久々の試乗記。
今回はゴルフのライバルであるアクセラ。
先代のマイナーチェンジ時に登場のスカイアクティブは期待外れでしたが、新型がどのくらい進化しているか非常に楽しみで、早く乗りたいと思っていました。
残念ながらディーゼルの発売はまだでしたので、2リッターガソリンとハイブリッドに試乗してきました。
試乗車
・アクセラスポーツ20S Touring L Package (FF,6AT) 243.6万円(税込)
試乗車装着オプション
・CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー+Boseサウンドシステム 10.5万円(税込)
試乗車価格 254.1万円(税込)
・アクセラセダン HYBRID-S L Package (FF) 262.5万円(税込)
試乗車装着オプション
・CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー 3.15万円(税込)
試乗車価格 265.65万円(税込)
●デザイン
最近のマツダの「鼓動」デザインは大好きです。私はボディカラーは赤が好きですが、イメージカラーの「ソウルレッドプレミアムメタリック」がまたとても似合っていていいんですよね。空気抵抗係数はセダンがCd=0.26、ハッチバックがCd=0.28とかなり優秀です。そのわりにはアテンザよりもAピラーが迫ってきている感じはありませんでした。

全長4460mm×全幅1795mm×全高1470mm、ホイールベース2700mm
車重1310kg、前車軸810kg、後車軸500kg (車検証記載値、重量配分62:38)
この重量配分は新型ゴルフと同等で、FFにしてはいいと思います。
●パワーユニット
・20S
SKYACTIV-G 2リッター直列4気筒直噴DOHCで、114kW(155ps)/6000rpm、
196Nm(20kgm)/4000rpm。圧縮比は13.0と非常に高くなっています。またゴルフ7と同様、前方吸気・後方排気となっています。
燃費はJC08モードで19km/ℓです。ゴルフの1.4リッターターボとほぼ変わらない数値ですが、ゴルフのほうが実燃費では勝るでしょう。
パワーは少し物足りなく感じますが、アクセルに対しリニアにパワーが出るので、乗っていて不快になることはありませんでした。同じ2リッターNAでは、インプレッサのほうがもう少しトルクがあるように感じます。
音は気持ちのいいものではありませんでしたが、先代に比べてガサツさが減ったような気がします。
エンジンマウントが良いのか、振動も先代に比べて減っていました。
・HYBRID-S
2リッター直噴DOHC+モーターです。
エンジンのスペックは73kW(99ps)/5200rom、142Nm(14.5kgm)/4000rpm。
モーターのスペックは60kW(82ps)、207Nm(21.1kgm)。
なんと燃費はJC08モードで30.8km/ℓです。
CVTということもあり、アクセルを踏んだ時のパワーの出方にリニアさが欠けています。それでもプリウスに比べれば、アクセラはエンジンが2リッターでトルクが大きいので、パワー不足を感じるようなことはそれほどありませんでした。
プリウスはモードの切り替えで、ECOとかPOWERとか切り替えが出来ましたが、アクセラはパワー特性の変更はできず、EVモードの設定のみとなっています。
余談ですが、アクセルペダルはガソリン車がオルガン式、HYBRIDが吊り下げ式となっています。トヨタのシステムの関係上、HYBRIDは吊り下げ式にせざるをえなかったそうです。
またシステムの差が低燃費技術採用の差にもなっています。
アイドリングストップ機能はガソリン・ディーゼルがマツダの「i-stop」で、HYBRID-Sはトヨタのハイブリッドシステムに組み込まれたものを用いています。
また、エネルギー回生システムの「i-EROOP」はガソリン・ディーゼルのモデルにしか採用されていません。
●ミッション
・20S
SKYACTIV-DRIVE 6ATです。いままでのものよりもダイレクト感が増しており、さらに変速レスポンス素早くなっています。VWのDSGほどのレスポンスはありませんが、DSGの素早さに慣れている私でも不満のないレスポンスでした。ベンツのA・Bクラスのツインクラッチよりもよいかもしれません。
・HYBRID-S
基本的にプリウスと同様のCVTなので、6ATに比べるとダイレクト感が落ちます。またマニュアルシフトもできないので、走る楽しみは減ります。
●ハンドリング
電動パワーステアリングです。最小回転半径は5.3m。
20Sはセンター付近もきちんと反応があり、切り込んでいく途中でもタイヤのインフォメーションが抜けず、いい感触です。トーヨーPROXES T1 Sportというプレミアム志向のタイヤもいいのでしょうし、タイヤをきちんと生かしている足回りもまた良いと思います。HYBRID-SはブリジストンのECOPIA EP150という省燃費タイヤを履いているため、センター付近のレスポンスは落ちますが、基本的な感触は20Sと変わらず、結構いいほうだと思います。
●足回り
フロントがストラット、リアがマルチリンクです。
タイヤは20SがトーヨーPROXES T1 Sport、サイズが前後とも215/45R18 89W。
HYBRID-SがブリジストンECOPIA EP150、サイズが前後とも205/60R16 92V。
けっこう固めで、車体をフラットに保ちます。車体の剛性感も高いです。20SもHYBRID-Sも基本的には変わりありません。走りの違いはタイヤの差だけだと感じました。
●ブレーキ
・20S
ちょっと踏力がいりますが、踏み込むストローク量に対してリニアに効きます。
また、ペダルの剛性感もあります。
・HYBRID-S
回生ブレーキのため、少し違和感があります。20Sに比べてリニアさに欠けます。
パーキングブレーキは私の好きな電動式ではなく、ハンド式です。
●静粛性
静粛性はかなり高いです。インプレッサより静かです。かなりゴルフの静粛性に近づいたと思います。
●シート
フロントシートはゴルフに比べるとウレタンの厚みが足りない感触はありますが、座面や背もたれの大きさ・サポート性に不満はなくフレーム剛性も高いので、いいシートだと思います。アテンザと座った感触がほとんど一緒でした。リアシートは試す時間がありませんでした。
●内装(インパネ)
上半分はソフトパッドになっており、見た目にも高級感が出ていていいですね。とても200万円台中盤のクルマとは思えません。メーターのデザインがボルボV40風で先進的なデザインですし、センターのディスプレイが独立していてダッシュボードの高さを低くして開放的にしているので、アテンザと比べても遜色がないどころか、こちらの方がデザインや質感がいいように思えました。
20Sのメーター
全体の形状はボルボV40風です。センターのメーターはタコメーターとなっています。目盛りの部分がシルバーになっていて、ちょっとメルセデスベンツAクラスのメーターを思わせるような色づかいです。デザインは気に入ったのですが、左右のディスプレイは文字が小さく、老眼になった私の眼には見えずらかったのが残念です。こういうところの気遣いはトヨタ車のほうがよく考えられていますね。

