
前回の日記と前後します。
トヨタ自動車 86(ハチロク)を試乗する前は、6月1日に日本導入された、
フォルクスヴァーゲン ザ=ビートルを見学しました。
ビートル(より正式名称に近く呼ぶなら、
テュープアインス)という車自体は、様々な映画やドラマやアニメに登場しており、車好きでない人にも有名です。
そもそもは
アドルフ・ヒトラーの「ドイツ国民のために安くて小さくて壊れない優秀な普及車を」という思想の元に生み出された、今も続く世界的な名車です。
小さくて可愛らしい外観も、合理性を突き詰めた結果としての思わぬ産物であり、ドイツ車らしい質実剛健さが窺えます。
ニュービートルでは、キャラクター性を加速させた結果デザイン優先となり、取り回しにも居住性にも実用性にも難があり、何より世界戦略車としての役目も担ったせいで大柄になってしまった。
それが今度のザ=ビートルでは、コンセプトの段階からして見直されており、原点回帰を目指して「
21世紀におけるビートルの再創造」を謳っているとのこと。
ちょっと気になります。

今回見学させてもらった、
フォルクスワーゲン 山形中央です。
本当は86が目当てで遥々山形市まで来たのですが、たまたま通りかかった際に見付けたので、寄り道。


展示車は、デザイン・レザー・パッケージ、外装色と内装加飾はキャンディホワイト、シートカラーはブラック/レザー、ホイールサイズは7J×R17、駆動方式はFF、変速機はパドルシフト付き7DSG、型式はDBA-16CBZ。
日本仕様は一律右ハンドル、1.2L・直4・SOHC・ターボ。
3ナンバーだけど、小さいですねえ!
ネット上で画像を見ていた際は、伸びやかなニュービートルのアウトラインから、膨らみの頂点を削ぎ落としたような印象でした。それが実車を目の当たりにすれば、それだけでなく、根本的にダウンサイジングされている感じです。
日本車のカテゴリで喩えるなら、「ニュービートルはミニバン、ザ・ビートルはコンパクトカー」でしょうか。
ジェッタⅥとシャシを共有しているが故の小ささですが、その影響かフロント左右の隅が切り取られており、それも小さく見える要因です。突起物がないせいで取り回しもしやすそうです。
ところが実は、後で詳細なサイズを確認したら、ニュービートルより数cm単位で大きくなっていたんですねえ! なのに逆に小さく見える不思議。
ルーフが平らになったことで車高が低くなり、ロングノーズ化しています。でもそれは、スポーティさを求めたのではなく、あくまで実用性を求めた結果です。
ヘッドランプには、今流行りの、LEDポジションランプが内蔵されています。楕円形カバーにはややミスマッチですが、それが逆に面白いです。
女性の付け睫毛というか、アイラインというか、目元に飾られたスパンコールのようでもあります。


デザイン・レザー・パッケージは、インストゥルメントパネル、ステアリングホイールスポーク、ドアパネルは外装と同色。お洒落なのが欧州車らしいですね。
切り立ったインパネ、上に開くグローブボックス、スイッチ類は少なくシンプルな内装は、初代ビートルを思わせるレトロモダン調デザインです。
座った感じも、流石に広々とはしていませんが、かといって狭い感覚も安っぽさもありません。サイズ相応といった感じです。
でも、最近の日本の軽自動車ではもっと広いのが多いので、開放感では劣ります。
ダッシュボードの奥行きがそんなにないので、視界が良く取り回ししやすそうです。
掃除も楽そうですしねw

後席は流石に狭いですが、それでも少し我慢すれば大人が座れます。
Cピラーの頂点は、ニュービートルではBピラーの頂点と繋がっているせいでヘッドクリアランスは殆どありませんでした。ザ=ビートルではそれより後ろなので、或る程度確保されています。
本来は子供用であることを考えれば、充分な居住性です。
シートも、前席ほどではないにせよしっかり体を包み込み、軽薄さは感じません。ヘッドレストも完備されており、安全性にも配慮。
実用的な普及車といいながら、コストダウンしてはいけない部分は心得ており、決して安っぽさは感じさせません。

全てのグレードに7DSGを搭載、デザイン・レザー・パッケージは更にパドルシフト付き。
これが日本メーカーなら、下級グレードは4ATで上級グレードのみ多段式ATにするか、一律CVTにするところです。それに対し欧州メーカーは、安全性や乗り味に係わる部分は、全てのグレードに搭載。
そういった見えにくい部分にも、実用車としてあるべき姿を追求しており、またそれがブランドイメージの確立となります。
センターコンソールには、縦に二個入れられるカップホルダーと、そこに収められる着脱式の円筒形の灰皿が。
その後ろには、前席用の、可倒式の肘掛が生えています。これは上部が蓋になっており、小物入れとなります。
後端には、後席用のカップホルダーが一つ。センターコンソールの中をエアコン用通風管が通っており、これを利用してカップホルダーを冷やしたり温めたりする仕組みなんでしょうか? というか、そうでないと困るぞw

