
「オートモビルカウンシル2017」観覧記、今回で最終回。我らが日本車です。
世界トップクラスの地位を築いた日本車ですが、それまでには長い研鑽の時代がありました。その研鑽の時代、欧米車と比べても決して劣っていないものもあります。会場にはそんな日本車がたくさんありました。トヨタ、日産、マツダ、スバルがそれぞれメーカーブースを構えていました。
== トヨタ ==
プリウス(1997年)

トヨタは、ブースのもっとも目立つところにピカピカの初代プリウスを置いていました。トヨタのテーマはハイブリッドの歴史。自動車の黎明期から現代までの、自動車の動力源をめぐる歴史の勉強にもなりました。さすがトヨタはまじめです。もうちょっと気を抜いても良いと思うんですけどね(笑)

このプリウスは本当に綺麗でした。

登場時、外観以上にこのインパネが新鮮だったかと。

中央席への3点式シートベルト採用はトヨタの良心。当時、少なくとも他の同クラスの日本車にこの装備を持つ車はなかったはずです。日本車全体でも、他には2代目セルシオか、出たばかりの新型センチュリーくらいかな?

おそらく「トヨタ博物館」の展示車両を持ってきたのでしょうか。愛知に行く機会があったら、立ち寄りたいです。
スポーツ800(1977年)

ナンバープレートに「GT HYBD CAR」とありますが…

これは「ガスタービン・ハイブリッド」のこと!グランツーリスモではなく、ガスタービン。第22回東京モーターショー出品車だそうです。

トヨタのガスタービンエンジン試作車といえば「GTV」ってありましたよね。それは知っていたのですが、ヨタハチにこんな車があったとは知りませんでした。

今、トヨタのハイブリッドカーがこれだけ市民権を得ているのは、それ相応の努力と準備があったからなのですね!
ハイブリッドのレーシングカーも。
TOYOTA GAZOO Racing TS050 HYBRID(2017年)

…正直、非常に鈍重に見えます。速いレーシングカーとは、見た目からして速いというのが定説ではないでしょうか…
== 日産 ==
ダットサン・ロードスター(1935年)

日産は、1933年12月の会社設立からわずか2年足らずでこの車を量産しています。たいしたものだと思います。
戦後も、短い時間でオースティンのノックダウン生産および純国産化に成功しています。
【日産 オースティンA40サマーセット】

7年前、日産本社ロビーに展示されていた時の写真です。
プリンス・スカイラインスポーツ・クーペ(1960年)

プリンスの残照。
このクーペは去年、横浜のグローバル本社ギャラリーでも展示されていましたが、それ以降にも再度レストアを実施したそうで、さらに美しくなっています!

当時のショーモデルに近づけるためか(実際、この車はプロトタイプでありショーモデルでもありました)、フェンダーミラーが撤去されています。
同時代の欧米車と比べても、決して引けを取らないと思います。ただ、腰高なのは仕方ないですね…

堂々としたフロントマスクと、伸びやかなリアエンド。モダンなデザインはイタリアのミケロッティによるものですが、車の雰囲気にどこかアメリカ車っぽさも感じます。
シルビア(1966年)

間近で見てまず感じたのは「小さい!」ということ。
それもそのはず、車幅は1.5mちょっと。全長は4mに達しません。タイヤがずいぶん大きく見えます。

車高も低く、フロントウインカーなんてバンパーに隠れて見えないんじゃないかと思ったほど。

でも、とても綺麗な車です。後ろ姿なんて特に良い。

この三角形のリアサイドウィンドウがカッコイイですよね。
Vmotion 2.0(1966年)

日産ブースにはこんなコンセプトカーもありました。

「将来のセダンを示唆する」とのことですので、今後の日産セダンはこんな感じになる?