HYBRID-Sのメーター
センターのメーターがスピードメーターになっています。左側のディスプレイにはモーターの状態とバッテリーの充電状態が示されています。
メーターバイザーの上には「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」があり、イグニッションのONとともに立ち上がります(任意に下げることはできません)。
スピードのほか、簡易ナビ表示、レーダー・クルーズ・コントロールの車間設定表示がされます。
7インチセンターディスプレイ
ナビゲーションはショップオプションのナビゲーション用SDカード(3万1500円)を購入して装着することにより見ることが可能です。
アウディ・コネクトならぬ「マツダ・コネクト」が装備されていて、スマホに「Aha」というアプリをインストールし、スマホを介してインターネットに接続し、FacebookやTwitterのメッセージの読み上げやインターネットラジオの利用を可能としています。
機能が限定的で、インターネットが見られるわけではありません。
アウディ・コネクトの場合はクルマ本体が「3G」無線通信でインターネットに接続し、車内でWi-Fiの利用を可能にしていたり、Google earthを見られたりといった機能がありますが、一長一短ですね。マツダの場合はスマホがないとできないかわりに、インフラが進化して通信速度が上がっても、スマホを買い換えれば対応できますが、アウディの場合はクルマ本体に内蔵されてしまっているため、インフラの進化に合わせるためには、クルマ自体を買い換えなければいけなくなるといったことが起こりえるかもしれません。

