今更ながらの話だが、“後悔先に立たず”という言葉がそのまま当てはまる事例だった。
とにかく今年は色々なアーティストの音源を聴き、あわよくばライヴを観てみたいという欲求が高まり、これまであまり接したことのない音楽ばかり聴いて来たのだ。
その割をくったのがこれまでに聴いていたお気に入りのアーティスト達で、どうしてこの時期にという位立て続けに新作の発表が重なってしまい、最近の私の中での優先順位に従って購入を渋っていたモノが何点かあった。
その一つがデーモン閣下の「MYTHOLOGY」だ。
ここ数年の閣下の活動状況としては、女性ヴォーカリストの楽曲をカヴァーしたアルバムを3年連続で発表し、それに伴うツアーを行うなど精力的に活動しており、勿論私もアルバムも購入しライヴにも足を運んでいた。
しかしながら、流石に何年も同じ企画モノで展開していれば自然と“飽き”も出てくるワケで、私の音楽的趣向もどんどん変化していってしまい、及川“ミッチー”光博を知ってから急速にこれまでのアーティスト達に対してのそれは強くなっていってしまった。
デーモン閣下も残念ながら御多分に漏れずと行った感じで、期間限定で再集結した聖飢魔Ⅱも同様興味が薄れたのは否めない。
だが、ここで誤解の無い様に言っておくが、デーモン閣下は私にとって「世界中で最も好きな巧いヴォーカリストである」ことは間違いなく、それは今までもこれからも変わることのない事実なのだ。
では、何故最近の閣下の音楽に対してズレを感じるのかというと、答えは簡単に出てくる。
昨今の閣下の作品に携わるスゥエーデンミュージシャンのアンダース・リドホルムの存在に他ならない。
一連のカヴァーアルバムでプロデューサーを務め、ギター、キーボード、コーラス等も自ら行い、更には閣下のツアーサポートとして来日までしている程で、閣下にとって今では公私に渡る盟友となった。
物凄く真面目で人間的には良い方で問題はないハズなのだが、彼の作り出すサウンドに私はイマイチ入って行けないのである。
いわゆる王道ともいえるHR/HMのサウンドは嫌いではないのだが、北欧メタルの情緒というか、既に使い古された方法論に辟易しており、その音の中に人間的なモノ、血とか身体が作り出すリズムを感じさせないのだ。
私の耳が受け入れるには温度差があり過ぎた。
確かにデーモン小暮と言えば、聖飢魔ⅡというHR/HMを想起させずにいられないが、閣下の歌の巧さはそれだけではないハズで、もっと他の引き出しを開けて欲しかったのだ。
で、今年の5月に発表となった最新アルバムは久々にオリジナル楽曲満載ということで期待しようと思っていたところ、このアルバムのサウンドプロデュースもアンダースが当然ながら手掛けると知り興味が半減以下になってしまい、発売日を過ぎても、そしてそれに伴うツアーが行われると知ってもなかなか購入するに至らなかったのだ。
そして、発売から半年近くが経過し、痺れを切らせた様にネットで購入した本作が届けられた。
部屋で片付けものでもしながら片手間に聴こうと思い、ラジカセにセットして再生ボタンを押した瞬間、ガーンッと頭を殴られた様な感覚に陥った。
わかってはいたけど、当たり前なんだけど、閣下は歌が巧い!
サウンドはアンダースが手掛けているので基本はHR/HMなのだが、最初からメロディが決まっているカヴァーとは異なり閣下自らが歌うことを前提として作られた楽曲なのでキーも含めて無理がないワケだ。
そこに今回は各曲ごとにゲストヴォーカリストを迎え入れたデュエット曲も多く収録されており、単純なヘヴィメタル路線ではないことが強調されている。
このCDを実際に手にするまではその部分も否定的に見ていたのだが、小柳ゆき、ヒダカトオル、ピンクレディーのMIE等、ゲスト人の多彩さと同時に楽曲のバラエティ化にも成功している。
歌詞も閣下らしさが全開で、シリアスなモノから馬鹿馬鹿しいモノまで揃えてあるがその中に世の中に対する皮肉が程よく込められていたりもする。
演奏面でもスゥエーデンミュージシャンが参加しているにも関わらず硬質で冷たい感じではなく非常に躍動感溢れるものに聞こえるから不思議だ。
やはり楽曲の良さが物語っているのだろう。
私が聴きたかったのはこういう閣下のアルバムだったのだ。
つまりはプロデューサーであるアンダース・リドホルムが全て悪いのでなく、カヴァーアルバムを続けて出していた為に楽曲のアレンジに限界が生じ閣下の声を殺してしまっていたのではないか、そんな結論が出てくる。
今回聖飢魔Ⅱ時代のゲストはドラムの雷電湯澤のみに留められているのは、閣下自身も聖飢魔Ⅱからの脱却を試みているのかもと深読みも出来るし、私もそうであって欲しいと思う。
このアルバムの購入予定もないし、ギタリストに大橋隆志氏が参加しないということでツアーも行きたいという気持ちが込み上がってこなかったので今回は思いっきりスルーしてしまった。
東京の最終公演はアルバムに参加のゲストヴォーカリスト達も呼び、奇跡とも言うべき最高のステージだったという。
閣下のブログでその旨を呼んだ時に若干の後悔が頭をよぎったが、それが今更大きなモノへとなってしまったことは言うまでもない。
もしその時の模様を収めたDVDが発売されるならこれは観るしかないな!
まァ、それにしても本当に今年は例年にない位、私の好きなアーティスト達が揃って新作を発表した。
最近好きになったバンド等も含めて非常に素晴らしいモノばかりだ。
その中に往年のお気に入り達も混ざっているのだから喜ばしい。
あらためて言う、デーモン閣下はやっぱり凄かった!
※
ここまでの文章は実は一か月前に書いておいたモノで、ちょっと更新するタイミングを逸脱していた為にオクラ入りするところだった(笑)。
休みの日もあちこち出掛けては、その際の記事を書くのに忙しくてね・・・。
先週ちょっと事情で落ち込んだ、理由はバカバカしくてここでは書けないんだけれども。
寒くなりCDを掛けながらお風呂に入れる時期が来たの、少し古いが聖飢魔Ⅱの教典(アルバムのことね)を聴くことにした。
「エガオノママデ」という曲がその1曲目にあり、それを湯船に入りながら耳にしたらなんか泣けてきた。
元々好きな曲だったけどその時ほど心に響いたことはなかったなァ。
閣下の歌がその歌詞の意味と一緒になって私に、「自分を信じろ、お前の好きなように行けばよい」と訴えてくるかの如く刺さった。
変わるモノもあれば変わらないモノもある。
自分の原点でもあるデーモン閣下の歌は勿論・・・。
今日はデーモン閣下の御生誕記念日、おめでとうございます。
いつも私に力をくれる歌をありがとうございます。
これからも良い歌を届けてください。