こんばんは。
クラウンは走りがよくなったということで、ぜひ乗ってみたいと思っていました。
コネクティッドカーの知識を蓄える前に試乗をしたので、肝心なその機能を確認し忘れてしまったのが残念です。
試乗車:クラウン 2.5ハイブリッドG 2WD 価格562万1400円(税込)
クラウン 2.0RS 価格518万4000円(税込)
●デザイン
今回クラウン初の6ライトウィンドウということで、リアドアガラスの更に後ろに小窓を設けて、流麗なスタイルを作り上げています。レクサスLSとも通じるところがありますね。個人的には先代のデザインよりも好きです。
Cd値は記載されている資料がありませんでしたが、先代が0.27だったので、デザインから考えると同等かそれ以上良くなっていると思われます。

写真はRSで全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm、ホイールベース2920mm
車両重量2.5ハイブリッドG 2WD:1750kg、前軸重860kg、後軸重890kg(前後配分49:51)
車両重量2.0RS:1730kg、前軸重910kg、後軸重820kg(前後配分52.6:47.4)
Cピラー(新型ではDピラー)あたりのラインは旧型のほうが、いかにもセダンらしい端正なデザインで好きでしたね。
●パワーユニット
ハイブリッド
A25A-FXS型2.5リッター直列4気筒DOHC+1kM型モーター
エンジンはカムリに搭載された新世代のダイナミックフォースエンジンを縦置きに改変。
燃料噴射はD-4S(直噴+ポート噴射)。
スペックは135kW(184ps)/6000rpm、221Nm(22.5kgm)/3800-5400rpm
動力分割・伝達機構はTHSⅡでメカは先代のキャリーオーバー。制御は見直しを行い、アクセル操作による加重移動がしやすいようにしています。
THSⅡは内部に発電用のモーターと動力用のモーターがありますが、カタログや雑誌には動力用モーターしか書かれていません。動力用モーターのスペックは105kW、300Nm。
THSⅡは遊星歯車による動力分割・伝達を行っているため、変速機はありませんが、ベルト式CVTと同じように擬似的に6段を作って変速できるようになっており、パドルシフトが付けられています。
走った感じは、低回転では回転数と加速感が一致して違和感がなく走り出しがスムーズ。自然なトルクが出ています。高回転では加速感よりもエンジン回転のほうが高く、うなり音が大きくなって幻滅してしまいました。
ガソリンエンジン
先代のマイナーチェンジで搭載された8AR-FTS型2リッター直列4気筒DOHCツインスクロールターボ。
燃料噴射はD-4Sのターボ版「D-4ST」で、直噴+ポート噴射であることは同じ。
スペックは180kW(245ps)/5200-5800rpm、350Nm(35.7kgm)/1650-4400rpm
プラットフォーム刷新で排気の取り回しが良くなり、排気効率向上。また制御の見直しによって先代よりも7kW(10ps)出力が向上しています。
2リッターターボはハイブリッドに比べて低速トルクが少なくもたつきを感じますが、あくまでも比較して乗ったから気になっただけだと思います。高回転までスムーズに回ります。でも特に面白みはないですね。ミッションは8段ATで、変速は非常にスムーズです。
ハイブリッド、ガソリンともにドライブモードセレクトでSPORT、SPORTS S、SPORT S+を選択すると、エンジン音聴かせる設定ですが、多少大きいかなと感じる程度でした。
●ハンドリング
車速感応型電動パワーステアリングです。
ハンドリングは素直で、コーナーが連続する切り返しでも特に違和感はありませんでした。
●足回り
4輪マルチリンクサスペンションで、タイヤは2.5ハイブリッドがヨコハマBluEarth-GT AE51で、サイズは215/55R17 94V。2.0ターボはブリジストンREGNO GR001 225/45R18 91W。2.0ターボの試乗車にはTRDの19インチアルミホイールとタイヤが装着されていました。
プラットフォームは新たにTNGAを採用し、ディーラーマン曰く、フロントミッドシップとなっており、低重心化もされているとのことでした。
ハイブリッドは直進安定性もよくどっしりしています。しかし、コーナーでは後ろの電池が重いせいかリアが振られる感じが出ます。2リッターターボでは振られる感じはなく、逆にリアが軽快な感じですが、直進時の安定感はハイブリッドのほうがいいですね。パワーユニットと同じで比較して乗ったからそう感じただけで、安定感が不足しているというわけではありません。
RSにはAVS(アダプティブ バリアブル サスペンション)が装備されています。RS系以外のグレードにはオプションでも設定がありませんので、この装備が欲しい人は必然的にRS系を選択することになります。
AVSとはいわゆる無段階の可変ダンパーで、各輪のサスペンションの付いたGセンサーによりバネ上の加速度を感知して、その量に応じてリニアソレノイドバルブへの電流値をコントロールしてダンパーオイルの流量を制御して、4輪独立して可変する装置です。無段階で制御なのですが、ドライブモードセレクトとセットになっており、あえて段階を設けています。足回りに関しては標準、コンフォート、スポーツ、雪道の4種類の制御があります。ドライブモードのECO・NORMAL・SPORT Sモードが標準制御、COMFORTがコンフォート制御、SPORT及びSPORT S+がスポーツ制御、SNOWが雪道制御です。
