三菱自動車、燃費試験で不正行為 4車種の生産・販売停止
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2016年4月20日)
三菱自動車工業も、燃費不正に手を染めましたか…。
残念です。
1980年代の三菱は、パリ・ダカールラリーやWRCなど、世界中のラリーを席巻しました。
出自も、由緒正しい財閥系であり、文字通りの名門。
それが、1990年代後半以降は、どうにもぱっとしません。
マイナーチェンジでさえ頻度が少なく、ましてやモデルチェンジや新車発売に至っては。
その一方で、
パジェロや
ランサーエボリューションや
ギャランフォルティスなど、廃止される車種は後を絶たない。
メーカーの威信が賭かっているはずの
フラッグシップモデルでさえ、他社からのOEM。
中国やアメリカや新興国では魅力的な車種を次々と投入しているのとは対照的に、国内市場をほとんど見捨てていると言っても過言ではない状態。
或いは三菱グループという安定した供給先があるからか、まるでやる気を感じない。悪い意味で守られた存在。
話題性に事欠くので、わくわくするメーカーでは最早なくなってしまいました。
・三菱自動車が『今後1年半以内に米国市場から消滅するであろう10ブランド』のひとつに
(乗り物速報、2013年5月31日)
・背水の三菱自動車、日産へ身売り5つの根拠
(同、2013年10月22日)
・三菱自動車 国内販売5000台に届かず、シェアは1.4% 4月実績
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2015年6月1日)
そこへきて、これです。
発端は、日産自動車との、軽自動車専門の合弁企業「
NMKV」。
第三弾は日産主導で開発を進めていた折り、デイズ(三菱名:
eKワゴン、三代目)を日産社内に持ち込んで研究しようとしたところ、あまりにもカタログスペックと違いすぎることから、不正が発覚したそうです。
しかも、話はどんどん拡大していきました。
発表当初は、eKワゴン&デイズと、eKスペース&デイズルークスの、計4車種。
それが、社内調査をしただけでも、
ミラージュ、デリカD:5、
アウトランダーPHEVを除く全車種で不正をしていたことが判明。
それも25年も前から。
・三菱自、ミラージュ デリカD5 アウトランダーPHEV以外の全車種で不正試験 リコール隠し後の2002年から
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2016年4月21日)
・三菱自動車の燃費不正「25年前」の1991年から
(同、2016年4月26日)
・【三菱自動車】燃費の不正操作は62万5000台、該当車は生産・販売停止へ
(乗り物速報、2016年4月21日)
これほどの長期間、それもほぼ全車種でやっていたということは、どう考えても組織ぐるみです。
なぜ誰も気付かなかったのか…。
いえ、恐らく、皆気付いていたことでしょう。
しかし、正義感のある社員が「俺たちのやっていることは間違っている!」と異議を唱えようものなら、パワーハラスメントないし左遷をされて、多勢に無勢で押し潰されていたのではないでしょうか。
“朱に交われば赤くなる”。
社風に馴染めなければ去るしかないのが、雇われ社員の性。
そして誰でも職を失うのは怖いから、染まるしかない。
だから、仕事上のネガティヴポイントを見付けて上申したとしても、皆その責任を押し付けられるのが嫌だから、何かと理由を付けてネガティヴポイントなど始めからなかったかのように振る舞う。
外部監査役も、「三菱グループにいれば一生安泰だから」と言って、一日中コーヒーを飲みながら雑談するだけで、全く働いていなかった。
恐らくそんなところではないでしょうか。
現に、新型
RVRの開発において、進捗の遅れを正直に上申して相談を仰いだ社員は、速攻でクビになったのは、記憶に新しいところです。
・三菱自不正問題 燃費目標達成へ、上層部からの開発部門への強いプレッシャーか
(ゆめ痛 -NEWS ALERT-、2016年4月24日)
今度の燃費不正にしても、開発部長が自分一人でやったと言っていますが、常識で考えて、これほどの不祥事をたった一人の社員で出来るはずがないのです。
設備はない、資金はない、期間はない、メンバーは少ない、ノウハウもない、他社に一歩も二歩も三歩も後塵を拝している。
三菱の開発費はトヨタの十分の一しかなく、しかも年々削られているというのは、有名な話かと。
会社からのバックアップがないのに、遥か彼方を先んじている他社に、追い付くどころかスタートダッシュの時点で追い越せと無理難題。
出来なかったら、バックアップしてくれなかった会社ではなく、無理難題を押し付けた上司でもなく、現場の人間のせいにされる。
技術的なブレイクスルーがあったわけでもないのに、先行する他社も顔負けのペースで、やればやるほど燃費が良くなる。
管理職や役員も、誰も不自然だとは思わなかったのでしょうか。
三菱の管理職や役員は、それ程までに無能揃いなのでしょうか。

勿論、仕事であるからには、或る程度のプレッシャーは付き物です。
しかし三菱の場合は、脳味噌まで筋肉で出来ているような、精神論が大好きな体育会系ブラック企業のようです。
自ずとプレッシャーの概念が変わってきます。

