
艦構造物です。
ここからみると右舷によっているのがよくわかります。
これは全通甲板型でヘリコプタの運用になるべく邪魔にならないようにしたため。
手前の巨大なボール状のものはNORA-7スーパーバード衛星通信アンテナです。
このアンテナは陸上施設や艦艇と通信するためのもので、衛星放送と同じ衛星を使用しています。
艦橋の上部に大小の白い四角形が前方と側面に貼られています。
これは射撃管制装置3型になります。

艦橋を横下側から。
大小の射撃管制装置3型のアンテナがわかります。
大きいほうが目標探索用のCバンドアンテナ、小型のものがミサイルの射撃管制用のXバンドアンテナです。
”ひゅうが”の艦隊空ミサイルは後部VLS内に発展型シースパローESSMが搭載されています。
艦橋を良く見ると監視用の双眼鏡や飛行甲板の状況を映すテレビカメラ、探照灯などが設置されていますね。

艦構造物を斜め後ろから。
意外なほどすっきりしています。
2基のエントツがあります。
”ひゅうが”はCOGAGというガスタービンエンジンを複数組み合わせた推進システムを使用しています。
LM2500ガスタービンエンジンを合計4基搭載し、合計出力は実に10万馬力。
エントツの間にある球状のものはNORA-1Cスーパーバード衛星通信アンテナとNOQR-1スーパーバード衛星通信アンテナです。
静止衛星をつかって陸上施設や艦艇と通信を行うためのものです。

艦構造物を後方から。
一見艦橋と似ていますがこちらは航空管制室になります。

複数のヘリコプタを運用するには専用の管制室でヘリコプタに指示を出すことが必要になります。
航空管制室左側はよくみると下にも窓があります。
ここには航空管制官、その後ろにエアボス(飛行長)の座席があり、足元に窓をつけることで飛行甲板の視界を確保しています。
手前の大小の球状のものは小型のものがNORA-7スーパーバード衛星通信アンテナ、大型のものがUSC-42衛星通信アンテナになります。
USC-42は米海軍との通信用アンテナで、まさにこの”ひゅうが”が旗艦としての能力を持っていることを物語っています。
東日本大震災ではヘリコプタでの災害救助活動・物資輸送はもちろんですが、OPERATION-TOMODACHIで大規模に救助活動を行った米海軍と連日会議をひらいています。
ヘリコプタの運用能力に目が行く”ひゅうが”ですが、それ以上に艦隊の司令部施設を設置できる広大な指揮所、今までになかったほどの充実した指揮通信管制能力が”ひゅうが”最大の特徴かもしれません。

航空管制室の下側、艦構造物の真後ろにあたります。
このドアは・・・・ヘリコプター用の弾庫?
では艦構造物をはなれて艦後部にいきましょう。

これは・・・爆雷!
・・・なんかじゃもちろんありません。
救命筏になります。
着水すると中のガスで筏が開くようになります。

右側の釣竿のようにみえるのは短波・中波の通信アンテナで受信用となります。
中央のドーム状のものはNORC-4Bインマルサット衛星通信アンテナで陸上施設や艦艇と通信を行うためのものです。

こちらは飛行甲板後方の右舷に設置された銃架で、”ひゅうが”にはこの銃架が7基設置されています。
使用する火器は12.7ミリ機関銃になります。
今まで護衛艦には搭載されていませんでしたが、不審船事件やテロ対策で最近は護衛艦にも搭載されるようになりました。

こちらは”ひゅうが”のミサイルランチャMk41 VLSです。
VLSとは垂直発射システムのことで、あらかじめミサイルは真上を向いて装填されています。
従来は弾庫からミサイルランチャに装填して発射するようになっていましたが、それでは次弾発射まで時間がかかるため、弾庫がそのままランチャにして矢継ぎ早に発射できるようにしてるわけです。
イージス護衛艦にも同じVLSが搭載されています。
”ひゅうが”にはこのVLSが16セル装備されています。
搭載されているミサイルは垂直発射アスロックVLAと艦対空ミサイル発展型シースパローESSMになります。
VLAは垂直発射ロケットに魚雷を搭載したもので、敵潜水艦のいる遠方にロケットを投射、上空で魚雷は切り離されて着水し、潜水艦に突入していきます。