ニュルブルクリンクで鍛えたとのことでしたので、もっと固い足を想像していたのですが、AVS装着車でSPORT S+を選択してもあまり固くは感じられませんでした。いままでのクラウンユーザーを意識したのでしょうか。欧州車のように固めてしまってはクラウンらしくなくなってしまうし、チューニングが難しいところではありますが、昔のクラウンらしいゆったりとした乗り味でもなく、かといってすごくスポーティーなわけでもなく、クラウンというブランドを意識しすぎて逆に中途半端というか、わかりにくく特徴がない感じになってしまっているのではないかと思いました。
●ブレーキ
ハイブリッドは電子制御ブレーキで、回生ブレーキと油圧ブレーキを電子制御で制動力を組み合わせて使っています。2リッターターボは通常の油圧ブレーキ。
どちらも効きのリニアさやペダルの剛性感など特に違和感はありませんでした。
パーキングブレーキは電気式で、信号待ちなどで踏み続ける必要がないホールド機能がついています。
●シート
フロントシートは背もたれはホールドが適度で背中の当たりもよいですが、クッションはもも裏の当たり方に違和感があり底付き感もあって、長時間乗っていると疲れそうな感じでした。
リアシートは座面が少し短い感じはしますが、収まりは悪くありませんでした。
●静粛性
ディーラーマンは、豊田章男社長がエンジン音を効かせるようにチューニングさせたと言っていましたが、確かに昔のようにとにかく周りの音は聞こえないようにするといった感じではありません。
ちょっと残念だったのはクルマを止めた状態でリアシートに座ったときに排気口と思われるところから結構外の音が入ってきていたことです。走り出したら気にならなくなるのかもしれませんが、クラウン=静かさ、といったイメージが自分の中にあったので気になるところです。
●インパネ
デザインは横基調でタッチディスプレイ式スイッチを使ってボタン類も少なくスッキリしたものです。
先代のデザインより好感が持てます。タッチパネル用ディスプレイは私の身長では角度が寝ているように感じられて、操作時に見にくく、いちいち目視しないといけなかったので、もう少し立ててもよかったのではないかと思いました。タッチの反応自体はよかったです。もう一つ残念なのはステアリングセンターがシートセンターに対し左に2~3cm程度ずれていたことです。ブレーキペダルはステアリングセンターに対して明確に右側にあったので問題はなかったのですが、せっかくプラットフォームを新設計したのにステアリング系は別のクルマの流用なのでしょうか。ステアリングセンター位置がシートセンターと一致し、右足を自然に置いたところにペダルがあるというのが長時間乗っても疲れないうえでの基本だと思うのですが(マツダはこだわってますね)、クラウンほどの価格のクルマがこの基本を守れていないというのは、残念というほかありません。
久々に感動したのは空調の吹き出し口が電動で左右にスイングしていたこと。そこだけはクラウンらしさを感じました。(一部グレードを除く)
メーターはトヨタお得意のオプティトロンメーターです。写真だとわかりづらいかもしれませんが、実物を見ると文字盤が浮き出ているように見えてなかなか面白いです。それからカラーヘッドアップディスプレイがRS系とS以外のグレードには標準装備です。(RS系とSにはセットオプションの設定あり)
●コネクティッド機能
コネクティッドカーということで、クラウンにはDCM(データ通信モジュール)と8インチT-Connectナビが標準で装備されています。ただし通信は別契約で、クラウン専用のテレマティックス「T-Connect for CROWN」を利用するには利用契約をする必要があります。3年間は無料で、4年目以降は年間17,280円(税込)の利用料がかかりますが、スマホの利用料の高さを考えれば、通信し放題で月額1,440円はそれほど高くないのではないかと個人的には思います。
サービスの内容は以前のブログで紹介していますので、ご興味のある方は、以下リンク先をご覧ください。
「つながるクルマ」コネクティッドカーについて学んでみました。①
またオプションでITS Connect(27,000円(税込))というものが装備でき、信号機などのインフラやITS Connectを搭載した他車と通信ができるようになっています。
こちらの機能についても以前のブログで紹介していますので、ご興味のある方は、以下リンク先をご覧ください。
「つながるクルマ」コネクティッドカーについて学んでみました。③
●安全・快適装備
トヨタセーフティーセンスが標準装備されています。以前は搭載する機能によってPとかCとか名称に区別があったのですが、2018年4月からトヨタセーフティーセンスに統一されています。
トヨタセーフティセンスの機能は以下のとおり
①LTA(レーントレーシングアシスト)
ウィンカーを出さずに車線をはみ出しそうになると警告を発するとともに、ステアリング操作を
サポート。ステアリングにスイッチがあり、ON/OFFできます。
②レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)
③プリクラッシュブレーキ(対歩行者・自転車検知機能付)
④AHB(オートマチックハイビーム)、AHS(アダプティブハイビームシステム)
