4月19日(金)午後0時25分頃、東京都豊島区東池袋で乗用車が暴走し母子2人が死亡、10人が負傷するという痛ましい事故が起きました。
…事故現場は私が高校生時代からよく遊びに行っていた『サンシャインシティ』からも近く、普段からよくクルマでも走る場所でもあり、しかも重大事故が起こるような場所でもないので、報道を目にしたときには大きなショックを受けました。
…乗用車を運転していた旧通商産業省工業技術院の元院長飯塚幸三被疑者は『87歳』という高齢に加え、日常生活にも支障をきたすほどの下半身の衰えがあったとのこと。
…ネットでの情報によると、『瑞宝重光章』(旧勲二等瑞宝章)なる勲章を受勲された被疑者の老人は、衰えた身体能力とは裏腹に元官僚としての『保身能力』はまったく衰えておらず、事故を起こしたにもかかわらず被害者の救護もしなければ警察や消防への通報もせず、車内から自身の息子へ電話し、自身のTwitterやFacebookのアカウント、経済産業省の受勲ページの削除依頼をし、自宅電話番号を変更、Googleストリートビューの画像にもモザイクをかけるなど、自身の犯した罪の重大さは認識しているようです。
…しかし『アクセルが戻らなかった』と事故をクルマのせいにしていることや、事故から一週間以上経過しているにもかかわらず、本人や当時同乗していた妻や家族の誰一人として被害者や被害者家族の方々へ『謝罪』のコメントすら出していないことに違和感を覚えるのは私だけではないはずです。
…今回の事故を機に『高齢者は強制的に運転免許証を取り上げるべきだ』という意見を耳にしますが、残念ながら難しいと思います。
…運転免許証は『国家資格』であり、一定の年齢に達したからといってその資格を剥奪することは、憲法違反の可能性もあり、現実的ではありません。
…ただ、65歳以上のドライバーの更新期間を短縮(例えば一年毎)したり、更新を講習などでの自動更新ではなく、運転免許証取得時と同じ『学科試験』『実技試験』とし、知識や技能が満たされていない場合は『更新不可』とすることは出来ると思います。
…それでも免許証を更新出来なかった高齢者が『無免許』で運転をしてしまう可能性は残りますが。
…『高齢者には任意保険料を倍額にして、クルマを所有しづらくさせるべき』という意見も耳にしますが、これはまったく無意味であり、逆効果だと思います。
…厚生労働省の調査によると、高齢者世帯の貯蓄額は全世帯の平均貯蓄額(1033万円)よりも多く(1224万円)、クルマの任意保険料を増額しても経済的な負担になりにくく、仮に負担になったとしても支払いが困難な高齢者の『無保険運転』を助長することにもなりかねません。
…『高齢者には被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)などの安全装備の装着されたクルマを義務付けるべきだ』という意見も聞きますが、これも私はあまり意味がないと思います。
…『被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)』については自動車メーカーのマズイ宣伝もあり、万能であるかのように誤解されている方も多いのですが、ブレーキと間違えてアクセルを踏み込んだ状態では『被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ) 』は作動しません。
…『被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)』はあくまでもドライバーが前方の障害物に気付かない状態で作動するものであり、『機械の誤作動』を防ぐために『被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)』が作動している状態でアクセルを踏めば、『被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)』は解除されます。
…これは2018年2月18日、東京都港区白金で元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士(79歳)が最新の安全装備が装着されている新型『レクサスLS500』で暴走し、歩行者の男性(37歳)をはねて死亡させた事故を見ても明らかです。
…ちなみにこの元東京地検特捜部長も79歳という『高齢運転者』であり、クルマが勝手に暴走したと『自身の責任を認めず』、書類送検という形で『逮捕されず』、瑞宝重光章という『勲章の受勲者』という、元通商産業省工業技術院長の老人との『奇妙な共通点』があります。
…『高齢者はオートマチック車ではなく、マニュアル車に乗るべきだ』という意見は必ず出て来ますが、個人的にはマニュアル車を2台所有する者として、この意見は一考に値すると思っています。
…オートマチック車が90%以上普及している日本やアメリカより、今でもマニュアル車が普及しているEUでは『踏み間違い事故』が圧倒的に少ないと聞きます。
…メルセデスやBMW、アウディやジャガーなどのプレミアムメーカーのクルマは圧倒的にオートマチック車が多いのですが、大衆車クラスではマニュアル車が一般的です。
…ただ、これはEUの人々が『安全意識が高い』のではなく、マニュアル車の方がオートマチック車よりも『安い』からであり、ガソリン車よりも圧倒的に燃料が安いディーゼル車を好む点からも、合理主義的なEU人の性格が垣間見えます。
…ただ、残念ながら日本国内での新車販売台数のオートマチック車普及率は『99%』に近いので、マニュアル車を選ぶのはほぼ不可能な状態です。
…自動車メーカーも日本国内でマニュアル車を販売しないのは『商売にならないから』であって、オートマチック車が重宝される現状では、マニュアル車を高齢者に普及させるのは難しいでしょう。
…結局は個々の『自覚』と『決断』に委せるしかないのが今の現状です。
…高齢者は認知機能が衰えているという自覚を持ち、免許証を返納する、運転を止めるという決断をすべきであるし、高齢者以外の世代も『いつ事故を起こすか分からない』という自覚と、運転中は運転に集中をし、スマホなどは弄らない、手の届かないところへ置いておくなどの決断が必要です。
…『クルマが存在する限り、事故はなくならない』という意見を目にしますが、たしかにそうかもしれません。
…ただ、少なくとも今回の池袋暴走事故については、被疑者である87歳の老人の『自覚』と『決断』があれば絶対に起こりえなかった事故であり、母子2人の尊い命が失われることは絶対になかったと思うのです。
…これだけ『クルマ』が人間の生活に欠かせなくなった以上、クルマをなくすというのは『火事を恐れて火を使わない』ようなものだと思います。
…でも我々はどんな理由があっても『火事』を出してはいけないし、『事故』を起こしてはいけないのです。
…『高齢者よりも若年層の方が統計的に見ても死亡事故が多いのだから、高齢者だけ狙い打ちするのはナンセンスだ』と言われるかもしれません。
…確かに『運転免許を保有する人10万人あたりの死亡事故の件数』では『16~24歳』のほうが『65歳以上』よりも多いのは事実です。
…ただ、あと10年もすれば、この統計は逆転すると私は思っています。
…若年層の『クルマ離れ』がますます加速し、高齢者はますます増えて、意固地な年寄りが増えることでしょう。
…クルマを運転する人全てが、今回の暴走事故を『自分のこと』として捉え、『絶対に事故を起こさない』という強い気持ちを持って運転をして欲しいと思います。
…誰しも被害者や加害者になる可能性があるし、みんないずれは『高齢者』となるのですから。
…この事故で妻と娘を失ってしまった男性の会見…これを見て一人でも多くの方に『クルマの運転』というものを考えていただきたいと思います。
…クルマはとても楽しいし便利なモノですが、使い方を誤ると取り返しがつかなくなるモノでもあるのです。
…もし『クルマには事故はつきものだ』と思っている人がいたら、その人はすぐにその考えを改めていただきたいと思います。
…もしかしたら次の加害者はあなたかもしれないし、被害者はあなたの大切な人かもしれないのですから。
…最後に、今回の事故で亡くなった母子のご冥福を祈るとともに、被害に遭われた方々が一日も早く平穏な日々が過ごせることを願って止みません。