ドアポケットがゴムバンドになってます。これは面白い!
或いはコストダウンの影響なのかも知れませんが、この車のキャラクターとしては重厚さよりカジュアルさが似合うので、むしろ成功していると思います。
こちらも、ドアハンドル周辺のスイッチが少ないのが良い。

リアハッチは、VWエンブレムを上に半回転させると電気ロックが解除され、かなり大きく開きます。
それと連動してトノカバーも開きます。仕組み自体は単純ですが、アイディアです。
トノカバー連動開閉といい、広々というより深々とした荷室といい、
スズキ スイフト(DBA-ZC72S、DBA-ZD72S)と相通ずるものがあります。
流石に本格的なミニバンやステーションワゴンには比べるべくもありませんが、このサイズとしては相応の積載量であり、そもそもニュービートルの1.5倍の容量を誇るのだとか。
フューエルリッドも、手で軽く押し込むとロックが解除され少しだけ開くので、後は手で全開にする仕組みです。
こちらもコストダウンの影響かも分かりませんが、一般的な機械式や電気式でないのが信頼性があるし、緊急時にも役立ちそうです。
試乗はしなかったのですが、日本仕様のエンジンは1.2Lターボのみというのが、好印象です。
車格といいエンジンスペックといい、今はどの国のどのメーカーの車も、世界戦略車としての側面も担っているせいで、モデルチェンジの度に肥大化していく一方です。
個人的にはそれが好きになれなかったのですよね。少なくともここ日本でそんなことをされても、道幅は狭く、停められる場所は少なく、税金も高い。エンジンだってどんなに大排気量で大馬力だろうと、本来の性能を発揮する機会なんて年に何回あるか分からないし、そもそも燃費も悪い。
日本車なのに日本で乗り回すのに不便って、どういうことだよ?と。
ザ=ビートルはそんな時代の流れに逆行しているかのようですが、日常使用を突き詰めれば、これくらいの車格・これくらいのスペックのほうが理に適っています。
アウディ A1(DBA-8XCAX)もそんな車ですね。
どんどん大型化していく日本車にあり、欧州車は小型化していくという、逆転現象。
これが真の実用車というものです。日本メーカーももっと見習え。
やっぱり試乗すれば良かったかな…?


もし僕が買うとしたら、当然サターンイエローしかないでしょう。
前後のVWエンブレムをサイバトロン(オートボット)のそれに変え、黒いボディストライプを貼り、「AUTOBOT」ないし「BUMBLEBEE」と書かれた黒いサイドフィルムを貼る。
イメージは、映画『
トランスフォーマー』シリーズの
バンブルビーのオリジンである、『
戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー』の
バンブルです。
或いは、日本導入未定のスポーティグレード・
Rラインを素材に。
外装はキャンディホワイトにし、インパネ類とサイドミラーをトルネードレッドに塗装ないし交換。
オプションであるサイドフィルムも装着。但し純正はブラックかホワイトしかないので、赤で作り直して。ロゴは、各国におけるビートルの愛称をあしらったものが8種選択できますが、「Käfer(ケーファー。ドイツ語で
カブトムシ、コガネムシ)」を。
アルミホイールも、オプションから、5本デュアルスポークである「Helix(グレー)」を。
ルーフにはカーボン調ダイノックシートを貼付。
前席をレカロ製の真っ赤なセミバケットシートに交換。

そう。
アバルト 500(チンクエチェント)、
ポルシェ 911・GT3RS(997型)、
ヌォーヴァ・アウトモービリ・フェルッチオ=ランボルギーニ ガヤルド・LP560-4ビアンコロッソ。
それらのイメージです。
…と思ったら、既に本国では
改造キットがあったのね!(*゚∀゚)=3
「21世紀におけるビートルの再創造」とは、理想のコンパクトカー・理想のシティコミューター・理想の実用車を目指すことと同義でもあります。余計な付加価値を削ぎ落とし、あくまでシンプルに、経済的に、合理的に、庶民的に。
しかし決して安っぽくなく、上質さ、温もり、何より楽しさがある。
A1とも併せて、世界戦略車の新たな指標となって欲しいです。
あとは、本国仕様にあるクリーンディーゼルエンジンモデルを日本導入したり、何より価格がもっと安ければ…。