
自分用のパソコンの ThinkPad T60 が壊れて、引き取り修理となりました(泣)。夏休み中で久しぶりにパソコンの掃除でもするかと、拭いたり、埃を飛ばしたりしていたら、元々、調子がおかしかった冷却ファンのとどめをさした格好になりました(元々T60 は、冷却ファンに弱点があり、交換が必要になったとの報告が Net上でも報告されていました。私自身もこれで2回目)。有償のため、これから見積もりですが、修理代はいったいいくらかかるのやら...
ということで、しばらくの間は、ブログもカミさんの年代ものの ノートPC からということになります。慣れないので入力しにくいし、それまで撮りためてきた写真も使えないしで、更新頻度や内容に影響を与えるかもしれません。ご容赦ください。
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とまあここで終わっても愛想ないので、この機会に ThinkPad の話題を一つ。
先のブログに書きましたが、もともと Mac ユーザーであった私が、2000年に Win-PC に乗り換えるきっかけになったのが、ThinkPad の存在を知ったからでした。Mac に比して Win-PC の世界は没個性でつまらないものしかないのではと勝手に思っていましたが当時の ThinkPad には、確かに人を引きつける魅力が感じられました。
以下、思いつくままにリストしてみますが、
・PC の創始者である IBM のブランド力と大和研究所(日本)の優秀設計開発スタッフの連携の妙
・グローバルなスケールで商品開発を行っている為、骨太の商品企画
・デザインの基本は変わらない(黒、松花堂弁当のイメージの筐体、7段キーボート、トラックポイント)
・一方で、常に先進性を追及(拡張キーボート、セキュリティ機能のハードウエアへの組み込み)
・ドックや交換可能な各種ドライブ等の充実など拡張性に優れる
・基盤、回路設計はオーソドックスながら、部品の選択にはにこだわり(共振防止の為、コンデンサの相性までこだわったとか)
・強度を重視した材料選択(マグネシウム合金、カーボンファイバーなど)とそれを反映した、独特の高級感、いいもの感があふれる外観の品質
・トーチャーテストによる過酷条件や長期間使用等、耐久力に優れた設計
・7列キーボートやトラックポイントなど、ビジネス用途を重視
・充実したサポート体制(ソフトウェアの更新サービス)、国際レベル、部品レベルでの高度な修理体制の構築
・取り扱いマニュアルが入手可能で、ユーザーレベルでの部品交換も視野に入る
ただし、その分他のメーカーの PC に比べて割高であり、フラッグシップモデルだと100万円近くしたように記憶しています。当時のラインのアップは量販店向けの iシリーズ を除くと、大筋こんな感じでした。
据付タイプ:770 → Aシリーズ
モバイル(重):600 → Tシリーズ
モバイル(中):560 → Xシリーズ
モバイル(軽):240 → Sシリーズ
特に、600 から T20 に繋がる、ハイスペックモバイルノートのシリーズは2スピンドルでありながら、可搬性(軽量)と高機能と更に耐久性、高級感を兼ね備えた、当時には確かに他のメーカーのノートPCには見られない、独自の輝きがあり、傑作ノートの名に恥じないものであったと思います。いろいろと検討し、T21 を購入して、初めて触ったさいには、その軽さと薄い筐体に機能を詰め込んであるにもかかわらず、しなりやたわみの全くないことに感動したことを思い出します。
T21 については6年間、次に T60 に買い換えて5年間使用して現在に至ってます。
(並行して、カミさん用に600中古、義親用にR20eを購入)。
さて、最近の ThinkPad については、どうでしょうか?
最も大きな変化は、IBM がPC事業を中国企業であるレノボに売却したことでしょうか。しかし、これについては開発拠点(大和研究所など)やサービス体制には当面の変更がなされなかったため、特段大きな変化として(個人的には)捉えたわけではありませんでした。
しかし、現在の ThinkPad が昔のような魅力をもっているのかというと、そうではないように感じています。はっきりとその理由について掘り下げて考えてみたわけではないのですが、
・PC の技術レベル水準が向上し、ThinkPad も進歩し続けてはいるが、機能面で他のメーカーと明確に差別化できる程のアドバンテージを持つ事が難しくなった。
・あるいは利点実現は可能ではあるが、その為に必要な投資とそれに見合う販売価格の上乗せが実現できるメリットに対して、説得力を持たない状況になっている。
ようは ASUS などの廉価 PC と共通の部品と OS を使いながら、基盤設計、アッセンブリ、筐体設計のみで、価格はそれほど割高にならず、明確に差別化できる製品を作るのが難しくなったということかと思います。さらに ThinkPad の場合、IBM が引き続き請け負っている強力なサポート体制のコストも乗ってくるのですから、なおさらかと思います。
いわゆる「右の壁」に近づいた状況で、では明日にどのような展望があるのでしょうか?その一つの可能性としては、過去に Win-PC 陣営に敗れ去った Mac が再び注目されているのだと思います。Apple 独占でハードウエアとソフトウェアと独占して開発していることが、この差別化の難しい状況の中で、明確に他社と差別化できるアドバンテージを提案できることにつながっており、現状では他社と比較して独自のポジションを確保できている唯一のメーカーではないかと思います。
ということで、個人的には PC の世界においても、少なくとも個人用 PC については、今後 Win-PC から Mac への流れは加速する事はあっても、停滞あるいは逆流することは当面ないだろうと勝手に推察しています (ただでさえ1人勝ち状態のAppleではありますが)。私もそんな訳で、ThinkPad を長年使い続けてきましたが、次の PC は某 Mac に乗り換えてもいいかな、と考えている次第です。
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と、後半はやや辛口になってしまいましたが、ThinkPad について私が考えていることなどを話題にしてみましたが、如何でしたでしょうか?
One More Thing で、「みんカラ」のブログらしく、最後はクルマの話題に強引に振って終わりにしたいと思います(笑)。上に書いたような、製品としての PC 業界の現状は、クルマ業界の未来を占う側面があるのかもしれません。OS、主要部品(チップ、記憶装置など)、デバイス等の共通化が進み、各 PC メーカーはそれをどう組み立てるか、というところで勝負するという世界です。クルマ業界についても、車台、エンジン、トランスミッション等は共通化が徐々に進行中です。そうなると、どうやって魅力的なクルマを開発していけば良いのでしょうか?
・Apple のような、路線がクルマ業界においても可能なのでしょうか?現在進行形の動力系の革新がそれに相当するのでしょうか?
・それ以外に差別化にはどんなやり方があるのでしょうか(例えば、パナソニックのようにビジネス、モバイルといったように特定の技術分野で他社に比べて格段の特長を示すなど)
・クルマ単独、さらにはハードウェア以外の部分、例えばデリバリー、サポート、サービス等の位置づけや、そこでの他社との差別化の方策はあるのでしょうか?
PC業界の教訓や経験は、クルマ業界においても貴重なものになるのかもしれません。
興味深いところです。