こちらは後部飛行甲板に設置されてる弾薬用エレベータです。
SH-60哨戒ヘリコプターに搭載する弾薬(ヘルファイヤ空対艦ミサイルや単魚雷)を飛行甲板に昇降させるためのものです。
黄色いのはSH-60に搭載する97式短魚雷の模擬弾です。

艦最後尾です。
自衛艦旗がかかげられています。
この自衛艦旗は外国の軍艦旗と同じ役割をもちますが、軍艦は軍艦旗をかかげることで軍艦としての特権が与えられます。
通常の船舶と軍艦の違いはこの軍艦旗の有無といってもよいぐらい、きわめて重要な旗になります。
後方にはDD”やまゆき”が体験航海にむかおうとしていますが、ここが艦橋ではなく飛行甲板だということを考えると”ひゅうが”がいかに巨大で喫水線から高いことがわかります。
こちらは飛行甲板で展示されたSH-60J哨戒ヘリコプターです。
SH-60Jは米海軍のSH-60Bを日本向けにした・・・・ものでは実はなく、機体はSH-60Bのライセンス生産ですが電子装置はほとんどが国内開発したものです。
地磁気の乱れを利用して潜水艦の探知を行うMADや広範囲の監視を行うソノブイ、海中に直接ソナーを入れて詳細な位置確認を行うディッピングソナーで敵潜水艦の警戒と短魚雷による攻撃を行うほか、機体下部に監視用のレーダを使って、艦から遠くはなれて広範囲の洋上監視を行います。
もちろん救助や物資輸送などにも使用され、東日本大震災では救助・物資輸送で大活躍しました。

SH-60Jを後方から。
SH-60は単なる哨戒ヘリコプターではなく、データリンクを使って周辺の状況や監視情報を艦に送る”艦の最も重要なセンサー”でもあります。
通信、情報伝達、探索、警戒、武力の行使と護衛艦のウエポンシステムの中枢ともいえます。
尚、黄色いのはヘリコプター牽引機。
有線で操作できるとのことです。

こちらはSH-60Jの内部。
ディッピングソナーがみえます。
これを潜水艦が潜んでいると思われる場所に吊り下げて海中に投入します。
小型なので探知範囲は限られますが、ヘリコプターの機動でそれをカバーします。
それにしても・・・・乗員の真横にソナーがあるんですね。

こちらもSH-60Jの機内。
半球状の窓で下側も見えるようにしています。
座席の前には潜水艦対策用のコンソールが設置されていますね。

飛行甲板はこのような特殊な処理が行われています。
すべらないようにザラザラしています。
転ぶとかなり痛いので気をつけましょう。
カバーがしてありますがこの下には車両や艦載機を固定するためのフックがありますが、実に1600箇所もあるんだとか・・・
さて、この辺で格納庫にはいりましょう。

格納庫から後部エレベータをみたところです。
後部エレベータは前部エレベータよりも大型で長さ20メートル×幅13メートルで、SH-60のロータをたたむことなく昇降させることが可能です。
今はエレベータが飛行甲板にありますので広大な空間になってますね。

ヘリコプタ格納庫に駐機していたSH-60K哨戒ヘリコプタです。
SH-60KはSH-60Jの後継として開発されたヘリコプターで、SH-60Jをベースに機体を大型化し、エンジンの出力をアップさせています。
もちろん電子装置も高性能化し、洋上監視用のレーダを逆合成開口レーダーにするなど一新、さらにSH-60Jでは搭載できなかったヘルファイア対艦ミサイルや新型の97式短魚雷、機関銃を搭載ができるようになりました。
たたんだロータの先端形状が複雑なのはロータ翼端に発生する有害な気流の渦の影響を抑えるためだとのことです。

こちらは先ほど紹介した訓練用のSH-60Jです。
もちろん「181」なんていう機番はありません。
これはひゅうがの艦番号181からとったものなんでしょうね。

そのSH-60Jですが、艦載機だと実感するのがこれです。
胴体を折り曲げることが出来るんです。
これは狭い艦内でスペースを少しでもかせげるようにしたためですが、胴体を折り曲げているシーンはあまり見ることが出来ないのでちょっと貴重かもしれません。
以上、ヘリコプター搭載護衛艦DDH-181”ひゅうが”でした。
満載排水量で19000トンにもなる”ひゅうが”は「DDH」からわかるように英語にすれば駆逐艦をあらわします。
19000トンにもおよぶ駆逐艦・・・・
まさに世界最大の駆逐艦ともいえます。