ちょっとあちこち「どこかで見たような?」感があるのが残念でした。特にリアは今度出る新型レクサスLSとアウディを足したよう。
スカイライン GTX-E(1973年)

こちらのケンメリスカイラインは、なんと820万円以上の値札を下げていました。GT-Rならともかく、いくらなんでもちょっと高すぎでしょう。
フェアレディ 240Z(1973年)

フロントノーズが長い!(笑)
この車は私が子供の頃から「前が長い車」ってことで有名でした(笑)
スポーツカーにマルーンのボディカラーの組み合わせって、良く考えたら凄いです。センスが良いですよね。今は塗装技術も上がっているのだから、もっと派手で綺麗な色の車が増えても良いと思います。
ダットサン・フェアレディ 1500(1964年)

ふと思ったのですが、上の240Zとこのダットサン・フェアレディは年式で言えば9年しか離れていないんですね。当時の日本車の進歩は凄かったんですね…
もちろん今でも9年前の車と最新型とでは、燃費や安全性の面でずいぶん違いますが、少なくとも見た目や使い勝手はさほど変わらないでしょう。
オーテック・ザガート・ステルビオ

年式に「1997」とありますが、これは間違いでは?
この車が製造販売されていたのは、もっと前(1989~1990年代前半)のはず。それとも本当に1997年製なのでしょうか。

隣のシャマルにも負けない存在感!

この車のリアスタイルってどんなのか知らなかったのでよく見てみました。

内装は豪華!なんだかマセラティみたい。ピンぼけしていますが、独特の形をしたフェンダーミラーが見えます。これ、見やすいんでしょうか?(笑)

ヘッドレスト一体式のシート。寝心地がよさそう。

2点式の後席シートベルトに時代を感じます。
== ホンダ ==
NSX(1989年)

初代NSX、NSX-R、新型NSXが揃い踏み!
シンプルですが、この展示は非常に良かったです。アウディもそうでしたが、一車種に絞るというのもひとつの手だな、と。

初代NSXのリアってなんだかとてもアメリカンじゃないですか?カッコイイです。

横いっぱいに一文字に光るLEDハイマウントストップランプが、当時はとても斬新かつ贅沢に見えました。
NSX-R(2002年)

リトラクタブルヘッドライト廃止のためとはいえ、このフロントは当時とても残念に思えたものでした。

でも今見ると、別に悪くないんですよね(笑)
NSX(2017年)

価格も性能も大幅に上がった新型NSX。旧NSXは街中で今なお見ますが(近所に赤い初期型NSXがいて、時々見かけます)、新型はそうそう見ないだろうな……
……と思っていたら、帰りの幕張メッセ駐車場で見かけました(笑)
お金持ちぃ!(笑)
クーペ9(1970年)

ホンダ1300のクーペ版?実は良く知らないのですが、残存数が非常に少ないそうで、私も見かけた記憶がありません。

ポンティアックっぽいフロントマスクはコッテリしていますが、リアスタイルはシンプルでとても良いと思います。

当時のFF車は、このくらいペダルが寄っているのが普通なのでしょうね。
== スバル ==

スバルは、
前回は中島飛行機時代の戦闘機用エンジンである「栄」を展示し、非常に挑戦的で素晴らしいブースを構えていました。
ただし今回は「アイサイト」など安全をアピール。正直、平凡な展示でした。去年と比べ、文字通りの「安全運転」(笑)
アイサイトはもちろん素晴らしい安全技術ですが、それは近所のディーラーでも知ることができるわけです。それをここで展示されても…
スバル1000がありましたが、これは去年も展示されていたかと。どうせなら初代レガシィやアルシオーネあたりを持ってきてくれたら大人気だったのでは?
とはいえスバル360の初期型をじっくり見ることができたのは収穫でした。

この車は見るからに質素。あれ?前輪にホイールキャップがない??

