
私がフリーで活動を始めた時に感じたのは、石川啄木が詠ったあの短歌である。
体調不良もなんのその。健康診断も受けず、寝る間も削って一生懸命頑張ったのに、役所から届いたのはガッカリするほどの内容が書かれた『納付額』の決定通知だった。
いろいろとアドバイスをくれる先輩達がいた。『節税対策』である。中小・零細どころか、大企業でもいろいろやらないと儲からんのよ、と1人の先輩は言うわけで、それを全て真に受けて行えば本業が何なのかもよくわからなくなるほどでもある。あくまで『節税』であり『脱税』じゃない、のだそうだ。
皆が口を揃えて恐がるのは『マルサ』であって、いろいろな噂がある。電話帳からランダムにやる場合と、査察官1人当たり50万円以上/1日のメドが立つ裏を取ってから、などだが、どちらにせよあの連中は「おみやげ」を持たないと帰らないという。知人の経営者もクソ忙しいときに入られ、あわてて商工会から紹介された税理士を呼んだら裏でボソボソと話し合い、それが終わるとこっちにきて「じゃ、今回は、この追徴額(約150万ほど)を納めてください。」と、当たり前のように言ったそうだ。後々で知ったそうだが、商工会から紹介される会計士は税務署とのつながりもあるケースが多いようで、弁護士のように徹底して戦うことはないそうである、もちろん、翌年には別の税理士に切り替えたそうだ。
少し前、フェンダーの爪折りの事が気になり、HPで宣伝していた大手某店で聞いてみた。すると「ウチではできません」と言われてしまった。HPの更新が遅れていてそのままになっているけれど、最近になって厳しくなったのだと言う。「ウチは認証工場なので違法改造に関わるような作業はダメなんです。」だそうで、ツメ折り機も処分したそうだ。
最近、その理由がわかった。
『ペーパー車検』というものがある。陸運局のラインでは並んだだけでアウトになるような車両でも、民間の認証工場でハンコさえ押してもらえれば、それは車検に適合したことになってしまうのだ。893な人がやってきて「車検通したいんだけど、1分ぐらいでヨロシクな、」と言われるケースもあるのだとか。また、割高だけど、その手の車両を専門に行う業者もいたのを知っている。
ひどいクルマを販売する店は陸運局に通報が入る。査察官とて役所仕事。とりあえずは行って調査をしなければならないのだ。場合によっては業務停止命令が出るのだが、悪質な店ほどその筋も関わっているので、監査が入る日にはそのテの人も来て、マルサも徹底した検査はできないのだ。なので、今まではその手の業者はのうのうと違法改造やペーパー車検を繰り返していた。
しかし数年前、某県で「認証工場潰し」と恐れられた鬼のマルサが異動してきたのだそうだ。893な関係者の恫喝やいやがらせもなんのその、なのだろう。赴任早々、何軒かの店が潰されたそうだ。その噂は県内の認証工場に知れ渡ったのだという。少し前までOKだった『ツメ折り加工』ができなくなったのもこれが理由であり、私が聞いた店は全国展開している大手なので、その辺は徹底させられたのだと思う。
まぁ、壊れた車を売りつけたり、族車を販売しているような店は潰されて当然だと思うのだが、優良な店であっても仕事はやりづらくなるのだそうだ。ある店では提出した書類で『タイヤの残りミゾ:2.0mm』に難癖をつけられたという。限度でる1.7mm以上で問題ないはずなのだが、査察官の言うことには…
「このまま走り続ければ1年後の法定点検では無くなっている可能性が高いではないか。備考欄に『来年○月にタイヤ交換予定』と記載すべきなのだ。それがあなた方の仕事である」。
誰が聞いても理不尽な話だが、お上が『黒』と言ったら『黒』であり、キレたら商売はキレるのである。仰せの通りでございます、と、この場は頭を下げる以外に方法はない。あそこに何を置いてはいけない、ここに何を置かねばならない、と、役所の規定は厳しいそうで、全てのクルマが道交法をきちんと守っていたら大渋滞がおきるように、こちらもそれを全て守っていると仕事などできない。なのでグレーゾーンの整備を行うときは『火気よりも人気に注意』なのだそうである。
Posted at 2006/12/25 12:45:13 | |
トラックバック(0) |
たのしいじだうしゃ | 日記