人間が“三つ子の魂百まで”なのと同様、今更社風を変えることなど不可能。
まして三菱のような超巨大財閥ともなれば。
当然、
相川哲郎COOも、知らなかったはずがありません。
技術畑からの叩き上げであり、若い頃は
ミニカトッポや
eKワゴン(初代)の開発主査だった人です。
であれば尚更、たとえ本人は真面目にやっていたとしても、周辺の何らかの気配だけは感じていたとしてもおかしくはない。
フォルクスヴァーゲンが排ガス不正で世界中から大顰蹙を買った理由も、当時CEOだったマルティン・ヴィンターコルンが、技術開発の出身であり、しかし下請け会社であるボッシュの責任にした上で、自分一人だけ逃げたからです。
或いは、
益子修CEOの置き土産だったのかも知れません。
益子氏は自動車嫌いであり、自工への人事を屈辱的に捉えていた節があった。
しかも三菱商事出身の元銀行員であることから、数字にはうるさく、国内市場を見捨てることに躊躇なかった。
その後任として社長に就任したからには、自由度などたかが知れています。
そういえば、益子氏が代表取締役社長であったのは、2005年1月1日から2014年6月1日。
歴代社長の中で最も在任期間が長い。
そして何より、この度の燃費不正の期間と、符合する。
確かに、経営トップというものは、何だかんだ言いつつも結局“神輿”でしかない。
一歩間違えれば裸の王様になりかねない。
だからこそ、役員たちが会議で報告してくる数字を鵜呑みにするのではなく、常に現場を皮膚感覚で知っておかなければならないのですが。
財閥系であるからには、倒産だけは絶対にないでしょう。
外資に買収される心配もありません。
しかし今は、三菱重工業は船舶産業で苦戦を強いられており、三菱商事と三菱東京UFJ銀行も今期は赤字の見通しだといいます。
かつてのリコール隠しのときとは違い、他の三菱グループが助けてくれる余裕は、今回もあるとは限りません。
その上で、オーナーへの保障などで、今後茨の道が待っています。
・エコカー減税分、三菱自動車に請求へ
(サイ速、2016年4月22日)
・三菱自動車「車両買い取り」なら経営大打撃 対策費は数千億円規模に膨らむ恐れ
(乗り物速報、2016年4月23日)
・大手中古車業者 三菱車の買い取りを拒否 保証の関係で在庫は産廃処分される可能性も
(同、2016年4月29日)
中には、PHEVの特性を知ってか知らずか、ここぞとばかりに言いがかりを付けてくるクレーマーまで紛れ込んできます。
・三菱アウトランダーPHEV、カタログでリッター67キロ、実燃費は15キロ程度と大きな隔たり…過去に購入客から苦情も
(サイ速、2016年4月26日)
車好きであり、信念を持って入社してきた。
親の代から車造りに関わってきた、いわば純血種。
社長になって日が浅いうちに起きた事件。
問題の車種が開発・販売されていた時期に社長だった人物は逃げ回っており、自動車評論家もマスコミも誰一人として取材しない。
何だかモリゾウさんと重なるものがあります。
苦しいのは百も承知ですが、そのモリゾウさんを見習って、何とかして良い方向へ導いて欲しいものです。
PHEVがあればまだまだ戦える。

個人的には、今の自動車はどれも優秀だから、燃費などそれ程神経質にならなくても良いと思っています。
・こち亀の両津がド正論、新車のリッター30kmなんてあてにならない、今あるものを大切に使うのがエコ
(乗り物速報、2016年4月29日)
「
JC08モード燃費は当てにならない」と憤慨する声をよく聞きますが、そんなの当たり前です。
実際に車を使う場面では、色々な環境に住んでいる色々な人が、十人十色の使い方をする。
住宅街の中の直角カーブだらけで細い道を走るときもあれば、未舗装路や雪道を走る場合もある、カーブばかりで高低差の激しい山道を走るときもあれば、ほぼ直線の高速道路を100km/h程度で巡航するときもある。
一人で乗る場合もあれば、大人数で乗る場合もある。
自分とは運転の癖が違う人に貸す場合もある。
夏はエアコン、冬はヒーターも使う。日本は高温多湿なので、気候や気温は一定ではない。
実生活では様々な状況があるのだから、“机上の空論”の通りにならないのは、当然の話です。
車好きにとっては常識でも、しかし車に関心がなく、むしろ「家計を圧迫するお荷物だけど、必要だから買わざるを得ない」という一般層(特に主婦)にすれば、燃費は重大な関心事の一つ。
そして、カタログスペックというものは、具体的な数値に表れるだけに、誰にでも判りやすい。
その結果、今の燃費競争は、どこか歪なものに。
外装を1mm単位で薄くするとか、ビスを1本単位で減らすとか、燃料タンクを小さくするとか、シートのヘッドレストをなくすとか、タイアを細く小さくして破裂寸前にまで空気を詰めるとか…。
どこか病的であり、健全な競争には見えません。
三菱は、というか責任を取って辞めていった社員は、歪んだ燃費競争の被害者であるように僕には思えてなりません。