
先日オフが開かれた大桟橋。
ここには時々、外国の巨大豪華客船がやってくるのです。
3月6日はクイーンエリザベス2世(QE2)、20日はオーロラ号がやってきましたので、見にいきましたよ。仕事ブッチして。何しろ
パイパニックタイタニックや
ヤマト大和よりも大きいのですから。
QE2の時にはね、驚きましたよ。
その大きさじゃないんです。
見物客に。
何しろ平日なんでマジメに働く普通の人は来れないわけで、ご隠居達が数百人。
し
か
も
みんな当たり前のように
デジタル一眼構えてますわ。
ヨドバツカメラの店員に
「お客様、年金はあの世まで持って行けませんし、もうお時間もあまりありませんよ。グッヘッヘ~。」
…と耳打ちされたんでしょうか。キャップ、ベスト、三脚、バッグなどなど、何だかよくわかんないけど、とりあえずタンス預金でまとめて買い揃えたような豪華フル装備。まるで戦争に行くみたいです。(きっと中には出兵時の事を思い出した方もいるでしょう)
しかし、そんなお達者な爺さんならまだしも、
巣鴨にいるようなオバちゃんがですね、Nikon D200にブッ太いレンズつけて、連写しとるわけです。驚愕。
戦後の食糧事情を生き抜いた人達だからでしょうか、パパラッツィもビックリな位に人のファインダーの中に割り込んできます。
で、周辺を海上から見渡せる観光船にも乗り込んでくるわけですが、
齢65以上の肉体がSWATみたいな動きで右に左にと、
ドリフだったら船が転覆しそうなくらいに動きまわります。
私、カメラは好きなんですけど、こういうのを見てしまうと、シャッター切れなくなるんです。
阿藤海になってしまうのですわ。
QE2見物はそんなでしたが、一応、オーロラも見てきました。
ですが、
今回はデジカメは持っていきません。
現地には最新鋭機器で武装した
デジ爺達がゴチャマンといるわけですから、あえて
Leica M3+眼鏡ズマロン35mm。
じじぃ「うほっ!でかいのぅー、広角じゃなきゃ入らんわ。19mm位のヤツだ」
Y「フフッ、19mmが広角だと?何もわかっちゃいないな爺さん」
じじぃ「んん?何だ?チミは?」
Y「19mmなんてのは『超広角』だ。そんなエゲツない玉に頼ってどうする」
じじぃ「何ぃ?この若造が!生意気な事をいいやがって」
Y「便利なモノにばかりに頼るとは昭和の魂も堕ちたものだ。物資不足で戦い、あの紺碧の海に沈んだ英霊達に申し訳ないとは思わないのか!!??」
じじぃ「ぐぅっ…!!!」
Y「…35mm単焦点1本で十分だ。あとは足と頭を使って画角を作る。それが時空の刹那を切り取る『撮影』という作業なのだ。わかったか、じじぃっ!」
じじぃ「…確かに。ワシが間違っておった。高度経済成長の中、ワシの魂はすっかり腐ってしまったーーーっ!!!うう、水島(亡くなった戦友)、許してくれぇぇぇーーーーッ…(かすれるような声で)」
Y「よぅし。わかったらじじぃ、そのNikon D200と超広角ズーム、こっちによこせ。オレが預かる」
…そんな風にならねぇかなぁ…と妄想しながら、パチパチと撮影。デジタルだったらブラケットでドカドカ撮るけど、銀塩なので一枚に気合いが入ります。仕上がりは後日のお楽しみ。それも銀塩の醍醐味。
そして日も暮れ、桟橋の縁で離岸するのを待っていると、目の前にCanonの白玉を構えた人影がドカッと入ってきましたわ。
透き通るような角質層も美しい20代の女性。後ろに束ねた長い黒髪が私の肩口までなびいてきます。
Y「おいおい、姉ちゃん。そういう場所の取り方はよくねぇだろ?」
女「あ…」
Y「いくら美しい写真を撮ったって、そんなデリカシーのない撮り方じゃダメだ。」
女「…すみません」
Y「まぁいいさ。ところで一体、何を撮るんだい?」
女「あ、客船が橋を潜るところを撮ろうと思って…」
Y「へぇ」(と、立ち去ろうとする)
女「…あの!」
Y「?」
女「もしかして、プロのカメラマンさんですか?」
Y「んん?」
女「いえ、なんとなく、そういう雰囲気に見えたんです」
Y「…まぁ、仕事でつまらないモノを撮ることもあるがな」
女「あの、撮り方、教えてもらえませんか?買ったばっかりで、よくわからないんです」
Y「バカ言うな。一日じゃ無理だ」
女「でしたら…お、お友達になって教えてくれませんか。」
そんな風には、絶対にならないだろうなぁ~~~…と妄想を終わらせて立ち去ろうとした時ですわ。
いつの間にか会社帰りの人達や、家族連れなどで桟橋は埋め尽くされています。その真っ暗闇の中に浮かぶ260mの光の塊『オーロラ』が、ゆっくりと滑るように動き出しました。
音楽隊の演奏の中、デッキに身を乗りだした外国人の乗客と、桟橋の見物人が互いに手を振ってます。もちろん、ハイテクカメラ爺達も。
「サヨーナラー!」と船から野太い男の声。
桟橋からは子供の声で
「しーゆー!しーゆー!」
船上には外
国のスーパー金持ち達。桟橋には
日本のヤジウマ庶民。
もう、二度と会う事もないであろう、そんな間柄。
それでもお互い、
相手の国の言葉で贈る別れの挨拶。
デジタルだろうが、銀塩だろうが、写真に収められないモノ。
私は構えていたM3を下ろし、その光景を1人見入っていました。
あっ!コノヤロ!
すごい美しく感動的な終わり方しやがる!と思った皆さん、ご心配なく。
数分後、営業から「大至急連絡欲しい」と伝言が入り、かけたら留守。
寒い桟橋で待てど暮らせど連絡なし。30分後に再びかけたら…
「あー、特に何でもないです。ドコにいるのかなーと思って。」
コロース!ブチコロース!!!!
Posted at 2007/03/23 01:20:29 | |
トラックバック(1) | 日記