日産、軽自動車自社生産へ 半世紀ぶりに新規参入
(乗り物速報、2015年1月19日)
日産、軽自動車自社生産へ・・・半世紀ぶり新規参入
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2015年1月20日)
日産が「軽自動車」を【自社生産】へ!【三菱自動車】との提携は維持しながら【EV】展開か?
(Ethical & LifeHack、2015年1月29日)
日産自動車は、三菱自動車工業との軽専門の合弁会社「
NMKV」を立ち上げ、
デイズ&eKワゴン、デイズルークス&eKスペースを既に送り出しています。
NMKVは日産主導・三菱生産であり、予定では日産の親会社であるフノーもEV(電気自動車)で参画する方向でした。
それがこの度、日産
追浜(おっぱま)工場での生産に切り替えていくそうです。
ネット上では、
「日産を経由してフノーの資本と技術が入って、
トゥインゴみたいな軽が出ないかなあ」
「俺、日産工場で働いてる期間工なんだけど、忙しくなるな」
などと期待する声を多く見掛けましたが、僕としては正直懐疑的です。
まず、日産は、軽はガラパゴス規格だとして軽視し、世界戦略車にばかり注力してきました。
円高のときはそれでも構わなかったのであり、現にその方針によって北米と中国で売れたから、倒産寸前だった日産が持ち直したのは事実です。
しかしその弊害として、サイズも重量も排気量も、日本の道路事情に即したものではなくなった。
必要以上の高級路線を打ち出し、しかし実質的には高級車ではなく単なる高額車。
他社のように、それで回復した体力で以て日本市場向けにも同じくらい力を注ぐのならまだしも、未だにあからさまな付録扱い。
現在のエントリーカーであるマーチでさえも主力市場はタイであり、だからタイの工場で生産して輸入している。それはつまり、日産は日本市場をどう見ているかの表れです。
それが進みすぎて、あまりにも海外を偏重しすぎたせいで、国内工場が手薄になった。
即ちそれは、日産にすれば国内シェアは、僕らが思う以上にジリ貧状態にあるのかも知れません。
企業としては従業員を食わせてやらなければならないから、無理やりにでも仕事を引っ張ってくる必要に迫られた。
(と言うか、従業員や会社のためというより、大規模リストラしたとあっては自らの経歴に傷が付くことを恐れた、
カルロス・ゴーンCEOの思惑なのだろうという目で見ていますが)
かてて加えて、今は円安になって状況が変わり、日本工場で造って輸出したほうが、海外現地工場で造るよりも儲かる仕組みになった。
なので日産としては慌てて方向転換している最中です。
それらの事情が絡み合い、日本工場で造って日本人相手に売る車として、軽が選ばれたというのでしょう。
消費税増税前の駆け込み需要によって軽の売り上げがいきなり伸び、しかしスズキのOEMであるがために後回しにされた、その怨恨もあるといいます。
現場のセールスマンにすれば、まずは軽を買ってもらって、そこからコンパクトカーへ、ゆくゆくはセダンやミニバンやSUVへと徐々にステップアップさせていこうという目論見も、当然ながらあることでしょう。
そのためにも軽は取っ掛かりとして重要です。
しかし実際には、軽は0.5台分としてしか販売実績としてカウントされず、本社の意向としても軽の扱いはぞんざい。軽のほうが売れると本社から役員が飛んできて、朝礼で延々怒鳴り付けられるという話も聞きます。
ゴーンCEOを筆頭に役員は外国人、それも年収10億を越える顔触ればかりなので、軽の存在意義など想像したこともないし、理解も出来ないのでしょう。だから軽に対しあからさまに手を抜くのは、無理からぬことです。
そうやって出来たものは、新しい提案など何もない、ありきたりで、凡庸で、退屈な車。後出しじゃんけんである以上、勝てる見込みは幾らでもあったにも拘わらず。
日産関係者や日産ファンでもなければ、積極的に買う理由など一つも見当たらない。強いて挙げるなら、アラウンドビューモニターでしょうか。
ハスラーやウェイクなど、結局は老舗のほうが、安定して魅力的な軽を出しているという皮肉。老舗が老舗として長く存在し続けているのには、理由があるのですよね。
第一弾だからと大目に見ようとしても、同じくゼロからスタートしたN-BOXが大成功したという前例がある以上、そんな言い訳は通用しません。

そんなNMKVは、設立当初から不協和音が響いていました。
噂では、軽は女性の乗り物だからと女性向けに特化したい日産側と、若年男性向けのスポーティモデルやパジェロミニ後継のSUVも出したい三菱側とで、折り合いが付かなかったという説まで飛び出しています。
勿論その真偽は不明ですが、第三弾以降のラインナップが噂ですら出てこないというのが、全てを物語っています。
・日産が「軽自動車」を【自社生産】へ!三菱との提携に【不満あり】?【エンジン】だけ調達?