オートマチックハイビームは自動でヘッドライトのハイ/ローの切替してくれる機能、アダプティブ
ハイビームは照射範囲も変えて前走車や対抗者、歩行者に対してまぶしくならないようにする
機能で、グレードによるヘッドライトの違いによりどちらかが装備されます。
⑤RSA(ロードサインアシスト)
速度表示の標識を認識して、ディスプレイに表示してくれる機能
⑥TMN(トラフィックムーブメントノーティフィケーション)
信号が青に変わって前のクルマが進んでしまっていても気づかなかった場合、知らせてくれる。
トヨタセーフティーセンス以外の安全装備
①インテリジェントクリアランスソナー
前後に超音波センサーを搭載し、ペダルの踏み間違いによる誤発進を抑制します。
②カラーヘッドアップディスプレイ
③リアクロストラフィックオートブレーキ/リアクロストラフィックアラート
駐車場からバックで出ようする際、左右後方から接近してくる車両をミリ波レーダーで、歩行者を
カメラで検知し、ドアミラーのインジケーターに表示するとともに警告音を発します。衝突の可能性
がある場合は自動でブレーキを制御します。
④パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2
パノラミックビューモニターは車両を上から見たように周囲の映像を表示してくれるもの。
インテリジェントパーキングアシスト2は2代目プリウスに初めて採用されたインテリジェントパーキ
ングアシストの進化版で、ステアリング操作のみ自動で行うところは変わりませんが、駐車位置の
選択がディスプレイで簡単行えるように進化しました。
⑤ブラインドスポットモニター
斜め後方の車両の存在をドアミラーにインジケーターが点灯。その状態でウィンンカーを操作する
と、インジケーターが点滅して注意喚起したり、衝突の可能性が高いと判断した場合はハザード
ランプを高速で点滅させて後方車両に注意喚起する機能がある。ただし、警報は鳴りません。
⑥デジタルインナーミラー
ルームミラー全体に後方のカメラ映像を表示。ヘッドレストなど邪魔なものがあっても、後方の視界
がきちんと確保されます。
以上いろいろとありますが、①のみが全車標準装備で、他はグレードによってオプションになっています。
例えば試乗した2.5ハイブリッドG 2WDですと、②、③、⑤が標準装備で、④が125,280円(税込)の
オプション、⑥が43,200円(税込)のオプションで、車両本体と合計で578万9880円(税込)です。
2.0RSで同じ装備にしようとすると、②~⑥すべてオプションですので、②~⑤がセーフティーパッケージPlusというセットオプションで246,240円(税込)、⑥が43,200円(税込)のオプションですので、車両本体価格と合計で、547万3440円(税込)になります。
●ラゲッジスペース
ボディが大きいわりに意外と容量は少なめです。FRということが影響しているのでしょうか。
例えば2.5ハイブリッドでは何もトランクに影響のあるオプションを付けていない状態で431リッター。アクセサリーコンセントを装備すると376リッター、さらに追加でリアオートエアコンを装備すると334リッターとだいぶ小さくなってしまいます。
下の写真は2.5ハイブリッドで何もオプションを付けない状態のものです。
センチュリーは別格として、トヨタのセダン系最上級車ということで、トヨタの最新技術が詰まったクルマなので、装備について理解するのがなかなか大変でした。でもこのクルマを理解しておけば、大概の日本車の技術にはついていけるという、変な確信が持てました。
さて単純にこのクルマが欲しいかと聞かれると、「う~ん」と唸ってしまいたくなるんですよね。
悪いクルマではないけれど、これに600万円出すんだったら私はほかのクルマを買うと思います。
2点私の中で大きく気になったことがあり、まず第一はシートです。どんなに装備がよくてもシートがしっくりこないとダメですね。ステアリングやペダルの配置もそうです。クラウンの場合ステアリングにも問題はあり、そちらまだ我慢できるとしても、シートがいまいち自分にはしっくりきませんでした。安全装備やコネクティッド機能も大切ですが、私の中ではクルマとして基本的な部分がきちんと出来ていることがまず第一です。
もう一つは私のように1980年代からクルマ好きとして過ごしてきた人間には、昔のクラウンのイメージが染みついていて、「これがクラウン?」と思ってしまうところです。1983年にデビューした7代目のクラウンは「いつかはクラウン」のキャッチコピーが似合うクルマでした。石畳の道の凹凸をサスペンションが吸収してボディをフラットに保って走るコマーシャルでの姿は今でも忘れられません。私の中ではゆったりとした動きのサスペンションによる乗り心地、鬼のような静粛性、応接室のようなシート、直線基調のインパネ、電動で動く空調吹き出し口などがクラウンに対するイメージであり、クラウンらしいと感じられるところなのです。対して新型にはそういった私がクラウンらしいと感じられる部分がほとんどないのです。「このクルマだったら、別にほかの車名で出してもいいんじゃないの?」と思ったのが正直なところです。
下の写真は7代目クラウン
トヨタとしてはユーザー層の若返りを図って数を売りたいのでしょうが、無理に変える必要があるのかと思ってしまいます。最新の予防安全技術やコネクティッド機能を装備しつつも、デザインは昔のおじさんくさいまんまが、クラウンらしくていいんじゃないかと思いました。