
その伝馬船に乗った男たちは、そんなに躊躇することなく、音戸の瀬戸に突入してきました。直前に、大きな貨物船やフェリーそして高速フェリーが次々と通り過ぎて散々かき回した後の瀬戸にであります。
それらが通り過ぎるのを瀬戸の傍で待っていた彼らは、一瞬をついて瀬戸に突入し上下に揺られながらも、ドンドンドンという太鼓の音とともに波立つ瀬戸を難なく通り抜けて行きました。これは感動ものです。スゲーな〜、勇気あるな~、さすが海の男たちは違うな、と一人興奮していた私でありますが、隣で撮影していた同じユニフォームを着たスタッフ氏は、こんなの朝飯前だよという顔をしてました。
櫂伝馬という船が来るというのを知ったのは、前日のお昼ご飯を食べた、音戸のお気に入りの食堂である「たかさき」さんでであります。
腹減ったな〜と、1時過ぎに飛び込みました。今回は休みじゃなくてセーフ。途中からイメージしていたカツ丼を頼みました。汁だく気味のカツ丼は激しい運動の後にはとても美味しかったのであります。そして今日はもう走らなくて良いから満腹でも安心というのもあります。今日の目的地である、大浦崎はもう目と鼻の先。サービスで出されたコーヒーを飲みながらテレビのカラオケ大会をぼんやり見ていると、たかさきの奥さんが、今日はどちらまでと声を掛けてきました。今日は大浦崎でテント張って泊まるだけですと話すと、今晩は、大崎上島から船がやってきて大浦崎のキャンプ場の隣のスポーツセンターに泊まる事になるからうるさくなるわよ〜(笑)。その船ってどんなんですかと尋ねると、隣で食事していた常連さんである水産関連の人が、年に1回、大崎上島から宮島まで手漕ぎの船で行く行事なんだよと教えてくれました。明日の朝は7時にキャンプ場の前を漕ぎ出すから見えるよ。えっ、7時ですか?、だってそれに間に合うよう仕出し弁当を頼まれたんだもんと、たかさきの亭主がニコニコと教えてくれました。これはなかなか面白いイベントに遭遇したな〜と満腹の腹をさすりながら店を出てキャンプ場に進んだのであります。
途中の地元のスーパーで、今晩用の買い出しをすませてから、想像以上に重くなったビニール袋を手放ししないようにバランスをとりながら5分くらい走ると、今晩の泊地である大浦崎キャンプ場に到着しました。そして1人分の400円を事務所で支払ってから、誰もいないサイトで好きな場所をとる権利を得てどこにしようかなと、うろうろしていたら、正面の海岸の方から、ドンドンドンと太鼓の音とそりゃそりゃという掛け声が聞こえてきました。砂浜の方に行ってみてみると、沖の方から小さい船がこちらに向かってやってきます。そしてその勢いのまま砂浜にザーッと乗りあげました。よく時代劇の海賊の画でみるような感じです。一瞬の歓声が上がった後に、そして船をもう一度漕ぎ出して、岬の裏の係留場に移動していきました。たかさきで聞いた時はやってくる船はもっと大きめの船、イメージとしては南蛮船のようなものだと思っていたのですが、なんか小さい伝馬船のようで見聞する立場としては画的にがっかりしたのは正直なところです。しかし、逆に言えば、こんな小さな船で、大崎上島から、安芸灘を渡ってやってきたのかという驚きも感じました。しかも明日のルートを考えると、最難関の音戸の瀬戸が待っている・・・。それが杞憂だとは夜になると解ったのですが、キャンプサイトに隣接するスポーツセンターからは、一晩中メンバーの気勢がずっと上がってました(笑)
7時の出発に間に合うように海岸で朝ラー(朝食はラーメン)を食べてたら、後ろを通り過ぎた軽自動車から声がかかりました。振り向くと たかさきの亭主であります。朝の仕出しを持ってきたんだけどまだ出ないね〜と昨日の事を覚えていてくれたようで教えてくれました。昨日は遅くまで気勢を上げてましたからね〜。それでもラーメンを食べ終わる頃には、メンバーがゾロゾロと船の方に歩いて行きました。こちらも食器を片付けて出発の準備をしていると岬の向こうから船がやってきて砂浜の向こうをドンドンドンの太鼓に合わせて漕いでいきます。キャンプサイトの札を返しに行ったスポーツセンターの係員が慌てて堤防の方に走って行って、両手を振ってガンバレーと声を掛けてます。つられて私も中途半端な場所でこれまた中途半端に手を振ってしまいました。そして、どうせ、音戸の瀬戸で待ってれば、一大スペクタルを見る事ができるんだからと、ゆっくりと漕ぎ出しました。たかさきさんの前を通ると本日休業。朝からたくさんの仕出しを作ったから今日は休みかなと思いつつ、適当にゆるゆると走って瀬戸を目指しますが、途中海が見えるところで眺めてみると、まだこっちまで来てないようです。そして、もうしばらく走ってふと海を見てみると、なんと、自分より前に船が見えるじゃないですか!ゲゲッ何てことだ・・・それからこちらもトップギヤに入れて真剣に漕ぎ出しました。後で解った事ですが、道は海沿いを走っていますが、湾状になっているところを船は当然トレースしない、まっすぐ行けばその分近いんですね。しかも、公園の手漕ぎボート程度の想像をしていた私は大バカ者(笑)。それでもなんとか瀬戸に到着すると、船は瀬戸の入り口でぐるぐる回ってました。後ろには、松山からのフェリーが迫っています。そしてちょうどその時に、呉の方から貨物船がやってきました。貨物船のすごい迫力の後に、もっとすごい高速フェリーが波を蹴立てて続いてきました。それは、その次に続いたプレジャーボートが木の葉のように揺れながら通り抜けた事でもわかります。そしてフェリーを露払いとして先行させた後で、一気に瀬戸になだれ込んだのであります。狭い海峡に響き渡る太鼓の音と漕ぎ手の掛け声。そしてするすると海峡を進んでいきます。さすが村上水軍の末裔。後で画像を確認しましたが、船の船首には袴姿でたすきがけの少年が乗ってます。そして気づいたら、伝馬船はアッという間に抜けて行ってしまいました。取り残された私は、慌てて、渡船に飛び乗って海上から見ましたがもうそこには跡形もなし。渡船の船長は、流れに乗って行っちゃったねーと言ってました。
朝から良いもの見たなと感動した私は、重い荷物で疲れたから平地を走って帰ろうと思っていた怠惰な気持ちを捨てて、当初予定していた休山アタックに向けて坂を漕ぎ出したのであります。
初日のコース
いつも通りに、宇品港にフェリー入港であります。