(Ethical & LifeHack、2014年8月3日)
・蜜月関係の日産、三菱自に不協和音 軽生産で波風
(産経ニュース、2014年8月9日)
・日産・三菱、提携の軽で溝…来年の発売不透明
(YOMURI ONLINE、2014年8月23日)
今まで散々軽を馬鹿にしておいて、OEMでお茶を濁してきたのが、「軽って意外と儲かるんだな」と思い直し、掌を返したと。
今まで散々ガラパゴスを軽んじておきながら、その場その場で有利なほうへころころ態度を変える。
どこまで節操が無いのやら。
志賀俊之COOが、2013年11月1日付けで、副会長への昇進という形で事実上の左遷をされたのも、根が深そうです。
恐らく、日産役員で唯一ゴーンCEOの歯止め役というか、日本で日本企業としてあり続けるためにどうするべきかを、口酸っぱく進言していたのかも知れません。
自ずと、三菱と良好な関係であるために、手を尽くしていたであろうことも想像されます。
・「糟糠の妻」志賀COOを切り捨てた日産ゴーン社長はいまや「裸の王様」だ
(Business Journal、2013年11月5日)
傍目には、三菱が右から左にいいように扱き使われたように見えて、気の毒ですらあります。
もっとも、車嫌いな益子修会長・兼・CEOにすれば、「ふ~ん」としか思っていないでしょうが。
日産はOEM提携をしている関係から、当初はスズキに合弁会社の話を持ちかけたそうですが、速攻で断られたそうです。
流石
おさむちゃん、嗅覚が鋭い!
フォルクスヴァーゲンとの提携も打ち切っただけあります。
「日本企業は、日本人は、ガラパゴスでいいんだ」を信条としているだけあります。外資と組めばどんな末路が待っているかを、直感的に感じ取っていたのでしょう。
何しろトヨタでさえも、GMと組んで散々な目に遭った過去があるほど。マツダも、フォード・モーターと提携して、立ち直ったら早々に縁を切った経緯があります。
今の日産は、既に日本企業ではありません。
関わるにはリスクが大きすぎます。
今は苦しくとも物になるまでは辛抱して踏ん張るという概念がなく、短期間で確実に成果が見込める分野だけに特化。それも自前でゼロから築き上げるのではなく、他社の動向を観察した上で、楽して他所から引っ張ってくる。
そして、ノウハウを吸収した後は用済みだから、見返りなど与えずに簡単に裏切る。ベンツ同様、三菱もこれからは軽専用エンジンだけを供給してくれれば良い、と。
そうやって浮いたコストを価格に反映させず、世界に通用する高級車と嘯いて、ぼったくり価格で売る。
そんな方法で得られた利益は、「倒産の危機から助けてやった謝礼だ」と言って、親会社のフノーが根こそぎ掠め取ってゆく。
流石だぜ、グローバル企業!
こんな扱いされたら、誰だって怒りが湧いてきますよ┐(´ー`)┌

三菱にすれば、これを受け入れたら
水島製作所の稼働率は落ち、工場閉鎖と大規模リストラは必至。
契約違反を盾に、頑として拒むことでしょう。
逆に言えば、日産にすれば、契約を反故にしてでも旨味のある事案なのかも知れません。
グローバルでは全てが契約社会である上、
「勝てば官軍」
「正義が勝つのではない。勝ったほうが正義を名乗れるのだ」
「一旦成功さえすれば、どんな反社会的な行いをしても全て正当化できる」
を地で行く世界であり、それが白人社会共通の常識です。
古代ローマ帝国の時代からずっとそれを繰り返してきた、白人特有の遺伝子です。
だから、勝つために幾らでも汚い手を使えるし、にも拘わらず平然と出来る。
しかし日本には、
「実るほど頭(こうべ)が下がる稲穂かな」
「武士は食わねど高楊枝」
「鷹は飢えても穂を摘まず」
という言葉があります。
強い人や力のある人は、只でさえ注目を集める立場である上、有り余る力で以て自らを好きなだけ正当化できる。なればこそ、自らを厳しく諌め、皆の手本にならなければならない。人の上に立つというのはそういう事……という概念です。
ゴーンCEO始め、外国人が多数を占める日産上層部には、一生掛かっても理解できないでしょうね。
これは、軽がどうの、日産がどうの、という問題ではありません。
グローバル・スタンダードを受け入れると日本企業はどうなるか、日本人はどうなるか、日本社会はどうなるか。その哀れな末路の一例です。
主水(もんど)氏が取り上げたことでも、それは明らかです。
・日産、軽自動車自社生産へ…半世紀ぶり新規参入
(Don't Disturb This Groove、2015年1月19日)
なのに、保守層の人ですら、「ま、俺は軽なんか一生買わないから、どうでもいいっちゃどうでもいいんですがねwwwww」と平然と言い放つ人がいたのには、唖然とします。