お盆の後、夫婦二人だけのどことなく寂しい毎日。
山神様も骨盤のヒビの影響で元気なし。
・・・でも、天候不順のこの夏、ようやく安定した気圧配置になりそうだ。
でぇ~、大昔からやりたかった大冒険(僕にとっては・・・です)というか、大徘徊に
出掛けることに。
お出掛け先は、南アルプスだけどちょっとマイナーな「信濃俣」という2332mの山。
大井川上流畑薙湖に西方から流れ込む信濃俣河内という大井川の大支流がある。
その川の源頭のひとつに聳える山で、踏み跡はあるけれど登山道としては整備
されていない所謂バリエーションコースにある。
信濃俣河内には、何度となく岩魚釣りに入っているが、川の名前の由来である
「信濃俣」は畑薙ダムから登るにしても主稜線の一般登山道のある光岳から
向かうにしても一日で到達するのは困難な奥深い憧れの山だった。
もうこれ以上歳をとると一生行けなくなってしまう。
そこで、畑薙第一ダムから大根沢山北東尾根を辿り信濃俣経由で光岳、一般道で
茶臼岳に移動した後、これもバリエーションルートの鳥小屋尾根という畑薙山を
通るコースで直接畑薙大吊橋に下りてダムに戻るというちょっと冒険的な計画を
立てた。
登路、下山路ともにバリエーションということで当初は2泊で予定、おそらく
主稜線上以外で登山者に会うことは殆ど無いというとってもとっても寂しい
独りぼっちの山中徘徊計画。
それで孫の帰ってしまった寂しさも少しは紛れるはずだったのだが、結果的には
あんまり寂しいので1泊で抜けて帰ってきてしまった。(^^;
ルート概略図
詳細な地図はこちら
8/23 05:00 畑薙沼平駐車場にパジェロミニをデポ、第一ダムに向かって出発。
目標の信濃俣のある方向、ちょっと雲が厚い・・・。
取り付きは、畑薙第一ダムから最初のピーク大根沢山へ続く北東尾根支稜。
高度差は約1300mだ。
取り付いた尾根から茶臼岳方面を仰ぐが主稜線は雲の中、今日こそはすっきり
晴れると思ったのに。
広葉樹の多い樹林の中を黙々と登る、当然展望は無い。
習性だろうか、足元にばかり目がいってしまう。
おお、アカヤマドリ!!
ああ、タマゴタケ!!

今日はキノコ採りに来たのではない、邪念を押さえつけて先を急ぐ。
高度が2000mを越すと時折展望が得られるようになる。
目指す「信濃俣」の端正な容姿、双耳峰の様に見えるが右側の高い方が「信濃俣」、
左側は「椹沢の頭」と呼ばれている。
そして「信濃俣」から続く尾根の先に雲に隠れた光岳があり、右手の雲の中は
下山開始地点となる茶臼岳だ。
10:00
荷物は重いのに昨年の下見より早く大根沢山着、今日は先が長いので素通り。
ここからが、今回の核心部。
「信濃俣」へ続くこの山の西斜面は、非常な急傾斜の上に平面的で顕著な尾根が無く、
コース中でルートファインディングが最も難しい地点と言われている。
この斜面を一気に450mも下のコルまで滑り落ちるように下る。
途中、この左手の大岩を右に見て下るのがポイント。
その下方には、昨年下見の時につけておいた黄色いマークがあった。
これでここまでのルートは正解、ちょっぴり安堵する。
続いて危険個所と言われる岩壁が現れるが何ということは無い。
むしろその先の足元の悪い急傾斜のザレ場の方がよっぽど危険。
ブナ沢のコルと呼ばれる1790mの鞍部、ここまで来れば尾根がはっきりとしてルートを
失う心配はなくなる。
このブナ沢源頭を少し下ると水場があるはず、ただ必ず水が湧いているか不安があった
ので4Lを背負ってきた。
2-3分で第一の水場、本当に滴る程度。
10分下った第二の水場、そこそこの量が湧いていた。
背負ってきたのは無駄だったかと思うが、枯れていたらアウトだから仕方がない。
結局、この水場確認で30分もロス。
ブナ沢コルから「信濃俣」まで今度は550mの登り返し、しかもその間には小さなpeakが
連続し数度の登り下りを強いられる。
振り返れば越えて来た大根沢山が、高い!
左手には畑薙から辿ってきた長い北東尾根。
行く先の尾根は痩せ、ルートはより明確になる。
少し精神的に余裕が出ると美しいキノコに目がいってしまう。
太古の昔から斧を知らない森。
岩鏡で覆われた小さなピーク、花が咲いていたらどんなに素晴らしいことだろう。
毒茸だけど何て綺麗なんだろう。
素晴らしい草地に出合う。
堪らずに大休止。

ここまで7時間半、先を焦ってほとんど休んでいない。
寝転んでいたらようやくこの大徘徊を楽しむ気持ちが戻ってきた。
再び歩き出すと左手にさらに奥深い深南部と呼ばれる寸又川流域の山並みが見えた。
2107mピーク手前のガレ縁から望む「信濃俣」、かなり近づいた。
13:45 幕営予定地の2107m、カバ沢の頭到着。
予定より3時間以上も早い、今日の行動予定時間は12時間で17時までだ。
おおお・・・こんなところにタマゴタケ!!
標高2000mを越えるところにあるなんて初めて!ビックリだ。
そして「信濃俣」の一角、2320mの椹沢山。
古い道標に来し方行く末が示されている。
一旦、トリカブトが咲き乱れるコルへ下る。
美しいものには毒がある。
憧れ続けた「信濃俣」がもうすぐそこに。
そして一登り・・・とうとう来た、「信濃俣」山頂だ。
古いプレートは錆びて山名が読めない。
代わりに新しい洒落たプレートが掛かっていた。
クラウンは似合わないなぁ・・・。
とうとう来たという感慨に浸っていたが、一瞬主稜線の雲が切れてこれから向かう
光岳が見えた。
「うわ~、まだ遠いなぁ・・・」、僅か10分の滞在でまた歩き出す。
しばらくするとシャクナゲが足元を覆い隠す。
一か所だけ樹林の切れるところがあった、振り返ってみる「信濃俣」。
知らなかったが西側に岩塔が立っている、「格好いいなぁ~」また惚れ直してしまった。
そして次の2220m前信濃俣との間はまたまた150mの激下り。
日暮れが近づいてくる、幕営適地を探しながら先へすすむ。
16:40 ここを今宵の宿と決める。
今日のホテルは、タープ1枚。
水を背負うために極力軽量化したくてテントは止めた。
これ以上軽い宿泊装備は無い!
さて一本だけ採ってきたアカヤマドリ。
さっと湯がいて味噌汁に。
FD五目御飯とFD味噌汁、今回は軽量化最優先なのでこれだけ。
でも、アカヤマドリが入って気分はご馳走♪
食後は、「信濃俣」登頂の夢が叶った喜びと12時間でここまで来れた驚きに包まれながら
浅い眠りについた。
(二日目に続く)