迫力あります。
向かうところ晴天

これは気分良し。
海岸沿いを走っているところを記念撮影しとくかと海をみたら自衛艦が!

こんな光景が普通の広島って(笑)
沈黙の艦隊って漫画ありませんでしたっけ?

壁紙にいかがですか(笑)
道を間違って戻ってきたときに今度は違う艦船が。

あわててたのでブレてしまいました。が、一応記録として。
いつもと違うアプローチを取り、林道大須線を登ります。

いきなりキツイっす。
ある程度高いところに登ってきて海をみてみると今度は潜水艦が!

な〜んだ、潜水艦も結構みることできるんだ。
林道大須線のピークには、これまた砲台跡があると
だったら歩いてみるかと進むと昨晩の雨の跡

靴や短パンがビショビショ(泣)
それでも3つの砲台跡を見る事ができました。

よく考えるとデカイっすねー。
あれっ、向かうところ雲が出てきた・・・
それでも、海岸線まで降りてくるとピーかん。湿ってた靴も乾いちゃいました。

しかし、腹へってきたな〜。
早瀬大橋を渡れば、倉橋島。

そしてそこを走り抜けると、おめあてのの食堂が。
御食事処 たかさきさんであります。

カツ丼、旨かったな〜。
満腹になったので、キャンプ場を目指します。といっても10分も走らない(笑)
一番乗りなので自由に場所を決める事ができる。ラッキー。だって、まだ2時だもん(笑)

ここは1人あたり1日200円。お泊まりは2日になるので400円。
と言ってたら、海外の方からドンドンドンと太鼓の音が、

こんな船でやってきちゃったよ。
ザザーッと上陸したら、すぐさま停泊地に向かうためにまた漕ぎ出した。

上陸前とは打って変わってまったりと漕いでます。
設営が完了しました。

初めて開けるモンベルテント。昔のテントのようにポールをテントに通す必要がなく引っ掛け式なので大変簡単。
中も一人なら楽勝、とても
良い買い物をしましたな。
やる事ないので、酒でも飲むか。

