愛犬家へ、ハンカチをご用意下さい・・・。

友人のT氏とその愛犬コロンちゃん(ジャーマンシェパード・10才)の話です。
T氏と私は警察犬の競技会でいつも顔を合わせる古い仲間です。
毎年、10月に霧ヶ峰で行われる「日本訓練チャンピオン決定競技会」という
とても大きな大会(毎年千頭くらいの警察犬種の出場)があるのですが、
その大会に自分の愛犬と出ることは、一年の中で大きな目標でもあり、楽しみでもあります。

コロンちゃんは「臭気選別作業」に出場しています。
ところが大会の一ヶ月前くらいにT氏から「コロンの体調が悪い」と電話がありました。
そして大会当日、コロンちゃんの姿を見て愕然としました。
ガリガリに痩せた体、腰(股関節)が異様に膨らんで、とても痛々しいのです。
やっと歩いているという状態でした。「これで本当に大会に出すの?」が私の第一声でした。
いよいよ競技開始。
10ｍ先の選別台まで行くのがやっとのコロンちゃんの姿を見た観客からは
「可哀想・・」という声が聞こえてきました。

一回目・・見事成功(一分以内というタイムぎりぎり)
二回目・・これも成功(タイムぎりぎり)このあたりから、観客の声も声援に変わってきました。
あと一回成功ならストレートで決勝進出です。三回目・・残念なことに、コロンちゃんの力も尽き、
選別台の前で止まってしまいました。
「コロン、もういいよ・・戻っておいで」T氏が声をかけました。
その声は嗚咽で震えていました。T氏は泣いていたのです。その時、気が付きました。
これはT氏がコロンちゃんに、競技犬として引退の花道を作ってあげているんだと・・。
四回目もタイムオーバー。でもコロンちゃんとT氏に、
ストレートを出した犬よりも大きな拍手が沸き起こりました。
私もT氏も感動で涙でグチャグチャになりました。

人知れず引退して行く競技犬。たとえ立派な成績が残せなかったとしても、
飼い主と一緒に駆け抜けた年月は宝物です。
それから約一カ月後の11月10日の朝にコロンちゃんは永眠しました。
長い間、お疲れ様でした。そしてたくさんの夢をありがとう。



コレはＮＨＫスペシャル・ドラマの公式ＨＰに設けられた「あなたの愛犬との絆」という投稿ブログに紹介された投稿です。

Ｔさんのご友人が投稿されました。

このコロン、実は私の昔からのお客さんＴさんの愛犬なんです。
いつも治療に来る時、一緒に車に乗ってきて、大人しくご主人が戻るのをじっと待っているとっても賢くて優しい目をした愛犬なんです。
ウチの子供が手を出しても決して唸ったり噛んだりしません。

いつも「これから訓練に行くんだ。」と言ってました。
Ｔさんは今は定年になりましたが、元警察官。
家族ぐるみでスキーへ行ったりと、亡き父の友人でもあります。
自分の子供達にも凄く厳しく、昔から怖いおじさんでした。

Ｔさんは自宅でシェパードを飼いながら、警察犬の競技会にコロンと一緒に頑張ってきました。

このコロン、子犬の時、警察犬の適正検査に不合格になった犬なんです。
そんな落第コロンをＴさんは一生懸命１から教えて、立派な公式警察犬にも負けない優秀な警察犬に育てました。
誇らしかったと思います。

この間、治療に来られたＴさんが「コロンが逝っちゃったよ・・。」と寂しそうに呟いていました。
悪性腫瘍だったそうです。。
同じ愛犬家として可哀想だと思ったけれど、こういう物語があったのは初めて知りました。。

この投稿を見たいとＴさんが言うのでＰＣで開き、Ｔさんの携帯へ転送してあげました。
Ｔさん、転送された携帯メール読みながら泣いていました。。
あのおっかないＴさんが泣いている・・・・私も泣きました。

この投稿を見て改めてＴさんの悲しみ、悔しさ、どれだけコロンを愛していたか・・。
志半ばで終わってしまった二人の時間。
二人で頑張った濃密な時間を思うと涙が止まりませんでした。。

愛犬を家族というと笑う人がいます。
それは人それぞれ。
でもＴさんとコロンはパートナーであり、同志であったと思います。
決して可哀想な犬ではありません！

私も２匹の愛犬がいます。
言葉はしゃべりませんが、透き通るような目でちゃんと感情を訴えます！
そして、飼主を全力で愛してくれます。
コロンは幸せだったと思います。

Ｔさんは今、再び幼いシェパードと訓練を始めました。
コロンとのたくさんの思い出と一緒に。

世の中に、犬を主役とする多くの感動ドラマがありますが、ホンモノの絆に勝てるものはありません。
コロン！お疲れ様、よ～く頑張ったねぇ～♪
天国でゆっくり休んで下さい。。


よかったら感想を聞かせて下さい。