
愛車Eunos500と同年式の我がオートバイ。
1年落ちで買ったから、かれこれ14年目である。
一昨年、後期型のエンジンとフロント周りを共にオーバーホール換装したので、フレームとタンク以外は全て交換済みになってしまったが、トータル走行距離は10万キロを超えている。
「何で乗り換えないの?おカネもかかるでしょ?」と聞かれるが、乗り換えない理由は、これだけ乗っても発見が多いこと以外に、「お金をかけずに直してしまうメカ」の存在が大きい。
このメカは継いだ家業で苦労をしながらクルマやバイクに乗りつづけたためか、とにかく「直して乗り続ける」という技術を持っている。エンジンに関してはクルマ・バイク以外にも航空機からタンカーに至るまで造詣が深い。もちろん、車庫の中で大事に保管するのではなく、峠やサーキットで走らせても大丈夫なレベルに、だ。
最低でも10年、20、30万キロを低コストで維持するには、交換部品などに関しても独自の理論がある。例えば部品をオーバーホールする場合、普通はブッシュ類を全て交換するものだが、それはしない。必要である部分のみを交換し、場合によっては全く別の用途のものを加工して利用する。
以前、3万キロでブレーキのオーバーホールを頼み、シールキットを一式を持ち込んだが、オイルシールは使わないという。高い部品でもないので交換しておけばいいじゃないか、と言えば、せっかくなじんだモノを変えるのはモッタイナイと。ダストシールは浮き上がっているので交換するが、オイルシールの場合はフルード(油)に接しているので劣化は遅いというのだ。
このメカは、新車で買ってきたクルマなどはゴム部品の劣化を防ぐため、様々な処置を施す。アッパーマウントなどはシリコン系シーラントで充填して塞いでしまったり、ピロボールやシリンダなどの擦動部品はグリスアップしてカバーを被せてしまう。カバーと言っても出来合いのモノはないし、特注で作ると高いので、オイルのボトルとか、耐熱ビニール系の容器だったりする。見た目は当然悪くなるが、これによって多くの部品の太陽年寸は推奨交換時期の数倍である。最近のオイルは非常によいので、切らさなければかなりもつんだよね、と笑う。
私のオートバイもフロントフォークにオフロード車用のブーツが被せてもらった。レトロ車ならまだしも、カウル付きのロードモデルなので、気が付いた人にはジロジロと見られる、が、これは猛烈に効いた。4万キロ走ってオイル漏れは皆無どころか、ダストシールを省略できたので、ビギニングの動きもスムーズである。そもそも車体前方にシリンダー構造が剥き出しでさらされている事がおかしいそうで、汚れは必ず付くし、小さな跳石一発でダメになる部分。いまどきのロードモデルにブーツが付かなくなったのは、舗装路面が多くなったことと、デザイン上の理由だろう。
その他、ウィークポイントであるブレーキに関しても相談したことがある。重量の割には絶対制動力が足りないからだ。普通のショップであれば、大径ディスクとハイグレードなキャリパ、さらに大径マスターシリンダーという組み合わせで、20万円コースになるはずだ。しかし、とりあえず5,000円出せと言う。『ある方法』が実験済みだというのだ。
やり方は簡単で、キャリパー・ブロックの内部を削ってステンレス板を挟むだけである。
ブレーキ時にパッドはピストンでローターに押しつけられるが、この時に鉄製のブレーキパッド・バックプレートはディスクの回転方向に巻き込まれ、キャリパ本体に押し付けられる。これを数万キロと繰り返していればアルミのキャリパ・ブロックは段付磨耗する。磨耗すれば引っかかるわけで、引きずったり、ローターに押し付けるために多くの圧力を必要とすることになる。
パッドがスムーズに動くよう、バックプレートを面取りするのは知られているが、それでも相手はアルミ。数万キロも押されれば痩せてしまう。また、場所が場所だけにグリスも塗れない。だったら。バックプレートが押しつけられる所に堅いステンレス板を仕込めばいい、と考えたそうだ。同時にマスターシリンダー径を大きくした方がいいかと聞いたら、それはお金がかかるからヤメようという。メインの作業はマスター中のシリンダーとピストンをピカピカに磨き上げることだった。
キャリパとマスタ、両方の内部擦動部分を徹底的に動きやすくしただけで、外見はヤレたノーマル部品。しかし、その効果は笑いが止まらないほどだった。(しばらくして後輩の同型車に乗り換えたら、芦ノ湖に転落しそうになったほどだ)制動力はもちろん、バンクスピードやタイミングを調整するリリース操作が驚くほどスムーズになったのである。
「当たり前の事をしているだけ」と言う。じゃぁ、レーシングマシンが使うパーツにはこういう処理がされているのかと聞くと、あれはレースの距離だけ走ればいい「使い捨て」なので、磨きはしても特殊加工なんてしないんじゃないかなぁ、と。ショップは手間がかかってカネにならないことはやらないだろうし場所だけに独自の加工はリスクもある。高価なパーツをポン付けで売ったほうがカネになるし、客も見栄えが良くなるほうがいい。と。
では、メーカーがなぜやらないのかと聞けば、やらなくてもレースでもない限り十分に止まるし、ねじ1本、パイプ1mm削ってナンボの競争下だから、過剰品質でわざわざコストが上がることはやらない。それに今どきは10万キロ以上乗る人とかは少ないでしょ。必要ない。と言う。
メーカーが新車を次々と売るためには、長持ちするクルマはタブーでもあるかもしれない。せいぜい5万キロで売られるようにガタが出始める。万が一、しつこく乗られても大きな問題にならないような仕掛け。メカと話していると、意図的に作られたそんなものの存在が見えてくる。
(つづく)
Posted at 2006/11/07 23:51:57 | |
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機械いぢり | 日記