青い海と青い空と青いシートを見ながら酒飲んでました。
さすがに退屈になったので散策でもするか。

あの突端に行ってみよう。

ここからが面白そうなんだけど、一人だし、多少とはいえ酒飲んでるしでやめました。
海岸散策

左の建物に直付けの桟橋に伝馬船とサポート船は係留されてました。
あそこは広島の水産試験場なので一般ピープルは入れません。特別待遇ですなぁ。
散策から戻ってくると周りにテントが立ち始めました。

ファミリーとバイクのツーリストが半々です。自転車は私1台だけ。
夕飯は、鳥つくね汁です。鳥のミンチを練って、ネギとキノコの中にぶち込んだだけ。
しかも、味付けは粉末のラーメンスープの素(笑)

しかし、なかなかの味わいでした。最後にサトウのご飯をぶち込んでおじやにして食べました。
腹一杯になったし暗くなったので、21時就寝。
そしてスポーツセンターだからこそかもしれないけど、朝は6時に近隣の住人向けのチャイムがデカイ音でなります。否応なしにキャンパーは目がさめるね。
朝は、ご存知鳥ラーメン。

これを食べてる時に、たかさきの亭主に声をかけてもらいました。
7時を過ぎて、水主たちは船に戻ります。

スポーツセンターの係員に聞いたところ、宴会が終わってからも外に飲みに行って、戻ってきたのは2時3時だったそうな。海の男は気合が違うな〜。
じゃ、私も撤収。

お世話になったキャンプサイトに残すのは感謝の気持ちのみ。
逆光の中を、船は出発していきました。
じゃ、私も出発しましょう。
本日のコースであります。
そして、予想以上に早く、船は音戸の瀬戸劇場に登場。

後ろからはフェリーが迫っています。
前からは貨物船、その後ろには高速フェリーが・・・

報道班も立ち居振る舞いがビシッとしてます。
出て行く船と入ってくる船。

この時間は、ラッシュアワーですね。
木の葉のようにゆれるボート

エンジン付きでも、これは結構スリルあると思いますよ。
ギャラリーが一人増えました。

報道班は相変わらずビシッとしてます。これからの本番に気持ちが高まってるんでしょうか。
さあ、クライマックスに突入
船首に注目してください。カッコ良いですね〜。
そしてここで、なんとデジカメの電池切れ! 一番のシーンなのに〜
気を取り直して電池効果。

私も頑張りましょう。
いつも通り渡船で瀬戸をわたりました。

今日のメッセージボードはちょっと毛色が違うようです。
瀬戸を渡ってから、いつもは見上げる橋のレベルまで登ります。

ヒーコラ、これが結構きつい。
そして、音戸の瀬戸公園まで上ってきました。

眼下の南島の方向に四国が見えました。高速フェリーの航跡が見えますね。
音戸の瀬戸公園には平清盛像が瀬戸を見下ろしています。

平清盛って、なんとか入道のような風貌をしてるというイメージがありましたが、なんかちょっと違う感じ。
漫画の読みすぎ?
真ん中右の小さい砂浜が今朝立って来た、大浦崎のキャンプ場です。
そして、標高の割にはどうしてこんなにキツイ登りなのと思いつつもピーク。

休山(やすみやま)頂上。これで、尾道三部作に対抗(笑)して呉三山をクリアであります。呉三山とは、勝手に命名しましたが、野呂山と灰ケ峰そしてこの休山であります。
休山新道に向かって下る道は、それはそれは酷かった・・・。斜度もひどいのでこちらから登ったら多分死ぬでしょうし、道は落ち葉や枯れ木が散乱していて、自慢のローリングができないからです。結果的に音戸から登って正解だったな〜。
そして、呉に降りたら昼飯を。

いつもの定番、レーメン+ワンタン入り大盛りであります。
朝も麺、昼も麺。今日は麺祭り(笑)
そしていつも通り、フェリーでワープ。

右手の山が休山であります。
それにしても、今回テント担いで山登りはキツかった・・・