らくウルスの場合、部品の製造はブラチスラヴァ工場で行われ、最終組み立てをイタリアで行うものと思われます。
現にベンタイガもそうやって作られ、辛うじて「英国の職人が一つ一つ手作りで…」という体裁を保っています。
イタリアだけではありません。
今、欧州では、製造業を再び自国に取り戻す動きが見え始めています。
以前も書きましたが、
アストン=マーティン=ラゴンダは、中国サプライヤーが原料を勝手に変えたことに激怒して契約を打ち切り、英国生産に徐々に移していくとのこと。
トヨタ自動車も、
豊田章男社長が株主総会で「人件費の安い国で造れば良いと勘違いしていた」と語り、国内生産を徐々に増やしていくそう。
国内雇用に貢献するためというのは綺麗事なのでしょうし、実際にはそのほうが企業的にメリットが大きい政策が取られ始めたからなのでしょう。
少しでも状況が変われば、ポリシーもなくあっさりと掌を返すであろうことは、目に見えています。
そもそも、国内生産と口では言っても、実際には移民や海外留学生を、正社員並みの仕事をアルバイトとして低賃金でこき使う現実があります。
しかし、その国で、その国の人が造ったからこそ、ブランドイメージとは有り難がられるものなのです。

・
契約社員が日本郵便を提訴 「正社員と同じ仕事なのに手当がつかないのは違法」 法改正受け
(アルファルファモザイク、2014年5月9日)
その影響なのかは分かりませんが、その欧州は、日本にも同じ態度を取るよう突き付けてきました。
EU、「日本車」に海外調達部品の制限を要求
(サイ速、2015年5月28日)
確かに、今の日本車は中国や韓国や東南アジア諸国から部品を納入して、最終組み立てだけを日本で行っています。
純然たる日本製とは言い難いですね。
欧州圏の日本車マニアにすれば、「
ジャパンブランドだから買ったのに、ボンネットを開けたらMADE IN CHINAの刻印ばっかじゃねーかふざけんな!ヽ(`Д´)ノ」というところでしょう。
EUとしての真の狙いは、日本車メーカーが欧州サプライヤーともっと多くの提携をすることで、欧州製造業の雇用を確保することではないかと思われます。
恐らく、本当の意味での純日本製を、求めているのではない。
そもそもその欧州とて人の事は言えず、純欧州製は少なくなって久しいですからね。
前述の高級車ブランドは言うに及ばず、アディダスやプーマもまた西南アジアやアフリカ製ですし。
折しも欧州では、新自由主義に対する見直しから、産業の国内回帰が叫ばれています。
特に、「先進国病」と不名誉な喩えを何かとされがちで、かつての植民地からの意趣返しに苛まれているイギリスは、
サッチャリズムからの脱却を模索中です。
アストンの国内生産回帰も、その一環なのかも知れません。
・社会コラム 本日のお題:先進国病という病魔
(臥竜岡)
・多文化共生でめちゃくちゃになったイギリスが政策転換する
(DARKNESS DUA、2015年5月28日)
今、円安政策やアベノミクスが進められていますが、結果が出ているとはまだ言い難いです。
現状は、輸出を担う一部の大企業と、株の運用をやっている投資家が潤っているだけであり、一般大衆には生活物資の高騰や消費税などの増税が重くのしかかっています。
数字の上だけの好景気であって、実体経済は相も変わらぬスタグフレーション。
(だからと言って安倍政権に反対というわけではないので、念の為)
自動車とは、その国の経済のバロメーターです。
ウルスに見られるように、日本もまた、一刻も早く国内製造業に活気が戻ってきて欲しいものです。
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2015/06/01 17:37:16