左右の小さな丸いランプはウインカー&テールライトで、ブレーキング時はナンバー灯部分の赤いレンズが光るようです。
360 ヤングSS(1969年)

こちらはショップ出展車。後期型になってリアランプも大きくなりました。前期型とはずいぶん印象が違います。ちらっと見えますが、お値段260万円です。

ドアを開けるとタイヤが見える(汗)

ホンダS660を260万円で買うのと、こっちを買うのとどっちがイイかな!(爆)
== マツダ ==
トリはマツダです。ロータリーエンジンです。トヨタがハイブリッドシステムならこちらはロータリーだ!とばかりにアピール。
去年と比べると、ずいぶんこじんまりとしてしまいましたが(というより去年が充実しすぎw)、それでもマツダのやる気が伝わってきましたね。東京モーターショーの予行演習かというくらい。
コスモ・スポーツ(試作車)(1966年)

コスモスポーツのプロトタイプ!

発売前年に造られた47台の試作車。フロントノーズの赤いマツダエンブレムが目を引きます。
ファミリア・プレストロータリークーペ(1970年)

ロータリーエンジンを、当時のマツダは小型車ファミリアから大型車ロードペーサーまで、果てはマイクロバスであるパークウェイにまで搭載しました。軽のシャンテにも積む計画があったといいますから恐れ入ります。フルラインロータリー!それにしてもロータリー積んだ軽自動車…

「尻下がりのデザインは日本で人気が出ない(のでダメなのだ)」とはよく言われますが、本当なんでしょうかね。このプレストロータリークーペもまさに尻下がりですが、とても良いデザインです。
こちらはレース仕様車。
サバンナ RX-7(1978年)

隣の白いコスモには、並べば乗り込むこともできたのですが、あまりの長蛇の列に早々にあきらめ、緑のサバンナを見ていました(笑)

外観もそうですが、この内装は非常にヨーロッパ風ですね。マツダのデザインは昔から欧州志向が強かったのですね。
RX-7 タイプR(1992年)

ショップ展示車。この有機的なデザインは今なお魅力的です。
787B(1991年 ル・マン優勝車)

最後はマツダブースのこの名車を。

このル・マン優勝のことは、私も覚えています!
まさに、「栄光のル・マン」!
マツダがロータリーエンジンを販売中止しずいぶん経ちます。今やマツダのエンジンといえばクリーンディーゼル。マツダロータリーはもはや過去の遺産か。
仕方ないことだとはいえ、マツダがあれだけ苦労して造り上げたロータリーエンジンをこのままお蔵入りさせて、本当に良いのでしょうか?良いわけないでしょう!!
今後、
ロータリーを積んだスポーツモデルを出すという話もありますね…期待したいところです。
「オートモビルカウンシル2017」観覧記、最終回・日本車編は以上となります。
最初に、日本車は「世界トップクラス」だと書きました。もちろんそれは今後も維持してゆかねばなりません。しかし、その地位は誰かが保証しているわけでもありません。
例えば、性能的にもデザイン面でも文字通り「世界の指導者」だったアメリカ自動車産業。あれだけ世界をリードしていたはずがいつの間にか停滞し、ビッグスリーは「傲慢」と批判されるようになり、日本車との競争にも敗れ、デトロイトは荒廃しました。GMなどは経営が破綻するまでに至りました。
多くの伝統的メーカーが存在し、高級車からスポーツカー、小型車まで世界の多くのメーカーに影響を与え、その栄華を誇ったイギリス自動車産業。日産もお世話になりました。しかし今ではその面影をわずかに残しているのみです。まるで大英帝国の歴史の縮図を見ているよう。
我が国はどうでしょうか。かつて世界のトップだったはずの日本製半導体、家電、携帯電話端末…いつの間にか低迷し、いまや復活の兆しすらありません。もちろん自動車までもがそうなってはいけませんし、そうならないと信じていますが、それにはメーカー自身が今後も真剣に、かつ柔軟に「日本のクルマづくり」を追求していくことが大切だと思います。
堅苦しい話になってしまいました。昨年から始まったオートモビルカウンシル、来年も楽しみです。日本にこのようなイベントができ、なおかつかなりの集客があるというのは、大いに希望が持てることだと思います。