写真には
9個の電解コンがあるが、ヘアードライヤーで基板全体を温めると、ボイラーは正常に動作することから、これらの中に、悪いものがあり、それを特定するだけのことと思った。9個もあるため、それは容易なことではなさそうなのに、簡単に早く見つけることができてしまう手法
(半田ごて法)を使い、見つけたのが、青と赤の矢印で示す2つで、これらを代用できる良品に交換したことで、ボイラーは完璧に動作するようになった。
お風呂が確実に沸かせるようになって、相談主の顔が綻んだ。満面の笑みで物凄く感謝され、修理費用はと尋ねられたが、私の手持ちの電解コン計3つで直ってしまったので特にお金は掛かっていませんと申し上げた。でも、手間賃くらいは払わせてと言われたが、大したことはしていませんのでと申し上げて私は帰って来た。私のやり方の半田ごて法の有効性の検証にもなり、また、お風呂に入れるようになって、相談主も私もハッピーだった。
3、半田ごて法とは
これは別の基板で撮った写真であるが、こうやって半田ごてを当てるやり方である。
アレニウス則に従って劣化した電解コンは熱を加えて判断するというテクニックが使える。具体的には、半田ごてを上の写真のように、調べたい電解コンの頂部に当てて、機器の変化を調べる方法である。中には、見ただけで劣化した電解コンを見つけられるものがあるが、一部の特殊な種類だけである。例えばここにある電解液に第4級アンモニウム塩を使ったものがそうで、リード足が腐食し液漏れする。
https://www.clublexus.com/forums/ls-1st-and-2nd-gen-1990-2000/656360-all-my-crazy-lexus-issues-solved-ecu-leaking-capacitor.html#post7496907
また、頂部が膨らみ、やがて液漏れする、コンピューターによく使われる水性電解コン
https://godhanda.co.jp/blog/51199653-2/
があったりする。一般にはESRメーター等の測定器を使って測定しないと劣化具合が詳しくは分からないのが普通である。電解コンデンサーは段々と劣化して行くものであり、その場合、温めると性能がその間だけ改善することを逆手に利用して、半田ごてで温めるというのが、私がやる半田ごて法である。電子機器の寿命を決めてしまう要因で多いのは、電解コンの劣化と半田クラックであり、それらを見つけて対処すれば、直せてしまう機器は多い。半田クラックの事例を一つ紹介させてもらうとこういうこともある。これは70万円もする車の排気ガステスターの事例である。
https://minkara.carview.co.jp/userid/1275711/car/2809201/5421845/note.aspx
この半田ごてによる方法だと、簡単に劣化したコンデンサーを特定できることになり、今回もまさにその一つの具体的な事例となった。
正常に動作するようになった基板
この半田ごて法で見つけた写真の青と赤の矢印で示す2つの電解コンを交換したら、LED点灯も蛍光管表示も正しく出て、ボイラーが正常に働くようになった。通信エラーがあったときは、妙な表示が出て、お湯もたまにシャワーからしか出なかったと相談主から言われた。
カバーを付け時計をセットしたリモコンユニット
4、リバースエンジニアリング
回路図が無く、手探り的に修理しようとすると、膨大な数の部品を次々と交換しなければならないが、私は使われている電子部品と銅箔の配線路から、基板をリバースエンジニアリングすることで、確実に修理するようにしている。またこれをやると、修理が間違いなく行えたかも分かる。調べると、2つの電解コンは、15VDCから5VDCを作るスイッチング電源の平滑用としてパラに使われているものであることが判明した。後で示す写真のように、ESRが大きく、これらの電解コンはリップルの吸収が十分にできなくなってしまい、平滑が不十分となったようだ。温度が低い程、ESR増大の傾向が強くなり、寒いと調子が悪くなる電子機器は劣化した電解コンによって引き起こされていることが多い。今回のリモコンユニットでは、5Vで動作するマイコンがリップルによって、まともに動作せず、通信エラーが引き起こされたものであったと確信した。
リバースエンジニアリングで分かった回路構成