操作はセンターコンソールにある「コマンダーコントロール」で行います。
操作感はボタン、ダイヤル共に少し硬かったです。

-DM(インテリジェント・ドライブマスター)の表示
マツダ独自のドライビング教習機能とでも言ったらよいのでしょうか。
i-DMがセンターのディスプレイで表示できて、わかりやすくなっていました。
スコアを達成すると、左上に表示されているステージが上がっていくそうです。
最大5th STAGEまであるそうです。
●安全・快適装備
以下はアテンザ試乗記ブログの引用です。
マツダの安全思想のことを「MAZDA PROACTIVE SAFETY」というそうです。
安全技術の総称を「i-ACTIVSENSE」というそうです。
では「i-ACTIVSENSE」に含まれる技術を1つ1つ確認してみると、
①スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)&AT誤発進抑制制御
SCBS4~30km/hの間でフロントガラス部分にある近赤外線センサーを使って感知して衝突の危険があると判断すると、自動でブレーキをかけるシステムです。ATご発信抑制制御は10km/h以下の徐行時及び停止時にセンサーが障害物を検知しているにもかかわらずアクセルが一定以上踏み込まれた場合に、警告と同時にエンジン出力を抑える機能です。
SCBSはボルボの「シティセーフティ」やVW up!の「シティエマージェンシーブレーキ」などと同様の
システムです。
②マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)
私の好きな装備です。フロントグリルのエンブレム内にあるミリ波レーダーを使って30km/h~
100km/hの間、前車との車間距離を一定に保ちながら自動追従するクルーズコントロールです。
車間距離は5段階に設定できます。日本車のクルコンは100km/hまでしかセットできないのが
残念です。
③スマート・ブレーキ・サポート(SBS)
こちらも②と同じミリ波レーダーを使って15km/h以上で車間距離を認識し、メーター内に表示、
車間距離が基準値に達すると警告を発し、さらに距離が縮まると自動ブレーキで衝突回避または
衝突時の被害軽減を図ります。
④車線逸脱警報システム(LDWS:Lane Departure Warning System)
フロントガラスにあるカメラを使って、車線を逸脱しそうになると判断すると、音で警告を発します。
ウィンカーを出しているときは働かないそうです。
⑤リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)
リアバンパーに内蔵されたレーダーを使って、斜後方約50mまでの範囲で近接車両を検知し、
ドアミラーにあるインジケーターが点灯します。その検知している状態でウィンカーを操作すると、
インジケーターの点滅と同時に警告音を発します。
⑥アダプティブ・フロントライティング・システム(AFS)
ステアリングを切る角度と車速に応じて、ヘッドライトの向きを進行方向に近づけるシステム。
GTIにもついています。
⑦ハイビーム・コントロール・システム(HCS)
ハイビームで走行中、フロントガラスにあるカメラが対向車のヘッドライトや前走車のテールランプを
検知すると、自動的にロービームに切り替えるシステム。
これは便利かもしれません。
ディラーマンはミリ波レーダーは200m先まで補足でき、悪天候時でも補足できると言っていました。
スバルのアイサイトはステレオカメラで60m前までしか補足できず、悪天候時は補足しにくくなるそうです。ただし、物体を認識するのにはカメラのほうが向いているそうです。
こうやって調べてみると、スバルのアイサイトはステレオカメラだけですが、i-ACTIVSENSEはミリ波レーダー、近赤外線センサー、カメラと3種類の感知装置を使ってより多機能にしてあるので、開発陣のこだわりをいろいろな名称を使って表現したかったということもあるのかもしれないですね。けっこうベンツやボルボに迫るぐらいになってますね。
アクセラの場合、グレードによってけっこう違いがあります。
アクセラスポーツ(5ドアハッチバック)ディーゼルの「XD」というグレードにはすべて標準で付きます。
「20S Touring」系では④と⑦が装着されません。
なんと1.5リッターには安全装備が付いておらず、オプションでもほとんど選べません。
HYBRID系では私の好きなレーダークルーズコントロールがオプションですら付けられません。
この装備の差はなんなのでしょうか。
オプションでもいいからすべてのグレードにこれらの安全装備を付けられるようにしてほしいものです。
私には安全装備の差でわざと「XD」か「20S Touring」を購入したくなるように誘導しているように見えてなりません。
●ラゲッジスペース
ラゲッジ容量は350リッターとこのクラスで標準のサイズです。先代のゴルフで350リッター、ゴルフ7で380リッターですから、新しいモデルですからもう少し大きくてもいいんじゃないかと思います。私の好きなアームレストスルーがないのも不満です。

容量は312リッターとちょっと少な目。またバッテリーがあるため、トランクスルー機能を採用できていない点が残念です。
いろいろ文句も書きましたが、国産Cセグメントの中ではすばらしい出来だと思います。インプレッサと比べてもこちらの方が気に入りました。足りないのはパワーくらいでしょうか。ディーゼルなら満足できるかもしれません。ゴルフと比べるとまだツメの甘さを感じるところもありますが、マツダはモデルが新しくなるごとに進化していますので、これからの熟成にも期待したいと思います。