秋が深まるにつれ藪山が恋しくなる。
昨年の今頃も寸又峡の山を徘徊していたが、今年は大井川源流に出掛けたので
山神様の「GOTO山泊キャンペーン」が、打ち切りとなってしまった。
そこで、爺の体力テストを兼ねて、通常なら泊りの山に「GOTO日帰り券」
を特別に出して貰った。
但し、体力面の不安と日が短いことから予定時刻までに登頂出来ない場合は、
その時点で引き返すという条件付き。
行先は、寸又峡からはアプローチしにくくて入山者も非常に少ない不動岳
東尾根。
(画像をクリックしてご覧ください)
03:50 寸又峡温泉出発、今日は下山時間節約の為に千頭ダムまで自転車を
使うことにした。
05:00 千頭ダム着。少々登りがあるので使いなれない筋肉が疲れる。
05:30 廃林道を歩き、寸又川本流を渡る「天地吊橋」へ。
06:45 寸又川本流から支流の上西河内に入る為に、間の峠「天地コル」に
上がり、ここから転げ落ちるような傾斜の尾根を下る。
上西河内の流れが見えた。
07:30 この時期、渡渉は冷たいので釣り用ネオプレンソックスを履く。
これで、ようやく不動岳へ向かう東尾根の支稜の末端に取り付ける。
まずは、右手奥の岩尾根に齧りつく。
こんな山奥にも戦後の植林全盛期には造林小屋があった。
当時は、地図にあるように寸又川本流から上西河内と下西河内に沿った破線の
植林用歩道を多くの林業従事者が歩いていた。
今では、吊橋や歩道の殆どは消滅・・・いつまで地図に載せておくのだろう?
08:40 上西河内から休むことなく一気に東尾根1188m点まで詰め上げた。
正面に寸又川源流の山、合地山がピラミダルな姿を見せた。
あそこも生きている間に行きたいところのひとつ。
しばらくは植林帯が続く、よくもまぁこんなところにまで植えたものだ。
ようやく自然林となるが、紅葉の区間は短い。
空が俄かに雲に覆われ、天気が下り坂のように冷たい風が吹き下ろして来た。
10:00 1551m三角点。地表を小笹が覆い、いよいよ南アルプス深南部
らしい雰囲気となってきた。
11:00 1881m点は、この大岩の上。
高度が上がるにつれ、小笹と針葉樹中心の植生となる。
ここでようやく目指す不動岳の山頂部が見えて来た。
なんとかタイムリミットまでに登頂出来そうだ。
間もなく北方の視界が開け、南アルプス主稜の最南端「光岳」の巨体が見えた。
ズームすると山頂左下に白い部分がある。
さらに引き寄せると、やはり白い岩の露頭だ。
これが「光岩」。
この岩に陽が当たり、白く光って見えることが山名の由来と言われる。
しばらく笹が深くなり、獣道が錯綜する。
やがて南方向の視界も開けると、いつの間にか青空が広がった。
昨年、歩いた丸盆岳、黒法師岳が望める。
不動岳登頂者のキャンプサイト「鹿の平」。
本来ならあそこに泊まりたいのだが・・・。
山頂までもう少し、ここまで急ぎ過ぎたせいか左足大腿四頭筋がちょっと
痙攣し始めた。
12:00 何とか予定より30分早く、登頂出来た。
しかし、当然、通話圏外なので山神様に知らせようもない。
山頂付近の木々の枝先が妙に白い。
少しばかりの霧氷・・・先ほどの一時的な曇天と冷たい風が作りだした
のだろう、陽を受けてどんどん融けていく。
ほんの一時の輝きを目に出来た幸運に感謝。
南に丸盆岳、黒法師岳。
すぐそこに「鹿の平」、黒法師岳の手前に「カモシカ平」とこの山域の
天国とよばれるキャンプサイトを同時に望める。
昨年のカモシカ平での一夜を思い出してしまう。
西方向に目を転ずれば、水窪方面の山々。
その北側、南アルプス主稜に続く峰々。
そして池口岳から光岳への稜線。
12:30 山頂滞在30分、下山開始。今度は、足元の明るい内に上西河内を
渡らなければならない。
気持ちははやるが、熊笹帯では登って来たばかりのルートが、はっきりしない。
獣道が幾筋もついているので、下山時には悩んでしまう。
時折、自分で付けてきた鉈目を見つけるとほっとする。
西日に映える紅葉が美しいが、陽射しが力を失ってくるのを感じて焦る。
1188点、東尾根から支稜への分岐がわかりにくい地形なので、念のため
テープでコースサインを付けておいたが、見過ごして東尾根を下り過ぎて
しまいタイムロス。
張り出た尾根上に残るかっての植林歩道跡。
上西河内に降り立つ直前にルートミス、目的地の上流に下りてしまい、側壁を
登り返してこの正しい下降点を見つけるのに30分のロス。
こんな傾斜は、上りより下りの方が危ない。
疲労していれば尚更だ、お守り代わりの6mmロープで降りる。
さぁ、ここを渡ると、また対岸に激登りが待っている!!
うぅ~、冷たい。でも、疲れてきた脚に気合が入ったかも?
16:20 今回の最大のポイント、上西河内に別れを告げる。
時間的な貯金は吐き出して、ほぼ予定通りの時刻となってしまった。
16:55 標高差200m、壁のような尾根を一気に上がると、峠の森の中は
もう暗かった。
寸又本流に向けて、再び尾根筋を下る。
明るければ、何ということもない踏み跡も真っ暗闇の中ではコースサインが
頼りだ。
吊橋に向けての下西河内沿いの崩壊地トラバース。
結局、行きも帰りもヘッドランプでズルズルと滑りながら通過。
17:35 とうとう「天地吊橋」に戻ってきた。これを渡れば、文明圏だ。
でも、まだ崩壊林道歩きが少々・・・・。
千頭ダムの灯りが見えた、一挙に緊張が解ける。
17:50 千頭ダム着、もう歩かなくてすむ。
上西河内からここまで限界近いスピードで頑張ったので、予定に対して再び
30分の貯金が出来た。
森林軌道跡に簡易舗装した林道なのでトンネルも狭い。
この撮影の直後、トンネルの中でアナグマに出くわした。
必死で逃げるアナグマ、太ったお尻がクリクリと可愛い。
自転車の方が早いので、余裕で後ろから「ホラホラもっと走れ~!」と
追い立てた。
アナグマは、トンネルを出ると大慌てで藪の中へ消えた。
でも、落ち着いて考えたらアナグマで良かった。もし、クマだったら・・・(-_-;)
30年以上も昔、この道を岩魚釣りのために何度もミニバイクで通った。
(当時は、バイクは黙認されていた)
ある日、カーブを曲がるとクマがいた。
バイクに驚いて逃げるクマ、体が硬直してブレーキをかけれない僕。
しばらく、バイクでクマを追いかけてしまった・・・幸い、クマは林道下の
藪へ飛び降りていった。
そんなことを思い出したら、急に暗闇の道が怖くなってスピードアップ。
18:50 下り勾配の道を必死で駆け抜けて寸又温泉に帰着。
予定の19:30より早い。
早速、山神様&息子達に帰着報告。
行動時間約15時間。
自転車を使った分だけ、体力にはまだ若干の余力があったかな?
猛烈に暑かった夏の間も、早起きして走り込んでいた甲斐があったかも・・・。
とりあえず、脚が動いて幸せだ~♬
そして「GOTO日帰り券」を出してくれた山神様に感謝!!