また、本体からリモコンユニットへの電源供給とこの間の信号伝送はそれぞれ専用に導線があるのではなく、直流の15Vの供給線にマイコンが作り出すコードを重畳させていることがリバースエンジニアリングの結果、判明した。当初、そのラインに周期一定の約1Vp-pのパルスが観測され、リモコンの操作ボタンのどれをを押しても、そのパルスに変化は殆ど無かった。電解コンを交換したら、元からあったパルスの振幅が大幅に小さくなり、代わりにコードと思われる信号が観測されるようになった。その約1Vp-pあったパルスは、リップル分が通信ラインにも漏れて来ていたことによるものであった。
類似なことは車でもよくあり、例えば、この
280E Broughamさんという方の下のリンクも同じような事例とも言え、私の提案が役立ったようで、電解コンデンサーの交換後は調子良く機能するようになったと喜ばれた。掲載許可を頂くためもあり、近況を昨日お尋ねしたら、今冬も調子良く、セルシオは機能しているとのことであった。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2789245/car/2387868/7457995/note.aspx
尚、使われていた電解コンは、ニチコンのマークが付いたF1P 100uF/16Vなるもので、ニチコンのUWTシリーズであった。
https://www.nichicon.co.jp/english/series_items/catalog_pdf/e-uwt.pdf
この電解コンデンサーは、低温性能が-55℃までOKという特徴があるが、標準品と性能的には余り変わらないものであって、低ESR品ではなかった。私の手持ちで電解コンに同じものは無く、修理を急ぐ必要があり、敢えて使ったのは、47uF/20VのOSコンと呼ばれるパナソニックのアルミ固体電解コンデンサであった。容量が半分弱だが、低ESRでリップル除去性能に勝れ、耐久性もあり、低温性能も良く、この容量でも十分に足りると判断し、使ってしまったが、電圧レギュレーターによっては、位相補償の関係で発振する場合があり、闇雲には使えない。OSコンは高周波特性が通常の電解コンよりずっと良く、位相回転によって、発振し易い。完璧な修理をしようとすると、ボーデプロットを調べ、発振余裕度を確認すべきだが、早くボイラーを稼働させるために、発振しないことだけを条件を変えながら確認し使ってみた。結果はOKだった。
5、何故、電解コンが劣化したかの考察
2つのコンデンサーの下には、15VDCから5VDCを作るためのDC-DCコンバーターによるスイッチングレギュレーター回路が配置されていて、それなりに熱が発生している。事実、この写真の赤矢印で示す、コンデンサーより下にある部品は発熱し、触るとかなり温かい。この熱が上に位置する電解コンデンサーに伝わり、アレニウス則に従って劣化が他より早く進み、ESRが増大したと推測される。こういう事情もあって、2つは寿命を早く迎えることになってしまったのだろう。でも、19年間は機能していた。
熱源
6、ダメ押しのESR測定
電解コンを基板から外す際、1個は上手く外れたが、もう1個は足がもげてしまいESRメーターに接続不可能になってしまった。ESRメーターで、室温23℃の時に測ると、このとおり、28Ωと出た。こんな大きな値では、リップル除去が不十分となるはずだ。
ESR 28Ω
ESRが下がって行く
この電解コンを暖房が一切ない、薄暗い物置で、ESRを測った後、半田ごてで暖めたらどうなるか調べてみた。当初、40Ωと出たが、半田ごてを当てたら、どんどんと小さくなり、やがて0Ωになった。Vlossも、温まる程、低下していることが分かる。何故か不思議なのは、静電容量がどの条件でも663.7uFとえらく大きな値なのが変だが、これは測定器がある容量以上だと、この数字になってしまう問題のようだ。
この写真のように、半田ごてで温めると、劣化した電解コンが素早く見つけられることがお分かり願えるかと思う。
6、ネット情報
ネット検索で、エラーコード760を調べると、一杯、事例が見つかるが、修理できたという話は見つからず、ボイラーの買い替えばかりの話が出ている。
私がどうトラブルシュートし、どう直したか、私一人だけのKNOW-HOWとせず、オープンにすれば助かる人もおられるのではとも思う次第である。寒いと起き易いエラーコード760は、多くがリモコンユニット内の基板に載っている電解コンの劣化であろう。今回も投稿させてもらうことで、助かる人もあろうかと、駄文を書いた次第である。
尚、一部ハイパーリンクが機能しないサイトがあり、それらは、TEXTで貼っておいた。見たい方はブラウザにコピペして見られたし。
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Posted at
2025/01/02 23:53:36